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世界で一番多い語順は“日本語型”。1,376言語中564言語が「主語・目的語・動詞」

世界で一番多い語順は“日本語型”。1,376言語中564言語が「主語・目的語・動詞」

読む前に予想してみよう!

世界の言語で一番多い語順は、英語と同じ「主語・動詞・目的語」だ

研究カード(どんな研究?)
対象
世界の言語・4か国語の話者
規模
1,376言語(言語地図)・2,135言語(系統の分析)・成人80人(身ぶり実験)
研究の種類
言語の比較調査・系統の推定・行動実験
確かさ
★★★☆☆
3秒でわかる

世界の1,376言語を調べると、最多は日本語と同じ「主語・目的語・動詞」の564言語。英語型は488言語で2位。人類最初の言語もこの語順だったという説まである。

ひとことで言うと世界で一番多い語順は、英語じゃなくて日本語と同じ並べ方なんだって!

もくじ
  1. 世界でいちばん多い語順は? 1,376言語を数えた結果
  2. ラテン語は動詞が後ろ。では英語の昔は?
  3. 英語を話す人に「身ぶりだけ」で説明させると…
  4. どんでん返し:「人類最初の言語はSOV」の確率は、最大25%ほど
  5. まとめ

I ate an apple.(私は・食べた・りんごを)

英語を習い始めたころ、「英語は動詞が先に来る。日本語は最後に来る。日本語って変わってるな」と感じた人は多いかもしれません。

ところが、世界の言語を数えてみると逆でした。世界でいちばん多い語順は、英語型ではなく日本語型。1,376の言語を調べた言語地図では、「主語・目的語・動詞」の順に並べる言語が564あり、英語と同じ「主語・動詞・目的語」の488を上回っていたのです。

01世界でいちばん多い語順は? 1,376言語を数えた結果

調べたのは、言語学者マシュー・ドライヤーです。世界の言語の特徴を地図にまとめた『言語構造の世界地図(WALS)』の第81章で、「主語(S)」「目的語(O)」「動詞(V)」の並べ方を言語ごとに分類しました。

主語と目的語がどちらも名詞の文(The dog chased the cat. のような文)で、いちばんふつうに使われる並べ方を数えています。

6通りの並べ方は、すべて実在します。いちばん珍しいのは、目的語が先頭に来る型です。たとえばブラジルのヒシュカリヤナ語(OVS)では、「ジャガーが男をつかまえた」を「男を・つかまえた・ジャガーが」の順に言います。

地域で見ると、SOVはアジアの大部分(東南アジアと中東を除く)、ニューギニア、北アメリカの広い範囲に多い語順です。オーストラリアでも、決まった語順がある言語の中ではいちばん多くなっています。一方、SVOが多いのは、アフリカのサハラ砂漠より南、中国から東南アジア・太平洋、そしてヨーロッパと地中海のまわりです。

日本でよく学ばれる英語も中国語もSVOです。だから、こちらが“ふつう”に見えてしまうのかもしれません。

02ラテン語は動詞が後ろ。では英語の昔は?

ドライヤーは、昔の言語の語順も地図にしています。それによると、今はSVOが多いヨーロッパにも、かつてはラテン語やエトルリア語のようなSOVの言語がありました。

ここから大胆な説を出したのが、2011年の論文です。著者の1人マレー・ゲルマンは、素粒子の分類の研究で1969年にノーベル物理学賞を受け、「クォーク」という考えを出した物理学者です。もう1人は言語学者のメリット・ルーレンです。

なぜSOVの言語がこんなに多いのか。2人の答えは、「SOVが特別に使いやすいからではなく、多くの言語が最初の語順をそのまま受けついでいるから」というものでした。

03英語を話す人に「身ぶりだけ」で説明させると…

この説と一緒によく取り上げられるのが、2008年の心理学の実験です。

シカゴ大学のスーザン・ゴールディン=メドウたちは、英語・トルコ語・スペイン語・中国語を話す大人に、短い動画を見せました。「女の人がつまみを回す」のような場面です。そして、声を出さずに手の身ぶりだけで内容を伝えてもらいました。

英語を話す人がことばで説明するときは、「回す」が「つまみ」より先に来る英語の順でした。それなのに身ぶりになると、日本語と同じ「だれが・何を・どうした」の順に変わったのです。

研究チームは、これを人間が出来事をとらえるときの「自然な順番」ではないかと考えています。論文は、ろう者の多い孤立した村で、この70年ほどの間に自然に生まれた手話(アル=サイード・ベドウィン手話)でも、SOVの語順が現れたことを紹介しています。

声を出さずに身ぶりだけで伝えると、英語を話す人も「だれが・何を・どうした」の順に並べた(ゴールディン=メドウら 2008)
声を出さずに身ぶりだけで伝えると、英語を話す人も「だれが・何を・どうした」の順に並べた(ゴールディン=メドウら 2008)

04どんでん返し:「人類最初の言語はSOV」の確率は、最大25%ほど

では、「人類最初の言語は日本語と同じ語順だった」と言ってよいのでしょうか。ここは慎重に見る必要があります。

まず、「今のすべての言語が1つの祖先から分かれた」という前提そのものに異論があります。2014年に、カリフォルニア大学バークレー校のルーク・モーリッツとトーマス・グリフィスが、ゲルマンらの説を統計の手法で確かめました。2人の論文も、この前提には異論があると書いています。

2人は、7つの大きな語族の家系図を使い、語順がどう変わってきたかを計算しました。結果は次のとおりです。

  • SOV → SVO の変化は、その逆より起こりやすい(ゲルマンらの見方と合う)
  • 7つの語族に共通の祖先がいて、それが約4万8,000年より前なら、その語順はSOVである可能性がいちばん高い
  • ただし、その確率は最大でも25%ほど。言いかえれば、SOV以外だった確率が75%ほど残る

さらに、SVOからSOVに「戻る」変化は、SVOからVSOへの変化の2倍ほど起こりやすいと推定されました。ゲルマンらは「SVOの次はVSOに進むのがふつうで、SOVに戻るのはまわりの影響を受けたときだけ」と考えていたので、この結果はその見方と合いません。

つまり、「今いちばん多い語順はSOV」は数えた事実ですが、「人類最初の言語もSOVだった」は、まだ一つの説にとどまります。

05まとめ

世界の言語を数えると、いちばん多いのは日本語と同じ「主語・目的語・動詞」の語順でした。英語の「主語・動詞・目的語」は2位です。

英語を話す人でさえ、身ぶりだけで伝えるときは「だれが・何を・どうした」の順になる、という実験もあります。人類最初の言語がこの語順だったかどうかはまだ分かりませんが、日本語の語順は、世界でいちばん大きなグループに入っているのです。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerJapanese puts the verb at the end of a sentence, and English puts it right after the subject. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

Japanese puts the verb at the end of a sentence, and English puts it right after the subject. So which pattern is more common? The linguist Matthew Dryer looked at 1,376 languages for a world atlas of language features. He found 564 languages with the Japanese order, subject-object-verb, and 488 with the English order, subject-verb-object. The other four possible orders were much less common.

In 2008, a team led by Susan Goldin-Meadow of the University of Chicago asked speakers of English, Turkish, Spanish and Chinese to describe short videos using only gestures. People in all four groups showed the person first, then the object, and the action last. English speakers who said "The woman twists the knob" acted it out as "woman, knob, twist."

124 words ・ CEFR B1

和訳を見る

日本語は文の最後に動詞を置き、英語は主語のすぐ後に置く。では、どちらの型が多いのだろうか。言語学者のマシュー・ドライヤーは、言語の特徴をまとめた世界地図のために1,376の言語を調べた。日本語型の「主語・目的語・動詞」は564言語、英語型の「主語・動詞・目的語」は488言語だった。ほかの4つの語順はずっと少なかった。

2008年、シカゴ大学のスーザン・ゴールディン=メドウが率いるチームは、英語・トルコ語・スペイン語・中国語を話す人に、身ぶりだけで短い動画を説明してもらった。4つのグループのどれでも、人が最初、次に物、動作が最後だった。ことばでは「The woman twists the knob(女の人がつまみを回す)」と言った英語の話者も、身ぶりでは「女の人・つまみ・回す」の順で演じた。

4択リーディングクイズ

Q1. What did Matthew Dryer find?

Q2. What did the people in the 2008 study use to describe the videos?

Q3. What can we infer about the English speakers in the 2008 study?

重要単語

  • word orderB1
    名詞語順In English, word order tells you who did what. basic word order「基本の語順」。英語は語順で意味が決まるので、Dog bites man と Man bites dog は別の意味になる。
  • subjectA2
    名詞主語;教科In "Ken ate the cake," the subject is "Ken." 「教科」の意味でもよく使う(My favorite subject is math.)。文法では S と略す。
  • objectB1
    名詞目的語;物"The cake" is the object of the verb "ate." 文法では O と略す。動詞の object(反対する)は後ろの -ject を強く読み、名詞は前の ob- を強く読む。
  • verbA2
    名詞動詞Japanese usually puts the verb at the end of the sentence. 文法では V と略す。adverb(副詞)は ad(〜に)+verb で「動詞に添えることば」。
  • gestureB1
    名詞身ぶり、ジェスチャーShe used gestures to tell the story without speaking. make a gesture「身ぶりをする」。「意思表示」の意味もあり、a kind gesture は「親切な心づかい」。
  • ancestorB2
    名詞祖先Latin is the ancestor of French and Spanish. 反対語は descendant(子孫)。動詞 descend from ~「~の子孫である」とセットで覚える。
  • disputedC1
    形容詞異論のある、争われているWho first made the game is still disputed. dispute(議論する、異議を唱える)の過去分詞。a disputed border「係争中の国境」。

動画でもっと知る

世界で一番多い語順は英語型ではなく日本語型。1,376言語を調べた言語地図で「主語・目的語・動詞」は564言語、英語の「主語・動詞・目的語」は488言語。英語を話す人も、身ぶりだけだと日本語の順で伝えた実験がある。

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出典・参考文献(4件)タップで表示
  1. Dryer, M. S. (2013) Order of Subject, Object and Verb, The World Atlas of Language Structures Online, Chapter 81wals.info
  2. Gell-Mann, M. & Ruhlen, M. (2011) The origin and evolution of word order, PNAS 108(42)doi.org
  3. Goldin-Meadow, S., So, W. C., Özyürek, A. & Mylander, C. (2008) The natural order of events: How speakers of different languages represent events nonverbally, PNAS 105(27)doi.org
  4. Maurits, L. & Griffiths, T. L. (2014) Tracing the roots of syntax with Bayesian phylogenetics, PNAS 111(37)doi.org

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