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「英語は子どものうちに始めないと手遅れ」は本当? 約67万人の文法テストが出した答え

「英語は子どものうちに始めないと手遅れ」は本当? 約67万人の文法テストが出した答え

読む前に予想してみよう!

大人になってから外国語を始めても、ほとんど上達しない

研究カード(どんな研究?)
対象
英語の母語話者と学習者(オンライン参加者)
規模
約67万人
研究の種類
横断データの統計モデリング
確かさ
★★★☆☆
3秒でわかる

ネイティブ並みの文法を目指すなら、早く始めるほど有利という大規模研究がある。でも大人が「使える英語」を身につけることは十分可能。

ひとことで言うとネイティブ並みは子どもが有利。でも大人も英語はちゃんと伸びる!

もくじ
  1. 約67万人がオンラインで文法クイズ
  2. 「学ぶ力」は思ったより長持ち
  3. 教室では「年上スタート」が速いことも
  4. 昔から議論されてきた「年齢の壁」
  5. まとめ

「英語は小さいうちに始めないと、もう手遅れ」。そんな言葉に焦った経験はありませんか? 大人になってから英語を学び直す人なら、なおさらです。

外国語学習の世界では、昔から臨界期(りんかいき)という考え方が議論されてきました。「ある年齢を過ぎると、言語を身につける力がガクッと落ちる」という説です。

2018年、この議論に大規模なデータで切り込んだ研究が発表されました。その答えは、「手遅れ」とは少し違うものでした。

01約67万人がオンラインで文法クイズ

ここで大事なのは、「10歳ごろまで」という目安が「ネイティブと見分けがつかないレベルの文法」についての話だということ。

「旅行で困らない」「仕事のメールが書ける」「英語の動画が楽しめる」といったレベルは、この研究の結論とは別の話です。

02「学ぶ力」は思ったより長持ち

意外だったのは、学ぶ力が落ち始めるのが10代後半と、それまで考えられていたより遅かったこと。中学・高校生は、まだまだ文法を吸収できる時期だということになります。

ただし、この「17歳で曲がり角」という結論には反論もあります。2021年、オランダの研究者たちが同じデータを分析し直したところ、ある年齢でガクッと落ちるというより、少しずつ下がり続ける形の方が、母語話者や幼いころから英語に浸った人など多くのグループのデータに合う、と報告しました。どの年齢が「境目」なのかは、まだ専門家の間でも決着していません。

また、学ぶ力が落ちたといっても、急にゼロになるわけではありません。ゆるやかな下り坂です。

学ぶ力は崖ではなく、ゆるやかな坂
学ぶ力は崖ではなく、ゆるやかな坂

03教室では「年上スタート」が速いことも

さらに、スペイン・バルセロナ大学の研究者ムニョスらの調査では、学校の授業で週に数時間だけ英語を学ぶ環境では、早く始めた子が必ずしも有利にならず、年上で始めた子の方が短期間で伸びるという結果も報告されています。

大人や年上の学習者は、文法のルールを理解したり、効率よく勉強法を選んだりするのが得意。英語漬けの環境で長年過ごす子どもとは、強みが違うんです。

04昔から議論されてきた「年齢の壁」

年齢と外国語の関係は、ずっと前から研究されてきました。1989年には、米国のジョンソンとニューポートが、韓国や中国から米国に移り住んだ人たちの英文法の力を調べ、幼いころに移住した人ほど文法テストの成績が高い傾向を報告しています。

ハーツホーンらの研究は、こうした流れを数十万人規模のデータで確かめ直し、「学ぶ力が落ち始めるのは思ったより遅い」という新しい見方を加えたものです。

ただし、どの研究も「どこまで到達できるか」に注目している点は同じ。大人が数年かけて仕事や旅行で困らない英語力を身につける例は、身の回りにもたくさんありますよね。

05まとめ

「子どものうちに始めないと手遅れ」は、半分ホントで半分ウソ。ネイティブと区別がつかない文法を目指すなら早い方が有利ですが、英語を使えるようになる道が年齢で閉ざされることはありません。

今日から始めるのが、あなたにとって一番早いスタートです。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerAbout 670,000 people took an online English grammar quiz, and in 2018 Hartshorne, Tenenbaum and Pinker used… 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

About 670,000 people took an online English grammar quiz, and in 2018 Hartshorne, Tenenbaum and Pinker used the results to test an old idea. According to this idea, language has a critical period. After a certain age, learning a new language becomes very difficult. The researchers estimated that the ability to learn grammar stays high until the late teens, around 17, and then slowly declines. To reach native-like grammar, learners may need to start by about age 10 in an English-speaking environment.

But starting by age 10 matters only for grammar so good that it cannot be told apart from a native speaker's. Other research shows that in school classes with only a few hours of English a week, older beginners often make faster progress than younger ones.

128 words ・ CEFR B1

和訳を見る

約67万人がオンラインの英文法クイズを受け、2018年、ハーツホーン、テネンバウム、ピンカーはその結果を使って昔からある考えを検証しました。その考えによると、言語には臨界期があります。ある年齢を過ぎると、新しい言語を学ぶのがとてもむずかしくなるというのです。研究者たちは、文法を学ぶ力は10代後半、17歳ごろまで高いままで、その後ゆっくりと下がっていくと推定しました。ネイティブ並みの文法に到達するには、英語を話す環境で10歳ごろまでに始める必要があるかもしれません。

しかし、10歳ごろまでに始めることが重要なのは、ネイティブスピーカーと区別できないほど高いレベルの文法の場合だけです。別の研究では、週に数時間しか英語がない学校の授業では、年上で始めた学習者の方が年下の学習者より速く上達することが多いと示されています。

4択リーディングクイズ

Q1. What is a "critical period" for language?

Q2. What does the passage say about classes with only a few hours of English a week?

Q3. What can we infer from the passage?

重要単語

  • critical periodC1
    名詞(句)臨界期Some scientists argue there is a critical period for language. critical は「批判的な」のほか「決定的に重要な」の意味がある。critical period hypothesis(臨界期仮説)は英語教育の定番テーマ。
  • acquisitionC1
    名詞習得Second language acquisition takes time. acquire(習得する)の名詞形。second language acquisition(SLA、第二言語習得)は入試長文に頻出。
  • native-likeB2
    形容詞ネイティブ並みのNative-like pronunciation is hard for adult learners. 名詞+-like で「~のような」(childlike・lifelike)。native speaker と一緒に覚える。
  • proficiencyC1
    名詞熟達度、語学力Her English proficiency improved after a year abroad. 形容詞 proficient(熟達した)。be proficient in ~「~に熟達している」。英検の正式名称にも Proficiency が入っている。
  • exposureB2
    名詞(言語に)触れることDaily exposure to English is important. expose A to B「A を B にさらす」の名詞形。exposure to sunlight(日光にさらされること)など広く使う。
  • immersionC1
    名詞(言語に)浸ること・没入Immersion in English helps children learn grammar. immerse(浸す)の名詞形。immersion program は授業を外国語だけで行う教育法。
  • indistinguishableC1
    形容詞区別がつかないHer accent is almost indistinguishable from a native speaker's. in-(否定)+distinguish(区別する)+-able。be indistinguishable from ~ の形で使う。

動画でもっと知る

約67万人が受けたオンライン文法テストの分析で、文法を学ぶ力は10代後半まで高いまま続くらしい。「ネイティブ並み」を目指すなら早いほど有利。でも“手遅れ”とは全然ちがう話だった。

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出典・参考文献(4件)タップで表示
  1. Hartshorne, Tenenbaum & Pinker (2018) A critical period for second language acquisition: Evidence from 2/3 million English speakers, Cognitiondoi.org
  2. Johnson & Newport (1989) Critical period effects in second language learning: The influence of maturational state on the acquisition of English as a second language, Cognitive Psychologydoi.org
  3. Muñoz (Ed.) (2006) Age and the Rate of Foreign Language Learning, Multilingual Mattersdoi.org
  4. van der Slik, Schepens, Bongaerts & van Hout (2021) Critical period claim revisited: Reanalysis of Hartshorne, Tenenbaum, and Pinker (2018) suggests steady decline and learner-type differences, Language Learningdoi.org