お腹の中で聞いた「タタタ」を、赤ちゃんの脳は覚えていた。生まれる前に2万回以上聞かせた実験

読む前に予想してみよう!
お腹の中の赤ちゃんは外の音を聞けないので、生まれる前に言葉の音を覚えることはない
2013年の実験で、妊娠中に作りことば「タタタ」を聞いた赤ちゃんは、生まれた後、脳の反応でその音を覚えていることが示された。胎児は妊娠19週ごろから音に反応し始める。
- 対象
- フィンランドの新生児(妊娠中に作りことばを聞いた17人と、聞いていない16人)
- 規模
- 33人
- 研究の種類
- 出生前の聞かせ実験+生後の脳波測定
- 確かさ
- ★★★☆☆
妊娠29週から「タタタ」という作りことばを平均2万5,740回聞かせると、生まれた後の赤ちゃんの脳は、その音の高さの変化に、聞いていない赤ちゃんより強く反応した。
ひとことで言うと生まれる前に聞いた言葉の音を、赤ちゃんの脳はもう覚えているんだって!
「タタタ」。
意味はまったくありません。研究のために作った、ただの音の並びです。フィンランドの研究チームは、この作りことばを、生まれる前の赤ちゃん(胎児)に平均2万5,740回聞かせました。
すると生まれた後、その赤ちゃんたちの脳は、「タタタ」のまん中の音の高さが変わると、強く反応しました。聞いていない赤ちゃんの脳では、そこまでの反応は出ませんでした。赤ちゃんの「言葉の音の勉強」は、お腹の中ですでに始まっていたのです。
01お腹の中で音はいつから聞こえる?
まず、お腹の中の赤ちゃん(胎児)は、いつから音が聞こえるのでしょうか。
1994年の研究では、妊婦さんのお腹にスピーカーを当てて、いろいろな高さの音を流しました。胎児が音に反応して体を動かすかを、超音波の画像で調べたのです。
- 最初に反応が出たのは妊娠19週。500ヘルツの音
- 妊娠27週では、低めの音(250・500ヘルツ)に96%の胎児が反応した。でも高い音(1,000・3,000ヘルツ)にはまだ1人も反応しなかった
- 高い音にも全員が反応したのは、1,000ヘルツが33週、3,000ヘルツが35週
つまり、胎児は低めの音から先に聞こえるようになります。お腹の壁を通り抜けやすいのも低い音です。「タタタ」の研究チームは、お腹の中に届く低い音の情報が、生まれた後の言葉の聞き分けにも役立っているのではないかと考えています。
02「タタタ」実験のしくみ
脳波で見たのは、脳の「あれ、さっきと違う」という反応です。同じ音がくり返される中に、ちょっと違う音がまざると、脳は自動的に小さな電気の反応を出します。赤ちゃんが眠っていても測れるので、言葉を話せない新生児の「聞き分ける力」を調べるのに使われています。
03覚えていたのは「音の高さ」の変化
結果は、こうなりました。
- 「タトタ」のような母音の違いには、どちらのグループの赤ちゃんの脳も反応した
- まん中の音の高さの変化には、聞いていたグループだけがはっきり反応した。反応の強さも、聞いていないグループより大きかった
- お腹の中でたくさん聞いた赤ちゃんほど、音の高さが上がったときの反応が大きかった
- CDには入っていなかった変化(まん中の母音を長くする、音を大きく・小さくする)にも、聞いていたグループの脳は反応した
なぜ母音には両方のグループが反応したのでしょう。研究チームによると、フィンランド語は母音の多い言語で、どの胎児もお腹の中で母音をたくさん聞いていたからだと考えられます。反対に、単語のまん中で音の高さが変わることは、フィンランド語ではめったにありません。だから、そこにこそ「タタタ」を聞いた効果が表れると研究チームは予想し、結果もそのとおりになりました。
もう一つ大事な確認があります。言葉ではない「ピッ」という短い音(1,000ヘルツと1,100ヘルツ)の聞き分けでは、2つのグループに差はありませんでした。基本的な音の聞き分けの力は、どちらのグループも同じくらいだったと考えられます。

04お母さんの声やメロディーも覚えている
生まれる前の「音の記憶」を示す研究は、ほかにもあります。
2003年の研究では、出産が近い胎児60人に、お母さん本人の声か、知らない女性の声で文章を読んだ録音を聞かせました。すると、お母さんの声では胎児の心拍数が上がり、知らない人の声では下がりました。胎児はもう、聞き慣れた声とそうでない声を区別していたことになります。
2011年の研究では、妊娠35〜37週の3週間、1日2回、下がっていくピアノのメロディーを胎児に聞かせました。生後1か月ごろ、眠っている赤ちゃん(聞いた25人、聞いていない25人)に、そのメロディーと、逆に上がっていくメロディーを聞かせました。聞いていた赤ちゃんは、下がるメロディーで心拍が大きく下がり、その下がり方は、上がるメロディーのときや、聞いていない赤ちゃんの場合の約2倍でした。お腹の中で聞いた音の記憶が、少なくとも6週間は残っていたことになります。
「タタタ」と同じチームは、妊娠後期に『きらきら星』のメロディーを週5回聞かせる実験もしています。聞いていた赤ちゃんの、メロディーの音に対する脳の反応は、生まれてすぐだけでなく、生後4か月でも聞いていない赤ちゃんより強かったと報告しています。
05どんでん返し:「胎教で賢くなる」とまでは言えない
ここまで読むと、「お腹の赤ちゃんに英語のCDを聞かせれば、英語ができる子になる?」と思うかもしれません。でも、この研究からそこまでは言えません。
まず、赤ちゃんが覚えていたのは音の特徴です。「タタタ」に意味はなく、意味を覚えたわけではありません。また、測ったのは生後数日の脳の反応で、その後に言葉の力が伸びたかどうかは調べていません。
人数も多くありません。聞かせたグループは、参加を始めた母親28人のうち、最後の測定まで続いたのは17人でした。母親の多くは大学で学んだ人か大学生です。さらに、聞かせたグループの胎児は音楽も聞いていたので、母親がリラックスしてストレスが少なかった可能性もあると、研究チーム自身が書いています。
そして研究チームは、もう一つ大事な注意をしています。胎児の脳は周りの音で変わるからこそ、うるさい音や雑音の影響も受けやすいかもしれない。家族が話しかける声はよいとしても、雑音のように聞こえる変わった音を聞かせることは、調べが進むまで勧められない、というのです。
06まとめ
意味のない「タタタ」でも、お腹の中で2万回以上聞いた赤ちゃんの脳は、その音の特徴を覚えていました。言葉の音を聞き分ける練習は、生まれる前から始まっているのです。
ただし、それは「特別な教材でお腹の中から勉強させよう」という意味ではありません。赤ちゃんがお腹の中で毎日聞いているのは、家族の話し声です。それ自体が、言葉の最初の「教材」になっているのかもしれません。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerBabies start learning the sounds of language before they are born.
音声
4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
Can a baby learn sounds before it is born? In Finland, some mothers played a CD with the word "tatata" from week 29 of pregnancy. The word has no meaning. On average, the babies heard it more than 25,000 times.
After birth, scientists played the sounds again and recorded the babies' brain waves. When the middle sound went higher or lower, these babies' brains reacted more strongly than the brains of babies who never heard the CD.
77 words ・ CEFR A2
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赤ちゃんは生まれる前に音を覚えられるのでしょうか?フィンランドで、何人かの母親が妊娠29週から「tatata」という言葉の入ったCDを流しました。この言葉に意味はありません。赤ちゃんは平均で2万5,000回以上それを聞きました。
生まれた後、科学者たちはもう一度その音を流し、赤ちゃんの脳波を記録しました。まん中の音が高くなったり低くなったりすると、これらの赤ちゃんの脳は、CDを一度も聞かなかった赤ちゃんの脳よりも強く反応しました。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
生まれる前に聞いた tatata に、生まれた後の脳が強く反応した話なので B。
Q2. When did the mothers start playing the CD?
from week 29 of pregnancy とあるので C。
Q3. In the passage, what does "reacted" mean?
react は「反応する」。respond とほぼ同じ意味なので C。
Babies start learning the sounds of language before they are born. In a study in Finland, 17 mothers played a recording of a made-up word, "tatata," five to seven times a week from week 29 of pregnancy until birth. Sometimes the middle syllable changed. It had either a different vowel or a higher or lower pitch.
On average, the babies heard the basic word 25,740 times. A few days after birth, researchers measured the babies' brain waves while they listened to the same sounds. These babies' brains reacted more strongly to the pitch changes than the brains of 16 babies who had not heard the recording. And babies who had heard it more often showed bigger reactions to a rising pitch.
121 words ・ CEFR B1
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赤ちゃんは生まれる前から言葉の音を学び始める。フィンランドの研究で、17人の母親が、作りことば「tatata」の録音を、妊娠29週から出産まで週に5〜7回流した。ときどき、まん中の音節が変わった。母音が違うか、音の高さが高いか低いかのどちらかだった。
赤ちゃんは平均で、基本の言葉を2万5,740回聞いた。生まれて数日後、研究者たちは、赤ちゃんが同じ音を聞いている間の脳波を測った。これらの赤ちゃんの脳は、録音を聞いていなかった16人の赤ちゃんの脳よりも、音の高さの変化に強く反応した。そして、より多く聞いた赤ちゃんほど、音が高くなったときの反応が大きかった。
4択リーディングクイズ
Q1. How often did the mothers play the recording?
five to seven times a week とあるので B。
Q2. How was the middle syllable sometimes changed?
It had either a different vowel or a higher or lower pitch とあるので C。
Q3. What does the last sentence suggest?
babies who had heard it more often showed bigger reactions から、聞いた回数が多いほど反応が強かったと分かるので A。
Fetuses first react to sound at about 19 weeks, and they respond to low tones before high ones. A team in Finland asked whether a fetus could learn the sound of a specific word. From week 29 until birth, mothers played a CD of the made-up word "tatata" several times a week.
Sometimes the middle syllable had a different vowel or a raised or lowered pitch. On average, each fetus heard the basic form 25,740 times. After birth, the team tested these babies and others who had not heard the CD. Both groups of newborns noticed the vowel change. That was expected, because all of them had heard plenty of Finnish vowels before birth.
Only the babies who had heard the CD showed a clear response to the pitch change, and those who had heard it more often reacted more strongly to a rising pitch. Their brains also reacted to changes that were never on the CD.
But "tatata" had no meaning, so the babies did not learn a real word. The study was small, with 33 babies, and nobody tested their later language skills. The team warned that such a sensitive fetal brain might be harmed by noise.
199 words ・ CEFR B2
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胎児が初めて音に反応するのは妊娠19週ごろで、高い音より先に低い音に反応するようになる。フィンランドの研究チームは、胎児が特定の言葉の音を覚えられるかを調べた。妊娠29週から出産まで、母親たちは作りことば「tatata」のCDを週に何回か流した。
ときどき、まん中の音節の母音が違ったり、音の高さが上がったり下がったりした。各胎児は平均で、基本の形を2万5,740回聞いた。生まれた後、チームはこの赤ちゃんたちと、CDを聞いていなかった赤ちゃんたちを調べた。どちらのグループの新生児も、母音の変化には気づいた。どの赤ちゃんも、生まれる前にフィンランド語の母音をたくさん聞いていたので、これは予想どおりだった。
音の高さの変化にはっきり反応したのは、聞いていた赤ちゃんだけで、CDを多く聞いた赤ちゃんほど、音が高くなったときに強く反応した。彼らの脳は、CDに入っていなかった変化にも反応した。
ただ、「tatata」には意味がないので、赤ちゃんが本当の単語を覚えたわけではない。研究は赤ちゃん33人と小規模で、その後の言葉の力は誰も調べていない。研究チームは、このように敏感な胎児の脳は雑音によって害を受けるかもしれない、と注意している。
4択リーディングクイズ
Q1. What was the main question of the Finnish study?
asked whether a fetus could learn the sound of a specific word とあるので A。
Q2. Why did both groups notice the vowel change?
because all of them had heard plenty of Finnish vowels before birth とあり、どの胎児も母音の多いフィンランド語を聞いていたからなので B。
Q3. Which conclusion would the writer most likely agree with?
音の変化への反応は示されたが、nobody tested their later language skills とあり、後の言葉の力への効果は示されていないので C。
重要単語
- fetusC1名詞胎児The fetus can hear low sounds from outside.
複数形は fetuses。イギリスでは foetus とつづることもある。形容詞は fetal(胎児の)。 - wombB2名詞子宮、お腹の中Babies start to hear sounds while they are still in the womb.
b は発音しない(ウーム)。climb や lamb と同じ。in the womb で「お腹の中で」。 - pitchB2名詞音の高さHer voice went up in pitch at the end of the question.
野球の「投球」やサッカーの「競技場」も pitch。音の話では high / low pitch。 - syllableB2名詞音節The word "banana" has three syllables.
英語のアクセントは音節単位で置かれる。tatata は ta-ta-ta の3音節。 - pregnancyB2名詞妊娠、妊娠期間She felt the baby kick for the first time in the fifth month of pregnancy.
形容詞は pregnant。「妊娠29週です」は I'm 29 weeks pregnant.。 - newbornB1名詞新生児The newborn slept through the test.
new+born(生まれた)。形容詞として a newborn baby とも言う。 - made-upB1形容詞作られた、でっちあげのThe children invented a made-up language for their game.
make up「作り上げる」から。a made-up story は「作り話」。研究では pseudoword(偽の単語)とも言う。
公式・一次情報をチェック
- Learning-induced neural plasticity of speech processing before birth(PMC・全文公開)pmc.ncbi.nlm.nih.gov
- Development of fetal hearing(PMC・全文公開)pmc.ncbi.nlm.nih.gov
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妊娠29週から、作りことば「タタタ」をお腹の赤ちゃんに平均2万5,740回聞かせたら、生まれた後の脳は、その音の高さの変化に、聞いていない子より強く反応した。言葉の音を聞き分ける練習は、生まれる前から始まっているらしい。
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出典・参考文献(5件)タップで表示
- Partanen E., Kujala T., Näätänen R., Liitola A., Sambeth A., Huotilainen M. (2013) Learning-induced neural plasticity of speech processing before birth, PNAS 110(37)doi.org
- Hepper P.G., Shahidullah B.S. (1994) Development of fetal hearing, Archives of Disease in Childhood: Fetal and Neonatal Edition 71(2)doi.org
- Kisilevsky B.S. et al. (2003) Effects of Experience on Fetal Voice Recognition, Psychological Science 14(3)doi.org
- Granier-Deferre C., Bassereau S., Ribeiro A., Jacquet A.-Y., DeCasper A.J. (2011) A Melodic Contour Repeatedly Experienced by Human Near-Term Fetuses Elicits a Profound Cardiac Reaction One Month after Birth, PLoS ONE 6(2)doi.org
- Partanen E., Kujala T., Tervaniemi M., Huotilainen M. (2013) Prenatal Music Exposure Induces Long-Term Neural Effects, PLoS ONE 8(10)doi.org
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。
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