「サボる」はフランス語 sabotage から。さかのぼると“木靴”sabot に行き着く

読む前に予想してみよう!
英語で「授業をサボる」は sabotage the class と言う
英語の sabotage は「わざと壊す・妨害する」という意味。授業をサボるは skip class(主にアメリカ英語)などと言う。
- 対象
- 国語辞典・百科事典・英語の辞書の記述
- 規模
- 国語辞典2種・百科事典2種・英語の辞書3種
- 研究の種類
- 辞書の記述の比較
- 確かさ
- ★★★★☆
「サボる」は、フランス語 sabotage(サボタージュ)を略した「サボ」に「る」をつけた動詞。sabotage はさらに sabot(木靴)にさかのぼる。英語の sabotage に「怠ける」の意味はない。
ひとことで言うと「サボる」はフランス語。もとをたどると「木靴」だった!
もくじ
「今日の部活、サボっちゃおうかな」
学校でも会社でも、毎日のように聞く「サボる」。ふつうの日本語の動詞に見えますが、じつはフランス語から来ています。
もとは「サボタージュ(sabotage)」。さらにさかのぼると、たどり着くのは sabot(サボ)=木靴です。
01「サボる」は「サボ」+「る」
小学館の『デジタル大辞泉』は、「サボる」をこう説明しています。
- 「サボタージュ」を略した「サボ」を、動詞にしたもの
- 意味は「怠ける。怠けて休む」
つまり、外国語の「サボタージュ」を「サボ」と短くし、そこに日本語の「る」をつけて「サボる」。「サボらない」「サボった」「サボれる」と、ふつうの日本語の動詞と同じように形を変えられます。
『日本国語大辞典』が挙げるいちばん古い例は、大杉栄の『日本脱出記』(1923年)です。ストライキそのものをサボる労働者や労働団体があることに少々驚かされた、という一節です。辞典が挙げるいちばん古い「サボる」は、ストライキをサボる話だったのです。
1920年前後の日本では、「サボタージュ」は労働者と雇い主の争い(労働争議)の言葉としても、「怠ける」という意味でも使われていました。そこから「サボる」が生まれたわけです。
02sabotage の元は sabot(木靴)
では、フランス語の sabotage はどこから来たのでしょう。アメリカの『American Heritage Dictionary』は、こう説明しています。
- sabotage はフランス語。動詞 saboter から
- saboter の意味は「音を立てて歩く」「へまをする」「サボタージュする」
- saboter は名詞 sabot から
そして sabot を引くと、「一つの木材を彫ってつくった靴。ヨーロッパの一部で昔からはかれてきたもの」とあります。つまり木靴です。
辞書の説明を順に並べると、木靴(sabot)→ 木靴で音を立てて歩く・へまをする(saboter)→ サボタージュ(sabotage)。それが日本に来て「サボる」になりました。
イギリスの『オックスフォード英語辞典(OED)』も、フランス語の saboter を「木靴で音を立てる」「下手にやる」「(道具や機械を)わざと壊す」と説明しています。OED が載せている英語の sabotage のいちばん古い例は、1910年のものです。

03木靴はスペイン語の「靴」とも親戚
『American Heritage Dictionary』によると、sabot はもっと遠くまでたどれます。
- 古いフランス語の chavate / savate(古いスリッパ)から
- スペイン語の zapato(靴)、ロシア語の čobot(短いブーツ)と同じ仲間
- 大もとはトルコ系の言葉らしい(ただし、その先はイラン系の言葉とする説と、トルコ語の別の語とする説がある)
「サボる」をたどっていくと、スペイン語の zapato(靴)やロシア語の čobot(短いブーツ)と同じ仲間の言葉に行き着くのです。
04英語の sabotage は「怠ける」ではない
ここで気をつけたいのが英語です。英語にも sabotage という単語がありますが、意味は日本語の「サボる」とまったくちがいます。
Oxford Learner's Dictionaries によると、英語の sabotage は「敵に使わせないため、または抗議のために、機械や交通手段などをわざと壊すこと」。もう一つは「物事がうまくいかないようにじゃまをすること」です。
The police think the power cut was sabotage. と言えば「警察は停電を破壊工作だと見ている」という、かなり物騒な話になります。
05どんでん返し:「木靴でなにをしたか」は事典ごとにちがう
sabotage が sabot(木靴)から来たことは、今回調べた辞書・事典のうち語源にふれたものすべてが一致しています。ところが、木靴でなにをしたからサボタージュなのかは、資料によって説明がばらばらです。
- 『日本国語大辞典』:中世ヨーロッパの農民が、領主の横暴に対して木靴で収穫物を踏みにじったのが元の意味
- 『世界大百科事典』:同じ「収穫物を踏みにじった」話を紹介しつつ、「ただし異説もある」と書く
- 『日本大百科全書(ニッポニカ)』:語源は「諸説ある」としたうえで、代表的な説として、労働争議のときに木靴を機械に投げ込んで生産を止めた、または木靴をはいてカタカタ鳴らし仕事の能率を落とした、という話を紹介
- 『American Heritage Dictionary』と OED:木靴で何をしたかの話は書かず、動詞 saboter(音を立てて歩く・へまをする)から説明する
『日本国語大辞典』は言い切っていますが、ほかの事典は「異説もある」「諸説ある」と書いています。どの話が本当なのかは、今回調べた資料では確かめられませんでした。英語の辞書は、もっと地味な「音を立てて歩く」「へまをする」という動詞の意味から説明しています。
06まとめ
「サボる」は、フランス語 sabotage を「サボ」と縮め、日本語の「る」をつけた言葉。その sabotage は sabot(木靴)にさかのぼり、さらにスペイン語の zapato(靴)とも親戚です。
ただし英語の sabotage は「わざと壊す・妨害する」。英語で「授業をサボる」と言いたいときは、skip class を使いましょう。
よくある質問
「サボる」は何語ですか?
もとはフランス語です。『デジタル大辞泉』によると、フランス語 sabotage(サボタージュ)を略した「サボ」に、日本語の「る」をつけて動詞にした言葉です。「サボらない」「サボった」と、ふつうの日本語の動詞と同じように形を変えられます。
「サボタージュ」とはどういう意味ですか?
『デジタル大辞泉』では2つの意味があります。①労働者が団結して仕事の能率を落とし、使う側に損害を与えて争いの解決を迫ること(怠業)、②怠けること。「サボる」はここから生まれました。
sabotage の語源は何ですか?
フランス語の sabot(木靴)にさかのぼります。American Heritage Dictionary によると、sabotage は動詞 saboter(音を立てて歩く、へまをする)から来ていて、saboter は名詞 sabot から。sabot は一つの木材を彫ってつくった靴のことです。
木靴とサボタージュはどう関係するのですか?
木靴で何をしたのかは、資料によって説明がばらばらです。『日本国語大辞典』は農民が木靴で収穫物を踏みにじった話を挙げますが、ほかの事典は「異説もある」「諸説ある」と書き、英語の辞書は「音を立てて歩く」という動詞の意味から説明しています。
「サボる」はいつから使われていますか?
『日本国語大辞典』が挙げるいちばん古い例は、大杉栄の『日本脱出記』(1923年)です。ストライキそのものをサボる労働者や労働団体がいることに少々驚かされた、という一節でした。
英語の sabotage に「サボる」の意味はありますか?
いいえ。Oxford Learner's Dictionaries によると、英語の sabotage は機械や交通手段などをわざと壊すこと、または物事がうまくいかないようにじゃまをすることです。I sabotaged the class. は「授業をめちゃくちゃに妨害した」になります。
「授業をサボる」は英語で何と言いますか?
skip class です(主にアメリカ英語)。学校をずる休みするなら play hooky(アメリカ)や play truant(イギリス)、手を抜く・だらけるなら slack off と言います。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerWhen Japanese students skip a club meeting, they might say they "sabotta." The verb "saboru" was built from…
音声
4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
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Japanese students often say "saboru" when they skip class. It looks like a normal Japanese verb, but it comes from French. The French word is "sabotage." Japanese people cut it to "sabo" and added "ru" to make a verb.
"Sabotage" comes from "sabot," a shoe made of wood. Be careful in English, though. "Sabotage" means breaking something on purpose. To say "saboru" in English, you can say "skip class."
69 words ・ CEFR A2
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日本の生徒は、授業をサボるときによく「サボる」と言います。ふつうの日本語の動詞に見えますが、フランス語から来ています。そのフランス語は「sabotage」です。日本人はそれを「サボ」と短くし、「る」をつけて動詞にしました。
「sabotage」は、木でできた靴「sabot」から来ています。でも、英語では気をつけてください。「sabotage」は、わざと何かを壊すという意味です。「サボる」を英語で言うなら「skip class」と言えます。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
「サボる」という言葉がどこから来たかを説明しているので C。
Q2. What is a "sabot"?
"sabot," a shoe made of wood とあるので A。
Q3. In the passage, what does "on purpose" mean?
on purpose は「わざと、故意に」。自分がそうしたくてするという意味なので D。
When Japanese students skip a club meeting, they might say they "sabotta." The verb "saboru" was built from a French loanword. Japanese dictionaries explain that "sabotage" was shortened to "sabo," and then the verb ending "-ru" was added. The oldest example in a major Japanese dictionary is from 1923, in a book by Osugi Sakae, and it describes workers who skipped a strike.
The French word has a longer history. According to the American Heritage Dictionary, "sabotage" comes from "saboter," meaning to walk noisily or to do something badly, and that verb comes from "sabot," a wooden shoe. In English, however, "sabotage" means damaging something on purpose. If you miss class on purpose, say "I skipped class."
117 words ・ CEFR B1
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日本の生徒は、部活のミーティングを休むと「サボった」と言うかもしれない。「サボる」という動詞は、フランス語からの外来語をもとにつくられた。日本の辞書によると、「サボタージュ」を「サボ」と短くし、そこに動詞の語尾「る」をつけた。主要な国語辞典に載っているいちばん古い例は1923年、大杉栄の本の中にあり、ストライキをサボった労働者のことを書いている。
フランス語の方には、もっと長い歴史がある。アメリカン・ヘリテージ辞典によると、sabotage は「音を立てて歩く」「へまをする」という意味の saboter から来ていて、その動詞は木靴を意味する sabot から来ている。しかし英語では、sabotage はわざと何かを壊すことを意味する。わざと授業を休んだなら、I skipped class. と言おう。
4択リーディングクイズ
Q1. How was the verb "saboru" made?
"sabotage" was shortened to "sabo," and then the verb ending "-ru" was added とあるので B。
Q2. What did the French verb "saboter" mean?
"saboter," meaning to walk noisily or to do something badly とあるので C。
Q3. What advice does the writer give English learners?
英語の sabotage は「わざと壊す」の意味なので、授業をサボるときは skipped class を使おうと言っている。A。
"Saboru," the everyday Japanese verb for skipping school or slacking off at work, is a clipped French loanword with a native ending attached. Japanese dictionaries trace it to "sabotage," cut down to "sabo" plus "-ru." The earliest example in a major Japanese dictionary, from a 1923 book by Osugi Sakae, has an ironic twist, since it describes workers who skipped the strike itself.
The French side goes back to "sabot," a shoe carved from a single piece of wood. The American Heritage Dictionary links "sabotage" to the verb "saboter," to walk noisily or to bungle, and connects "sabot" with Spanish "zapato," meaning shoe. What the clogs actually had to do with protest is less clear.
One major Japanese dictionary says medieval peasants trampled crops with them to defy their lords, while an encyclopedia that tells the same story adds that other theories exist, and another says there are several theories. English learners face a different trap. In English, "sabotage" means deliberately damaging equipment or undermining a plan, so "I sabotaged my English class" sounds alarming. For staying away from class, Americans say "skip class," and British speakers might say "bunk off" or "skive."
193 words ・ CEFR B2
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学校をサボったり仕事で手を抜いたりすることを表す日常の日本語の動詞「サボる」は、フランス語からの外来語を短く切り、日本語の語尾をつけたものだ。日本の辞書は、これを「サボタージュ」を「サボ」に縮め、「る」をつけた語だとしている。主要な国語辞典に載っているいちばん古い例は、大杉栄が1923年に書いた本の中にあり、皮肉なことに、ストライキそのものをサボった労働者を描いている。
フランス語の側は、一つの木材を彫ってつくった靴 sabot にさかのぼる。アメリカン・ヘリテージ辞典は、sabotage を「音を立てて歩く」「へまをする」という意味の動詞 saboter と結びつけ、sabot をスペイン語で靴を意味する zapato とつなげている。木靴が抗議と実際にどう関係していたのかは、あまりはっきりしない。
ある主要な国語辞典は、中世の農民が領主に逆らってそれで作物を踏みにじったと書いているが、同じ話を紹介する百科事典は異説もあると添え、別の事典は語源には諸説あるとしている。英語の学習者は別の落とし穴にも気をつけたい。英語の sabotage は、設備をわざと壊したり計画をじゃましたりすることを意味するので、I sabotaged my English class. はぎょっとするように聞こえる。授業をサボるなら、アメリカ人は skip class と言い、イギリス人は bunk off や skive と言うかもしれない。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the main idea of the passage?
「サボる」がフランス語 sabotage から来たこと、そして英語の sabotage は意味がまったくちがうことが中心なので B。
Q2. Why does the writer call the 1923 example "ironic"?
it describes workers who skipped the strike itself とあり、もとは争議の言葉なのにストライキをサボる話だったから。C。
Q3. What can be inferred about the stories linking clogs to protest?
ある辞典は農民の話を書くが、別の事典は異説や諸説ありとしている、とあるので、事典の説明は一致していないと推測できる。A。
重要単語
- sabotageC1名詞・動詞破壊工作、妨害;わざと壊す、妨害するSomeone tried to sabotage the school festival.
発音は「サバタージュ」に近い /ˈsæbətɑːʒ/。英語では「怠ける」の意味はない。an act of sabotage「破壊工作」。 - skipB1動詞(授業・食事などを)抜かす、サボるHe skipped class to watch the game.
skip breakfast「朝食を抜く」も同じ使い方。skip class は主にアメリカ英語。 - play hookyC2句学校をずる休みするWe played hooky and went to the beach.
アメリカ英語のくだけた言い方で、やや古風。イギリス英語では play truant。 - slack offC1句動詞手を抜く、だらけるDon't slack off just because the test is over.
slack は「ゆるんだ」。仕事や練習の勢いが落ちるときに使う。 - woodenA2形容詞木でできたShe bought a pair of wooden shoes at the market.
wood(木材)+-en。golden(金の)と同じ形のつくり。 - deliberatelyB2副詞わざと、故意にThe machine was deliberately damaged.
on purpose と同じ意味。反対は by accident「うっかり」。
公式・一次情報をチェック
- skip(Oxford Learner's Dictionaries)oxfordlearnersdictionaries.com
- bunk off(Oxford Learner's Dictionaries)oxfordlearnersdictionaries.com
- sabot(American Heritage Dictionary)ahdictionary.com
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「サボる」はフランス語 sabotage(サボタージュ)の「サボ」に「る」をつけた言葉。さらにさかのぼると sabot=木靴。ちなみに英語の sabotage は「破壊工作・妨害」で、授業をサボるは skip class。
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出典・参考文献(5件)タップで表示
- デジタル大辞泉「サボる」・精選版 日本国語大辞典「サボる」(小学館、コトバンク掲載)kotobank.jp
- デジタル大辞泉・精選版 日本国語大辞典・改訂新版 世界大百科事典・日本大百科全書「サボタージュ」(コトバンク掲載)kotobank.jp
- The American Heritage Dictionary of the English Language, 5th ed.「sabotage」(HarperCollins, 2022)ahdictionary.com
- Oxford English Dictionary「sabotage, n.」(Oxford University Press)oed.com
- Oxford Advanced Learner's Dictionary「sabotage」(Oxford University Press)oxfordlearnersdictionaries.com
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。
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