「早生まれは不利」はどこまで本当? 4月生まれと3月生まれ、テストの点から人間関係まで

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早生まれの不利は、大人になるまでずっと同じ大きさで続く
テストの点の差は学年が上がるにつれて小さくなる傾向がある。ただし長期的な影響については研究によって結果が分かれる。
- 対象
- 小中学生(OECD諸国・日本・米国)
- 規模
- 数万〜数十万人規模
- 研究の種類
- 自然実験(誕生日の区切りを利用)
- 確かさ
- ★★★★☆
同じ学年の中で遅く生まれた子(早生まれ)は、小中学生のテストの点が低めになりやすい。日本のデータでも確認されている。ただしテストの点の差は学年とともに縮み、長期的な影響は研究で分かれる。
ひとことで言うと同じ学年でも、ほぼ1年の年の差がある。小さいうちはそれが点数に出やすい。
日本では、4月2日から翌年4月1日までに生まれた子が同じ学年になります。つまり、4月生まれと3月生まれ(いわゆる「早生まれ」)は、同じ教室にいながらほぼ1年分の年の差があるのです。
6歳の子どもにとっての1年は、人生の6分の1。「早生まれは不利」とよく言われますが、研究で見るとどうなのでしょうか。
01国際テストで見えた「生まれ月の差」
02日本のデータでも確認された
日本についても研究があります。経済学者の川口大司さんは2011年、日本のデータを使って、学年の中で年上の子(4月生まれに近い子)ほど、小中学生のテストの点が高い傾向を報告しました。この研究では、年上の子ほど最終的に学校に通う年数も長く、男性では大人になってからの年収も高めでした。
2023年には、山口さん、伊藤さん、中室牧子さんの3人が、埼玉県の公立小中学校(小4〜中3)の学力調査のデータを分析しました。学年内で年下の子は、学力だけでなく、自分をコントロールする力などの「非認知能力」も低めになりやすいことが分かりました。
テストの点の差は、中3では小4のときの半分以下に縮んでいました。ところが非認知能力の差は、中3になってもほとんど縮まりませんでした。年下の子は勉強により多くの時間をかけ、学力の差を埋め合わせようとしている様子も見られました。一方で、クラスメートや先生との関係がうまくいきにくい傾向もありました。研究チームは、これが長い目で見て非認知能力の育ちに響くおそれがある、と書いています。

038月生まれは9月生まれよりADHDと診断されやすい?
アメリカでは、「9月1日までに5歳になった子」から学校(キンダーガーテン)に入る、という区切りの州が多くあります。ハーバード大学のLaytonさんらは2018年、『New England Journal of Medicine』誌で、約40万人の子どもの保険データを分析しました。
すると、9月1日が区切りの州では、学年で一番年下になる8月生まれの子は、一番年上になる9月生まれの子よりも、ADHDと診断される割合が約3割高いことがわかりました。区切りの日が9月1日でない州では、この差は見られませんでした。
年齢が幼いことによる落ち着きのなさが、発達の特性と見なされている可能性がある、と研究チームは指摘しています。
04学力の差は縮んでいく。入学を遅らせればいいわけでもない
スポーツの世界でも、プロ選手には学年の前半に生まれた人が多い「相対年齢効果」がよく知られています。小さいころの体格差が、選抜やコーチの目にとまるかどうかに影響するためと考えられています。
一方、学力の差は学年が上がるにつれて小さくなる傾向があります。アメリカの経済学者DemingさんとDynarskiさんは2008年、子どもの入学を1年遅らせる「レッドシャツ」について、低学年では年上の方が有利だが、大人になってからの収入や学歴にプラスになるという証拠は乏しいとまとめています。むしろ入学が遅れると、学校に通う年数や生涯の収入が減るという証拠がある、とも書いています。
ただし、長く続く影響があるかどうかは、国や制度によって違います。日本では先ほどの川口さんの研究のように、学年の中で年下だった男性の年収が低めだったという結果も出ています。
05まとめ
早生まれの不利は、小中学生のテストの点や、学校での人間関係に表れることが研究で確かめられています。ADHDの診断にまで影響している可能性もあります。
でも、テストの点の差の多くは年齢の差で、学年が上がるにつれて小さくなっていきます。一方で、非認知能力の差は中3になってもあまり縮まらず、人間関係の難しさも報告されています。大切なのは、大人が生まれ月の違いを頭に入れて、子どもを見てあげることなのかもしれません。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerIn Japan, a child born in April and a classmate born the following March can be almost a year apart in age.
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4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
In Japan, children born between April 2 and April 1 of the next year are in the same school year. So a child born in April can be almost one year older than a classmate born in March.
Studies show that the youngest children in a class often get lower test scores in elementary and junior high school. But the gap gets smaller as children grow older.
67 words ・ CEFR A2
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日本では、4月2日から翌年の4月1日までに生まれた子どもが同じ学年になります。そのため、4月生まれの子は、3月生まれのクラスメートよりほぼ1歳年上になることがあります。
研究によると、クラスで一番年下の子どもは、小学校や中学校のテストで点数が低めになることがよくあります。しかし、その差は子どもが成長するにつれて小さくなります。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
同じ学年内の生まれ月の違いがテストの点に影響することがテーマなので D。
Q2. Which children often get lower test scores?
the youngest children in a class often get lower test scores とあるので C。
Q3. In this passage, "the gap" means ...
gap は「差・すき間」。ここでは年上と年下の子のテストの点の差なので A。
In Japan, a child born in April and a classmate born the following March can be almost a year apart in age. Does this matter? Using international test data from OECD countries, two economists found that the youngest children in a grade scored 4 to 12 percentiles lower than the oldest in fourth grade, and 2 to 9 percentiles lower in eighth grade.
Japanese studies have found similar results. Younger children in a grade also tended to have weaker self-control and more difficult relationships with classmates and teachers. In U.S. states with a September 1 school cutoff, children born in August were about 30 percent more likely to be diagnosed with ADHD than those born in September, perhaps because their restlessness reflected their younger age.
125 words ・ CEFR B1
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日本では、4月に生まれた子どもと翌年の3月に生まれたクラスメートは、ほぼ1歳の年の差があることがあります。これは影響するのでしょうか。OECD諸国の国際テストのデータを使って、2人の経済学者は、学年で一番年下の子どもは一番年上の子どもに比べて、小学4年生で4〜12パーセンタイル、中学2年生で2〜9パーセンタイル点数が低いことを発見しました。日本の研究でも同様の結果が見つかっています。
学年内で年下の子どもは、自分をコントロールする力が弱めで、クラスメートや先生との関係も難しくなりがちでした。アメリカの9月1日が入学の区切りの州では、8月生まれの子どもは9月生まれの子どもより、ADHDと診断される割合が約30%高くなっていました。それは、彼らの落ち着きのなさが、年齢が幼いことを反映していたためかもしれません。
4択リーディングクイズ
Q1. What did the two economists find?
the youngest children in a grade scored 4 to 12 percentiles lower than the oldest とあるので B。
Q2. How much lower did the youngest children score in eighth grade?
2 to 9 percentiles lower in eighth grade とあるので A。4〜12は小学4年生の数値。
Q3. Why might younger children be diagnosed with ADHD more often?
perhaps because their restlessness reflected their younger age とあり、年齢による落ち着きのなさがADHDと見なされた可能性が示されているので D。
Every school system needs a cutoff date, which means that classmates can differ in age by almost a full year. To estimate the effect of this "relative age," Bedard and Dhuey compared children born just before and just after cutoff dates in OECD countries, an approach that works like a natural experiment because such children differ little in ability.
The youngest students in a grade scored 4 to 12 percentiles lower than the oldest in fourth grade and 2 to 9 percentiles lower in eighth grade. Research in Japan has confirmed a similar pattern. A 2023 Japanese study showed that relatively young children also had weaker non-cognitive skills, such as self-control. They appeared to compensate by studying more, yet their relationships with classmates and teachers tended to be poorer.
Relative age may even affect medical diagnoses: in American states with a September 1 cutoff, children born in August were about 30 percent more likely to be diagnosed with ADHD than those born in September, a gap not found in other states. But academic gaps shrink as students grow older, and evidence that delaying school entry improves adult earnings or education is weak. Long-term effects also vary by country.
198 words ・ CEFR B2
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どの学校制度にも区切りの日が必要で、そのためクラスメートの間にはほぼ丸1年の年齢差が生じることがあります。この「相対年齢」の効果を推定するため、BedardさんとDhueyさんは、OECD諸国で区切りの日の直前と直後に生まれた子どもを比べました。
そうした子どもたちは能力にほとんど差がないため、この方法は自然実験のように働きます。学年で一番年下の生徒は一番年上の生徒に比べて、小学4年生で4〜12パーセンタイル、中学2年生で2〜9パーセンタイル点数が低くなっていました。日本の研究でも同様のパターンが確認されています。2023年の日本の研究は、学年内で相対的に年下の子どもは、自制心のような非認知能力も弱めであることを示しました。彼らは勉強時間を増やして埋め合わせようとしているようでしたが、クラスメートや先生との関係はうまくいかない傾向がありました。
相対年齢は医療の診断にさえ影響するかもしれません。9月1日が区切りのアメリカの州では、8月生まれの子どもは9月生まれの子どもより、ADHDと診断される割合が約30%高く、この差はほかの州では見られませんでした。それでも、学力の差は生徒が成長するにつれて縮まり、入学を遅らせることが大人になってからの収入や学歴を高めるという証拠は弱いのです。長期的な影響も国によって異なります。
4択リーディングクイズ
Q1. Why does comparing children born just before and after the cutoff work like a natural experiment?
because such children differ little in ability とあり、能力はほぼ同じなのに学年だけが変わるので年齢の効果を取り出せる。C。
Q2. What did the 2023 Japanese study find about relatively young children?
They appeared to compensate by studying more, yet their relationships ... tended to be poorer とあるので D。
Q3. What does the author suggest about delaying school entry?
evidence that delaying school entry improves adult earnings or education is weak とあるので B。
重要単語
- relative ageC1名詞(句)相対年齢(学年内での年の差)The relative age effect is common in sports.
relative は「相対的な」(⇔ absolute 絶対的な)。名詞では「親戚」の意味もある。 - cutoff dateB2名詞(句)区切りの日付In Japan, the cutoff date for each school year falls in early April.
cut off(切り離す)から。cutoff point「境界点」もよく使う。 - maturityB2名詞成熟Small differences in maturity matter in early grades.
形容詞 mature(成熟した)⇔ immature(未熟な)。 - diagnoseC1動詞診断するYounger children were more likely to be diagnosed with ADHD.
be diagnosed with ~「~と診断される」の形で頻出。名詞 diagnosis(複数形 diagnoses)。 - percentileC1名詞百分位(順位の位置)Her score was in the 80th percentile.
per cent(100あたり)から。80th percentile は「下から80%の位置=上位20%」。 - persistB2動詞持続するDo these effects persist into adulthood?
名詞 persistence、形容詞 persistent(しつこい・持続的な)。persist in ~「~に固執する」。
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同じ学年でも、4月生まれと3月生まれはほぼ1年違う。国際テストの分析では、学年で一番年下の子は一番年上の子より、小4で成績の順位が100人中4〜12番ほど低かったらしい。9月1日で学年を区切る米国の州では、8月生まれが9月生まれよりADHDと診断されやすいという研究も。
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出典・参考文献(5件)タップで表示
- Bedard & Dhuey (2006) The Persistence of Early Childhood Maturity: International Evidence of Long-Run Age Effects, The Quarterly Journal of Economicsdoi.org
- Kawaguchi (2011) Actual age at school entry, educational outcomes, and earnings, Journal of the Japanese and International Economiesdoi.org
- Yamaguchi, Ito & Nakamuro (2023) Month-of-birth effects on skills and skill formation, Labour Economicsdoi.org
- Layton et al. (2018) Attention Deficit–Hyperactivity Disorder and Month of School Enrollment, New England Journal of Medicinedoi.org
- Deming & Dynarski (2008) The Lengthening of Childhood, Journal of Economic Perspectivesdoi.org
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。












