「見れる」は日本語の乱れ? 最新調査で「見れた」53.8%、ら抜きは尾張で200年前から

読む前に予想してみよう!
「見れる」「来れる」などのら抜き言葉は、最近の若者が作った言い方だ
尾張(愛知県西部)の方言では19世紀初頭から使われ、話し言葉の世界でも昭和初期から現れていた。
- 対象
- 全国16歳以上(文化庁の世論調査)と江戸後期の尾張方言資料
- 規模
- 3,777人(2026年発表の調査)
- 研究の種類
- 世論調査と日本語史の文献研究
- 確かさ
- ★★★★☆
2026年発表の文化庁調査で、「見れた」をふだん使うと答えた人は53.8%。ら抜きは19世紀初頭の尾張方言にすでにあった。ただ「乱れか進化か」は研究では決まらない。
ひとことで言うと「見れる」のような「ら抜き」は、200年ほど前の愛知の言葉にもう出てくるんだって!
「今年は初日の出が見れた」と「見られた」。あなたはふだん、どちらを使いますか?
文化庁が2026年10月2日に発表した最新の「国語に関する世論調査」では、「見れた」と答えた人が53.8%、「見られた」は44.5%でした。いわゆる「ら抜き言葉」は、動詞によってはもう多数派です。
「若者の日本語の乱れ」と言われがちなら抜き言葉。でも歴史をさかのぼると、「見れる」型の言い方は、江戸時代後期(19世紀初め)の尾張、いまの愛知県西部の方言ですでに使われていたのです。
01「見れた」が初めて逆転したのは2015年度
国語審議会の報告によると、1995年の文化庁調査では「食べられない」「来られる」「考えられない」のような本来の言い方を使う人が、平均で7割を超えていました。
流れが変わったのは2015年度の調査(2016年2〜3月実施)です。「見れた」48.4%が「見られた」44.6%を、「出れる?」45.1%が「出られる?」44.3%を、初めて上回りました。
ただし、2020年度から調査が面接から郵送に変わり、「どちらも使う」の選択肢もなくなりました。2015年度の48.4%と今回の53.8%を、そのまま並べて比べることはできません。
02「ら」は短い動詞から抜けていく
数字を並べると、「見る」「来る」「出る」のような短い動詞ほど「ら」が抜けた形を選ぶ人が多く、「考える」のような長い動詞ではほとんど抜けていません。
この傾向は、歴史研究とも重なります。三宅俊浩さんの2019年の論文によると、尾張の方言では上方・江戸より約100年早く、19世紀初頭にはら抜き言葉が使われていました。しかも最初は、「み・る」のように2拍(2音)の動詞だけに起きていたのです。
三宅さんの推定はこうです。尾張では、「おれる(いることができる)」と、尊敬の「おられる」の意味の違いを、「ら」があるかないかの違いだと解釈し直す動きが起きた。その解釈が、「見る」のように語幹と語尾を切り分けにくい2拍の動詞にまで広がった——。この説は、中国地方にもら抜き言葉が多いこととも矛盾しないそうです。
話し言葉の世界では、ら抜き言葉は昭和初期から現れ、戦後さらに増えました(国語審議会の報告)。東京の言葉では、大正の終わり〜昭和の初めに地方の言葉が流れ込んで使われ始めた、という指摘もあります(三宅論文が引く田中1983)。

03「乱れ」ではなく「区別」?
「見られる」には、受け身(先生に見られる)、尊敬(先生が見られる)、自発、そして可能(初日の出が見られる)という、四つもの意味があります。ところが「見れる」は可能の意味だけ。五段動詞の「読む→読める」「書く→書ける」と同じ形にそろうことにもなります。
英語なら、はじめから別の形です。
- I could see the first sunrise.(初日の出が見れた=可能)
- I was seen by my teacher.(先生に見られた=受け身)
1995年の国語審議会も、可能の意味だけに「見れる」を使い、受け身や尊敬と区別するのは合理的だという考え方があることを報告に書いています。そのうえで、改まった場での使用は「現時点では認知しかねる」としました。
英語でも、不規則な形が「ならされる」変化は起きています。2007年に『Nature』に載った研究では、古英語の不規則動詞177個のうち、今も不規則なのは98個。しかも使われる頻度の低い動詞ほど早く規則化していました(使われる頻度が100分の1の動詞は、10倍の速さで規則的な形になる)。日本語のら抜きは短い動詞から進んだので、言葉のならされ方は一つのパターンでは決まらないようです。
04どんでん返し:研究は「進化」とも言っていない
でも、「乱れか、進化か」という問いには注意が必要です。研究が示せるのは、いつ・どこで・どの動詞から広がったか、どの世代が使うか、といった事実です。「乱れ」も「進化」も、じつはどちらも評価の言葉。記述を重んじる言語学では、ふつう変化に「良い・悪い」の順位をつけません。「進化」と呼ぶと「より良くなった」ように聞こえますが、研究がそこまで言っているわけではないのです。
それに、ら抜きは一気に進んでいるわけでもありません。「考えれない」を使う人は6.2%だけ。国立国語研究所のサイトでは、留学生がレポートに「考えれる」と書くと文全体が稚拙に見えるおそれがある、という指摘も紹介されています。
05まとめ
「見れる」のようなら抜きは、ここ数年で突然生まれた若者言葉ではなく、200年ほど前の尾張の方言にすでにあった言い方でした。可能と受け身を分けるという、筋の通った面もあります。
ただし、それを「進化」と呼ぶか「乱れ」と呼ぶかは、研究ではなく私たちの価値観の問題です。会話では気にせず、改まった場では「見られる」。場面で使い分けられる人が、いちばん日本語に強い人なのかもしれません。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerIn Japanese, "mirareru" can mean "can see" or "be seen," and it can also show respect, so listeners…
音声
4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
Japanese has two ways to say "I could see it." The older form is "mirareta," and the newer one is "mireta." In a survey from 2026, 53.8 percent of people chose "mireta." Young people use it the most. Some people say the new form is bad Japanese.
But it is not really new. People in Owari, now part of Aichi, used this kind of form in the early 1800s.
69 words ・ CEFR A2
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日本語には「見ることができた」を言う方法が二つあります。古い形は「見られた」で、新しい形は「見れた」です。2026年の調査では、53.8%の人が「見れた」を選びました。若い人がいちばんよく使います。新しい形は悪い日本語だと言う人もいます。
でも、本当は新しくありません。今の愛知県の一部である尾張の人々は、1800年代の初めにこうした形を使っていました。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
「見れた」という新しい言い方について述べているので C。
Q2. What percent of people chose "mireta" in the 2026 survey?
53.8 percent of people chose "mireta" とあるので B。
Q3. In this passage, "survey" means ___.
多くの人に同じ質問をして答えを集めるもの=調査なので A。
In Japanese, "mirareru" can mean "can see" or "be seen," and it can also show respect, so listeners sometimes have to guess. The shorter form "mireru" only means "can see." This so-called "ra-less" form has often been called sloppy, but a government survey shows that more than half of people now use it with some verbs.
In the latest results, published in October 2026, 53.8 percent chose "mireta" over "mirareta." Only 6.2 percent chose "kangaerenai," the ra-less form of a longer verb. A 2019 study found that the form was used in the Owari dialect in the early 1800s, about a hundred years earlier than in the central dialects of Kyoto, Osaka and Edo. At first it appeared only with the shortest verbs.
123 words ・ CEFR B1
和訳を見る
日本語の「見られる」は「見ることができる」とも「見られる(受け身)」とも取れ、尊敬を表すこともあるので、聞き手は推測しなければならないことがある。短い形の「見れる」は「見ることができる」の意味しかない。このいわゆる「ら抜き」の形はしばしばだらしないと言われてきたが、政府の調査によると、今では一部の動詞では半数を超える人がこれを使っている。
2026年10月に発表された最新の結果では、53.8%が「見られた」より「見れた」を選んだ。より長い動詞のら抜き形である「考えれない」を選んだのは6.2%だけだった。2019年の研究によると、この形は1800年代初めに尾張方言で使われており、京都・大坂や江戸の中央の言葉より約100年早かった。最初は最も短い動詞にしか現れなかった。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the main topic of the passage?
ら抜きという動詞の形の変化と、その起源(尾張方言)を述べているので D。
Q2. According to the passage, when was the form used in the Owari dialect?
the form was used in the Owari dialect in the early 1800s とあるので B。2019年は研究の発表年。
Q3. Why might "mireru" be helpful for listeners?
mirareru は意味が複数あり推測が必要だが、mireru は「見ることができる」だけなので C。
For decades, forms like "mireru" and "koreru" have been treated as proof that young people are wrecking Japanese. In the Agency for Cultural Affairs' 2015 survey, "mireta" overtook the traditional "mirareta" for the first time, by 48.4 to 44.6 percent. In the round released in October 2026, 53.8 percent picked "mireta," and among respondents aged 16 to 19 the figure reached 81.3 percent.
The survey moved from interviews to mail in 2020 and dropped the "use both" option, so the two years are not a perfect match, but the age gap is hard to miss. The change is also uneven. Short verbs such as "miru," "kuru" and "deru" lose their "ra" far more often than "kangaeru," whose ra-less form only 6.2 percent chose. History fits this pattern.
The linguist Toshihiro Miyake found that the Owari dialect had the form by the early 1800s, about a century ahead of the central dialects, and at first only in two-mora verbs. Whether all this counts as progress or decay is a matter of values. Either way, the new form keeps "can see" apart from "be seen," much as English does with "could see" and "was seen."
193 words ・ CEFR B2
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何十年もの間、「見れる」「来れる」のような形は、若者が日本語を壊している証拠として扱われてきた。文化庁の2015年度の調査で、「見れた」は伝統的な「見られた」を48.4%対44.6%で初めて上回った。2026年10月に発表された回では53.8%が「見れた」を選び、16〜19歳の回答者では81.3%に達した。
調査は2020年に面接から郵送に変わり、「どちらも使う」の選択肢もなくなったので、二つの年は完全には比べられないが、世代差は見逃しようがない。変化はむらもある。「見る」「来る」「出る」のような短い動詞は、「考える」よりはるかに「ら」が抜けやすく、「考える」のら抜き形を選んだのは6.2%だけだった。歴史もこのパターンと合う。
言語学者の三宅俊浩さんは、尾張方言には1800年代初めまでにこの形があり、中央の方言より約1世紀早く、しかも最初は2拍の動詞だけだったことを明らかにした。これを進歩と見るか衰退と見るかは価値観の問題だ。いずれにせよ、新しい形は「見ることができる」と「見られる」を区別しており、英語が「could see」と「was seen」で区別しているのとよく似ている。
4択リーディングクイズ
Q1. Why does the author say the 2015 and 2026 results are "not a perfect match"?
The survey moved from interviews to mail ... and dropped the "use both" option とあるので B。
Q2. What does "The change is also uneven" refer to?
短い動詞は「考える」よりはるかに ra が抜けやすい、と続くので D。
Q3. What is the author's view on calling the change "progress" or "decay"?
Whether all this counts as progress or decay is a matter of values とあるので A。
重要単語
- passiveB1形容詞・名詞受け身の;受動態"I was seen by my teacher" is a passive sentence.
be+過去分詞で作る。反対は active(能動の)。日本語の「られる」は受け身・尊敬・可能・自発を兼ねる。 - potentialB2名詞・形容詞可能(〜できる);潜在的な"Mireru" is a potential form of the verb "miru."
ふだんは「潜在力・可能性」の意味が多い。文法では potential form=可能形。 - dialectB1名詞方言Some new forms start in a local dialect and spread later.
dia-(通して)+lect(話す)。accent(なまり)は発音の違い、dialect は語彙・文法まで含む。 - surveyB1名詞・動詞調査(する)The survey asked 6,000 people about their language.
名詞は前(SUR-)、動詞は後ろ(-VEY)を強く読む。conduct a survey「調査を行う」。 - generation gapB1名詞世代間の差The survey shows a clear generation gap.
generation は「世代」。the younger generation「若い世代」。共通テスト(24本中6本)と早稲田大(10学部すべて)の英語長文に出ていた。 - regularizeC1動詞規則的にする、ならすOver time, English has regularized many past-tense forms.
regular(規則的な)+-ize。英語の不規則動詞の多くが、長い時間をかけて -ed 型にならされてきた。 - honorificC1形容詞・名詞尊敬の;敬語Japanese has several honorific forms of "miru."
honor(敬意)から。日本語の敬語は英語で honorifics と言う。 - formalB1形容詞改まった、正式なUse "mirareru" in formal writing to be safe.
反対は informal / casual。formal letter「正式な手紙」。
公式・一次情報をチェック
- 令和7年度「国語に関する世論調査」の結果について(文化庁)bunka.go.jp
- 外国人に対する日本語教育でも「ら抜き言葉」を教えた方がいいですか(国立国語研究所 ことば研究館)kotoba.ninjal.ac.jp
このネタ、誰かに教えたくなった?
「見れる」は若者の乱れ…と思ったら、ら抜き言葉は19世紀初頭の尾張(愛知県西部)の方言ですでに使われていたらしい。2026年の文化庁調査では「見れた」を使う人が53.8%。でも「考えれない」を使う人は6.2%だけ。
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出典・参考文献(5件)タップで表示
- 三宅俊浩 (2019) 近世後期尾張周辺方言におけるラ抜き言葉の成立, 日本語の研究 15(3)doi.org
- 文化庁 (2026) 令和7年度「国語に関する世論調査」の結果の概要bunka.go.jp
- 文化庁 (2016) 平成27年度「国語に関する世論調査」の結果についてbunka.go.jp
- 第20期国語審議会 (1995) 新しい時代に応じた国語施策について(審議経過報告)I 言葉遣いに関すること, 文化庁bunka.go.jp
- Lieberman et al. (2007) Quantifying the evolutionary dynamics of language, Naturedoi.org
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。
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