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授業中はスマホを木箱へ。インドの学生1万6683人の実験で、成績が伸びたのは主に成績下位の学生と1年生

授業中はスマホを木箱へ。インドの学生1万6683人の実験で、成績が伸びたのは主に成績下位の学生と1年生

読む前に予想してみよう!

スマホを預けた教室では、外から見ると学生がよそ見をしなくなった

研究カード(どんな研究?)
対象
インド・オディシャ州の大学など10校の学生(平均19.4歳)
規模
1万6,683人(学科・学年ごとの420グループ)
研究の種類
くじ引きで分けた実験(ランダム化比較試験・事前登録)
確かさ
★★★☆☆
3秒でわかる

インドの大学など10校、1万6,683人のくじ引き実験。授業の初めにスマホを木箱へ預けた側は、預けなかった側より成績が少し高くなり、特に成績が下の方の学生と1年生で効いた。

ひとことで言うとインドの大学で、授業中だけスマホを預けたら、成績が少し上がった!

もくじ
  1. 1万6,683人を「学科と学年ごと」にくじ引きで分けた
  2. 成績は上がった。ただし「小さめ」
  3. 効いたのは成績が下の方の学生と1年生。上位の学生ではほぼゼロ
  4. 窓からのぞくと、スマホを預けた学生のほうが気が散って見えた
  5. まとめ

教室に入ったら、まずスマホを木箱へ。授業が終わるまで返してもらえません。

インド東部のオディシャ州で、大学など10校がこのルールを1学期まるごと試しました。対象は1万6,683人の学生。誰が預けるかはくじ引きで決めました。

2026年10月8日、その結果が米国の科学誌『Science』に載りました。預けた側の成績は少しだけ上がっていました。上がったのは主に、それまでの成績が下の方だった学生と1年生。上位の学生では、ほとんど変わりませんでした。

011万6,683人を「学科と学年ごと」にくじ引きで分けた

学校のスマホ禁止は今、世界中に広がっています。論文によると、米国では約3分の2の州がすでに何らかの法律を作りました。ところが、くじ引きで分けて効き目を確かめた大きな実験は、ほとんどありませんでした。

研究チームはリサイクル材料で約1,000個の木箱を作ってもらい、教室に置きました。預ける側の授業では、先生が毎回、始めに全員のスマホを箱へ入れさせます。参加するかどうかを学生が選べるルールではありません。例外になれたのは、証明できる緊急の事情や家族の世話など、認められた理由がある学生だけです。その場合も、授業の前に先生に伝えておく決まりでした。

預けるのは授業中だけです。休み時間は対象外でした。もう一方のグループは、いつもどおりスマホを持ったまま授業を受けました。同じ教室を両方のグループが使うこともあるので、箱はすべての教室に置き、違いは「先生が預けさせるかどうか」だけにしています。

授業の初めに、全員のスマホを木箱へ(イメージ)
授業の初めに、全員のスマホを木箱へ(イメージ)

02成績は上がった。ただし「小さめ」

比べたのは学期末の成績です。もともとの成績の差が混ざらないよう、前の学期の成績を計算に入れて比べると、預けた側のほうが高くなっていました。

上がり幅を、研究者は「学生どうしの成績の散らばり具合」を1目盛りにした物差しで表します。この物差しで0.073。論文はこれを、ほかの教育の実験と並べています。

  • 学生500人を超える大きな教育の実験で、よく出る効果:約0.05
  • 普通の先生と、非常に良い先生に1年間教わったときの差:約0.20

著者たちも、スマホを預けるだけで学びが劇的に変わるわけではないと書いています。それでも、広く実施できるほかの取り組みと同じくらいの効果がある、という位置づけです。

出席率は変わりませんでした。授業に来る回数が増えたのではなく、授業中の集中や教室の雰囲気が変わったのだろう、と著者たちは見ています。

03効いたのは成績が下の方の学生と1年生。上位の学生ではほぼゼロ

全員に同じように効いたわけではありません。前もって決めておいたグループ別に見ると、はっきり効いたのは次の2つでした。

  • それまでの成績が真ん中より下だった学生
  • 大学1年生

理系以外の学生でも、わずかに効いた兆しがありました(はっきりとは言えない程度)。一方、成績が真ん中より上の学生、大学院生、理系の学生では、効果はほぼゼロでした。全体の上がり幅は、主に成績が下の方の学生や1年生などが生んだものです。また、預けた側では学生どうしの成績の開きも広がりにくくなっていました。

この実験の成績は、外部の専門家が作った学期末試験が中心です。オディシャ州のルールでは、成績の60〜80%が学外で採点される試験で決まり、採点する人は誰がどちらの側か分かりません。先生の採点が甘くなっただけ、とは考えにくい仕組みです。

04窓からのぞくと、スマホを預けた学生のほうが気が散って見えた

研究チームは、学期中に見回り役が教室の窓やドアから中をのぞく観察もしました。すると、預けた側の学生のほうが気が散っているように見えたのです。

著者たちの説明はこうです。一番気を散らすもの(スマホ)がなくなると、外の物音のような小さな刺激に注意が向きやすくなる。そして、その様子は外から見て分かりやすい。ただし、見回り役は箱やスマホの様子から、どちらの側か見当をつけられました。そのため、この観察は「外から見た印象」にとどまる、とも書いています。

学生への調査(2,557人)では、預けた側は預けなかった側より、ルールに賛成する気持ちが強くなっていました。「1日中禁止」「授業中だけ禁止」「禁止なし」など5つの選択肢から好きなルールを選んでもらうと、預けた側は「禁止なし」を選びにくくなり、傾向としては厳しいルールのほうへ動いていました。一番大きく動いたのは「1日中禁止」です。気が散る感覚や、学んだ実感、幸福感ややる気には、預けた側と預けなかった側で差がありませんでした。

一方で、預けた側では「自分だけ取り残されたらどうしよう」という不安がやや強まっていました。男女別に見ると、女子では、預けた側でルールへの賛成や「役に立った」という実感が強くなっていました。男子では、預けた側でこの不安や画面を見る時間、気が散る感覚がやや増えたという回答でした。

見回りの観察では、先生にも変化がありました。ルールの対象ではないのに、預けた側の教室では先生が自分のスマホを触る場面が減ったのです。学生が授業と関係ないおしゃべりをする場面や、授業を乱す行動も減っていました。

著者の一人ビエレ=ニールセンさんは、2020年に、大学生470人のスマホ使用を2年間記録した研究を発表しています。「授業中にスマホを使う学生ほど成績が低い」という関係は、学生ごと・授業ごとにもともとある違いを計算で差し引くと、かなり小さくなると報告していました。記録を眺めるだけでは見分けにくい影響を、今回はくじ引きの実験で確かめた形です。

05まとめ

授業の初めにスマホを木箱へ。1学期続けると、成績は少し上がりました。上がったのは主に成績が下の方の学生と1年生で、上位の学生ではほぼ変わりません。外から見ると預けた側のほうがよそ見をしているようなのに、成績は少し上。預けた側の学生はルールに賛成する気持ちが強まり、先生まで自分のスマホを触る場面が減りました。

対象はインドの大学生で、預けたのは授業中だけです。中学・高校で、休み時間も含めたらどうなるのか。著者たちは、次に調べるべき問いとしてそれを挙げています。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerFor one semester in 2024, ten colleges and universities in Odisha, a state in eastern India, tried a simple… 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

For one semester in 2024, ten colleges and universities in Odisha, a state in eastern India, tried a simple rule. In some classes, every student had to drop their phone into a wooden box when the lecture began and pick it up at the end. A lottery decided which groups of students followed the rule, and more than 16,000 students took part.

The rule applied only during lectures, not during breaks. At the end of the semester, students in the box group had slightly higher grades, but their attendance stayed the same. The gain came mostly from first-year students and from students whose grades had been in the lower half. Students who had tried the rule were also more supportive of it.

122 words ・ CEFR B1

和訳を見る

2024年の1学期のあいだ、インド東部の州オディシャにある大学など10校が、ある単純なルールを試した。いくつかの授業では、講義が始まるとすべての学生がスマホを木箱に入れ、終わりに受け取らなければならなかった。どの学生グループがルールに従うかはくじ引きで決まり、1万6,000人を超える学生が参加した。

ルールが適用されたのは講義中だけで、休み時間は対象外だった。学期末、箱のグループの学生は成績が少しだけ高かったが、出席率は変わらなかった。上がった分は主に、1年生と、それまでの成績が下半分だった学生によるものだった。ルールを体験した学生は、それをより強く支持してもいた。

4択リーディングクイズ

Q1. What is the passage mainly about?

Q2. According to the passage, what did NOT change?

Q3. What can we infer from the passage?

重要単語

  • depositB2
    動詞・名詞預ける、置く/預け入れStudents deposit their phones in a box before class. 銀行に「預金する」の意味でもよく使う。名詞の deposit は「預金」「手付金」。de-(下に)+ posit(置く)
  • lotteryB1
    名詞くじ引き、宝くじThe groups were chosen by lottery. by lottery で「くじ引きで」。win the lottery は「宝くじに当たる」
  • semesterB1
    名詞(2学期制の)学期The rule lasted for one semester. 1年を2つに分けた学期。3学期制の学期は term と言うことが多い。spring semester で「春学期」
  • distractedB1
    形容詞気が散ったIt is easy to get distracted by noise outside. get distracted by ~ で「~に気を取られる」。名詞 distraction は「気を散らすもの」
  • attendanceB2
    名詞出席、出席率Attendance did not change after the rule began. attend(出席する)の名詞形。take attendance で「出欠をとる」
  • modestB2
    形容詞控えめな、それほど大きくないThe rule led to a modest gain in grades. 人について使うと「謙虚な」。数や量について使うと「ほどほどの」。a modest increase は入試の英文にもよく出る
インドの大学など10校で、1万6,683人を学科と学年ごとにくじ引きで分け、片方は授業の初めにスマホを木箱へ。1学期後、預けた側の成績が少しだけ上だった。効いたのは成績が下の方の学生と1年生で、上位の学生ではほぼ変化なし。

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出典・参考文献(4件)タップで表示
  1. Sungu, Choudhury & Bjerre-Nielsen (2026) Phones impede learning: Evidence from a massive phone-free classroom experiment, Sciencedoi.org
  2. Evans & Yuan (2022) How Big Are Effect Sizes in International Education Studies?, Educational Evaluation and Policy Analysisdoi.org
  3. Bjerre-Nielsen et al. (2020) The Negative Effect of Smartphone Use on Academic Performance May Be Overestimated: Evidence From a 2-Year Panel Study, Psychological Sciencedoi.org
  4. Böttger & Zierer (2024) To Ban or Not to Ban? A Rapid Review on the Impact of Smartphone Bans in Schools on Social Well-Being and Academic Performance, Education Sciencesdoi.org