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スマホは机に置くだけで集中力を奪う? 有名研究「ブレイン・ドレイン」のその後

スマホは机に置くだけで集中力を奪う? 有名研究「ブレイン・ドレイン」のその後

読む前に予想してみよう!

スマホが机に置いてあるだけで集中力が落ちることは、科学的に完全に証明されている

研究カード(どんな研究?)
対象
大学生など
規模
元研究約800人+メタ分析(最大56研究・約7千人)
研究の種類
実験研究+事前登録追試+メタ分析
確かさ
★★★★☆
3秒でわかる

2017年の研究は「置くだけで認知能力が下がる」と報告。でも追試やメタ分析では効果ゼロ〜小さめと割れている。通知や使用はやっぱり集中の敵。

ひとことで言うと置くだけで頭が悪くなるかはナゾ。でも別の部屋に置けば安心!

もくじ
  1. 「置くだけで能力が下がる」と報告された
  2. 追試では、差が出なかった
  3. でも「通知」と「ちょっと見」は別問題
  4. なぜ研究の結果が割れるのか
  5. まとめ

勉強中、スマホは画面を伏せて机の上。触っていないからセーフ…と思っていませんか?

2017年、「スマホはそこにあるだけで頭の働きを奪う」という研究が発表され、世界中で話題になりました。名付けてブレイン・ドレイン(脳の流出)。

ところが、話はそこで終わりませんでした。その後の「答え合わせ」で、意外な展開が待っていたんです。

01「置くだけで能力が下がる」と報告された

触っていないのに、ただ視界の近くにあるだけで、脳の一部が「スマホを無視すること」に使われてしまう。そんな説明は、とても説得力がありました。

02追試では、差が出なかった

ところが2022年、カナダ・ウェスタン大学の研究者ルイス・パルドとミンダが、事前に手順を公開したうえで同じ実験をやり直したところ、スマホの置き場所による差は見られませんでした。

さらに、多くの研究をまとめたメタ分析(研究を束ねて全体の傾向を見る分析)も2つ出ています。

  • 2024年のハルタントらの分析(33研究・約4,400人):「置いてあるだけ」の影響はほぼゼロ
  • 2023年のパリーの分析(56研究・約7,100人):ワーキングメモリにだけ小さな悪影響が見られたが、研究方法のばらつきや検出力不足から結論は保留

なお、同じ2023年には、スマホを「使うこと」と「置いてあること」をまとめて分析し、「全体として悪影響あり」とする別のメタ分析も出ており、どの研究を含めるかで結論が揺れているのが現状です。

つまり今のところ、「置くだけで頭が悪くなる」はビミョーという判定です。

「置くだけ」の影響は、まだ天秤が決まりきっていない
「置くだけ」の影響は、まだ天秤が決まりきっていない

03でも「通知」と「ちょっと見」は別問題

ここで安心してスマホを机に戻すのは早いです。

「置いてあるだけ」の効果はビミョーでも、通知が来ることや、実際にちょっと見てしまうことは話が別。2015年に米フロリダ州立大学のチームが報告した研究では、自分で画面を見なくても、通知の音や振動が来ただけで、注意力の課題のミスが増えました。

スマホが近くにあれば、通知も「ちょっと見」も起こりやすい。結果として、勉強の流れが何度も途切れることになります。

04なぜ研究の結果が割れるのか

同じテーマなのに、なぜこんなに結果がバラバラなのでしょうか。

2023年のメタ分析を行ったパリーは、この分野の研究には参加者が少なく、わずかな差を見つける力(統計的な検出力)が弱いものが多いこと、そして実験のやり方がそれぞれ違うことを指摘しています。スマホをどこに置くか、どんなテストを使うか、参加者のスマホ依存度はどうか。条件が少し変わるだけで、結果も変わりやすいんです。

一つの研究だけで「スマホは悪」「スマホは無害」と決めつけず、複数の研究の流れを見ることが大切です。

05まとめ

「置くだけで頭の働きが落ちる」はまだ決着していませんが、通知や“ちょっと見”が集中を切るのは確かです。

一番シンプルな対策は、物理的に距離をとること。効果があってもなくても損はしないので、今日の勉強からスマホを隣の部屋に置いてみてください。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerIn 2017, Ward and colleagues reported a surprising "brain drain" effect. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

In 2017, Ward and colleagues reported a surprising "brain drain" effect. University students put their smartphones on the desk, in a bag or pocket, or in another room, and then took tests of working memory.

Students with phones on the desk scored lowest, and those whose phones were in another room scored highest. In 2022, however, researchers in Canada repeated the experiment. They published their plan in advance and found no difference.

A 2024 meta-analysis of 33 studies also found that the mere presence of a phone had almost no effect. Notifications are another matter. A 2015 study showed that simply receiving one increased mistakes on an attention task. Keeping your phone in another room is an easy choice.

119 words ・ CEFR B1

和訳を見る

2017年、ウォードらは驚くべき「ブレイン・ドレイン(脳の流出)」効果を報告しました。大学生がスマホを机の上、カバンやポケットの中、または別の部屋に置き、それからワーキングメモリのテストを受けました。

机の上にスマホを置いた学生の点数が最も低く、別の部屋に置いた学生の点数が最も高かったのです。しかし2022年、カナダの研究者たちがこの実験をやり直しました。彼らは事前に計画を公開したうえで行い、差は見られませんでした。

33の研究を対象とした2024年のメタ分析も、スマホがただそこにあることの影響はほとんどないことを示しました。通知は話が別です。2015年の研究では、通知を1つ受け取るだけで、注意力の課題のミスが増えることが示されました。スマホを別の部屋に置いておくのは手軽な選択です。

4択リーディングクイズ

Q1. In the 2017 study, which students scored highest?

Q2. What did the 2024 meta-analysis find?

Q3. Why does the writer say "Notifications are another matter"?

重要単語

  • mere presenceC1
    名詞(句)単にそこにあることThe mere presence of a phone may or may not distract you. mere は「単なる」(名詞の前だけで使う)。副詞 merely(単に)=only。the mere thought of ~「~を考えただけで」も頻出。
  • notificationB2
    名詞通知Turn off notifications while you study. notify(知らせる)の名詞形。notify A of B「A に B を知らせる」の語法も入試で問われる。
  • dependenceB2
    名詞依存Smartphone dependence varies from person to person. depend on ~ の名詞形。反対は independence(独立)。dependency もほぼ同義。
  • preregisteredC1
    形容詞事前登録されたA preregistered study states its plan before collecting data. pre-(前に)+register(登録する)。結果を見てから分析を変える「後出し」を防ぐ、再現性改革のキーワード。
  • statistical powerC1
    名詞(句)検出力Small studies often lack statistical power. 本当にある差を見つけられる確率。参加者が少ないと power が低くなる。lack power「検出力が足りない」。
  • cognitive capacityC1
    名詞(句)認知能力(頭の処理能力)Ward claimed that phones reduce available cognitive capacity. cognitive(認知の)+capacity(容量)。cognitive load(認知負荷)も合わせて覚えたい。
  • interruptionB2
    名詞中断・じゃまFrequent interruptions make it hard to focus. inter-(間に)+rupt(破る)。erupt(噴火する)、corrupt(腐敗した)と同じ -rupt の仲間。

動画でもっと知る

「スマホが机にあるだけで頭の働きが落ちる」という有名研究、追試では再現されなかったり、メタ分析で効果ほぼゼロと出たりしているらしい。ただし通知と“ちょっと見”は話が別。

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出典・参考文献(5件)タップで表示
  1. Ward, Duke, Gneezy & Bos (2017) Brain drain: The mere presence of one's own smartphone reduces available cognitive capacity, Journal of the Association for Consumer Researchdoi.org
  2. Ruiz Pardo & Minda (2022) Reexamining the "brain drain" effect: A replication of Ward et al. (2017), Acta Psychologicadoi.org
  3. Hartanto et al. (2024) The effect of mere presence of smartphone on cognitive functions: A four-level meta-analysis, Technology, Mind, and Behaviordoi.org
  4. Parry (2023) Does the mere presence of a smartphone impact cognitive performance? A meta-analysis of the "brain drain effect", Media Psychologydoi.org
  5. Stothart, Mitchum & Yehnert (2015) The attentional cost of receiving a cell phone notification, Journal of Experimental Psychology: Human Perception and Performancedoi.org