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「英語は100万語」は本当? 本のデータでは約102万語、でも半分以上は辞書に載っていなかった

「英語は100万語」は本当? 本のデータでは約102万語、でも半分以上は辞書に載っていなかった

読む前に予想してみよう!

「英語の単語は全部で何語か」には、言語学者が認めるただ一つの正解がある

研究カード(どんな研究?)
対象
電子化された英語の本・大辞典・アメリカ英語の母語話者
規模
約520万冊の本(英語部分は3610億語)/22万1268人のオンライン語彙テスト
研究の種類
コーパス分析・辞書との照合・オンライン調査
確かさ
★★★☆☆
3秒でわかる

本のデータで数えた英語は2000年に約102万語。でもその52%は大辞典に載っていないと推計された。OEDの見出しは50万超、アメリカ英語を母語とする20歳が知っているのは約4万2000語。

ひとことで言うと英語の単語の数は数え方しだい。本なら約100万、ネイティブは約4万!

もくじ
  1. 「100万語」の出どころは一つじゃない
  2. 辞書に載らない「語彙の暗黒物質」
  3. OED は「50万語」。でも6割以上は…
  4. ネイティブは何語知っている?
  5. どんでん返し:英語の単語は「数え切れない」
  6. まとめ

「英語には100万語ある」。そんな話を聞いたことはありませんか?

実はこれ、まるっきりのデタラメではありません。ハーバード大学やグーグルなどの研究チームが、電子化された大量の本で数えたところ、2000年の英語の単語は約102万2000語と推計されたのです。

ところが同じ研究は、その52%が OED(オックスフォード英語辞典)にも Merriam-Webster の大辞典にも載っていないとも推計していました。英語の単語の半分以上は、辞書の外で暮らしていたのです。

01「100万語」の出どころは一つじゃない

「英語は100万語」という数字の出どころは、学術研究だけではありません。たとえば英語のウェブサイトを監視しているという企業 Global Language Monitor は「英語は105万語近い」と主張しています。心理学者のブリスバールト(Brysbaert)らは、2016年の論文の注でこの主張を紹介し、「その大半は人名や、意味がすぐわかる派生語・合成語・複数の語からなる表現だ」と書き添えています。

一方、学術誌に載った推計としては、2011年に『Science』誌に載ったミシェル(Michel)らの研究があります。

ここでいう「単語」は、スペースで区切られた文字のかたまり(1-gram)のこと。辞書がふつう見出しにしない固有名詞や合成語(論文の例では whalewatching)も含まれ、辞書との差の一部はそのせいだと論文自身が書いています。

02辞書に載らない「語彙の暗黒物質」

研究チームは、2000年の単語リストを使用頻度ごとに分けて見本を抜き出し、OED と Merriam-Webster の大辞典(Unabridged)に載っているかを手で調べました(固有名詞は除外)。よく使われる単語はほぼ載っていましたが、10億語に1〜10回しか出てこない単語では、67%がどちらの辞書にも載っていなかったのです。しかも、この「まれな単語」がリスト全体の63%を占めていました。

こうして、英語の単語の52%は標準的な辞書に記録されていない「語彙のダークマター(暗黒物質)」だ、という推計が出てきます。論文があげた例は aridification(土地が乾燥していくこと)、slenthem(楽器の一種)、そして皮肉なことに deletable(削除できる)。

辞書の「遅れ」も見つかりました。American Heritage Dictionary 第4版が2000年に加えた2077語(buckyball, netiquette など)を調べると、その半分以上は、100年前の本ですでに「単語」と数えられるほど使われていたのです。

よく使う単語は辞書に載っている。でも、まれな単語の多くは辞書の光が届かない
よく使う単語は辞書に載っている。でも、まれな単語の多くは辞書の光が届かない

03OED は「50万語」。でも6割以上は…

では、最大級の英語辞典はどうでしょう。OED の公式サイトは、収録数を「50万を超える見出し(entries)」、用例は350万と紹介しています。

OED は、頻度帯の表も公開しています。廃語ではない見出しを、よく使われる順に8つの帯に分けたものです。

  • 帯8(100万語に1000回より多い。the, and, of など)……0.02%
  • 帯7と帯6(man, water, dog, happy など日常の語)……合わせて約1.2%
  • 帯2(100万語に0.01回未満)……45%
  • 帯1(現代の文章にはまず出てこない語)……18%

つまり OED の現役の見出しの6割以上(45%+18%)は、OED 自身が「ほとんどの人は知らない」「現代の文章にはまず出てこない」と説明するレベルの語なのです。ちなみに帯8に入る名詞は time ただ一つだけだそうです。

04ネイティブは何語知っている?

ベルギー・ゲント大学のブリスバールトらは2016年、6万1800語の見出し語(レンマ)のリストを用意し、インターネット上の語彙テストで22万1268人に「知っている単語」を選んでもらいました。テストにはでたらめな偽単語も混ぜてあり、当てずっぽうの「知ってる」は差し引かれます。

その結果、アメリカ英語を母語とする20歳は、平均(中央値)で約4万2000レンマを知っていると推計されました。下位5%の人で約2万7000、上位5%の人で約5万2000。60歳では約4万8200に増え、大人になってからも、およそ2日に1語のペースで新しい単語を覚えている計算です。

レンマとは、活用形をまとめた辞書の見出しの形のこと。さらに help と helplessly のような「単語の家族(ワードファミリー)」でまとめて数えると、20歳で約1万1100にまで減ります。

ただし、ここでの「知っている」は、その単語があることを知っている程度の浅い知識も含みます。

05どんでん返し:英語の単語は「数え切れない」

ここで、身もふたもない話を。ブリスバールトらによると、「ネイティブは何語知っているの?」と聞かれた研究者の答えは、たいてい深いため息と「単語の定義しだいだ」という説明から始まるそうです。「英語は全部で何語?」となると、さらにややこしくなります。

理由の一つは、文章のデータを大きくするほど、新しい種類の語が見つかり続けること。言葉の使い手はたえず新しい語を作るので、語の種類には上限がないという見方もあります。約1兆語ぶんの英語のウェブページを集めたデータでは1360万種類もの「語」が数えられ、増え方が止まる気配はありませんでした(その多くは記号まじりの文字列でしたが)。

本のデータにもクセがあります。ペチェニック(Pechenick)らの2015年の研究は、Google Books はどの本も1冊ずつ入った図書館のようなもので、ベストセラーもだれも読まない本も同じ1冊として数えられること、そして20世紀を通じて学術的な文章(論文など)の割合が増えて、語の使われ方の変化がゆがんで見えることを指摘しました。

つまり「約102万語」は、「本に一定以上の回数出てくる文字列から、ゴミを取りのぞいたもの」という一つの数え方の答え。大辞典なら50万あまり、母語話者の頭の中なら4万ちょっと。どれもウソではなく、「単語」の定義がちがうのです。

06まとめ

「英語は100万語」は、半分ホント。本のデータで数えた一つの推計としては、たしかに約102万語でした。でもそのうち半分以上は辞書に載らない語で、ふつうの人が出会うことはまずありません。

英語の単語は、数えるそばから増えていく「生きもの」です。今日もどこかで、だれかが新しい単語を coin(作り出す)しているかもしれません。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerResearchers who study vocabulary say the size of English depends on what you count as a word. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

Researchers who study vocabulary say the size of English depends on what you count as a word. In 2011, a team from Harvard and Google built a collection of more than five million digitized books. They listed strings of characters that appeared more than once per billion words and subtracted the share that were numbers, typos or foreign words.

Their estimate for the year 2000 was about 1,022,000 English words, up from about 597,000 in 1950. When they checked samples against two major dictionaries, they estimated that 52 percent of these words were listed in neither. The Oxford English Dictionary has more than 500,000 entries. A 2016 online study found that the average 20-year-old native speaker of American English knows about 42,000 lemmas.

123 words ・ CEFR B1

和訳を見る

語彙を研究する人たちは、英語の大きさは何を単語として数えるかによると言う。2011年、ハーバード大学とグーグルのチームは、500万冊を超える電子化された本のデータを作った。彼らは10億語に1回より多く出てくる文字列をリストにし、そのうち数字・つづりの誤り・外国語が占める割合を差し引いた。

2000年についての推計は約102万2000語で、1950年の約59万7000語から増えていた。見本を2つの大きな辞書と照らし合わせると、これらの単語の52%はどちらにも載っていないと推計された。オックスフォード英語辞典には、50万を超える見出しがある。2016年のオンライン研究では、アメリカ英語を母語とする平均的な20歳は約4万2000のレンマを知っていることがわかった。

4択リーディングクイズ

Q1. What did the 2011 team subtract from their count?

Q2. About how many English words did the team estimate for 1950?

Q3. What can we infer from the passage?

重要単語

  • lexiconC1
    名詞(ある言語の)語彙全体The English lexicon keeps growing every year. ギリシャ語 lexis(ことば)から。vocabulary が「個人の語彙」にも使えるのに対し、lexicon は言語全体の語彙を指すことが多い。
  • headwordB2
    名詞(辞書の)見出し語Every headword in this dictionary has a short history. head(頭)+word。辞書の項目は entry、その先頭の語が headword。
  • estimateB1
    動詞・名詞推計する、見積もる;推計The team estimated the number of English words. 動詞は[エスティメイト]、名詞は[エスティマット]と語尾の発音が変わる。a rough estimate「おおよその見積もり」。
  • digitizeB2
    動詞電子化する、デジタルデータにするThe library digitized thousands of old books. digit(数字・指)+-ize(〜にする)。digitized books「電子化された本」。
  • obsoleteC1
    形容詞廃れた、もう使われないSome obsolete words still appear in old novels. OED では使われなくなった語に obsolete の印がつく。
  • coinC1
    動詞(新しい語を)作り出すPeople coin new words all the time. 名詞の coin(硬貨)を「鋳造する」から転じた用法。coin a word / coin a phrase で「言葉を作る」。
  • skewC1
    動詞(数字・結果を)ゆがめる、偏らせるA few very large values can skew the average. 統計の文脈でよく使う。形容詞 skewed「偏った」も頻出。

動画でもっと知る

「英語は100万語」は半分ホント。本のデータで数えると2000年の英語は約102万語。でもその52%は大辞典に載っていない「語彙の暗黒物質」と推計された。アメリカ英語のネイティブの20歳が知っているのは約4万2000語。

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出典・参考文献(5件)タップで表示
  1. Michel et al. (2011) Quantitative Analysis of Culture Using Millions of Digitized Books, Science 331(6014)doi.org
  2. Brysbaert, Stevens, Mandera & Keuleers (2016) How Many Words Do We Know? Practical Estimates of Vocabulary Size Dependent on Word Definition, the Degree of Language Input and the Participant's Age, Frontiers in Psychology 7:1116doi.org
  3. Pechenick, Danforth & Dodds (2015) Characterizing the Google Books Corpus: Strong Limits to Inferences of Socio-Cultural and Linguistic Evolution, PLOS ONE 10(10)doi.org
  4. Oxford English Dictionary「About the OED」(Oxford University Press)oed.com
  5. Oxford English Dictionary「Frequency」(頻度帯の解説)oed.com

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