「やり抜く力(グリット)」は成功の秘訣? 6万人超のメタ分析で見えた"意外とふつう"な正体

読む前に予想してみよう!
グリット(やり抜く力)は、これまでの性格の指標とはまったく別の、新しい能力である
メタ分析では、グリットはビッグファイブの「誠実性(まじめさ)」と非常に強く重なっていた。
- 対象
- 学生・社会人など
- 規模
- 88サンプル・約6万7000人
- 研究の種類
- メタ分析(+双生児研究)
- 確かさ
- ★★★★☆
「やり抜く力」は成績と関係はあるが、その強さはほどほど。しかも「まじめさ(誠実性)」とほぼ同じものだった。双子研究では、成績の予測にほとんど上乗せがなかった。
ひとことで言うと「やり抜く力」は大事。でも新発見というより「まじめさ」に近かった。
「才能より、最後までやり抜く力が大事」。アメリカの心理学者ダックワースさんが提唱した「グリット(やり抜く力)」は、TEDトークや世界的ベストセラーで一躍有名になりました。日本でも、教育や子育ての場面でよく耳にする言葉です。
たしかに、何かを最後までやり遂げる力は大切そうです。でも、研究を大規模にまとめてみると、グリットは思われていたほど「特別な力」ではなかったかもしれません。
01グリットとは?
ペンシルベニア大学のDuckworthさんらは2007年、グリットを「長期的な目標に向けた、情熱と粘り強さ」と定義しました。そして、アンケートで測ったグリットの高さが、
- 米陸軍士官学校の、きびしい夏の基礎訓練を途中でやめずにやり遂げるか
- 全米スペリング大会(英単語のつづりコンテスト)でどこまで勝ち進むか
などを予測したと報告しました。才能だけでなく、粘り強さが成功を左右する。このメッセージは多くの人の心をつかみました。
026万人超のメタ分析で見えた「意外な正体」
つまりグリットは、まったく新しい力というより、昔から知られていた「まじめさ」とかなり近いものだったのです。

03双子研究:成績の予測に「ほとんど上乗せなし」
イギリスのRimfeldさんらは2016年、16歳の双子約2,300組(約4,600人)を対象に、グリットとビッグファイブの性格が、義務教育修了時の全国試験(GCSE)の成績をどれくらい予測するかを調べました。
結果、性格(主に誠実性)は成績のばらつきの約6%を説明しましたが、グリットを加えても予測はほとんど良くならなかったのです。また、グリットの「粘り強さ」には37%程度の遺伝の影響が見られ、他の性格特性と同じように、生まれつきの面と環境の面の両方があることもわかりました。
04どんでん返し:グリットは「無意味」ではない
ここまで読むと「グリットってダメなの?」と思うかもしれません。でも、そうではありません。
Credéさんらのメタ分析でも、「粘り強さ」は誠実性を考慮しても、成績を説明する力を一部持っていたとされています。「努力し続ける」ことが大切だというメッセージ自体は、データからも否定されていないのです。
問題は、グリットを「才能に勝る、まったく新しい魔法の力」のように扱うこと。研究が示しているのは、もっと地味で、でも確かな事実です。コツコツ続けることは大事。ただしそれは、昔から「まじめさ」と呼ばれてきた力とほぼ同じ、ということなのです。
05まとめ
「やり抜く力(グリット)」は、成績とほどほどに関係する大切な力です。でも大規模な研究では、それは「まじめさ」とほぼ同じもので、成績を予測するうえで特別な上乗せは小さいことがわかりました。
流行の言葉に飛びつく前に、昔からある「コツコツ続ける」を、自分なりの仕組みで続けてみる。それが一番確かな「やり抜く力」なのかもしれません。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerIn 2007, psychologist Duckworth and her colleagues defined grit as "passion and perseverance for long-term…
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4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
"Grit" means passion and hard work for long-term goals. It became famous through a best-selling book and a TED talk. But is it a special power? A large study looked at data from about 67,000 people.
Grit was only moderately linked to success. It was also very similar to being careful and hard-working, a trait psychologists call conscientiousness. Working steadily is still important. It is just not magic.
68 words ・ CEFR A2
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「グリット」とは、長期的な目標に向けた情熱と努力のことです。ベストセラーの本やTEDトークで有名になりました。でも、それは特別な力なのでしょうか。ある大規模な研究は、約6万7000人のデータを調べました。
グリットは成功とほどほどにしか結びついていませんでした。また、心理学者が「誠実性」と呼ぶ、注意深く勤勉であるという特性ととてもよく似ていました。それでも、コツコツ取り組むことは大切です。ただ、それは魔法ではないのです。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
第3文の問い(グリットは特別な力か)に、大規模研究の結果で答えているので D。
Q2. How many people's data did the large study look at?
data from about 67,000 people とあるので A。
Q3. In this passage, "steadily" means ...
steadily は「着実に・コツコツと」。止まらず少しずつ続けることなので C。
In 2007, psychologist Duckworth and her colleagues defined grit as "passion and perseverance for long-term goals." They reported that grit predicted which cadets completed tough summer training at a U.S. military academy and how far children advanced in a national spelling contest. The idea became hugely popular.
However, a 2017 meta-analysis of about 67,000 people found that grit was only moderately related to performance. It also overlapped heavily with conscientiousness, one of the Big Five personality traits. A British study of about 2,300 pairs of 16-year-old twins found that adding grit hardly improved predictions of exam results beyond personality. Even so, the perseverance part of grit still seemed to matter, so steady effort is worth building.
116 words ・ CEFR B1
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2007年、心理学者のDuckworthさんらは、グリットを「長期的な目標に向けた情熱と粘り強さ」と定義しました。彼らは、グリットが、アメリカの陸軍士官学校で厳しい夏の訓練を最後までやり遂げる士官候補生や、全国スペリング大会で子どもがどこまで勝ち進むかを予測したと報告しました。この考えは大きな人気を集めました。
しかし、約6万7000人を対象にした2017年のメタ分析では、グリットは成績とほどほどにしか関係していないことがわかりました。また、ビッグファイブの性格特性の一つである誠実性と大きく重なっていました。16歳の双子約2,300組を対象にしたイギリスの研究では、グリットを加えても、性格以上に試験結果の予測はほとんど良くなりませんでした。それでも、グリットのうち粘り強さの部分は意味があるようなので、コツコツ努力する力を育てる価値はあります。
4択リーディングクイズ
Q1. What did the 2017 meta-analysis find?
grit was only moderately related to performance とあるので B。
Q2. Which personality trait did grit overlap with heavily?
It also overlapped heavily with conscientiousness とあるので C。
Q3. What is the writer's attitude toward grit in the last sentence?
Even so 以下で、粘り強さの部分はやはり重要で、努力を育てる価値があると述べているので A。
Duckworth and colleagues defined grit in 2007 as passion and perseverance for long-term goals, and the idea spread with unusual speed. Early studies suggested that grit predicted which cadets would finish demanding summer training at West Point and how far children would get in the National Spelling Bee. When Credé and colleagues pooled 88 samples covering roughly 67,000 people, though, the results looked more modest.
Grit was only moderately correlated with performance and retention. It also overlapped so heavily with conscientiousness, a long-established Big Five trait, that researchers questioned whether it was really a separate construct. Of its two parts, perseverance of effort was more closely tied to performance than consistency of interest. A study of about 2,300 pairs of British twins aged 16 pointed the same way.
Personality, mainly conscientiousness, explained around 6 percent of the variation in national exam results, and adding grit barely improved the prediction. Grit is not meaningless, because perseverance kept some predictive value even after conscientiousness was taken into account. But it is not a new substitute for talent, and programs designed to raise grit may do little for grades.
186 words ・ CEFR B2
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2007年、Duckworthさんらはグリットを、長期的な目標に向けた情熱と粘り強さと定義し、この考えはめずらしいほどの速さで広まりました。初期の研究は、グリットが、ウエストポイントの厳しい夏の訓練を最後までやり遂げる士官候補生や、全米スペリング大会で子どもがどこまで勝ち進むかを予測すると示唆しました。しかし、Credéさんらがおよそ6万7000人を含む88のサンプルをまとめると、結果はより控えめなものになりました。
グリットは成績や継続とほどほどにしか相関していませんでした。また、昔から確立されたビッグファイブの特性である誠実性とあまりに大きく重なっていたため、本当に別の構成概念なのかと研究者たちは疑問を持ちました。その2つの要素のうち、「努力の粘り強さ」の方が「興味の一貫性」よりも成績と密接に結びついていました。16歳のイギリスの双子約2,300組の研究も同じ方向を示しました。性格(主に誠実性)は全国試験の結果のばらつきの約6%を説明し、グリットを加えても予測はほとんど良くならなかったのです。
グリットが無意味だというわけではありません。粘り強さは、誠実性を考慮した後でも、いくらかの予測力を保っていたからです。しかし、グリットは才能に代わる新しいものではなく、グリットを高めるためのプログラムは成績にはあまり効かないかもしれません。
4択リーディングクイズ
Q1. Why was grit's status as a distinct construct questioned?
It also overlapped so heavily with conscientiousness ... that researchers questioned whether it was really a separate construct とあるので D。成績とは「ほどほど」に相関しており、C は誤り。
Q2. Which component of grit was more closely tied to performance?
perseverance of effort was more closely tied to performance than consistency of interest とあるので B。
Q3. What is the author's overall conclusion?
Grit is not meaningless としつつ、But it is not a new substitute for talent と述べているので C。
重要単語
- gritC1名詞やり抜く力Grit means passion and perseverance for long-term goals.
もとは「砂粒」の意味で、そこから「根性・気骨」へ。grit one's teeth は「歯を食いしばる」。 - perseveranceC1名詞根気・粘り強さPerseverance of effort was the stronger part of grit.
動詞 persevere(やり抜く)。アクセントは -VER- の位置(per-se-VER-ance)。 - conscientiousnessC1名詞誠実性・まじめさGrit is strongly related to conscientiousness.
形容詞 conscientious(良心的な・入念な)。conscience(良心)が語源。ビッグファイブの1つ。 - predictB1動詞予測するPersonality can predict some of your grades.
pre-(前に)+dict(言う)=「前もって言う」。名詞 prediction、predictor(予測因子)。 - constructC1名詞(心理学の)概念・構成概念Some researchers question grit as a new construct.
動詞(組み立てる)はアクセントが後ろ、名詞はアクセントが前(CON-struct)。 - passionB1名詞情熱Passion helps you keep going.
have a passion for ~「~に情熱を持っている」。形容詞 passionate。
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ベストセラーで有名になった「やり抜く力(グリット)」。でも約6万7000人のデータをまとめたメタ分析では、成績との関係はほどほどで、性格の「まじめさ」とほぼ同じものだったらしい。グリットを鍛える教育の効果も小さいかも。
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出典・参考文献(3件)タップで表示
- Duckworth et al. (2007) Grit: Perseverance and passion for long-term goals, Journal of Personality and Social Psychologydoi.org
- Credé, Tynan & Harms (2017) Much ado about grit: A meta-analytic synthesis of the grit literature, Journal of Personality and Social Psychologydoi.org
- Rimfeld et al. (2016) True grit and genetics: Predicting academic achievement from personality, Journal of Personality and Social Psychologydoi.org
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。












