画面の読み込みが1〜2秒遅れるだけで、オンラインの宿題をやり終える数も点数も下がっていた

読む前に予想してみよう!
画面の読み込みが1〜2秒遅れるくらいなら、勉強の成果には全く関係ない
米国の小中高生約2万7,000人の記録では、読み込みが遅いときは、宿題をやり終える数も点数も下がっていた(くじ引きの実験ではなく、同じ生徒の読み込みが速いときと遅いときを比べた分析)。
- 対象
- 米国の小中高生(オンライン数学の宿題)/中南米中心のプログラミング学習者
- 規模
- 2万6,707人+5万5,184人
- 研究の種類
- 準実験(記録データで、同じ人の読み込みが速いときと遅いときを比較)
- 確かさ
- ★★★☆☆
米国の小中高生2万6,707人のオンライン数学の宿題の記録で、読み込みが遅いときは、やり終える宿題が減り、点数も下がっていた。プログラミング学習者5万人超でも似た傾向。
ひとことで言うと画面がほんの1〜2秒止まるだけで、勉強がはかどらなくなるのかも!
もくじ
ボタンを押したのに、画面の真ん中で丸い輪がくるくる回るだけ。待たされるのは、せいぜい1〜2秒ほどでしょう。
その1〜2秒が、勉強の結果に響いているらしい。2026年10月8日、そんなデータが科学誌『Nature Human Behaviour』に載りました。米国の小中高生2万6,707人のオンライン数学の宿題では、読み込みが遅いときは、やり終える宿題が減り、途中で気が散りやすくなり、点数も下がっていました。
中南米を中心にプログラミングを学ぶ5万5,184人でも、読み込みが遅いと、集中して取り組む時間が減り、ほかのことをしながらの「ながら学習」が増えていました。発表したのは、メイザー(Mazar)さんを先頭に、「やり抜く力(グリット)」の研究で知られるダックワース(Duckworth)さんら7人です。
01同じ子どもの、読み込みが速いときと遅いときの成績を比べた
では、どうやって調べたのでしょうか。「読み込みが遅い家の子は点数が低い」と比べるだけでは、遅れのせいかどうかは分かりません。ネット回線の速さは、家庭の事情や住んでいる地域ともつながっているからです。
そこでチームは、1人の生徒の中で比べました。同じ生徒の、読み込みが速かったときと遅かったときで、結果がどう違うかを見たのです。こうすれば、家庭の事情や通う学校のように、同じ生徒ならほとんど変わらないものは、結果の差に紛れ込みません。
02数学の宿題で、何が変わったか
論文の要旨(論文の最初に載っている短いまとめ)によると、読み込みが遅いとき、米国の小中高生には次のような違いが出ていました。
- やり終える宿題が減った
- やり終えるまでに時間がかかった
- 途中で気が散りやすくなった
- 点数が下がった
それぞれ「どれくらい」下がったのかは、論文の本文が有料のため、確かめられませんでした。研究チームはデータと分析コードも公開していますが、論文に載った数字と同じかを確かめられないので、この記事では数字を書きません。

03プログラミングを学ぶ5万人でも、同じ向きの結果
2つ目のデータは、プログラミングを学ぶ人たちの記録です。オンライン学習サイトの利用者5万5,184人で、多くは中南米の人でした。
こちらでも、ページの読み込みが遅いときは、集中して取り組む時間が減り、ほかのことをしながら学ぶことが増え、終えたレッスンの数が減りました。講座の大事な節目までたどり着く人も少なくなっていました。
国も、学ぶ中身も違う2つの集団で、同じ向きの結果が出たことになります。なお、こちらのデータは一般には公開されていません(申し出があれば提供する、と論文に書かれています)。
04注意点:くじ引きの実験ではなく、残っていた記録の分析
ここは正直に書いておきます。この論文の中心になっている2つの研究は、遅れをくじ引きで割り当てた実験ではありません。サービスに残っていた記録を、なるべく実験に近くなるよう工夫して比べた分析です(専門用語で「準実験」と呼びます)。
同じ人の中で比べることで、変わらない家庭の違いは取り除けます。また論文の要旨は、分析のやり方をいろいろ変えても結果は崩れなかった、と書いています。
それでも、読み込みが遅いときに、たまたま別の何かが重なっていた可能性は残ります。たとえば、家族みんながネットを使って家が騒がしい時間帯などです。著者は、この比べ方なら「遅れが原因」と読んでよい、と主張しています。ただ、この記事では「遅れが学びをじゃましていることを強く示唆する」と受け止めておきます(そう考えられる手がかりは強いけれど、言い切りはしない、という意味です)。
なお、論文のデータ公開の欄には、くじ引きで条件を分けた「ランダム化実験」のデータもある、と書かれています。ただ、それが何を調べた実験で、論文でどう報告されているかは、本文が有料のため確かめられませんでした。
もう一つ。この論文が調べたのは数学の宿題とプログラミングで、英語の学習は調べていません。
05オンラインで英語を学ぶ人にも、関係があるかもしれない
それでも、英単語アプリ、オンライン英会話、動画で学ぶ講座は、どれも画面の切り替えの連続です。1問ごとにページが開く仕組みなら、同じことが起きる可能性はあります(この論文では確かめていません)。
論文の要旨は、こうした遅れが、ネット回線の遅い学習者の足を引っ張っているかもしれない、と書いています。回線の速さは自分で選べない人も多く、もしそうなら、本人のやる気だけの問題とは言えません。
06まとめ
オンライン学習の「続かない」「集中できない」は、やる気や性格の話にされがちです。この研究では、合わせて約8万人の記録から、画面の側のたった1〜2秒の待ち時間も、その原因の候補として浮かび上がりました。
中心の2つの研究はくじ引きの実験ではないので、確かさには限りがあります。それでも、学習アプリを作る側にとっては、読み込みを1秒でも速くすることが、学びを支える工夫の一つになりそうです。次に輪がくるくる回ったら、スマホに手を伸ばす前に、一呼吸置いてみてください。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerResearchers studied records from two online learning services.
音声
4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
You click a button, and a small circle spins on the screen. Most of the time, you wait only a second or two. A new study looked at 26,707 school students in the US. They did their math homework online.
When a page loaded more slowly than usual, the students finished less homework. Their scores were lower, too. People learning to code showed a similar pattern. The study did not look at English learning.
74 words ・ CEFR A2
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ボタンを押すと、画面で小さな輪がくるくる回る。たいていの場合、待つのはほんの1〜2秒だ。新しい研究は、米国の小中高生2万6,707人を調べた。彼らは数学の宿題をオンラインでやっていた。
ページの読み込みがいつもより遅いと、生徒たちがやり終える宿題は少なくなった。点数も低かった。プログラミングを学ぶ人たちにも似た傾向が見られた。この研究は英語の学習は調べていない。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
ページの読み込みが遅いと、宿題をやり終える量や点数が下がったという研究を紹介しているので、正解は B。
Q2. How many school students were in the study?
「A new study looked at 26,707 school students in the US.」とあるので、正解は C。55,184 は記事にあるプログラミング学習者の人数で、この英文には出てこない。
Q3. In the passage, "pattern" means ___.
pattern は「(くり返し見られる)傾向、型」。プログラミングを学ぶ人にも似た結果が見られたと述べているので、正解は B。
Researchers studied records from two online learning services. The first group was 26,707 school students in the US who did math homework online. The team compared each student with themselves. On homework where the page took longer to load, students finished less work, got distracted more often, and earned lower scores.
Even delays of only one or two seconds went with these changes. The second group was 55,184 people learning to code, mostly in Latin America. When their pages loaded slowly, they spent less time focused and finished fewer lessons. These two studies were not randomized experiments, so the results need some care.
103 words ・ CEFR B1
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研究者たちは、2つのオンライン学習サービスの記録を調べた。1つ目のグループは、数学の宿題をオンラインでやっていた米国の小中高生2万6,707人だった。チームは、一人ひとりの生徒を、その生徒自身の別のときと比べた。ページの読み込みに時間がかかった宿題では、生徒たちがやり終える量が少なく、気が散ることが多く、点数も低かった。
たった1〜2秒の遅れでも、こうした変化と結びついていた。2つ目のグループは、主に中南米でプログラミングを学ぶ5万5,184人だった。ページの読み込みが遅いと、集中している時間が減り、終えたレッスンも少なくなった。この2つの研究はランダム化実験ではないので、結果の受け止め方には注意が必要だ。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
2つのオンライン学習サービスの記録から、読み込みが遅いと取り組みや成績が下がったことを説明しているので、正解は A。
Q2. How did the team compare the math students?
「the team compared each student with themselves」とあるので、正解は B。別々の生徒どうしを比べたのではない。
Q3. Why does the writer say the results need some care?
最後の文に「These two studies were not randomized experiments, so the results need some care.」とあるので、正解は C。2つ目のグループは中南米が中心で、1か国だけではない。
A loading circle that spins for a second or two seems too small to matter. Two large data sets suggest it may not be. In the first, researchers used the records of 26,707 US students doing math homework on an online platform. Comparing homes with fast and slow connections would mix in differences in family income and location, so the team compared each student's own quick and slow page loads.
When pages took longer to load, students finished fewer assignments, needed more time to complete them, got distracted mid-task more often, and earned lower scores. Even delays of one or two seconds went with these changes. A second data set of 55,184 coding learners, mostly in Latin America, showed a similar pattern, with less focused time, more switching to other activities, fewer finished lessons, and fewer people reaching a key point in their course.
Because nobody in these two data sets was randomly assigned to slow pages, something else that happens at slow moments could still play a part. The authors argue that comparing each person with themselves supports a causal reading, and they warn that these short lags could hold back learners with slower internet connections.
197 words ・ CEFR B2
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1〜2秒回るだけの読み込みの輪など、気にするほどのことではないように思える。だが、2つの大きなデータは、そうではないかもしれないと示している。1つ目では、研究者たちは、オンラインの宿題サービスで数学の宿題をしていた米国の生徒2万6,707人の記録を使った。回線の速い家庭と遅い家庭を比べると、家庭の収入や住む地域の違いが混ざってしまうため、チームはそれぞれの生徒について、本人のページがすぐに開いたときと、なかなか開かなかったときを比べた。
ページの読み込みに時間がかかったとき、生徒たちはやり終える宿題が減り、やり終えるまでに時間がかかり、課題の途中で気が散ることが増え、点数も下がった。1〜2秒の遅れでも、こうした変化と結びついていた。主に中南米でプログラミングを学ぶ5万5,184人の2つ目のデータでも、集中している時間が減り、ほかのことに切り替えることが増え、終えたレッスンが減り、講座の大事な節目にたどり着く人が減るという、似た傾向が見られた。
この2つのデータでは、遅いページを誰かにランダムに割り当てたわけではないので、遅いときに起きている別の何かが関わっている可能性は残る。著者らは、一人ひとりを本人と比べたことが因果の解釈を支えると主張し、こうした短い遅れが、ネット回線の遅い学習者の足を引っぱっているかもしれないと注意をうながしている。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
2つのデータで短い読み込みの遅れと学習の低下が結びついていたことと、ランダムに割り当てたわけではないという限界を述べているので、正解は B。C は本文に「nobody in these two data sets was randomly assigned」とあり誤り。
Q2. Why did the team compare each student's own quick and slow page loads?
「Comparing homes with fast and slow connections would mix in differences in family income and location, so the team compared each student's own quick and slow page loads.」とあるので、正解は A。
Q3. Which statement would the writer most likely agree with?
2つの大きなデータで同じ傾向を示す一方、「something else that happens at slow moments could still play a part」と別の説明の余地も書いているので、正解は C。A の「証明した」や B の「唯一の原因」は言い過ぎ。
重要単語
- loadA2動詞・名詞(ページやデータが)読み込まれる/読み込みThe page took five seconds to load.
もとは「荷物を積む」。take ~ seconds to load(読み込みに~秒かかる)、load time(読み込み時間)の形でよく使う - lagB2名詞・動詞遅れ、もたつき/遅れるThere was a short lag before the video started.
ゲームやオンライン通話の「ラグい」の元の英語。jet lag は「時差ぼけ」 - distractionB2名詞気を散らすもの、注意がそれることMy phone is my biggest distraction when I study.
動詞は distract(気をそらす)。be distracted by ~(~に気をとられる)は入試の英文で頻出 - multitaskB2動詞同時にいくつものことをするIt is hard to learn new words while you multitask.
multi-(多くの)+ task(作業)。名詞の multitasking(ながら作業)もよく使う - assignmentB1名詞宿題、課題I finished the math assignment before dinner.
動詞 assign(割り当てる)+ -ment。homework は数えられないが、assignment は an assignment / two assignments と数えられる - milestoneC1名詞(進み具合の)節目、大事な区切りFinishing the first project was a big milestone for her.
もとは道ばたに立てて距離を示した「マイル標石」。reach a milestone(節目に届く)
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オンラインの宿題で、画面の読み込みがたった1〜2秒遅れるだけ。米国の小中高生2万6,707人の記録では、読み込みが遅いときは、やり終える宿題が減り、途中で気が散りやすく、点数も下がっていた。中南米中心のプログラミング学習者でも似た結果(くじ引きの実験ではない)。
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※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。










