試験直前に不安を紙に書くと点数が上がる? Science掲載の有名な実験、追試では再現されず

読む前に予想してみよう!
「試験直前に不安を書き出すと点数が上がる」という有名な実験は、追試でも同じ結果が出た
2018年の大規模な追試や、2021年の大学の授業での実験では、点数が上がる効果は見られなかった。
- 対象
- 大学生・米国の高校生
- 規模
- 原論文の4実験(各20〜55人)+のちの追試
- 研究の種類
- 実験室実験+教室でのランダム化実験
- 確かさ
- ★★☆☆☆
2011年の実験では、試験直前に約10分、テストへの不安を紙に書き出した生徒は、特に不安が強い人ほど成績が良かった。ただ、その後の大規模な追試や大学の授業での実験では、同じ効果は見られなかった。
ひとことで言うと不安を紙に書くと点が上がる? 有名な実験だけど、やり直したら同じ結果は出なかった。
もくじ
ここ一番のテストで、頭が真っ白になった経験はありませんか? 家では解けた問題なのに、本番だと手が止まる。いわゆる本番で力が出せない状態です。
そんな「本番に弱い」人向けに、とてもシンプルな方法が話題になったことがあります。それは、試験の直前に、不安な気持ちを紙に書き出すこと。
世界トップクラスの科学誌 Science に載った研究がもとになっています。ただし、この話には続きがありました。
012011年の実験:不安を書いた生徒の方が点数が良かった
不安が強い生徒は、ふだんなら本番で成績を落としがちです。それが、書き出したことで不安の弱い生徒とあまり変わらない成績をとれました。
02不安は「頭の作業スペース」を占領する
なぜ書き出すと効くと考えられたのか。カギはワーキングメモリです。
ワーキングメモリは、問題を解くときに情報を一時的に置いておく頭の中の作業机のようなもの。ところが、「失敗したらどうしよう」「親に怒られる」といった心配ごとが、この机の上を占領してしまうことがあります。そうなると、肝心の問題を解くスペースが足りなくなるんです。

研究チームは、こう考えました。書き出すことで心配ごとを紙の上に移し、気持ちを整理できる。その結果、作業机が片付いて、本来の力が出せるようになる、というわけです。
ちなみに、つらい気持ちを文章にする筆記開示(ひっきかいじ)という方法自体は、1980年代から米国の心理学者ペネベーカーらによって研究されてきました。ただし、多くの研究をまとめた2006年のメタ分析では、心身の健康への効果は平均すると小さいとされています。
03追試では、同じ効果が出なかった
2018年、別の研究チームが、2010〜2015年に Science と Nature に載った社会科学の実験21本を、分析のやり方を前もって公表したうえでやり直しました。ラミレスとベイロックの1つ目の実験室の実験もその1本です。元の実験より人数を増やして2回やり直しましたが、書き出しの効果は再現されませんでした。
2021年には、アメリカの大学の授業で、本物の試験4回を使った実験も行われました。試験ごとに、直前に不安を書き出す回と、別の作業をする回を入れ替えて比べたものです。ここでも、テスト不安が減ったり点数が上がったりする効果は見られませんでした。
つまり「試験前に不安を書けば点数が上がる」は、今のところ確かな話とは言えません。効果ははっきりしないので、期待しすぎないのがよさそうです。
04それでも試してみたい人へ
元の2011年の研究でも、もともと不安があまりない生徒では、書いても書かなくても点数は変わりませんでした。
052011年の実験では、関係ないことを書いても効果はなかった
「じゃあ、試験前に何か文章を書けば落ち着くのかな?」と思うかもしれません。
ラミレスとベイロックの2つ目の実験室の実験では、テストと関係ない日常の出来事について書いたグループも用意されました。このグループでは成績の改善は見られず、効果があったのはテストへの不安そのものを書き出した場合でした。
研究チームは、もやもやした不安を言葉にして外に出すことがカギだと考えました。ただ、上で見たように、この効果そのものが追試で確かめられていません。
06まとめ
「試験前に不安を書き出すと点数が上がる」は、Science に載った有名な実験の結果です。でも、大規模な追試や大学の授業での実験では、同じ効果は出ませんでした。
有名な雑誌に載った研究でも、やり直すと結果が変わることがあります。テスト対策は、まずテスト形式の復習のように、効果が何度も確かめられている方法を優先しましょう。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerMany students know how it feels to freeze during an important exam.
音声
4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
Does your mind go blank in important tests? Here is a famous idea. Before a test, write down your worries on paper for about ten minutes. In a 2011 study, students who did this got better scores. It helped most for students who felt very nervous about tests.
But later, other scientists tried the same thing with more students. They did not get the same result. So this idea may not really work.
73 words ・ CEFR A2
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大事なテストで頭が真っ白になりますか。有名な方法があります。テストの前に、約10分間、心配ごとを紙に書き出すのです。2011年のある研究では、これをした生徒の方が良い点数をとりました。テストにとても緊張する生徒に最も効果がありました。
しかしその後、ほかの科学者たちがもっと多くの学生で同じことを試しました。同じ結果は出ませんでした。だから、この方法は本当は効かないのかもしれません。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
テスト前に心配ごとを書き出す方法と、それが本当に効くのか(追試では同じ結果が出なかった)という内容なので B。
Q2. Who did the writing help the most?
It helped most for students who felt very nervous about tests. とあるので C。
Q3. In this passage, "worries" are ...
worry は「心配(ごと)」。失敗などへの不安な考えなので A。
Many students know how it feels to freeze during an important exam. In 2011, Ramirez and Beilock at the University of Chicago published a study in the journal Science that tested a simple solution. First, in a laboratory, university students who wrote freely about their feelings for about ten minutes before a stressful math test performed better than students who simply sat and waited.
Then the researchers tried the idea in a high school biology final exam. Students with high test anxiety benefited the most, and they scored almost as well as calm students. The researchers believed that worries take up working memory, the mental desk we use to solve problems. However, when another team repeated the laboratory study in 2018, writing did not help.
125 words ・ CEFR B1
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多くの学生は、大事な試験の最中に固まってしまう感覚を知っています。2011年、シカゴ大学のラミレスとベイロックは、シンプルな解決策を試した研究を科学誌『Science』に発表しました。まず実験室で、ストレスのかかる数学のテストの前に約10分間自分の気持ちを自由に書いた大学生は、ただ座って待っていた学生より良い成績をとりました。
次に研究者たちは、この方法を高校の生物の期末試験で試しました。テスト不安の強い生徒が最も恩恵を受け、落ち着いた生徒とほぼ同じくらいの点数をとりました。研究者たちは、心配ごとがワーキングメモリ、つまり問題を解くために使う頭の中の机を占領すると考えました。しかし、2018年に別のチームが実験室の研究をやり直したところ、書いても効果はありませんでした。
4択リーディングクイズ
Q1. What did the students in the laboratory experiment do before the math test?
wrote freely about their feelings for about ten minutes before a stressful math test とあるので D。
Q2. What happened to students with high test anxiety in the high school study?
they scored almost as well as calm students とあるので A。
Q3. What happened when another team repeated the laboratory study in 2018?
when another team repeated the laboratory study in 2018, writing did not help とあるので C。
Shortly before a high-pressure math test, some university students spent about ten minutes writing openly about how they felt about it, while others sat quietly. The writers did better on the test. Ramirez and Beilock of the University of Chicago reported this in Science in 2011, as part of their work on choking under pressure, the tendency to perform below one's ability when the stakes are high.
Students who wrote about an unrelated event showed no such gain, so the content of the writing seemed to matter. The team also tested the idea in a school. Ninth-graders wrote before a biology final, and among the most anxious of them, writing about test worries substantially narrowed the usual gap with less anxious classmates.
The authors' explanation is that worries occupy working memory, the limited mental workspace needed for reasoning, and that putting them on paper frees some of it. Evidence from outside that paper is less encouraging. A 2006 meta-analysis found only small average benefits for expressive writing in general, and a large preregistered replication in 2018 found no benefit in the laboratory task. A 2021 study using four real college exams also found no effect.
195 words ・ CEFR B2
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プレッシャーの大きい数学のテストの直前に、一部の大学生は約10分間、そのテストについての気持ちを率直に書き、ほかの学生は静かに座っていました。書いた学生の方がテストの成績が良かったのです。シカゴ大学のラミレスとベイロックは、重要な場面で実力を下回ってしまう「プレッシャーによる失敗」についての研究の一部として、これを2011年に『Science』で報告しました。
無関係な出来事について書いた学生には、そうした向上は見られなかったので、書く内容が重要だったと考えられます。研究チームは学校でもこの方法を試しました。9年生が生物の期末試験の前に書いたところ、特に不安の強い生徒の間では、テストへの心配を書くことで、不安の少ない同級生との通常の成績差が大幅に縮まったのです。
著者たちの説明は、心配ごとがワーキングメモリ、つまり推論に必要な限られた頭の作業スペースをふさいでおり、それを紙に書き出すとその一部が空く、というものです。この論文以外の証拠は、それほど心強いものではありません。2006年のメタ分析では筆記開示全般の平均的な効果は小さいとされ、2018年に事前登録して行われた大規模な追試では、実験室の課題で効果は見られませんでした。本物の大学の試験4回を使った2021年の研究でも、効果はありませんでした。
4択リーディングクイズ
Q1. Why is the result of the "unrelated event" group important?
無関係な出来事を書いた群では showed no such gain だったので、so the content of the writing seemed to matter とある。効いたのは「テストへの気持ちを書くこと」自体なので C。
Q2. According to the passage, how do worries hurt test performance?
worries occupy working memory, the limited mental workspace needed for reasoning とあるので B。
Q3. Which statement best reflects the author's view?
Evidence from outside that paper is less encouraging とし、2018年の追試と2021年の研究で効果がなかったと述べているので D。
重要単語
- anxietyB2名詞不安Test anxiety can make your mind go blank.
形容詞 anxious。be anxious about ~「~を心配している」と be anxious to do「~したがっている」の意味の違いは入試頻出。 - expressive writingC1名詞(句)筆記開示(気持ちを書き出すこと)Expressive writing helps you put feelings into words.
express(表現する)の形容詞 expressive。put ~ into words「~を言葉にする」も一緒に覚えたい。 - chokeC1動詞(プレッシャーで)実力を出せずに失敗するSome athletes choke in big games.
本来は「息が詰まる・窒息する」。choke under pressure「プレッシャーで力を出せない」は心理学・スポーツの定番表現。 - pressureB1名詞重圧、プレッシャーWriting before the exam may reduce the pressure you feel.
press(押す)の名詞形。under pressure「重圧の下で」、peer pressure「仲間からの同調圧力」。 - worryA2名詞・動詞心配(する)Write down every worry, then turn the paper over.
worry about ~「~を心配する」。be worried about も同じ意味。名詞では数えられる(worries)点に注意。 - stakesC1名詞(成否にかかっているもの)賭け金The stakes are high in an entrance exam.
the stakes are high「失敗したときの損失が大きい」。high-stakes test(人生を左右する試験)も頻出。 - substantiallyC1副詞大幅に・かなりWriting substantially narrowed the gap.
substantial(相当な)の副詞形。considerably とほぼ同義で、研究結果の大きさを表すときに使う。
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試験の直前に10分間、「テストの何が不安か」を紙に書き出すだけで成績が上がったという研究がScienceに載っている。特に不安が強い生徒ほど効果が大きかったらしい。ただ、のちの大規模な追試では再現されなかった。
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出典・参考文献(6件)タップで表示
- Ramirez & Beilock (2011) Writing about testing worries boosts exam performance in the classroom, Sciencedoi.org
- Beilock & Carr (2005) When high-powered people fail: Working memory and "choking under pressure" in math, Psychological Sciencedoi.org
- Pennebaker (1997) Writing about emotional experiences as a therapeutic process, Psychological Sciencedoi.org
- Frattaroli (2006) Experimental disclosure and its moderators: A meta-analysis, Psychological Bulletindoi.org
- Camerer et al. (2018) Evaluating the replicability of social science experiments in Nature and Science between 2010 and 2015, Nature Human Behaviourdoi.org
- Myers, Davis & Chan (2021) Does expressive writing or an instructional intervention reduce the impacts of test anxiety in a college classroom?, Cognitive Research: Principles and Implicationsdoi.org
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。














