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日本語のマジか!?ウソ

「日本」は「にっぽん」が正式? 2009年の政府答弁は「どちらか一方に統一する必要はない」

「日本」は「にっぽん」が正式? 2009年の政府答弁は「どちらか一方に統一する必要はない」

読む前に予想してみよう!

「日本」の正式な読み方は、法律で「にっぽん」と決められている

研究カード(どんな研究?)
対象
政府答弁書・辞典・公的機関の説明
規模
文献資料
研究の種類
公文書と辞典記述の確認(文献調査)
確かさ
★★★★☆
3秒でわかる

「日本」の読みを決めた法律はない。2009年、政府は「どちらの読みも広く通用しており、統一する必要はない」と答弁した。お札や切手のローマ字はNIPPON。英語のJapanの由来は諸説ある。

ひとことで言うと「にほん」も「にっぽん」も、どっちも正解なんだって!

もくじ
  1. 「1970年の閣議決定」は存在しなかった?
  2. 1934年の「にっぽん」案は採用されなかった
  3. お札はNIPPON、でも電話口では…
  4. 400年前の人も、両方言っていた
  5. 英語の Japan はどこから来た?
  6. どんでん返し:「正式」と「ふつう」は別もの
  7. まとめ

「日本」は「にほん」? それとも「にっぽん」?

学校で「正式には『にっぽん』」と聞いた人もいるかもしれません。ところが実は、「日本」の読み方を決めた法律はありません。

2009年、国会でこの質問を受けた政府は、答弁書でこう答えています。「『にっぽん』又は『にほん』という読み方については、いずれも広く通用しており、どちらか一方に統一する必要はないと考えている」。つまり政府の答えは、「どちらも通用しているから、一つに決めなくてよい」なのです。

01「1970年の閣議決定」は存在しなかった?

「政府は1970年に『にっぽん』と決めた」という話は、質問した議員の文書にまで書かれていました。ところが政府は答弁書で、そんな閣議決定はしていないと否定したのです。もっともらしい話ほど、原典で確かめると危ういことがあります。

021934年の「にっぽん」案は採用されなかった

辞典の記述を見てみましょう。小学館の『デジタル大辞泉』によると、1934年(昭和9年)、国語審議会の前身である臨時国語調査会が、国の呼び方を「ニッポン」に統一する案を決議しました。ただし政府には採用されていません。平凡社の『世界大百科事典』も、法律の制定には至らなかったとしています。

いっぽう日本放送協会(NHK)は1951年、正式の国号としては「ニッポン」、それ以外の場合は「ニホン」と言ってもよい、という方針を決めた、と『デジタル大辞泉』は書いています。

03お札はNIPPON、でも電話口では…

お札の裏を見てください。NIPPON GINKO と印刷されています。日本銀行の説明によると、「日本銀行」の読み方も法律で決まっているわけではありません。ただ、お札にこう印刷されていることもあって、「ニッポンギンコウ」と呼ぶようにしているそうです。

切手には、万国郵便連合の決まりで発行国の名前をローマ字で入れることになっています(国立印刷局)。日本郵便のサイトに載っている普通切手を見ると、たしかに NIPPON の文字があります。

ところが1987年の専門誌のコラムには、こんな話が載っています。筆者が日銀に電話をかけてみると、交換手は「ニホンギンコウでございます」と応答したというのです。同じコラムで一部上場の会社110社の英語の社名を調べたところ、JAPAN や略称を使う会社を除けば、NIPPON を使う会社が全体の約60%だったのに対し、NIHON は9社だけでした(いずれも1987年当時)。

書くときは NIPPON、話すときは…? 同じ「日本」でも場面で読みがゆれる
書くときは NIPPON、話すときは…? 同じ「日本」でも場面で読みがゆれる

04400年前の人も、両方言っていた

この「ゆれ」は昔からです。

『日本国語大辞典』には、1592年の『天草本平家物語』(キリシタン版のローマ字本。つづりはポルトガル語式)に Nippon という形が、1603〜04年の『日葡辞書』に Nifon という形が載っていると書かれています。『世界大百科事典』によれば、日本に来たヨーロッパ人たちは、当時の日本人が「日本」を Nifon とも Nippon とも読んでいたことを記録しています。Nifon の f が気になった人は、ハ行の音の歴史の記事もどうぞ。

「にほん」と「にっぽん」の関係について、デジタル大辞泉は、決め手となる説はないとしたうえで、「日」の呉音ニチから「ニチホン→ニッポン」となり、柔らかい発音が好まれて「ニホン」が生まれたのではないか、という見方を示しています。

05英語の Japan はどこから来た?

英語の Japan の由来には、いくつかの説があります。

  • 『世界大百科事典』:マルコ・ポーロの『東方見聞録』では Zipangu などと書かれた。その後ヨーロッパに広まった Japan, Japon, Japão などは、「日本」の中国北方の発音(jih pen)に基づくという説と、南方の発音(yat pun)に基づくという説がある
  • Dictionary.com:英語では1570〜80年ごろに Giapan の形で初めて記録され、マレー語の Japang などを経て、中国語から来た

ちなみに英語で小文字の japan は、もとは日本から伝わった、黒くてかたいつやを出す塗料(漆やそれをまねたワニス)のこと。動詞の to japan は「その塗料を塗る」で、a japanned box は「黒いつや塗りの箱」です。

06どんでん返し:「正式」と「ふつう」は別もの

政府の答えは「どちらでもよい」。でも、それぞれの現場には“決まり”があります。お札、切手、NHKの国号の方針は「ニッポン」。いっぽう『日本国語大辞典』も『デジタル大辞泉』も、両方の読みがある言葉は原則として「にほん」の見出しにまとめています。

そして「ニッポンギンコウ」を名乗る日銀でさえ、1987年のコラムによれば、筆者が電話をかけたときの応答は「ニホンギンコウ」でした。書かれた「正式」と、口から出る「ふつう」は、別の答えを持っているのです。

07まとめ

「にほん」か「にっぽん」か。政府の答えは「どちらも広く通用しているので、統一する必要はない」でした。400年以上前の人たちも、両方の言い方をしていたようです。

「にっぽん」に決めた閣議決定がある――そんな話も、政府の答弁書という原典に当たると否定されていました。ことばの「正解」は、うわさや思いこみではなく原典で確かめたいですね。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerIn 1934, an education ministry committee on the national language voted for "Nippon" as the single reading… 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

In 1934, an education ministry committee on the national language voted for "Nippon" as the single reading of the country's name, but the government never adopted the plan. In 1951, NHK decided to use "Nippon" for the official name of the country, while allowing "Nihon" in other cases. The Bank of Japan says that no law sets the reading of its own name either.

Partly because "NIPPON GINKO" is printed on its banknotes, it calls itself "Nippon Ginko." Both readings are old. Books written in Portuguese-style roman letters around 1600 recorded the forms "Nippon" and "Nifon." In 2009, the government told the Diet that both readings are widely used and that there is no need to unify them.

118 words ・ CEFR B1

和訳を見る

1934年、文部省の国語に関する調査会は、国の名前の読み方を一つにする案として「にっぽん」を決議したが、政府はその案を採用しなかった。1951年、NHKは国の正式な名前としては「にっぽん」を使い、それ以外の場合は「にほん」も認めることにした。日本銀行は、自分の名前の読み方も法律で決められてはいないと説明している。

お札に「NIPPON GINKO」と印刷されていることもあって、「にっぽんぎんこう」と名乗っている。どちらの読み方も古い。1600年ごろにポルトガル式のローマ字で書かれた本には、「Nippon」と「Nifon」の両方の形が記録されている。2009年、政府は国会に対し、どちらの読み方も広く使われていて、統一する必要はないと答えた。

4択リーディングクイズ

Q1. What happened to the 1934 plan?

Q2. Why does the Bank of Japan call itself "Nippon Ginko"?

Q3. What does the writer show with the books from around 1600?

重要単語

  • officialB1
    形容詞公式の、正式のThere is no official reading of the country's name. office(役所)と同じ語源。official language「公用語」、officially「公式に」。
  • pronunciationB1
    名詞発音Both pronunciations are correct. 動詞は pronounce(プロナウンス)だが、名詞は pro-nun-ciation で o が消える。つづりミスの定番。
  • banknoteB1
    名詞紙幣、お札The back of the banknote says "NIPPON GINKO." イギリス英語では note、アメリカ英語では bill がふつう。a 1,000-yen bill「千円札」。
  • unifyC1
    動詞統一する、一つにまとめるThe government saw no need to unify the readings. uni-(一つ)+-fy(〜にする)。unit, uniform, union も同じ uni-。
  • adoptB2
    動詞(案・方針を)採用する;養子にするThe plan was never adopted by the government. adapt(適応させる)と1字違い。adopt a plan / adopt a policy の形でよく使う。共通テスト(24本中5本)と早稲田大(10学部中9学部)の英語長文に出ていた。
  • deriveB2
    動詞(from 〜で)〜に由来するThe word "Japan" may derive from a Chinese pronunciation. be derived from 〜 の受け身形もよく使う。名詞は derivation。
  • lacquerC1
    名詞漆(うるし)、ラッカーThe old box was covered in black lacquer. 小文字の japan は、黒くてかたいつやを出す塗料(漆やそれをまねたワニス)のこと。to japan で「その塗料を塗る」。
「日本」は「にほん」か「にっぽん」か。法律で決まった正解はない。2009年、政府は答弁書で「いずれも広く通用」「統一する必要はない」。「1970年の閣議決定でにっぽんに統一」という話も、政府は否定した。

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出典・参考文献(5件)タップで表示
  1. 岩國哲人 (2009) 日本国号に関する質問主意書(第171回国会 質問第570号), 衆議院shugiin.go.jp
  2. 内閣 (2009) 衆議院議員岩國哲人君提出日本国号に関する質問に対する答弁書(内閣衆質171第570号), 衆議院shugiin.go.jp
  3. デジタル大辞泉「にっぽん」・精選版 日本国語大辞典「にほん」「にっぽん」(小学館)、世界大百科事典「日本」(平凡社)、コトバンク掲載kotobank.jp
  4. 日本銀行「日本銀行の呼称はどのように読むのですか?」(教えて!にちぎん)boj.or.jp
  5. 中村晋 (1987)「日本」の読み方, 情報の科学と技術 37(6), 245-246doi.org

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