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「カボチャ」の語源は国名カンボジア。でも本当の原産地はアメリカ大陸だった

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モーション・イメージ

読む前に予想してみよう!

カボチャはカンボジアで生まれた野菜なので「カボチャ」と呼ばれるようになった

研究カード(どんな研究?)
対象
日本の国語辞典・百科事典・方言地図と、英語・ポルトガル語の辞書
規模
辞書・事典7種と『日本言語地図』第180図
研究の種類
辞書の語源の記述と方言地図の比較
確かさ
★★★★☆
3秒でわかる

「カボチャ」はポルトガル語で伝わった国名カンボジアから。カンボジア原産と思われたための名で、本当はアメリカ大陸生まれ。西日本の「ぼうぶら」はポルトガル語。

ひとことで言うとカボチャの名前は国の「カンボジア」から。でも生まれはアメリカ大陸!

もくじ
  1. 江戸時代、「カボチャ」は国の名前でもあった
  2. 名前はカンボジア、生まれはアメリカ、運んだのはポルトガル船
  3. 西日本の「ぼうぶら」はポルトガル語、関西の「なんきん」は中国の都市
  4. 英語では pumpkin? squash? それとも kabocha?
  5. どんでん返し:いつ、どこから来たのかは辞書でも食いちがう
  6. まとめ
  7. よくある質問

煮物に天ぷら、ハロウィンのランタン。秋になると出番が増えるカボチャ。

この「カボチャ」という名前は、じつは国の名前です。東南アジアのカンボジア。辞書によると、ポルトガル語で伝わった国名「カンボジア」がなまって、「カボチャ」になりました。

ところが、カボチャはカンボジア生まれではありません。原産地は海のはるか向こうのアメリカ大陸です。辞書は、はじめはカンボジア原産だと思われていたので、この名前が付いたと説明しています。

01江戸時代、「カボチャ」は国の名前でもあった

小学館の『日本国語大辞典』(日国)で「カボチャ」を引くと、語源は「ポルトガル語の Cambodia から」。そして意味の1つ目は、野菜ではなくカンボジア王国そのものです。

この意味の例として挙がっているのは、1694年の浮世草子(江戸時代の小説)『好色万金丹』。「丸山のうわさ話」「南京の小唄」「オランダ人が銭を数えるまね」などと並んで、「漢浦塞(カボチャ)のおどり」が出てきます。南京やオランダと同じように、「カボチャ」は遠い外国の名前として使われていたのです。

野菜の意味は、その次に出てきます。日国によると、カボチャはアメリカ大陸原産のウリ科の植物で、「はじめカンボジア原産と考えられていたので、この名があるという」。デジタル大辞泉も、熱帯アメリカ原産で、日本にはポルトガル船で伝わり、カンボジア原産と考えられたところからの名だ、と書いています。

02名前はカンボジア、生まれはアメリカ、運んだのはポルトガル船

ここで整理してみましょう。

  • 名前:カンボジア(東南アジア)
  • 生まれ:アメリカ大陸の熱帯
  • 運んだ船:ポルトガル船(ただし、ほかの説もあります。後で説明します)

ニッポニカは、江戸時代後期の農業の本『艸木六部耕種法(そうもくろくぶこうしゅほう)』(1832年)の記述を紹介しています。それによると、カボチャはもともと東インドのカンボジアという国で生まれたので「かんぽちゃ」とも呼ぶ。日本に来たのは天文年間(1532〜1555年)で、西洋人が船で豊後にやって来て、大名の大友氏に種を差し出した、というのです。

江戸時代の人は、本気で「カンボジアの野菜」だと考えていたことが分かります。その思い込みが、いまも名前の中に残っているわけです。

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呼び名は地方でちがい、もとをたどると「カンボジア」「南京」「唐」「ポルトガル語」と、どれも外国につながる

03西日本の「ぼうぶら」はポルトガル語、関西の「なんきん」は中国の都市

カボチャには、地方によってちがう呼び名があります。

デジタル大辞泉によると、「ぼうぶら」はポルトガル語の abóbora からで、西日本で使う言葉です。ポルトガル語の辞書 Priberam を引くと、abóbora は「aboboreira(カボチャの株)の実」と説明されています。いまもポルトガル語でカボチャを指す単語です。

国立国語研究所が1966〜1974年に刊行した『日本言語地図』には、「かぼちゃ」を全国でどう呼ぶかを調べた地図(第180図)があります。その解説によると、

  • いちばん広く分布するのは「カボチャ」の仲間。ただし、西日本ではそれ以外の呼び名も強い
  • 「ボブラ(ぼうぶら)」の仲間は、北陸・中国・四国・九州など主に西日本。東日本でも秋田に集中して見られる
  • 「ナンキン」の仲間は、近畿を中心に、北陸・中国・四国・九州東部に広がる。奄美群島の沖永良部島から南の島々にも、まとまった分布がある
  • 「トオナス(とうなす)」の仲間は、青森の津軽地方、関東から伊豆諸島、岡山を中心とした地域の三つにまとまる

ニッポニカは、ナンキン(南京)、トウナス(唐茄子)、カボチャ(カンボジア)はどれも地名から来た名前だと説明しています。トウナスは「唐(中国)から来たナス」という意味です。

つまり、カンボジア、中国の南京、唐、そしてポルトガル語。カボチャの呼び名は、どれも「外国から来た野菜」であることを表しているのです。

ただし、この地図は半世紀以上前に刊行されたものです。いまの若い人の使い方とは、ちがっているかもしれません。

04英語では pumpkin? squash? それとも kabocha?

英語ではどうでしょう。

アメリカの辞書 American Heritage Dictionary によると、pumpkin は古いフランス語などを経て、ラテン語の「スイカ、ウリ」にさかのぼり、そのもとはギリシャ語の「熟した」「大きなメロン」という言葉です。一方、カボチャ類をまとめて言う squash は、北米の先住民ナラガンセット族の言葉 askútasquash がもとになっています。

そして英語には、日本語から入った kabocha もあります。ケンブリッジ大学出版局の Cambridge Dictionary は、kabocha を「濃い緑色の日本のカボチャ。pumpkin に似ている」と説明し、アメリカでは kabocha squash とも言うと書いています。

  • We had kabocha tempura for dinner.(夕飯にカボチャの天ぷらを食べた)
  • I roasted some kabocha squash with olive oil.(カボチャをオリーブオイルで焼いた)

カンボジアの国名が日本で野菜の名前になり、その名前が今度は英語に kabocha として入った。東南アジアの国の名前が、日本を経由して英語にまで広がったことになります。

05どんでん返し:いつ、どこから来たのかは辞書でも食いちがう

ここまで「ポルトガル船が運んだ」と書いてきましたが、話はそれほど単純ではありません。

世界大百科事典は16世紀にポルトガル船が豊後に伝えたとし、ニッポニカも16世紀中ごろにポルトガル船がもたらしたとしています。1832年の農業の本は天文年間(1532〜1555年)だと書いています。ところが日国は、ニッポンカボチャは天正年間(1573〜1592年)に中国を経て九州に来た、と説明しています。年代も、通ってきた道も、辞書によって説明が分かれているのです。

そして「カンボジア原産と考えられていたから」という理由も、日国・大辞泉はどちらも「〜という」と、言い伝えの形で書いています。なぜカンボジアだと思われたのかまでは、今回調べた辞書には書かれていませんでした。「ぼうぶら」がポルトガル語から来たという説明も、世界大百科事典は「といわれている」と書いています。

06まとめ

「カボチャ」は、カンボジアという国の名前がなまった言葉でした。ただし、カボチャ自身はアメリカ大陸の生まれ。「カンボジアの野菜」という昔の人の思い込みが、名前の中に残っています。

西日本の「ぼうぶら」はポルトガル語、関西の「なんきん」は中国の都市。そして英語には kabocha として入りました。台所にあるカボチャひとつに、世界をぐるりと回った名前の旅がつまっています。

よくある質問

カボチャの語源は何ですか?

東南アジアの国名「カンボジア」です。『日本国語大辞典』は、カボチャの語源を「ポルトガル語 Cambodia から」としています。ポルトガル語で伝わった国名がなまって「カボチャ」になりました。

なぜカボチャは「カンボジア」から名づけられたのですか?

はじめはカンボジア原産だと考えられていたから、とされています。ただし『日本国語大辞典』『デジタル大辞泉』はどちらも「〜という」と言い伝えの形で書いていて、なぜカンボジアだと思われたのかまでは、今回調べた辞書には書かれていません。

カボチャの原産地はどこですか?

アメリカ大陸です。『改訂新版 世界大百科事典』によると、日本にいちばん古く来たニホンカボチャの原産地は、中央アメリカから南アメリカ北部の熱帯地方。ペルーの遺跡では、紀元前4000〜前3000年の地層からニホンカボチャが見つかっています(日本大百科全書)。

カボチャはいつ日本に伝わったのですか?

16世紀ですが、年代や通ってきた道は辞典によって分かれます。世界大百科事典は16世紀にポルトガル船が豊後国(いまの大分県)に伝えたとし、『日本国語大辞典』は天正年間(1573〜1592年)に中国を経て九州に来たとしています。

「ぼうぶら」とはどういう意味ですか?

カボチャを指す西日本の言葉で、ポルトガル語の abóbora から来ています(デジタル大辞泉)。abóbora はいまもポルトガル語でカボチャを指す単語です。ただし世界大百科事典は、ポルトガル語から来たという説明を「といわれている」と書いています。

カボチャを「なんきん」「とうなす」と呼ぶのはなぜですか?

どちらも地名から来た名前です(日本大百科全書)。ナンキンは中国の都市の南京、トウナスは「唐(中国)から来たナス」という意味です。国立国語研究所の『日本言語地図』では、ナンキンの仲間は近畿を中心に広がっています。

カボチャは英語で何と言いますか?

日本の緑の皮のカボチャなら kabocha が伝わりやすいです。Cambridge Dictionary は「濃い緑色の日本のカボチャ」と説明し、アメリカでは kabocha squash とも言うとしています。同じ項目は pumpkin を、ハロウィンの飾りに使うオレンジ色のカボチャとしています。

pumpkin と squash の語源は何ですか?

American Heritage Dictionary によると、pumpkin はラテン語の「スイカ、ウリ」にさかのぼり、もとはギリシャ語の「熟した」「大きなメロン」という言葉です。squash は北米の先住民ナラガンセット族の言葉 askútasquash がもとです。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerThe Japanese word "kabocha" began as the name of a country. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

The Japanese word "kabocha" began as the name of a country. According to Japanese dictionaries, it comes from "Cambodia," a name that reached Japan through Portuguese. People once believed the vegetable had come from Cambodia, so the name stuck.

But the plant is really native to the tropical Americas, and remains of it found in Peru are more than 5,000 years old. The vegetable also has other names in Japan.

A dialect atlas from the National Institute for Japanese Language and Linguistics shows "boubura," from the Portuguese "abóbora," mainly in western Japan. It shows "nankin," named after the Chinese city of Nanjing, centered on the Kansai area. The word has even entered English. Cambridge Dictionary lists "kabocha" as a dark green Japanese squash.

123 words ・ CEFR B1

和訳を見る

日本語の「カボチャ」という言葉は、ある国の名前として始まった。日本の辞書によると、それはポルトガル語を通じて日本に伝わった「カンボジア」という名前から来ている。人々はかつてこの野菜がカンボジアから来たと信じていたので、その名前が定着した。

実際には、この植物は熱帯アメリカの原産で、ペルーで見つかったものは5,000年以上前のものだ。この野菜には日本でほかの呼び名もある。

国立国語研究所の方言地図は、ポルトガル語の「abóbora」から来た「ぼうぶら」が主に西日本に分布していることを示している。また、中国の都市・南京にちなんだ「なんきん」が、近畿地方を中心に分布していることも示している。この言葉は英語にまで入った。Cambridge Dictionary は「kabocha」を、濃い緑色の日本のカボチャとして載せている。

4択リーディングクイズ

Q1. What is the main point of the passage?

Q2. Where is the name "nankin" mostly used, according to the atlas?

Q3. What can we guess from "so the name stuck"?

重要単語

  • squashB1
    名詞カボチャ類Squash tastes sweet when you roast it. 北米先住民ナラガンセット族の言葉 askútasquash がもと。動詞の squash(押しつぶす)とは語源が別。
  • pumpkinA2
    名詞(主にオレンジ色の)カボチャWe carved a face into a pumpkin for Halloween. さかのぼるとギリシャ語の「熟した」「大きなメロン」。日本の緑のカボチャは kabocha と言うほうが伝わりやすい。
  • nativeB1
    形容詞(動植物が)原産のPotatoes and squash are native to the Americas. be native to ~「~原産だ」。native speaker(母語話者)の native と同じ語。
  • originB1
    名詞起源、生まれ、語源Nobody in my class knew the origin of the word. 形容詞は original、動詞は originate(originate in ~「~で生まれる」)。
  • dialectB2
    名詞方言My grandmother uses a different word in her dialect. dialect atlas は「方言地図」。accent(なまり・発音のくせ)より広く、語彙や文法も含む。
  • varietyB1
    名詞(植物などの)品種、種類This variety of squash has dark green skin. a variety of ~「さまざまな~」もよく出る。形容詞は various。
「カボチャ」の語源は国名カンボジア。カンボジア原産と思われていたからだが、本当の原産はアメリカ大陸。西日本の「ぼうぶら」はポルトガル語 abóbora から、関西の「なんきん」は中国の南京から。呼び名がどれも“外国”。

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出典・参考文献(5件)タップで表示
  1. 精選版 日本国語大辞典・改訂新版 世界大百科事典・日本大百科全書(ニッポニカ)「カボチャ」(小学館・平凡社、コトバンク掲載)kotobank.jp
  2. デジタル大辞泉「南瓜(カボチャ)」「ぼうぶら」(小学館、コトバンク掲載)kotobank.jp
  3. 国立国語研究所『日本言語地図解説―各図の説明4―』(日本言語地図 第4集 別冊)「180. かぼちゃ(南瓜)」pp.55–56mmsrv.ninjal.ac.jp
  4. The American Heritage Dictionary of the English Language「pumpkin」(語源欄)ahdictionary.com
  5. Cambridge Dictionary「kabocha」dictionary.cambridge.org

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