ポッキーはヨーロッパでは「MIKADO」。棒抜きゲームの名前で、もとは日本語の「みかど」

読む前に予想してみよう!
ヨーロッパでポッキーが「MIKADO」と名づけられたのは、天皇を表す言葉で日本らしさを出すためだった
グリコの100年史によると、MIKADOはヨーロッパで人気の、細い棒を崩さずに抜き取るゲームの名前。その棒がポッキーに似ていたことから名づけた。
- 対象
- 企業の公式社史・仏英の辞書・国語辞典
- 規模
- 1982年以降の販売の記録と辞書4種
- 研究の種類
- 社史と辞書の記述の照合
- 確かさ
- ★★★☆☆
グリコのポッキーは、ヨーロッパでは1982年から「MIKADO」の名前で売られている。由来は細い棒を崩さずに抜くゲームの名前。そのmikadoは、日本語の「みかど」から来た語だ。
ひとことで言うとポッキーは、ヨーロッパでは「ミカド」という名前なんだって!
もくじ
ヨーロッパのお菓子売り場で「ポッキー」を探しても、その名前では見つからないかもしれません。
グリコの社史によると、ヨーロッパでのポッキーの商品名は「MIKADO(ミカド)」。
日本語の「みかど」は、天皇を指す古い言葉です。日本のお菓子が、日本語から来た別の名前で売られているのです。ただし、グリコが挙げる名づけの理由は「日本らしさ」ではありません。ヨーロッパで人気の、棒を抜き取るゲームの名前から取ったのです。
01ポッキーがヨーロッパで「MIKADO」になったわけ
つまり、ポッキーは「ゲームの棒に似ているから」MIKADOになりました。グリコの説明には、天皇の意味から名づけたとは書かれていません。
100年史によると、MIKADOは1982年にヨーロッパ最大級の食品見本市で賞を受け、売れ行きを伸ばしました。1990年をピークに売り上げが落ちると、1995年にチョコレートを約40%増やすリニューアルをしています。その後もミルク味(2003年)、ヘーゼルナッツ味(2006年)などを出し、100年史の時点でヨーロッパ12か国で売られていると書かれています。
02「mikado」は、どんなゲーム?
フランス語の代表的な辞書『Larousse(ラルース)』で mikado を引くと、こう書かれています。
- 男性名詞。(mot japonais)=日本語から来た語
- 意味①:日本の皇居
- 意味②:日本の天皇
- 意味③:jonchets(ジョンシェ)の現代版
3つ目が、ゲームの意味です。同じ辞書によると、jonchet は、テーブルの上に投げ出した細い棒の1本1本のこと。まわりの棒を少しも動かさずに、かぎ形の道具で1本ずつ取っていく遊びに使う棒です。
フランス語の辞書の一つの見出しの中に、「皇居」「天皇」「棒抜きゲーム」が並んでいるわけです。

03もとは「門」だった「みかど」
では、日本語の「みかど」はもともと何を指していたのでしょう。
小学館の『日本国語大辞典』によると、「みかど」の「み」は、頭につけてうやまう気持ちを表す言葉で、1番目に挙げる意味は門をうやまって言う言葉です。『万葉集』にも「大き御門(みかど)」という形で出てきます。そのあとに、御殿、天皇の住まい(朝廷)、天皇の位、天皇その人、という意味が順に並んでいます。『デジタル大辞泉』も、「門」をうやまう言い方として説明しています。
アメリカの辞書『American Heritage Dictionary』の mikado の項目も同じ説明です。意味は An emperor of Japan(日本の天皇)で、語源は日本語の mi-(うやまう気持ちを表す、頭につける言葉)+ kado(門)とあります。
ここまでをまとめると、こうなります。
門 → 天皇の住まい → 天皇 → ヨーロッパの棒抜きゲーム → ポッキーのヨーロッパ名
ポッキーの名前をさかのぼると、日本語の「門」にたどりつくのです。
04英語では pick-up sticks や jackstraws
英語で棒抜きゲームを何と呼ぶかも見てみましょう。『American Heritage Dictionary』には、次の言い方が載っています。
- jackstraws:積んだわらや細い棒の山から、ほかの棒を動かさずに1本ずつ抜く遊び
- pick-up sticks:jackstraws と同じ遊び
- spillikins:同じく jackstraws のこと
一方、この辞書の mikado の項目に載っている意味は「日本の天皇」だけで、ゲームの意味はありません。フランス語の辞書にはゲームの意味が載り、このアメリカの辞書には載っていない。同じ mikado でも、辞書によって載っている意味が違うのです。
英語の作品では、1885年にロンドンで初演された、ギルバートとサリバンのオペレッタ(歌と芝居で見せる軽い喜劇)『ミカド(The Mikado)』があります。『デジタル大辞泉』は、当時ヨーロッパで流行していた日本趣味(ジャポニスム)に触発された作品だと説明しています。
- Let's play pick-up sticks!(棒抜きゲームをしよう!)
- You moved another stick, so it's my turn.(ほかの棒が動いたから、わたしの番ね)
- In Europe, Pocky is sold as Mikado.(ヨーロッパでは、ポッキーはミカドという名前で売られています)
05どんでん返し:ゲームが「みかど」になった理由は分からない
ここまでで、まだ説明できていないことがあります。なぜヨーロッパの棒抜きゲームが「天皇」を意味する mikado と呼ばれるようになったのかです。
グリコの100年史は、ポッキーをゲームの名前から名づけたとしか書いていません。ラルースも「jonchets の現代版」とするだけで、なぜ mikado なのかは書いていません。アメリカの辞書には、そもそもゲームの意味が載っていません。今回調べた資料では、この点は確かめられませんでした。
「天皇の名前でお菓子を売っている」と言うと、話が強くなりすぎます。グリコの説明にそって言えば、ゲームの名前を借りたら、そのゲームの名前がたまたま日本語から来ていた、というのが正確なところです。また、今のヨーロッパでの製造や販売の体制は、この記事では確かめていません。
06まとめ
ポッキーは、ヨーロッパでは「MIKADO」。グリコによると、細い棒を崩さずに抜き取るゲームの棒に似ていたからです。そしてそのゲームの名前 mikado は、フランス語の辞書で「日本語から来た語」。もとをたどれば「門」をうやまう言葉でした。
日本で生まれたお菓子が、ヨーロッパのゲームの名前をもらい、その名前をたどると日本語に行き着く。ポッキーは、ヨーロッパで、日本語から来た名前をもらっていたのです。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerIf you look for Pocky in Europe, you may need a different name.
音声
4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
Pocky is a popular Japanese snack. It is a thin stick with chocolate on it. In Europe, Pocky has a different name. It is called "Mikado." Mikado is also the name of a game.
In the game, players take thin sticks from a pile one by one. They must not move the other sticks. The company chose the name because the game sticks look like Pocky.
66 words ・ CEFR A2
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ポッキーは人気のある日本のお菓子です。チョコレートのついた細い棒です。ヨーロッパでは、ポッキーは別の名前を持っています。「ミカド」と呼ばれているのです。ミカドはゲームの名前でもあります。
そのゲームでは、プレーヤーは山になった細い棒を1本ずつ取ります。ほかの棒を動かしてはいけません。会社がこの名前を選んだのは、ゲームの棒がポッキーに似ているからです。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
ヨーロッパでのポッキーの名前「ミカド」と、その名前の理由を説明しているので B。
Q2. In the game, what must players NOT do?
They must not move the other sticks とあるので C。
Q3. In the passage, what does "pile" mean in "from a pile"?
pile は「積み重なった山」。細い棒が重なっている山から取るので B。
If you look for Pocky in Europe, you may need a different name. According to Glico's official history, the company set up a joint venture with a large French biscuit maker in 1982. They began making Pocky at a factory near Bordeaux and named it "Mikado."
Sales started in Belgium and then spread to France, the Netherlands, Italy and Spain. The name comes from a game that is well known in Europe. Players pile up thin sticks and try to pull them out one at a time without making the pile move.
Glico says the sticks looked like Pocky. The word itself comes from Japanese. A French dictionary lists "mikado" as a word from Japanese that can mean the emperor of Japan.
122 words ・ CEFR B1
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ヨーロッパでポッキーを探すなら、別の名前が必要かもしれない。グリコの公式社史によると、同社は1982年にフランスの大手ビスケット会社と合弁会社をつくった。ボルドー近くの工場でポッキーを作り始め、「ミカド」と名づけた。
販売はベルギーで始まり、フランス、オランダ、イタリア、スペインへと広がった。この名前は、ヨーロッパでよく知られたゲームから来ている。プレーヤーは細い棒を積み上げ、山を動かさないように1本ずつ抜き取ろうとする。
グリコによると、その棒がポッキーに似ていたという。この言葉自体は日本語から来ている。フランス語の辞書は「mikado」を、日本語から来た語として載せ、その意味の一つに日本の天皇を挙げている。
4択リーディングクイズ
Q1. Where was Pocky first sold under the name "Mikado"?
Sales started in Belgium とあるので B。工場はフランスのボルドー近く。
Q2. Why did Glico choose the name "Mikado"?
Glico says the sticks looked like Pocky とあり、ゲームの棒に似ていたからなので B。
Q3. What does the last part of the passage suggest?
The word itself comes from Japanese. 以下で、ゲームの名前でもある mikado が日本語から来た語だと述べているので A。
In Europe, Glico's chocolate-coated biscuit sticks are sold as Mikado, not Pocky. Glico's official history explains how that happened. During a joint venture in Japan that later failed, a large French biscuit maker became interested in Pocky, and in 1982 the two firms set up a company in France and began production near Bordeaux.
The snack was named after a game that is popular in Europe, in which thin sticks are piled up and removed one at a time without disturbing the rest. The game sticks resembled Pocky. The French dictionary Larousse marks "mikado" as a word of Japanese origin and gives three senses in this order: the imperial palace, the emperor of Japan, and a modern version of a pick-up sticks game.
In Japanese, "mikado" first meant a respectful word for a gate, then came to mean the palace and finally the emperor. An American dictionary traces it to "mi," an honorific prefix, and "kado," gate. What none of these sources explain is why a European stick game came to carry the name. So the safest summary is that Glico borrowed a game's name, and the game's name happened to come from Japanese.
194 words ・ CEFR B2
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ヨーロッパでは、グリコのチョコがけビスケットの棒は、ポッキーではなくミカドとして売られている。グリコの公式社史が、その経緯を説明している。のちに失敗に終わる日本での合弁事業の間に、フランスの大手ビスケット会社がポッキーに関心を持ち、1982年に両社はフランスに会社をつくって、ボルドー近くで生産を始めた。
この菓子は、ヨーロッパで人気のゲームにちなんで名づけられた。そのゲームでは、細い棒を積み上げ、ほかの棒を動かさずに1本ずつ取り除いていく。ゲームの棒がポッキーに似ていたのだ。フランス語の辞書ラルースは「mikado」を日本語由来の語とし、皇居、日本の天皇、棒抜きゲームの現代版、という3つの意味をこの順で挙げている。
日本語の「みかど」は、まず門をうやまう言葉で、それから御所、そして最後に天皇を意味するようになった。アメリカの辞書は、この語を敬意を表す接頭語「み」と「かど(門)」にさかのぼるとしている。これらの資料のどれも説明していないのは、なぜヨーロッパの棒のゲームがこの名前を持つようになったのかだ。だから最も確かなまとめ方は、グリコがゲームの名前を借り、そのゲームの名前がたまたま日本語から来ていた、ということになる。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the main idea of the passage?
ゲームの名前から名づけ、そのゲーム名が日本語から来ていたと述べているので B。
Q2. According to Larousse, which sense of "mikado" comes third?
the imperial palace, the emperor of Japan, and a modern version of a pick-up sticks game の順なので、3番目は D。
Q3. Why does the writer call the last sentence "the safest summary"?
What none of these sources explain is why a European stick game came to carry the name とあり、それ以上強くは言えないので C。
重要単語
- pileB1名詞積み重ねた山Pull one stick from the pile without moving the others.
動詞で pile up「積み上げる」。a pile of books「本の山」。 - borrowA2動詞借りる;(言葉を)取り入れるFrench borrowed the word "mikado" from Japanese.
borrow A from B「BからAを借りる」。外来語は loanword、または borrowing とも言う。 - joint ventureC1名詞合弁事業、合弁会社Glico started a joint venture with a French company.
joint(共同の)+venture(冒険的な事業)。ビジネス英語・経済ニュースの頻出語。 - resembleB2動詞〜に似ているThe game sticks resemble Pocky.
他動詞なので resemble with とは言わない。進行形にもしない。入試の語法問題で頻出。 - emperorB1名詞皇帝、天皇In English, "mikado" can mean the emperor of Japan.
empire(帝国)と同じ語源。女性形は empress。 - honorificC1形容詞敬意を表す、敬語のIn Japanese, "mi-" is an honorific prefix.
honor(敬意)の仲間。日本語の敬語は honorifics と訳されることが多い。 - originB1名詞起源、由来Larousse says the word is of Japanese origin.
of Japanese origin「日本語由来の」。形容詞は original。
公式・一次情報をチェック
- jackstraw(The American Heritage Dictionary of the English Language)ahdictionary.com
- ミカド[オペレッタ](デジタル大辞泉・日本大百科全書、コトバンク掲載)kotobank.jp
4コマでわかる

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ポッキーはヨーロッパでは「MIKADO」という名前。グリコによると、細い棒を崩さずに抜き取るゲームの名前で、棒がポッキーに似ていたから。そしてそのmikadoは、フランス語の辞書で「日本語から来た語」。
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出典・参考文献(5件)タップで表示
- 江崎グリコ『Glicoグループ100年史』各種ガイド版「海外事業の歩み(ヨーロッパ)」glico.com
- Larousse, Dictionnaire de français「mikado」larousse.fr
- Larousse, Dictionnaire de français「jonchet」larousse.fr
- The American Heritage Dictionary of the English Language (5th ed.)「mikado」ahdictionary.com
- デジタル大辞泉・精選版 日本国語大辞典「御門(みかど)」(小学館、コトバンク掲載)kotobank.jp
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。
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