「姑息な手段」は“ひきょう”じゃなかった。本来の意味「一時しのぎ」を選んだ人は17.4%

読む前に予想してみよう!
「姑息」の「姑」は、もともと「しゅうとめ」ではなく「しばらく」という意味で使われている
デジタル大辞泉は「姑」はしばらく、「息」は休むの意からとしている。そこから「一時の間に合わせ」の意味になった。
- 対象
- 全国16歳以上の個人
- 規模
- 3,579人(令和3年度。調査対象6,000人)
- 研究の種類
- 全国世論調査(郵送法)+辞書の記述
- 確かさ
- ★★★★☆
「姑息」の本来の意味は「一時しのぎ」。文化庁の令和3年度調査でこれを選んだ人は17.4%で、73.9%は「ひきょうな」を選んだ。「姑」は“しばらく”、「息」は“休む”の意味。
ひとことで言うと「姑息」は本来、「ずるい」じゃなくて「その場しのぎ」っていう意味なんだって!
「そんな姑息な手を使うなんて!」
この「姑息」、あなたは「ずるい」「ひきょう」の意味だと思っていませんか。じつは辞書が本来の意味としてのせているのは、「一時しのぎ」「その場しのぎ」です。
文化庁の「国語に関する世論調査」(令和3年度)で「姑息な手段」の意味をたずねたところ、本来の「一時しのぎ」を選んだ人は17.4%。「ひきょうな」を選んだ人は73.9%でした。4人に3人が、本来とはちがう意味だと思っていたのです。
01文化庁の調査で「ひきょう」が圧勝
年代別に見ると、すべての年代で「ひきょうな」が「一時しのぎ」を上回っていました。とくに40代以下では、両者の差が60ポイント以上ありました。
「若い人が言葉を乱している」という話ではなさそうです。上の世代でも、「ひきょうな」を選んだ人のほうが多かったのです。
02「姑息」の本来の意味は?「姑」は“しばらく”
では、なぜ「姑息」が「一時しのぎ」なのでしょう。答えは漢字にあります。
デジタル大辞泉によると、「姑息」は「姑」はしばらく、「息」は休むという意味からできた言葉です。「姑」と聞くと「しゅうとめ(夫の母)」を思いうかべますが、ここでは「しばらく」の意味で使われています。
つまり「姑息」は、もともと「しばらく息をつく」こと。精選版 日本国語大辞典も、「しばらくの間、息をつくこと」が転じて「一時のまにあわせに物事をすること」になった、と説明しています。
使い方の例も見てみましょう。
- 姑息な手段をとる:根本から解決せず、その場だけ何とかする
- 因循姑息(いんじゅんこそく):古いやり方にこだわり、一時のがれをくり返すこと
たとえば、雨もりする屋根の下にバケツを置くだけで、屋根を直さない。これが本来の「姑息な対応」です。ずるくはありませんが、問題は何も解決していません。

03古い中国の書物では「小人物の愛し方」
「姑息」は、古代中国の書物『礼記(らいき)』に出てくる言葉です。
日本国語大辞典と字通によると、『礼記』には、曾子(そうし)という人物が「君子は徳によって人を愛するが、細人(小人物)は姑息によって人を愛する」という意味のことを言った話があります。字通は、この「姑息」を「かりそめ」と説明しています。りっぱな人は徳で人を愛し、小人物はその場かぎりのやり方で人を愛する、というわけです。
日本でも1650年の『翁問答』では、子どもの願うままに育てることを「姑息の愛」と呼んでいます。今の言葉でいえば「甘やかし」に近いでしょう。
日本国語大辞典は、近世(江戸時代)には『礼記』を受けて、儒教の立場からよくない意味の言葉として使われたとしています。一般に「一時のがれ」の意味で広く使われるようになるのは、近世の末ごろからです。明治の小説、尾崎紅葉の『金色夜叉』にも「姑息して」という使い方が出てきます。
04英語で言うなら?
「一時しのぎ」の意味の「姑息」に近い英語は、オックスフォードの学習辞典で確かめると次のとおりです。
- stopgap:もっとよいものを探す間、しばらく使う物ややり方。The arrangement was only intended as a stopgap.(その取り決めは間に合わせのつもりだった)
- a stopgap measure:一時しのぎの対策
- a temporary fix:一時的な解決策(temporary=一時的な)
- palliative:(医学)原因を治さずに痛みをやわらげる薬や治療。(改まった語で、よくない意味で)問題の原因を解決せずに、状況をよく見せるだけの行動や決定
palliative の2つ目の意味は、本来の「姑息」とほぼ同じです。いっぽう、「ひきょうな」の意味で言いたいなら、underhand(ひそかで不誠実な)や sneaky(こそこそした。That was a sneaky trick!=ずるい手だな!)のほうが合います。
05どんでん返し:「ひきょう」の意味は、まったくの誤解ではない
デジタル大辞泉は補足(補説)で、近年は「その場だけの間に合わせ」であることから、「ひきょうなさま、正々堂々と取り組まないさま」の意味で用いられることがあると書いています。その場をごまかすやり方は、たしかに「正々堂々」ではありません。意味がずれていった道すじは、たどることができます。
もうひとつ。『礼記』の「姑息」は、もともと「小人物の目先だけの愛し方」という、よくない意味をふくんでいました。日本でも江戸時代には、よくない意味の言葉として使われていました。「姑息」は、はじめからほめ言葉ではなかったのです。
また、令和3年度の調査は郵送、平成22年度の調査は調査員による面接で行われました。文化庁も、調査方法が変わったので過去の数字は参考値で、比べるときは注意が必要だとしています。15.0%から17.4%に増えた、と単純には言えません。
06まとめ
「姑息」は、「しばらく(姑)休む(息)」から生まれた「一時しのぎ」という意味の言葉です。ところが今は、4人に3人が「ひきょうな」の意味だと思っています。
「姑」は“しゅうとめ”ではなく“しばらく”。この一言を覚えておけば、本来の意味は忘れません。そして英語で「その場しのぎ」と言いたいときは、a stopgap を思い出してください。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerIf you hear "kosoku na shudan" in Japanese, you probably imagine a dirty trick.
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4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
Many Japanese people think the word "kosoku" means "unfair." But in dictionaries, it means "a quick fix for now." The first part of the word means "for a while," and the second part means "to rest."
In a national survey, only 17.4 percent of people chose the dictionary meaning. About 74 percent chose "unfair." In English, a quick fix like this is called a "stopgap."
65 words ・ CEFR A2
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多くの日本人は「姑息」という言葉が「ひきょうな」という意味だと思っています。でも辞書では、「今だけの間に合わせ」という意味です。この言葉の前半は「しばらく」、後半は「休む」という意味です。
全国調査では、辞書の意味を選んだ人は17.4%だけでした。約74%が「ひきょうな」を選びました。英語では、このような間に合わせを「stopgap」と言います。
4択リーディングクイズ
Q1. What does "kosoku" mean in dictionaries?
in dictionaries, it means "a quick fix for now" とあるので B。
Q2. How many people chose the dictionary meaning in the survey?
only 17.4 percent of people chose the dictionary meaning とあるので C。約74%は「ひきょうな」を選んだ人。
Q3. What is a "stopgap" in English?
a quick fix like this is called a "stopgap" とあるので C。
If you hear "kosoku na shudan" in Japanese, you probably imagine a dirty trick. But dictionaries say "kosoku" means something done only to get through the moment. Think of putting a bucket under a leaking roof instead of fixing it. The word is built from two characters meaning "for a while" and "to rest."
In a survey by Japan's Agency for Cultural Affairs in early 2022, only 17.4 percent of respondents picked this meaning. Most (73.9 percent) chose "unfair." In every age group, "unfair" was the more popular answer. In English, the original meaning is close to "stopgap," and the newer one is close to "sneaky."
106 words ・ CEFR B1
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日本語で「姑息な手段」と聞くと、たぶんずるい手を思いうかべるだろう。でも辞書によると、「姑息」はその場を乗り切るためだけに行うことを意味する。雨もりする屋根を直さずに、その下にバケツを置くことを思いうかべてほしい。この語は「しばらく」と「休む」を意味する2つの漢字からできている。
2022年の初めに日本の文化庁が行った調査では、この意味を選んだ回答者は17.4%だけだった。大多数(73.9%)は「ひきょうな」を選んだ。すべての年代で、「ひきょうな」のほうが多い答えだった。英語では、本来の意味は「stopgap」に、新しい意味は「sneaky」に近い。
4択リーディングクイズ
Q1. Which example shows the original meaning of "kosoku"?
本来の意味の例として putting a bucket under a leaking roof instead of fixing it が挙がっているので B。
Q2. What did the survey find about age groups?
In every age group, "unfair" was the more popular answer とあるので C。
Q3. According to the passage, which English word matches the newer meaning?
the newer one is close to "sneaky" とあるので B。
In everyday Japanese, calling a plan "kosoku" usually means it is unfair or sneaky. But that is not the meaning dictionaries give first. The two characters mean "for a while" and "to rest," so the word first described taking a short breather, and later doing something only to get through the moment.
A national survey carried out by mail in early 2022 got answers from about 3,600 people. Just 17.4 percent said "kosoku na shudan" means "a temporary measure," while 73.9 percent chose "unfair," and the gap was more than 60 points among people in their forties or younger.
Even so, the newer meaning did not come out of nowhere. The word comes from the Chinese classic "Liji" (the Book of Rites), where it described the shallow, short-term way small-minded people show love, and in the Edo period it was used as a negative word. One dictionary also explains that the newer sense grew out of the idea of a fix that only works for the moment. In English, the original sense is close to "stopgap," or to the second meaning of "palliative."
183 words ・ CEFR B2
和訳を見る
日常の日本語では、ある計画を「姑息」と呼ぶと、たいていそれが不公平だ、ずるいという意味になる。しかし、辞書が最初に挙げる意味はそうではない。2つの漢字は「しばらく」と「休む」を意味するので、この語はまず少し息をつくことを表し、のちにその場を乗り切るためだけに何かをすることを表すようになった。
2022年の初めに郵送で行われた全国調査では、約3,600人から回答を得た。「姑息な手段」の意味として「一時しのぎ」を選んだのはわずか17.4%で、73.9%が「ひきょうな」を選び、40代以下ではその差が60ポイントを超えていた。それでも、新しい意味は何もないところから現れたわけではない。
この語は中国の古典『礼記』に由来し、そこでは小人物が人を愛する浅くその場かぎりのやり方を表していた。そして江戸時代にはよくない意味の語として使われた。ある辞書は、新しい意味が「その場だけの間に合わせ」という考えから生まれたと説明している。英語では、本来の意味は「stopgap」、あるいは「palliative」の2つ目の意味に近い。
4択リーディングクイズ
Q1. How did the meaning of "kosoku" develop, according to the passage?
the word first described taking a short breather, and later doing something only to get through the moment とあるので B。
Q2. Which group showed a gap of more than 60 points?
the gap was more than 60 points among people in their forties or younger とあるので A。
Q3. Why does the writer say the newer meaning "did not come out of nowhere"?
『礼記』で小人物の愛し方を表し、江戸時代にはよくない意味の語として使われたと続くので、最初から否定的な色があったから。C。
重要単語
- stopgapC1名詞間に合わせ、一時しのぎThe arrangement was only a stopgap.
stop(ふさぐ)+gap(すき間)。a stopgap measure「一時しのぎの対策」の形でよく使う。 - temporaryB2形容詞一時的なThis is only a temporary fix.
反対語は permanent(永続的な)。a temporary fix/measure/solution はよく使う組み合わせ。 - sneakyB2形容詞こそこそした、ずるいThat was a sneaky trick!
くだけた語。今の「姑息」の受け取られ方(ひきょう)に近い。 - underhandC2形容詞ひそかで不誠実な、ずるいI would never use such an underhand trick.
underhanded とも言う。今の「姑息」の受け取られ方(ひきょう)に近い。cowardly(おくびょうな)とは意味がちがう。 - palliativeC2名詞(原因を治さない)緩和剤、その場しのぎの策The grant was only a temporary palliative.
医学では「痛みをやわらげる薬・治療」。改まった文で、問題の根本を解決しない手という否定的な意味にもなる。 - respondentC1名詞(調査の)回答者Most respondents chose the newer meaning.
respond(答える)+-ent(人)。調査・統計の英文でよく出る。
公式・一次情報をチェック
- 「国語に関する世論調査」の結果(文化庁)bunka.go.jp
- stopgap(Oxford Learner's Dictionaries)oxfordlearnersdictionaries.com
- palliative(Oxford Learner's Dictionaries)oxfordlearnersdictionaries.com
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「姑息な手段」の姑息は、本来「ひきょう」ではなく「一時しのぎ」。でも文化庁の調査で本来の意味を選んだ人は17.4%、「ひきょうな」は73.9%。「姑」は“しばらく”、「息」は“休む”。英語なら a stopgap(間に合わせ)が近い。
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出典・参考文献(3件)タップで表示
- 文化庁 (2022) 令和3年度「国語に関する世論調査」の結果の概要(問12)bunka.go.jp
- デジタル大辞泉「姑息」・精選版 日本国語大辞典「姑息」・普及版 字通「姑息」(コトバンク掲載)kotobank.jp
- stopgap / palliative / underhand / sneaky / temporary(Oxford Advanced Learner's Dictionary)oxfordlearnersdictionaries.com
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。
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