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試験直前に不安を紙に書くと点数が上がる? Science掲載の有名な実験、追試では再現されず

試験直前に不安を紙に書くと点数が上がる? Science掲載の有名な実験、追試では再現されず

読む前に予想してみよう!

「試験直前に不安を書き出すと点数が上がる」という有名な実験は、追試でも同じ結果が出た

研究カード(どんな研究?)
対象
大学生・米国の高校生
規模
原論文の4実験(各20〜55人)+のちの追試
研究の種類
実験室実験+教室でのランダム化実験
確かさ
★★☆☆☆
3秒でわかる

2011年の実験では、試験直前に約10分、テストへの不安を紙に書き出した生徒は、特に不安が強い人ほど成績が良かった。ただ、その後の大規模な追試や大学の授業での実験では、同じ効果は見られなかった。

ひとことで言うと不安を紙に書くと点が上がる? 有名な実験だけど、やり直したら同じ結果は出なかった。

もくじ
  1. 2011年の実験:不安を書いた生徒の方が点数が良かった
  2. 不安は「頭の作業スペース」を占領する
  3. 追試では、同じ効果が出なかった
  4. それでも試してみたい人へ
  5. 2011年の実験では、関係ないことを書いても効果はなかった
  6. まとめ

ここ一番のテストで、頭が真っ白になった経験はありませんか? 家では解けた問題なのに、本番だと手が止まる。いわゆる本番で力が出せない状態です。

そんな「本番に弱い」人向けに、とてもシンプルな方法が話題になったことがあります。それは、試験の直前に、不安な気持ちを紙に書き出すこと。

世界トップクラスの科学誌 Science に載った研究がもとになっています。ただし、この話には続きがありました。

012011年の実験:不安を書いた生徒の方が点数が良かった

不安が強い生徒は、ふだんなら本番で成績を落としがちです。それが、書き出したことで不安の弱い生徒とあまり変わらない成績をとれました。

02不安は「頭の作業スペース」を占領する

なぜ書き出すと効くと考えられたのか。カギはワーキングメモリです。

ワーキングメモリは、問題を解くときに情報を一時的に置いておく頭の中の作業机のようなもの。ところが、「失敗したらどうしよう」「親に怒られる」といった心配ごとが、この机の上を占領してしまうことがあります。そうなると、肝心の問題を解くスペースが足りなくなるんです。

研究チームの考え:不安を紙に移せば、頭の作業机が空く
研究チームの考え:不安を紙に移せば、頭の作業机が空く

研究チームは、こう考えました。書き出すことで心配ごとを紙の上に移し、気持ちを整理できる。その結果、作業机が片付いて、本来の力が出せるようになる、というわけです。

ちなみに、つらい気持ちを文章にする筆記開示(ひっきかいじ)という方法自体は、1980年代から米国の心理学者ペネベーカーらによって研究されてきました。ただし、多くの研究をまとめた2006年のメタ分析では、心身の健康への効果は平均すると小さいとされています。

03追試では、同じ効果が出なかった

2018年、別の研究チームが、2010〜2015年に Science と Nature に載った社会科学の実験21本を、分析のやり方を前もって公表したうえでやり直しました。ラミレスとベイロックの1つ目の実験室の実験もその1本です。元の実験より人数を増やして2回やり直しましたが、書き出しの効果は再現されませんでした。

2021年には、アメリカの大学の授業で、本物の試験4回を使った実験も行われました。試験ごとに、直前に不安を書き出す回と、別の作業をする回を入れ替えて比べたものです。ここでも、テスト不安が減ったり点数が上がったりする効果は見られませんでした。

つまり「試験前に不安を書けば点数が上がる」は、今のところ確かな話とは言えません。効果ははっきりしないので、期待しすぎないのがよさそうです。

04それでも試してみたい人へ

元の2011年の研究でも、もともと不安があまりない生徒では、書いても書かなくても点数は変わりませんでした。

052011年の実験では、関係ないことを書いても効果はなかった

「じゃあ、試験前に何か文章を書けば落ち着くのかな?」と思うかもしれません。

ラミレスとベイロックの2つ目の実験室の実験では、テストと関係ない日常の出来事について書いたグループも用意されました。このグループでは成績の改善は見られず、効果があったのはテストへの不安そのものを書き出した場合でした。

研究チームは、もやもやした不安を言葉にして外に出すことがカギだと考えました。ただ、上で見たように、この効果そのものが追試で確かめられていません。

06まとめ

「試験前に不安を書き出すと点数が上がる」は、Science に載った有名な実験の結果です。でも、大規模な追試や大学の授業での実験では、同じ効果は出ませんでした。

有名な雑誌に載った研究でも、やり直すと結果が変わることがあります。テスト対策は、まずテスト形式の復習のように、効果が何度も確かめられている方法を優先しましょう。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerMany students know how it feels to freeze during an important exam. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

Many students know how it feels to freeze during an important exam. In 2011, Ramirez and Beilock at the University of Chicago published a study in the journal Science that tested a simple solution. First, in a laboratory, university students who wrote freely about their feelings for about ten minutes before a stressful math test performed better than students who simply sat and waited.

Then the researchers tried the idea in a high school biology final exam. Students with high test anxiety benefited the most, and they scored almost as well as calm students. The researchers believed that worries take up working memory, the mental desk we use to solve problems. However, when another team repeated the laboratory study in 2018, writing did not help.

125 words ・ CEFR B1

和訳を見る

多くの学生は、大事な試験の最中に固まってしまう感覚を知っています。2011年、シカゴ大学のラミレスとベイロックは、シンプルな解決策を試した研究を科学誌『Science』に発表しました。まず実験室で、ストレスのかかる数学のテストの前に約10分間自分の気持ちを自由に書いた大学生は、ただ座って待っていた学生より良い成績をとりました。

次に研究者たちは、この方法を高校の生物の期末試験で試しました。テスト不安の強い生徒が最も恩恵を受け、落ち着いた生徒とほぼ同じくらいの点数をとりました。研究者たちは、心配ごとがワーキングメモリ、つまり問題を解くために使う頭の中の机を占領すると考えました。しかし、2018年に別のチームが実験室の研究をやり直したところ、書いても効果はありませんでした。

4択リーディングクイズ

Q1. What did the students in the laboratory experiment do before the math test?

Q2. What happened to students with high test anxiety in the high school study?

Q3. What happened when another team repeated the laboratory study in 2018?

重要単語

  • anxietyB2
    名詞不安Test anxiety can make your mind go blank. 形容詞 anxious。be anxious about ~「~を心配している」と be anxious to do「~したがっている」の意味の違いは入試頻出。
  • expressive writingC1
    名詞(句)筆記開示(気持ちを書き出すこと)Expressive writing helps you put feelings into words. express(表現する)の形容詞 expressive。put ~ into words「~を言葉にする」も一緒に覚えたい。
  • chokeC1
    動詞(プレッシャーで)実力を出せずに失敗するSome athletes choke in big games. 本来は「息が詰まる・窒息する」。choke under pressure「プレッシャーで力を出せない」は心理学・スポーツの定番表現。
  • pressureB1
    名詞重圧、プレッシャーWriting before the exam may reduce the pressure you feel. press(押す)の名詞形。under pressure「重圧の下で」、peer pressure「仲間からの同調圧力」。
  • worryA2
    名詞・動詞心配(する)Write down every worry, then turn the paper over. worry about ~「~を心配する」。be worried about も同じ意味。名詞では数えられる(worries)点に注意。
  • stakesC1
    名詞(成否にかかっているもの)賭け金The stakes are high in an entrance exam. the stakes are high「失敗したときの損失が大きい」。high-stakes test(人生を左右する試験)も頻出。
  • substantiallyC1
    副詞大幅に・かなりWriting substantially narrowed the gap. substantial(相当な)の副詞形。considerably とほぼ同義で、研究結果の大きさを表すときに使う。

動画でもっと知る

4コマでわかる

試験直前に不安を紙に書くと点数が上がる? Science掲載の有名な実験、追試では再現されずの4コマ漫画
試験の直前に10分間、「テストの何が不安か」を紙に書き出すだけで成績が上がったという研究がScienceに載っている。特に不安が強い生徒ほど効果が大きかったらしい。ただ、のちの大規模な追試では再現されなかった。

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出典・参考文献(6件)タップで表示
  1. Ramirez & Beilock (2011) Writing about testing worries boosts exam performance in the classroom, Sciencedoi.org
  2. Beilock & Carr (2005) When high-powered people fail: Working memory and "choking under pressure" in math, Psychological Sciencedoi.org
  3. Pennebaker (1997) Writing about emotional experiences as a therapeutic process, Psychological Sciencedoi.org
  4. Frattaroli (2006) Experimental disclosure and its moderators: A meta-analysis, Psychological Bulletindoi.org
  5. Camerer et al. (2018) Evaluating the replicability of social science experiments in Nature and Science between 2010 and 2015, Nature Human Behaviourdoi.org
  6. Myers, Davis & Chan (2021) Does expressive writing or an instructional intervention reduce the impacts of test anxiety in a college classroom?, Cognitive Research: Principles and Implicationsdoi.org