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10か月の赤ちゃんは“同じことばの人”のおもちゃを取りやすい。ボストンの5歳児は肌の色より「なまり」で友だちを選んだ

10か月の赤ちゃんは“同じことばの人”のおもちゃを取りやすい。ボストンの5歳児は肌の色より「なまり」で友だちを選んだ

読む前に予想してみよう!

生後5〜6か月の赤ちゃんは、まだことばが分からないので、母語を話す人と外国語を話す人を見る時間に差はない

研究カード(どんな研究?)
対象
アメリカ(ボストン周辺・シカゴなど)・フランス(パリ)・イギリス(ロンドン)の乳児・5〜7歳児
規模
1つの実験につき8〜40人
研究の種類
実験(見つめる時間・おもちゃ選び・友だち選び)
確かさ
★★★☆☆
3秒でわかる

ボストンとパリの10か月児は、自分の母語を話した人が差し出すおもちゃに手をのばすことが多かった。5歳児はなまりで友だちを選び、肌の色よりなまりを優先した実験も。ただし理由には論争があり、経験で変わる面もある。

ひとことで言うと赤ちゃんは、自分と同じことばを話す人からおもちゃを受け取りやすいんだって!

もくじ
  1. 話せない赤ちゃんも「同じことばの人」をじっと見る
  2. 5歳児は、肌の色より「なまり」で友だちを選んだ
  3. 英語の accent は「なまり」のこと
  4. どんでん返し:好みは育ち方で変わる。理由も論争中
  5. まとめ

生後10か月の赤ちゃんの前に、2人の女性が映った画面があります。1人は英語で、もう1人はフランス語で、赤ちゃんに話しかけます。

そのあと2人はだまって、そっくり同じぬいぐるみを差し出します。画面の前のテーブルには、本物のぬいぐるみが2つ現れます。

赤ちゃんはどちらに手をのばしたでしょう。ボストンの赤ちゃんは英語の人の、パリの赤ちゃんはフランス語の人のおもちゃを取りやすかったのです。まだ自分ではほとんどしゃべれない赤ちゃんが、「自分と同じことば(母語)を話す人」を選んでいました。

01話せない赤ちゃんも「同じことばの人」をじっと見る

この実験を2007年に発表したのは、アメリカのハーバード大学のキンズラーさん、スペルキさんと、フランスの研究者デュプーさんです。研究チームはまず、もっと小さい生後5〜6か月の赤ちゃんで調べました。

やり方はこうです。2人の女性が順番に赤ちゃんに話しかける動画を見せ、そのあと2人がだまってほほえんでいる画面に切りかえます。赤ちゃんがどちらの人を長く見つめるかを測りました。

5〜6か月といえば、まだことばの意味はほとんど分からない時期です。それでも、なまりの違いだけで見つめ方に差が出ました。ただし、10か月児のおもちゃ選びでくらべたのは「英語かフランス語か」という言語の違いで、なまりの違いではありません。

025歳児は、肌の色より「なまり」で友だちを選んだ

同じ研究チームは、5歳の子どもにも「友だち選び」をしてもらいました。知らない子どもの顔写真を2枚見せ、それぞれの声を聞かせてから「どっちの子と友だちになりたい?」とたずねます。

英語だけの家庭で育つ5歳児は、英語を話す子をフランス語を話す子より選びました。ボストンの別の5歳児は、同じ英語でも、フランス語なまりの英語を話す子よりアメリカなまりの子を選びました。なまりのある英語が分からなかったわけではありません。別の5歳児8人に内容をたずねると、フランス語なまりの英語でも87%の問いに正しく答えられたのです。聞き取れるのに、友だちには選ばなかったことになります。

2009年の続きの研究では、見た目と話し方のどちらを手がかりにするかが調べられました。

見た目の手がかりより、話し方の手がかりが勝ったのです(ボストン周辺の白人の5歳児、1つの条件16人ずつでの結果です)。研究者は、大昔の人間の集団は、となりの集団と話し方は違っても肌の色はあまり違わなかったので、子どもは話し方を手がかりにしやすいのではないか、と考えています。ただしこれは研究者の推測で、確かめられた事実ではありません。

5歳児は、写真の見た目より「どんな話し方をするか」を手がかりに友だちを選んだ(2009年の実験)
5歳児は、写真の見た目より「どんな話し方をするか」を手がかりに友だちを選んだ(2009年の実験)

03英語の accent は「なまり」のこと

ここで英語のミニ知識です。日本語で「アクセント」というと「強く読む場所」を思いうかべますが、英語の accent は「なまり、話し方のくせ」の意味でよく使います。

  • She speaks English with a French accent.(彼女はフランス語なまりの英語を話す)
  • He has a strong Osaka accent.(彼は大阪のなまりが強い)
  • native speaker は「その言語を母語として話す人」。a native speaker of Japanese(日本語の母語話者)

04どんでん返し:好みは育ち方で変わる。理由も論争中

ここまで読むと「人は生まれつき、ことばで仲間を分ける」と思うかもしれません。たしかに2007年の論文は、こうした早い時期の好みが、のちの集団どうしの対立の土台になるかもしれない、と書いています。

でも同じ論文は、こうも書いています。母語は生まれたあとに覚えるものなので、「どのことばの人を好むか」は経験で形づくられ、小さいうちなら変わりうる、と。

実際、2017年の研究では、アメリカで2つの言語にふれて育つ5〜7歳の子どもを調べました。フランス語で授業をするシカゴの学校の子ども40人は、英語を話す人とフランス語を話す人のどちらかをはっきり好むことはありませんでした(英語の人を選んだのは約54%)。韓国系アメリカ人の2言語の子ども22人も、英語の人と韓国語の人で差はありませんでした。ふだん聞いている2つの言語は、どちらも「自分たちのことば」になっていたのかもしれません。

ただし、なまりについては違いました。どちらのグループも、フランス語なまり・韓国語なまりの英語より、アメリカなまりの英語の人を選びました(約74%と約72%)。なまりへの好みは、子ども自身がどちらの言語が得意かにかかわらず見られました。

もう1つの論争は「なぜ好むのか」です。イギリスの研究チームは2016年、11か月児の脳波を調べ、母語を話す人の前では「これから何か教わる」ときに似た脳の反応が強まることを報告しました。好きだから選ぶのではなく、「この人からなら学べそう」と期待しているのでは、という考えです。これにキンズラーさんたちは2017年に反論しました。赤ちゃんは、同じことばを話す2人は仲がよく、食べ物の好みも同じだろうと予想するので、「学べそう」だけでは説明しきれない、というのです。

05まとめ

ことばの意味が分かる前から、赤ちゃんは「自分と同じことばを話す人」をよく見つめ、その人のおもちゃを取りやすい。5歳になると、見た目よりなまりを手がかりに友だちを選ぶこともありました。

でもその好みは、育ち方と関係なく決まっているわけではなさそうです。2つの言語で育つ子の多くは、両方の言語の話し手を同じように選んでいました(ただし、なまりへの好みは残っていました)。どんなことばにふれて育つかで、「仲間」の範囲は広がるのかもしれません。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerIn a 2009 study, five-year-old children in Boston were shown photos of two children they did not know and… 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

In a 2009 study, five-year-old children in Boston were shown photos of two children they did not know and heard each child speak. Then they were asked, "Who would you like to be friends with?" About 80 percent of the time, they chose the child who spoke English with an American accent over the child with a French accent. This was not because they could not understand the accent.

In an earlier study, children answered 87 percent of questions about French-accented speech correctly. In another part of the 2009 study, White children chose a Black child with an American accent over a White child with a French accent about 71 percent of the time. Children who saw similar photos without voices picked the White child more often.

127 words ・ CEFR B1

和訳を見る

2009年の研究で、ボストンの5歳の子どもたちは、知らない子ども2人の写真を見せられ、それぞれの子が話すのを聞いた。そのあと「どっちの子と友だちになりたい?」とたずねられた。約80%の割合で、子どもたちはフランス語なまりの子より、アメリカなまりの英語を話す子を選んだ。

それは、なまりが理解できなかったからではない。それより前の研究では、子どもたちはフランス語なまりの英語についての質問の87%に正しく答えた。2009年の研究の別の実験では、白人の子どもたちが、フランス語なまりの白人の子より、アメリカなまりの黒人の子を約71%の割合で選んだ。同じような写真を声なしで見た子どもたちは、白人の子を選ぶことのほうが多かった。

4択リーディングクイズ

Q1. What were the children asked to decide?

Q2. Why does the passage mention 87 percent?

Q3. What does the 2009 study suggest?

重要単語

  • native speakerB1
    名詞(その言語の)母語話者She is a native speaker of French. native language「母語」。a native speaker of ~ の of を落とさないこと。
  • accentB1
    名詞なまり、話し方のくせHe speaks English with a slight Spanish accent. 日本語の「アクセント(強く読む位置)」の意味もあるが、会話では「なまり」の意味が多い。with a ~ accent の形で使う。
  • infantB2
    名詞乳児、赤ちゃんThe infant looked at the woman for a long time. 研究や医療の文章で使う語。ふだんの会話では baby。
  • preferA2
    動詞〜のほうを好むMost children preferred the native speaker. prefer A to B「B より A を好む」。過去形は r を重ねて preferred。
  • bilingualB2
    形容詞2つの言語を話すBilingual children grow up with two languages. bi- は「2つの」を表す(bicycle の bi- と同じ)。3つの言語なら trilingual。
  • reach forB1
    動詞句〜に手をのばすThe baby reached for the red toy. reach for the stars「高い目標をめざす」という言い方もある。
  • prejudiceB2
    名詞偏見She spoke out against prejudice at her school. ラテン語の prae(前もって)+ judicium(判断)から。prejudice against ~「〜に対する偏見」。

動画でもっと知る

生後10か月の赤ちゃんに、英語で話した人とフランス語で話した人が、だまって同じおもちゃを差し出すと、ボストンの子は英語の人、パリの子はフランス語の人のおもちゃを取りやすかった。ボストンの5歳児が肌の色より“なまり”で友だちを選んだ実験も。

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出典・参考文献(5件)タップで表示
  1. Kinzler, K. D., Dupoux, E., & Spelke, E. S. (2007) The native language of social cognition, PNAS 104(30)doi.org
  2. Kinzler, K. D., Shutts, K., DeJesus, J., & Spelke, E. S. (2009) Accent Trumps Race in Guiding Children's Social Preferences, Social Cognition 27(4)doi.org
  3. DeJesus, J. M., Hwang, H. G., Dautel, J. B., & Kinzler, K. D. (2017) Bilingual children's social preferences hinge on accent, Journal of Experimental Child Psychology 164doi.org
  4. Begus, K., Gliga, T., & Southgate, V. (2016) Infants' preferences for native speakers are associated with an expectation of information, PNAS 113(44)doi.org
  5. Kinzler, K. D., & Liberman, Z. (2017) Infants' inferences about language are social, PNAS 114(19)doi.org

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