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「アイタッ」「アウチ!」痛いときの言葉は、世界の131言語で「ア」の音が多かった

「アイタッ」「アウチ!」痛いときの言葉は、世界の131言語で「ア」の音が多かった

読む前に予想してみよう!

痛いときに思わず出る言葉は、言語ごとにバラバラで共通点はない

研究カード(どんな研究?)
対象
131言語の辞書にある間投詞と、言葉でない発声の録音
規模
間投詞600以上・母音約500
研究の種類
言語比較(辞書データ)+声の音響分析
確かさ
★★★☆☆
3秒でわかる

131言語の辞書を調べた研究で、痛いときに思わず出る言葉には「ア」に近い母音や「アイ」「アウ」が多かった。「やった!」「うえっ」のような喜びや嫌悪の言葉には、地域をこえた共通点ははっきり見られなかった。

ひとことで言うと痛いときに思わず出る声は、世界中で「ア」の音になりやすいんだって!

もくじ
  1. 131言語の辞書から「思わず出る言葉」を集めた
  2. 喜びと嫌悪の言葉は、英語の中でもバラバラ
  3. 言葉ではない「声」では、3つともはっきり分かれた
  4. 日本語の「あいた」は、「あ」+「いたい」
  5. どんでん返し:「いたっ」は「イ」で始まる
  6. まとめ
  7. よくある質問

テーブルの脚に、足の小指をぶつけた。思わず出る声は「あいたっ!」。

英語を話す人なら Ouch!(アウチ)。日本語は「アイ」、英語は「アウ」。どちらも口を大きく開ける「ア」の音から始まります。

これはたまたまではないかもしれません。2024年に発表された研究で、世界131言語の辞書を調べると、痛いときの言葉には「ア」に近い音が多かったのです。しかも、喜びや「うえっ」という嫌悪の言葉には、こうした共通点ははっきり見られませんでした。

01131言語の辞書から「思わず出る言葉」を集めた

「痛っ」「やった!」「うえっ」のように、気持ちが思わず口から出た短い言葉を「間投詞」(感動詞)といいます。英語では interjection です。

研究したのは、マイア・ポンソネ(Maïa Ponsonnet)さんら5人のチーム。アメリカ音響学会の学術誌『Journal of the Acoustical Society of America』に、2024年11月に論文が載りました。

論文の要旨には、痛みの例として Ayyy! の「アイ」と、Ouch! の「アウ」が挙げられています。「ア」から始まって、口を閉じる方向へすべり落ちる音です。

02喜びと嫌悪の言葉は、英語の中でもバラバラ

喜びや嫌悪の言葉はどうでしょう。英語の例を、オックスフォードの学習辞典(Oxford Learner's Dictionaries)の発音記号で並べてみます。

  • 痛み:ouch /aʊtʃ/、ow /aʊ/ → どちらも「アウ」
  • 喜び:yay /jeɪ/(イェイ)、yippee /jɪˈpiː/(イピー)
  • 嫌悪:yuck /jʌk/(ヤック)、eww /ˈiːuː/(イーウー)

痛みの2語はそろって「アウ」なのに、喜びと嫌悪の言葉は母音がばらばらです。これは英語の中だけを見た例で、研究の分析そのものではありません。それでも、痛みの言葉だけ母音がそろっている点は、論文の結果と重なります。

131言語の辞書を調べると、痛いときの言葉には「ア」に近い母音が多かった(イメージ)
131言語の辞書を調べると、痛いときの言葉には「ア」に近い母音が多かった(イメージ)

03言葉ではない「声」では、3つともはっきり分かれた

研究チームは、言葉ではない「声」も調べています。痛くて上げる悲鳴や、うれしくて出る歓声のようなものです。

こちらでは、3つの気持ちすべてで母音がはっきり分かれました。

  • 痛み:[a] のような、口を大きく開けた母音
  • 嫌悪:口の力を抜いた、あいまいな母音(英語の about の最初の a に近い音)
  • 喜び:[i] のような、舌を前に出す「イ」に近い母音

ところが「言葉」になると話が変わります。声と言葉の両方で、言語をこえて同じ母音の特徴が見られたのは、調べた3つの気持ちのうち「痛み」だけでした。喜びの「イ」っぽさや嫌悪のあいまいな母音は、言葉の中では世界共通の形としては見られませんでした。

研究チームは、これを一部の間投詞で「音と意味が自然に結びついている(類像性)」ことの証拠だとしています。痛いときの叫びの音の特徴が、言葉にも残っているという見方です。

04日本語の「あいた」は、「あ」+「いたい」

では日本語の「あいたっ」「あいたた」は?

小学館の『精選版 日本国語大辞典』によると、「あいた(あ痛)」は、思わず出る声の「あ」と、「いたい」の「いた」の部分がくっついた言葉です。意味は、痛みを感じたときに思わず出る言葉。「あいたた」もこの仲間です。

古い例として、室町時代の終わりから江戸時代の初めごろの狂言『胸突』に、あばら骨を突かれた人物が「あいたあいた」と言う場面が載っています。400年ほど前の人も、痛いときは「あいたあいた」だったわけです。

この研究で日本語の「あいた」が調べられたかどうかは、今回確かめられた範囲(論文の要旨)では分かりません。それでも、「ア」から「イ」へ動く「アイ」という音は、研究が示した痛みの言葉の典型的なパターンにぴったり当てはまります。

05どんでん返し:「いたっ」は「イ」で始まる

ここまで読んで、「でも日本語の『いたっ!』は『イ』で始まるよね?」と思った人もいるはずです。

その通りです。「いたっ」「いたい」は、もともと「痛い」という形容詞から来た言葉です。気持ちが思わず出た声というより、意味のある単語の一部です。研究が見つけたのは「痛みの間投詞には『ア』系の音が多い」という傾向で、どの言語のどの言葉にも当てはまる決まりではありません。

それに、なぜ痛みの言葉だけに叫びと同じ母音の特徴が見られるのかは、まだ答えが出ていません。論文は、進化の上での理由や、音と意味の結びつき(音象徴)など、いくつかの候補を挙げ、これから確かめるべき仮説として示しています。

06まとめ

痛いときに思わず出る言葉は、世界の131言語で「ア」に近い音や「アイ」「アウ」が多い。喜びや嫌悪の言葉には、そうした共通点ははっきり見られない。日本語の「あいた」も英語の Ouch! も、このパターンに当てはまります。

次に足の小指をぶつけたら、自分の口の形を思い出してみてください。大きく開いた「ア」の口は、世界中の人と同じ形かもしれません。

よくある質問

痛いときに出る声は世界共通ですか?

まったく同じではありませんが、似た傾向があります。131言語の辞書を調べた2024年の研究では、痛いときの間投詞に「ア」に近い母音と、「アイ」「アウ」のような音が多く見られました。どの言語のどの言葉にも当てはまる決まりではありません。

なぜ痛いときは「ア」の音になりやすいのですか?

研究チームは、痛いときの叫びの音の特徴が言葉にも残っている、と見ています。ただ、なぜそうなるのかはまだ答えが出ていません。論文は、進化の上での理由や、音と意味の結びつきなどを候補に挙げ、これから確かめるべき仮説として示しています。

この研究はだれが、どこで発表したのですか?

マイア・ポンソネさんら5人のチームが、2024年11月に、アメリカ音響学会の学術誌『Journal of the Acoustical Society of America』に発表しました。131言語の辞書から、痛み・嫌悪・喜びを表す600以上の間投詞を集めて調べています。

喜びや嫌悪の言葉にも世界共通の音はありますか?

はっきりとは見られませんでした。「やった!」のような喜びや「うえっ」のような嫌悪の間投詞には、地域をこえた母音の共通点ははっきりしませんでした。叫び声と言葉の両方で同じ母音の特徴が見られたのは、3つのうち「痛み」だけです。

言葉ではない叫び声では、どんな違いがありましたか?

3つの気持ちで母音がはっきり分かれました。痛みは [a] のような口を大きく開けた母音、嫌悪は口の力を抜いたあいまいな母音、喜びは [i] のような「イ」に近い母音でした。

「あいたっ」はどこから来た言葉ですか?

思わず出る声の「あ」と、「いたい」の「いた」がくっついた言葉です(精選版 日本国語大辞典)。室町時代の終わりから江戸時代の初めごろの狂言『胸突』にも、あばら骨を突かれた人物が「あいたあいた」と言う場面があります。

「いたっ」は「イ」で始まるのに、研究と合わないのでは?

合わないわけではありません。「いたっ」は「痛い」という形容詞から来た言葉で、思わず出た声というより、意味のある単語の一部です。研究が見つけたのは「ア」系の音が多いという傾向で、どの言葉にも当てはまる決まりではありません。

「痛っ!」は英語で何と言いますか?

Ouch! か Ow! です。オックスフォードの辞典によると、ouch は17世紀半ば、ow は19世紀半ばから英語の記録にあります。Ouch! I bit my tongue.(痛っ、舌かんだ)のように使います。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerWhen people get hurt, they often make a short sound before they can think. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

When people get hurt, they often make a short sound before they can think. English speakers say "ouch" or "ow," and Japanese speakers often say "aita." Words like these are called interjections.

A team of researchers collected more than 600 interjections from dictionaries of 131 languages. They looked at words for pain, disgust and joy. Pain words around the world tended to use an "a"-like vowel, or a sound that slides from "a" toward another vowel, like the "aw" in "ouch."

Words for joy and disgust did not follow one pattern. In English, for example, "yay" and "yippee" both show joy, but their vowels are different. The team also studied recordings of people making sounds without words, and only pain kept the same vowel in both.

126 words ・ CEFR B1

和訳を見る

人はけがをすると、考えるより先に短い声を出すことが多い。英語を話す人は「ouch」や「ow」と言い、日本語を話す人はよく「あいた」と言う。こうした言葉は間投詞と呼ばれる。

研究者のチームが、131言語の辞書から600以上の間投詞を集めた。調べたのは、痛み・嫌悪・喜びを表す言葉だ。世界中の痛みの言葉は、「ア」に近い母音や、「ouch」の「アウ」のように「ア」から別の母音へすべる音を使う傾向があった。

喜びと嫌悪の言葉は、1つのパターンに従っていなかった。たとえば英語の「yay」と「yippee」はどちらも喜びを表すが、母音は違う。チームは、人が言葉を使わずに出した声の録音も調べ、両方で同じ母音が保たれていたのは痛みだけだった。

4択リーディングクイズ

Q1. Which three feelings did the researchers study?

Q2. What did pain words around the world tend to have?

Q3. Why does the writer mention "yay" and "yippee"?

重要単語

  • ouchA2
    間投詞痛っ!Ouch! I hit my knee on the desk. 急な痛みに思わず出る言葉。発音は /aʊtʃ/(アウチ)。きつい一言を言われたときに Ouch. と返すこともある。
  • interjectionC1
    名詞間投詞、感動詞"Wow" and "ouch" are both interjections. inter-(間に)+ject(投げる)。文の間に投げ込む言葉、というイメージ。
  • vowelB1
    名詞母音Japanese has five vowels: a, i, u, e and o. 反対は consonant(子音)。英語の母音は日本語より数が多い。
  • disgustB2
    名詞嫌悪、むかつきShe made a face of disgust at the smell. 形容詞は disgusting(むかつくような)と disgusted(うんざりした)。使い分けに注意。
  • joyB1
    名詞喜びThe kids shouted with joy when it started to snow. shout with joy「喜んで叫ぶ」、jump for joy「跳び上がって喜ぶ」はよく使う形。
  • screamB1
    名詞・動詞悲鳴(を上げる)、叫び声We heard a scream from the kitchen. shout は大きな声で言うこと、scream は恐怖や痛みで高い声を上げること。
  • stubC1
    動詞(つま先を)ぶつけるI stubbed my toe on the bed in the dark. stub one's toe で「足の指をぶつける」。ほぼこの形で使う決まった言い方。
  • tendencyB2
    名詞傾向There is a tendency for pain words to use an "a" sound. tend to ~「~しがちだ」の名詞形。研究の英文によく出る。
足の小指をぶつけて「あいたっ!」、英語なら Ouch!。131言語の辞書を調べた2024年の研究では、痛いときの言葉は世界中で「ア」に近い音や「アイ」「アウ」が多かった。「やった!」「うえっ」のような喜びや嫌悪の言葉には、こうした共通点ははっきり見られなかった。

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出典・参考文献(5件)タップで表示
  1. Ponsonnet, Coupé, Pellegrino, Garcia Arasco & Pisanski (2024) Vowel signatures in emotional interjections and nonlinguistic vocalizations expressing pain, disgust, and joy across languages, Journal of the Acoustical Society of America 156(5)doi.org
  2. 精選版 日本国語大辞典「あ痛」(小学館、コトバンク)kotobank.jp
  3. Oxford Advanced Learner's Dictionary "ouch"oxfordlearnersdictionaries.com
  4. Oxford Advanced Learner's Dictionary "ow"oxfordlearnersdictionaries.com
  5. The American Heritage Dictionary of the English Language, 5th ed.(HarperCollins)"ouch"ahdictionary.com

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