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お腹の中で聞いた「タタタ」を、赤ちゃんの脳は覚えていた。生まれる前に2万回以上聞かせた実験

お腹の中で聞いた「タタタ」を、赤ちゃんの脳は覚えていた。生まれる前に2万回以上聞かせた実験

読む前に予想してみよう!

お腹の中の赤ちゃんは外の音を聞けないので、生まれる前に言葉の音を覚えることはない

研究カード(どんな研究?)
対象
フィンランドの新生児(妊娠中に作りことばを聞いた17人と、聞いていない16人)
規模
33人
研究の種類
出生前の聞かせ実験+生後の脳波測定
確かさ
★★★☆☆
3秒でわかる

妊娠29週から「タタタ」という作りことばを平均2万5,740回聞かせると、生まれた後の赤ちゃんの脳は、その音の高さの変化に、聞いていない赤ちゃんより強く反応した。

ひとことで言うと生まれる前に聞いた言葉の音を、赤ちゃんの脳はもう覚えているんだって!

もくじ
  1. お腹の中で音はいつから聞こえる?
  2. 「タタタ」実験のしくみ
  3. 覚えていたのは「音の高さ」の変化
  4. お母さんの声やメロディーも覚えている
  5. どんでん返し:「胎教で賢くなる」とまでは言えない
  6. まとめ

「タタタ」。

意味はまったくありません。研究のために作った、ただの音の並びです。フィンランドの研究チームは、この作りことばを、生まれる前の赤ちゃん(胎児)に平均2万5,740回聞かせました。

すると生まれた後、その赤ちゃんたちの脳は、「タタタ」のまん中の音の高さが変わると、強く反応しました。聞いていない赤ちゃんの脳では、そこまでの反応は出ませんでした。赤ちゃんの「言葉の音の勉強」は、お腹の中ですでに始まっていたのです。

01お腹の中で音はいつから聞こえる?

まず、お腹の中の赤ちゃん(胎児)は、いつから音が聞こえるのでしょうか。

1994年の研究では、妊婦さんのお腹にスピーカーを当てて、いろいろな高さの音を流しました。胎児が音に反応して体を動かすかを、超音波の画像で調べたのです。

  • 最初に反応が出たのは妊娠19週。500ヘルツの音
  • 妊娠27週では、低めの音(250・500ヘルツ)に96%の胎児が反応した。でも高い音(1,000・3,000ヘルツ)にはまだ1人も反応しなかった
  • 高い音にも全員が反応したのは、1,000ヘルツが33週、3,000ヘルツが35週

つまり、胎児は低めの音から先に聞こえるようになります。お腹の壁を通り抜けやすいのも低い音です。「タタタ」の研究チームは、お腹の中に届く低い音の情報が、生まれた後の言葉の聞き分けにも役立っているのではないかと考えています。

02「タタタ」実験のしくみ

脳波で見たのは、脳の「あれ、さっきと違う」という反応です。同じ音がくり返される中に、ちょっと違う音がまざると、脳は自動的に小さな電気の反応を出します。赤ちゃんが眠っていても測れるので、言葉を話せない新生児の「聞き分ける力」を調べるのに使われています。

03覚えていたのは「音の高さ」の変化

結果は、こうなりました。

  • 「タトタ」のような母音の違いには、どちらのグループの赤ちゃんの脳も反応した
  • まん中の音の高さの変化には、聞いていたグループだけがはっきり反応した。反応の強さも、聞いていないグループより大きかった
  • お腹の中でたくさん聞いた赤ちゃんほど、音の高さが上がったときの反応が大きかった
  • CDには入っていなかった変化(まん中の母音を長くする、音を大きく・小さくする)にも、聞いていたグループの脳は反応した

なぜ母音には両方のグループが反応したのでしょう。研究チームによると、フィンランド語は母音の多い言語で、どの胎児もお腹の中で母音をたくさん聞いていたからだと考えられます。反対に、単語のまん中で音の高さが変わることは、フィンランド語ではめったにありません。だから、そこにこそ「タタタ」を聞いた効果が表れると研究チームは予想し、結果もそのとおりになりました。

もう一つ大事な確認があります。言葉ではない「ピッ」という短い音(1,000ヘルツと1,100ヘルツ)の聞き分けでは、2つのグループに差はありませんでした。基本的な音の聞き分けの力は、どちらのグループも同じくらいだったと考えられます。

生まれた後、ベッドに寝かせた赤ちゃんに「タタタ」を聞かせて脳波を測った。お腹の中で聞いた赤ちゃんの脳は、まん中の音の高さの変化に強く反応した
生まれた後、ベッドに寝かせた赤ちゃんに「タタタ」を聞かせて脳波を測った。お腹の中で聞いた赤ちゃんの脳は、まん中の音の高さの変化に強く反応した

04お母さんの声やメロディーも覚えている

生まれる前の「音の記憶」を示す研究は、ほかにもあります。

2003年の研究では、出産が近い胎児60人に、お母さん本人の声か、知らない女性の声で文章を読んだ録音を聞かせました。すると、お母さんの声では胎児の心拍数が上がり、知らない人の声では下がりました。胎児はもう、聞き慣れた声とそうでない声を区別していたことになります。

2011年の研究では、妊娠35〜37週の3週間、1日2回、下がっていくピアノのメロディーを胎児に聞かせました。生後1か月ごろ、眠っている赤ちゃん(聞いた25人、聞いていない25人)に、そのメロディーと、逆に上がっていくメロディーを聞かせました。聞いていた赤ちゃんは、下がるメロディーで心拍が大きく下がり、その下がり方は、上がるメロディーのときや、聞いていない赤ちゃんの場合の約2倍でした。お腹の中で聞いた音の記憶が、少なくとも6週間は残っていたことになります。

「タタタ」と同じチームは、妊娠後期に『きらきら星』のメロディーを週5回聞かせる実験もしています。聞いていた赤ちゃんの、メロディーの音に対する脳の反応は、生まれてすぐだけでなく、生後4か月でも聞いていない赤ちゃんより強かったと報告しています。

05どんでん返し:「胎教で賢くなる」とまでは言えない

ここまで読むと、「お腹の赤ちゃんに英語のCDを聞かせれば、英語ができる子になる?」と思うかもしれません。でも、この研究からそこまでは言えません。

まず、赤ちゃんが覚えていたのは音の特徴です。「タタタ」に意味はなく、意味を覚えたわけではありません。また、測ったのは生後数日の脳の反応で、その後に言葉の力が伸びたかどうかは調べていません。

人数も多くありません。聞かせたグループは、参加を始めた母親28人のうち、最後の測定まで続いたのは17人でした。母親の多くは大学で学んだ人か大学生です。さらに、聞かせたグループの胎児は音楽も聞いていたので、母親がリラックスしてストレスが少なかった可能性もあると、研究チーム自身が書いています。

そして研究チームは、もう一つ大事な注意をしています。胎児の脳は周りの音で変わるからこそ、うるさい音や雑音の影響も受けやすいかもしれない。家族が話しかける声はよいとしても、雑音のように聞こえる変わった音を聞かせることは、調べが進むまで勧められない、というのです。

06まとめ

意味のない「タタタ」でも、お腹の中で2万回以上聞いた赤ちゃんの脳は、その音の特徴を覚えていました。言葉の音を聞き分ける練習は、生まれる前から始まっているのです。

ただし、それは「特別な教材でお腹の中から勉強させよう」という意味ではありません。赤ちゃんがお腹の中で毎日聞いているのは、家族の話し声です。それ自体が、言葉の最初の「教材」になっているのかもしれません。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerBabies start learning the sounds of language before they are born. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

Babies start learning the sounds of language before they are born. In a study in Finland, 17 mothers played a recording of a made-up word, "tatata," five to seven times a week from week 29 of pregnancy until birth. Sometimes the middle syllable changed. It had either a different vowel or a higher or lower pitch.

On average, the babies heard the basic word 25,740 times. A few days after birth, researchers measured the babies' brain waves while they listened to the same sounds. These babies' brains reacted more strongly to the pitch changes than the brains of 16 babies who had not heard the recording. And babies who had heard it more often showed bigger reactions to a rising pitch.

121 words ・ CEFR B1

和訳を見る

赤ちゃんは生まれる前から言葉の音を学び始める。フィンランドの研究で、17人の母親が、作りことば「tatata」の録音を、妊娠29週から出産まで週に5〜7回流した。ときどき、まん中の音節が変わった。母音が違うか、音の高さが高いか低いかのどちらかだった。

赤ちゃんは平均で、基本の言葉を2万5,740回聞いた。生まれて数日後、研究者たちは、赤ちゃんが同じ音を聞いている間の脳波を測った。これらの赤ちゃんの脳は、録音を聞いていなかった16人の赤ちゃんの脳よりも、音の高さの変化に強く反応した。そして、より多く聞いた赤ちゃんほど、音が高くなったときの反応が大きかった。

4択リーディングクイズ

Q1. How often did the mothers play the recording?

Q2. How was the middle syllable sometimes changed?

Q3. What does the last sentence suggest?

重要単語

  • fetusC1
    名詞胎児The fetus can hear low sounds from outside. 複数形は fetuses。イギリスでは foetus とつづることもある。形容詞は fetal(胎児の)。
  • wombB2
    名詞子宮、お腹の中Babies start to hear sounds while they are still in the womb. b は発音しない(ウーム)。climb や lamb と同じ。in the womb で「お腹の中で」。
  • pitchB2
    名詞音の高さHer voice went up in pitch at the end of the question. 野球の「投球」やサッカーの「競技場」も pitch。音の話では high / low pitch。
  • syllableB2
    名詞音節The word "banana" has three syllables. 英語のアクセントは音節単位で置かれる。tatata は ta-ta-ta の3音節。
  • pregnancyB2
    名詞妊娠、妊娠期間She felt the baby kick for the first time in the fifth month of pregnancy. 形容詞は pregnant。「妊娠29週です」は I'm 29 weeks pregnant.。
  • newbornB1
    名詞新生児The newborn slept through the test. new+born(生まれた)。形容詞として a newborn baby とも言う。
  • made-upB1
    形容詞作られた、でっちあげのThe children invented a made-up language for their game. make up「作り上げる」から。a made-up story は「作り話」。研究では pseudoword(偽の単語)とも言う。

4コマでわかる

お腹の中で聞いた「タタタ」を、赤ちゃんの脳は覚えていた。生まれる前に2万回以上聞かせた実験の4コマ漫画
妊娠29週から、作りことば「タタタ」をお腹の赤ちゃんに平均2万5,740回聞かせたら、生まれた後の脳は、その音の高さの変化に、聞いていない子より強く反応した。言葉の音を聞き分ける練習は、生まれる前から始まっているらしい。

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出典・参考文献(5件)タップで表示
  1. Partanen E., Kujala T., Näätänen R., Liitola A., Sambeth A., Huotilainen M. (2013) Learning-induced neural plasticity of speech processing before birth, PNAS 110(37)doi.org
  2. Hepper P.G., Shahidullah B.S. (1994) Development of fetal hearing, Archives of Disease in Childhood: Fetal and Neonatal Edition 71(2)doi.org
  3. Kisilevsky B.S. et al. (2003) Effects of Experience on Fetal Voice Recognition, Psychological Science 14(3)doi.org
  4. Granier-Deferre C., Bassereau S., Ribeiro A., Jacquet A.-Y., DeCasper A.J. (2011) A Melodic Contour Repeatedly Experienced by Human Near-Term Fetuses Elicits a Profound Cardiac Reaction One Month after Birth, PLoS ONE 6(2)doi.org
  5. Partanen E., Kujala T., Tervaniemi M., Huotilainen M. (2013) Prenatal Music Exposure Induces Long-Term Neural Effects, PLoS ONE 8(10)doi.org

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