「ピーマン」の語源はフランス語 piment。でもフランス語でピーマンは「poivron」

読む前に予想してみよう!
フランス語でピーマンのことは、ふつう poivron と言う
フランスのラルース辞典では、poivron は「緑・黄・赤の大きな実をつける甘い piment」。piment は唐辛子の仲間の植物全体の名前。
- 対象
- 日本の国語辞典・百科事典と、フランス語・英語の辞書
- 規模
- 辞書・事典8種(日本国語大辞典・世界大百科事典・ラルース仏語辞典・Cambridge ほか)
- 研究の種類
- 辞書の語源・意味の比較
- 確かさ
- ★★★★☆
ピーマンはフランス語 piment から。ただし piment は唐辛子の仲間全体の名で、フランス語のピーマンは poivron。英語は bell pepper。
ひとことで言うとピーマンはフランス語から。でもフランスでは「ポワヴロン」と呼ぶ!
もくじ
肉詰めに青椒肉絲(チンジャオロース)、ナポリタン。おなじみの緑のピーマン。
この「ピーマン」という名前は、フランス語の piment(ピマン)から来ています。ここまでは知っている人もいるかもしれません。
では、フランスの八百屋さんで「ピマン!」と言ったら、あの緑のピーマンが出てくるでしょうか。じつは、フランス語でピーマンをはっきり言いたいときは poivron(ポワヴロン)。piment は、辛い唐辛子も含めた「唐辛子の仲間」全体の名前なのです。
01ピーマンの「生まれ」はフランス語
小学館の『デジタル大辞泉』も『日本国語大辞典』(日国)も、ピーマンの語源を「フランス語の piment」としています。平凡社の『世界大百科事典』は、ピーマンの名は「トウガラシを意味するフランス語のピマン piment」から来た、と書いています。
つまり、日本語のピーマンは、もとをたどると「唐辛子」という意味の言葉です。植物としても、ピーマンは唐辛子の仲間。日国は「トウガラシのうち、果実が大きく、辛味の少ない栽培品種」と説明しています。
日国が挙げる、ピーマンが使われたいちばん古い例は、作家・森茉莉の『ボッチチェリの扉』(1961年)。ピーマンをマヨネーズであえた料理が出てきます。
02フランス語の piment と poivron のちがい
フランスの代表的な辞書、ラルース(Larousse)で確かめてみましょう。
- piment:ナス科のいくつかの植物の名前。その実は薬味や野菜として使われる
- poivron:緑・黄・赤の大きな実をつける、甘い piment
piment は「唐辛子の仲間」というグループの名前。その中で、実が大きくて辛くないもの、つまり私たちの知っているピーマンやパプリカが poivron です。
たとえるなら、日本語の「唐辛子」と「ピーマン」の関係に近いかもしれません。「唐辛子をください」と言われて、ピーマンを渡す八百屋さんはあまりいないでしょう。
日本語は、グループ全体の名前(piment)を借りて、その中の一つ(ピーマン)の名前にしたのです。

03poivron も pepper も、もとは「コショウ」
では、poivron という名前はどこから来たのでしょう。ラルースによると、poivron は poivre(ポワーヴル=コショウ)から作られた言葉です。
英語も同じです。英語の pepper は、まず黒コショウのこと。そしてケンブリッジ大学出版局の Cambridge Dictionary によると、野菜の pepper は「ふつう緑・赤・黄色で、丸みがあり、中が空洞で種がある野菜」。sweet pepper とも呼ばれ、アメリカでは bell pepper とも言います。
- I don't like green peppers.(ピーマンが苦手です)
- Could you chop a red bell pepper for the stir-fry?(炒め物用に赤パプリカを切ってくれる?)
フランス語も英語も、ピーマンに「コショウ」の名前をつけたわけです。日本語は、「唐辛子」の名前のほうを借りたことになります。
04ピーマンと pigment(色素)は同じ語源
もう一歩さかのぼります。ラルースによると、piment のもとはラテン語の pigmentum。
American Heritage Dictionary によると、英語の pigment(色素・顔料)も同じラテン語 pigmentum から来ていて、そのもとは pingere(色をぬる、描く)という動詞です。同じ辞典の pimento(ピメント)の項目では、後のラテン語で pigmentum が「野菜の汁、薬味、色素」という意味でも使われていたと説明しています。
ピーマンと pigment(色素)は、同じラテン語から枝分かれした親戚です。食卓のピーマンと、絵の具の「色の素」が、ラテン語でつながっていることになります。
05どんでん返し:piment はまちがいではない
ここまで読むと、「日本語のピーマンは使い方をまちがえた」と思うかもしれません。でも、そうとは言い切れません。
ラルースは poivron を「甘い piment」と説明しています。つまりピーマンも piment の一種。piment の中には甘いもの(piment doux)も含まれます。ピーマンを piment と呼ぶのは、「バラ」を「花」と呼ぶようなもので、まちがいとは言えないのです。
また、日本にどこから来たのかも、辞書によって説明が分かれます。ニッポニカは「明治時代にアメリカから」、ブリタニカ国際大百科事典は「明治期にスペインから」と書いています。世界大百科事典によると、日本では江戸時代から、この仲間で「シシ系」と呼ばれる、昔から日本にある品種が育てられていました。
そして、なぜ「ピマン」ではなく「ピーマン」と伸ばすのか、なぜ英語ではなくフランス語の名前が広まったのかは、今回調べた辞書には書かれていませんでした。
06まとめ
「ピーマン」はフランス語の piment から来た言葉。ただし piment は唐辛子の仲間全体の名前で、フランス語でピーマンをはっきり言うなら poivron、英語なら bell pepper や sweet pepper です。
さらにさかのぼると、piment は英語の pigment と同じ「色をぬる」のラテン語にたどり着きます。おなじみのピーマンですが、名前の中にはフランス語、英語、ラテン語をまたぐ長い歴史が入っています。
よくある質問
ピーマンは何語ですか?
フランス語です。『デジタル大辞泉』も『日本国語大辞典』も、語源をフランス語の piment(ピマン)としています。『世界大百科事典』によると、piment はトウガラシを意味する言葉です。
フランス語でピーマンは何と言いますか?
poivron(ポワヴロン)です。フランスの辞書ラルースでは、piment は唐辛子の仲間全体の名前で、poivron は緑・黄・赤の大きな実をつける「甘い piment」と説明されています。
ピーマンは英語で何と言いますか?
アメリカなら green bell pepper、イギリスなら green pepper が通じやすい言い方です。Cambridge Dictionary によると、野菜の pepper は sweet pepper とも呼ばれ、アメリカでは bell pepper とも言います。
piment と poivron の違いは何ですか?
piment はグループ全体、poivron はその中の一つです。piment は辛い唐辛子も含めた「唐辛子の仲間」の名前で、poivron は実が大きくて辛くないもの、つまりピーマンやパプリカを指します(ラルース)。
ピーマンを piment と呼ぶのはまちがいですか?
まちがいとは言えません。ラルースは poivron を「甘い piment」と説明していて、ピーマンも piment の一種です。piment の中には甘いもの(piment doux)も含まれます。
ピーマンと pigment(色素)は関係がありますか?
同じ語源です。ラルースによると piment のもとはラテン語の pigmentum で、American Heritage Dictionary によると英語の pigment(色素・顔料)も同じ pigmentum から来ています。そのもとは pingere(色をぬる、描く)という動詞です。
ピーマンはいつ日本に入ってきましたか?
明治時代とされます。ただし、ニッポニカは「アメリカから」、ブリタニカ国際大百科事典は「スペインから」と、辞書によって説明が分かれます。『世界大百科事典』によると、需要が急に増えたのは昭和30年代です。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerThe Japanese word "piiman" comes from the French word "piment," which means chili.
音声
4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
In Japan, green peppers are called "piiman." The word comes from French. But in French, "piment" is a name for a whole group of plants, including hot chilies. A sweet green pepper has its own French name, "poivron."
In English, Americans say "bell pepper." In Britain, people often say "pepper" or "sweet pepper." So if you want a green pepper at a market in France, ask for a poivron.
69 words ・ CEFR A2
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日本では、緑のピーマンは「ピーマン」と呼ばれます。この言葉はフランス語から来ています。でもフランス語の「piment」は、辛い唐辛子も含む植物のグループ全体の名前です。甘い緑のピーマンには、フランス語で別の名前「poivron」があります。
英語では、アメリカの人は「bell pepper」と言います。イギリスでは、よく「pepper」や「sweet pepper」と言います。だから、フランスの市場で緑のピーマンがほしいときは、poivron をくださいと言いましょう。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
ピーマンの日本語・フランス語・英語での呼び名を比べているので B。
Q2. What do Americans call a green pepper?
In English, Americans say "bell pepper." とあるので C。
Q3. In the passage, what does "hot" mean in "hot chilies"?
唐辛子について言う hot は「辛い」の意味。甘い(sweet)ピーマンと対比されているので B。
The Japanese word "piiman" comes from the French word "piment," which means chili. According to the Larousse dictionary, "piment" is the name for several plants whose fruit is used as a spice or a vegetable. The large, sweet green, yellow or red kind has a separate name, "poivron," which was formed from "poivre," the French word for black pepper.
English does something similar. The word "pepper" first means the black spice, but it is also used for the vegetable. Americans call it a "bell pepper," while British speakers usually just say "pepper." In Japan, green peppers spread quickly after World War II. The oldest example of "piiman" in one major Japanese dictionary dates from 1961.
115 words ・ CEFR B1
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日本語の「ピーマン」は、唐辛子を意味するフランス語「piment」から来ている。ラルース辞典によると、「piment」は、その実が薬味や野菜として使われるいくつかの植物の名前だ。大きくて甘い緑・黄・赤の種類には、「poivron」という別の名前があり、これはフランス語で黒コショウを表す「poivre」から作られた。
英語も似たことをしている。「pepper」という言葉はまず黒いスパイスを意味するが、その野菜にも使われる。アメリカ人はそれを「bell pepper」と呼び、イギリスの人はたいてい単に「pepper」と言う。日本では、ピーマンは第二次世界大戦後に急速に広まった。日本の主要な辞書の一つにある「ピーマン」の最も古い例は、1961年のものだ。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the main point of the passage?
piment は唐辛子の仲間の植物全体の名前で、ピーマンは poivron という別名を持つと述べているので A。
Q2. Where does the word "poivron" come from?
"poivron," which was formed from "poivre," the French word for black pepper とあるので B。
Q3. What does "English does something similar" suggest?
フランス語の poivron が poivre(黒コショウ)から来たのと同じく、英語の pepper も黒いスパイスの名前を野菜に使っているので C。
Ask for "piment" at a market in France and you might get something much hotter than you expected. The Japanese name for green peppers, "piiman," comes from this French word, but in French it covers a whole group of plants, from fiery chilies to mild ones. The Larousse dictionary defines "poivron," the usual word for a bell pepper, as a sweet piment with large green, yellow or red fruit.
So Japanese did not get the word wrong. It took the name of the group and used it for one member. Both "poivron" and the English "pepper" are tied to black pepper. That makes the Japanese choice the odd one out. The roots go back further.
According to Larousse, "piment" comes from the Latin "pigmentum," and the American Heritage Dictionary traces English "pigment" to the same word, which came from a verb meaning "to paint." Japanese reference books disagree on where the vegetable came from. One says the variety came from the United States in the Meiji era, and another says Spain. None of them explains the long vowel in "piiman."
180 words ・ CEFR B2
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フランスの市場で「piment」をくださいと言うと、思っていたよりずっと辛いものが出てくるかもしれない。日本語のピーマンの名前「ピーマン」はこのフランス語から来ているが、フランス語ではこの語は、激辛の唐辛子から辛くないものまで、植物のグループ全体を指す。ラルース辞典は、ピーマンを表すふつうの言葉「poivron」を、緑・黄・赤の大きな実をつける甘い piment と定義している。
つまり、日本語は言葉をまちがえたわけではない。グループの名前を、その中の一つに使ったのだ。「poivron」も英語の「pepper」も黒コショウと結びついている。そのため、日本語の選び方は少数派ということになる。根っこはさらにさかのぼる。ラルースによると「piment」はラテン語の「pigmentum」から来ており、American Heritage Dictionary は英語の「pigment」を同じ語にさかのぼらせている。
その語は「色をぬる」という意味の動詞から来ている。日本の事典類は、この野菜がどこから来たのかについて意見が分かれる。ある事典は明治時代にアメリカから来た品種だとし、別の事典はスペインからだとしている。「ピーマン」の伸ばす音については、どれも説明していない。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
ピーマンの語源となった piment と poivron、英語の pepper、ラテン語 pigmentum との関係を扱っているので B。
Q2. According to the passage, why did Japanese not "get the word wrong"?
ラルースが poivron を「甘い piment」と定義しているので、ピーマンも piment の一種と言える。B。
Q3. What does the writer mean by "the Japanese choice the odd one out"?
poivron と pepper は黒コショウと結びつくのに、日本語は唐辛子を意味する piment を選んだので、少数派だと言っている。B。
重要単語
- bell pepperB1名詞《米》ピーマン、パプリカCan you cut the green bell pepper into thin strips?
bell は「鐘」。イギリスでは pepper や sweet pepper と言うことが多い(Cambridge Dictionary)。 - chiliB1名詞唐辛子This sauce has a lot of chili in it.
イギリス式のつづりは chilli。chili pepper とも言う。 - pigmentC1名詞色素、顔料The paint gets its color from natural pigments.
ラテン語 pigmentum から。フランス語 piment(ピーマンの語源)と同じ語源。 - spicyA2形容詞辛い、ぴりっとしたGreen peppers aren't spicy at all.
hot も「辛い」の意味で使う。mild は「辛くない、まろやかな」。 - bitterB1形容詞苦いSome kids think green peppers taste bitter.
taste bitter「苦い味がする」。比喩で「つらい」「恨みに思う」の意味もある。 - defineB2動詞定義する、意味を説明するThe dictionary defines a poivron as a sweet piment.
define A as B「AをBと定義する」。名詞は definition。
公式・一次情報をチェック
- poivron(Dictionnaire Larousse)larousse.fr
- pigment(American Heritage Dictionary)ahdictionary.com
- capsicum(Cambridge Dictionary)dictionary.cambridge.org
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「ピーマン」はフランス語 piment から。でも piment は唐辛子の仲間全体の呼び名で、ピーマンは poivron。英語なら bell pepper。piment は英語の pigment(色素)と同じ語源。
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出典・参考文献(5件)タップで表示
- デジタル大辞泉・精選版 日本国語大辞典・日本大百科全書(ニッポニカ)・改訂新版 世界大百科事典・ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典「ピーマン」(コトバンク掲載)kotobank.jp
- Dictionnaire Larousse「piment」larousse.fr
- Dictionnaire Larousse「poivron」larousse.fr
- The American Heritage Dictionary of the English Language「pimento」(語源欄)ahdictionary.com
- Cambridge Dictionary「pepper」dictionary.cambridge.org
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。
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