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「ノスノスしてる」で3歳児は動詞を覚えた。日本語を知らない英語圏の子どもでも

「ノスノスしてる」で3歳児は動詞を覚えた。日本語を知らない英語圏の子どもでも

読む前に予想してみよう!

日本語のオノマトペ風の動詞は、日本語を知らない英語圏の3歳児の動詞の学習も助けた

研究カード(どんな研究?)
対象
日本語・英語を話す2〜3歳児
規模
小規模な実験を複数(英国の実験は3歳児45人を3条件に15人ずつ)
研究の種類
実験研究(実験室での単語学習課題)
確かさ
★★★☆☆
3秒でわかる

オノマトペ風の新しい動詞で教えると、3歳児は、別の人が同じ動きをしている場面にもその動詞をうまく使えた。日本語を知らない英語圏の3歳児も同じ。音と動きのつながりは言語の壁をこえるらしい。

ひとことで言うと「ノスノス」みたいな音は、日本語を知らない英語圏の子が動詞を覚えるときにもヒントになったんだって!

もくじ
  1. 3歳児にとって「動詞」はむずかしい
  2. 日本語を知らない英語圏の子でも効いた
  3. 英語のオノマトペは、なぜ少なく感じる?
  4. どんでん返し:「世界共通」は半分だけ
  5. まとめ

「ノスノス」と聞いて、どんな歩き方を思い浮かべますか? たぶん、重そうに、ゆっくり、のっしのっしと歩く姿ですよね。

じつはこの「ノスノス」、本物の擬態語を少し変えて実験のために作られた言葉です。そして、こうしたオノマトペ風の言葉で教えると、3歳の子どもは新しい動詞を別の場面にもうまく当てはめられることがわかりました。

さらに、日本語をまったく知らない英語圏の3歳児にも同じ効果が出たのです。

013歳児にとって「動詞」はむずかしい

「りんご」のような名詞なら、指させば伝わります。でも動詞はやっかいです。

おじさんが変わった歩き方をする動画で「これは○○してるよ」と教えても、「○○」が歩き方なのかおじさんなのか、子どもには分かりません。実際、3歳児は新しい動詞を習っても、別の人が同じ動きをしている場面には当てはめられないことが多いと、以前から知られていました。

02日本語を知らない英語圏の子でも効いた

ここで疑問がわきます。「日本の子は、ふだんからオノマトペをたくさん聞いているから得意なだけでは?」

そこで2011年、カンタルツィスさん・今井さん・喜多さんは、イギリス・バーミンガム周辺の保育園に通う、英語だけを話す3歳児45人で同じ実験をしました。使った言葉は日本の実験と同じ nosunosu などで、「Look! He is doing nosunosu.(見て!ノスノスしてるよ)」のように教えます。比較用の新語は blicking のような、いかにも英語の動詞っぽい言葉です。

結果は日本の子と同じ。blicking のような動詞より、日本語のオノマトペをもとにした動詞のほうが、別の人が同じ歩き方をしている場面にもちゃんと使えたのです。研究チームは、子どもは母語に関係なく、多くの言語に共通する「音と意味のつながり」(音象徴)を使って言葉を学べると結論しました。

明日話せるネタ:「ノスノス」のような日本語ふうの音は、日本語を知らない英語圏の3歳児が動詞を覚えるときにも手がかりになった。

母語がちがっても、「重そうな音」は「重そうな動き」に聞こえる?
母語がちがっても、「重そうな音」は「重そうな動き」に聞こえる?

03英語のオノマトペは、なぜ少なく感じる?

英語にもオノマトペはあります。splash(バシャッ)、buzz(ブーン)、giggle(クスクス笑う)、zigzag(ジグザグ)、bang(バン)など。

ただ、日本語のように擬態語などが1つの大きな語のグループを作っている言語と、そうでない言語があります。2014年の今井さんと喜多さんのレビューによると、そうした専用の語のグループは、日本語・韓国語・広東語など東アジアの多くの言語や、東南アジアの多くの言語、アフリカのサハラ以南の多くの言語などにあり、日本語の擬態語辞典には4500語も載っているものがあるそうです。英語は、このリストに入っていません。

では英語はどうやって「様子」を伝えるのか。答えの1つは動詞そのものです。

  • のしのし歩く → lumber / stomp
  • よちよち歩く → toddle
  • ちょこちょこ歩く → scurry(小走りする)
  • ふらふら歩く → stagger
  • ゴロゴロする → laze around
  • ジロジロ見る → stare

04どんでん返し:「世界共通」は半分だけ

ただし、話を盛りすぎてはいけません。大人の第二言語学習者にとって、日本語の擬態語はとても習得がむずかしいことが知られています。英語話者の大人に日本語の笑い方や歩き方のオノマトペを評価してもらうと、「大きい・小さい」のような感覚は日本人と近いのに、「感じがいい・悪い」のような評価は日本人とかなりズレました。音象徴には世界共通の部分と、言語ごとの部分があるのです。

さらに、英語の単語を大規模に分析した研究では、音と意味の「つながり」は最初に覚える語ほど強く、あとで覚える語ほど弱くなっていました。研究者はこう考えています。最初に覚える語では、覚えやすさのために音と意味のつながりが役に立つ。あとから覚える語では、表現の幅や効率のために、音と意味が無関係な(恣意的な)部分が増えていく。

05まとめ

「ノスノス」のような音は、ただのかわいい言葉ではなく、子どもが動詞の世界に入るための足場かもしれません。しかもその足場は、日本語を知らない子にも使えました。

英語を学ぶ私たちにとってのヒントは、オノマトペを無理に1語ずつ訳すより、lumber, toddle, stagger のような様子ごと入った動詞で言いかえること。今日、だれかがのっしのっし歩いていたら、心の中で He's lumbering. とつぶやいてみてください。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerVerbs are hard for small children. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

Verbs are hard for small children. If an adult points to a video of a man walking in a funny way and says a new verb, a three-year-old may think the word means the man instead of the walk. In a 2008 study in Japan, researchers created new verbs from Japanese mimetic words, such as "nosunosu" for heavy, slow walking.

Adults who spoke Japanese or English agreed that these sounds fit the actions. Three-year-olds who learned these verbs could use them for a different person doing the same walk. With ordinary-sounding new verbs, they could not. A 2011 study got the same result with English-speaking three-year-olds who knew no Japanese. Japanese has a large group of such words, and one dictionary lists 4,500 of them.

125 words ・ CEFR B1

和訳を見る

動詞は幼い子どもにとって難しいものだ。大人が変わった歩き方をする男性の動画を指さして新しい動詞を言っても、3歳児はその言葉が歩き方ではなく男性のことだと思うかもしれない。2008年に日本で行われた研究で、研究者たちは日本語の擬態語をもとに、重そうにゆっくり歩くことを表す「nosunosu」のような新しい動詞を作った。

日本語や英語を話す大人たちは、これらの音が動作に合っていると認めた。こうした動詞を覚えた3歳児は、別の人が同じ歩き方をしている場面にもその動詞を使えた。普通の響きの新しい動詞では、それができなかった。2011年の研究では、日本語を知らない英語を話す3歳児でも同じ結果が得られた。日本語にはこうした言葉の大きなグループがあり、ある辞書には4,500語が載っている。

4択リーディングクイズ

Q1. Why are new verbs hard for three-year-olds?

Q2. What did the 2011 study find?

Q3. What can we infer from the passage?

重要単語

  • onomatopoeiaC1
    名詞オノマトペ、擬音語"Splash" and "buzz" are examples of onomatopoeia. ギリシャ語で「名前を作ること」。形容詞は onomatopoeic。つづりが難しいので -poeia の部分に注意。
  • mimeticC1
    形容詞・名詞擬態の;擬態語Japanese has thousands of mimetic words, and some of them describe ways of walking. mimic(まねる)と同じ語源。言語学では日本語の擬態語を Japanese mimetics と呼ぶことが多い。
  • lumberC1
    動詞のっしのっしと重そうに歩くThe bear lumbered across the field. 名詞の lumber(材木)と同じつづりだが、使い方が違う。「のしのし」の英訳にぴったり。
  • toddleB2
    動詞よちよち歩くThe baby toddled toward her mother. toddler(よちよち歩きの幼児)はこの動詞から。1〜3歳くらいの子を指す。
  • staggerB2
    動詞よろめく、ふらふら歩くHe staggered out of the room after the long test. staggering は「驚くほどの」の意味でも使う(a staggering number)。
  • laze aroundB2
    句動詞ゴロゴロして過ごすI lazed around at home all Sunday. lazy(怠けた)の仲間。lounge around もほぼ同じ意味で、会話でよく使う。
  • extendB1
    動詞広げる、(意味などを)当てはめるChildren extend a new word to other things that look similar. extend A to B「AをBに広げる・当てはめる」。名詞は extension。
「ノスノスしてる」みたいなオノマトペ風の新しい動詞を教えると、3歳児は動詞の意味をつかみやすくなるらしい。しかも日本語を知らない英語圏の3歳児でも同じ効果。音と動きのつながりは国境をこえていた。

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出典・参考文献(5件)タップで表示
  1. Imai, Kita, Nagumo & Okada (2008) Sound symbolism facilitates early verb learning, Cognitiondoi.org
  2. Kantartzis, Imai & Kita (2011) Japanese sound-symbolism facilitates word learning in English-speaking children, Cognitive Sciencedoi.org
  3. Imai & Kita (2014) The sound symbolism bootstrapping hypothesis for language acquisition and language evolution, Philosophical Transactions of the Royal Society Bdoi.org
  4. Yoshida (2012) A cross-linguistic study of sound symbolism in children's verb learning, Journal of Cognition and Developmentdoi.org
  5. Monaghan, Shillcock, Christiansen & Kirby (2014) How arbitrary is language?, Philosophical Transactions of the Royal Society Bdoi.org

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