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同じアメリカの音大で、中国語などを“すらすら話す”学生ほど絶対音感テストが高得点。血筋より言葉?

同じアメリカの音大で、中国語などを“すらすら話す”学生ほど絶対音感テストが高得点。血筋より言葉?

読む前に予想してみよう!

中国語などを話す家庭で育てば、自分がすらすら話せなくても絶対音感テストの成績は高い

研究カード(どんな研究?)
対象
アメリカの音楽大学の学生など
規模
203人(東アジア系27人)+読み上げ実験36人(ベトナム語7・中国語15・英語14)
研究の種類
観察研究(全員参加の現地テスト)・読み上げ実験
確かさ
★★☆☆☆
3秒でわかる

同じ東アジア系の音大生でも、中国語やベトナム語をすらすら話す学生ほど絶対音感テストの成績が高かった。ただし人数は少なく、反対の結果もある。

ひとことで言うと音の高さで意味が変わる言葉を話していると、絶対音感が育ちやすいのかも!

もくじ
  1. 声調言語ってなに? 「ma」が4つの意味になる
  2. 実験1:しゃべる声にも「絶対音感」があった?
  3. 実験2:同じ音大、同じルーツで比べたら
  4. 日本語はどうなの?
  5. どんでん返し:「耳のよさ」まで言葉で決まるわけではない
  6. まとめ

ピアノの音を1つ聞いただけで「今のはソ」と言い当てる絶対音感。アメリカやヨーロッパでは、持っている人は1万人に1人もいないと推定されています。

ところが、アメリカの同じ音楽大学で調べると、中国語やベトナム語を“すらすら話す”学生15人の多くが、36の音の名前を9割以上言い当てました。

しかも、同じ東アジア系の学生でも、家の言葉をあまり話せない学生の成績は、英語などだけを話す学生とはっきりした差がありませんでした。決め手は「血筋」より「話している言葉」かもしれない――そんな研究があります。

01声調言語ってなに? 「ma」が4つの意味になる

中国語(普通話)やベトナム語は、声調言語(tone language)と呼ばれます。音の高さや上がり下がりで、単語の意味が変わる言語です。

研究者のダイアナ・ドイチュ(カリフォルニア大学サンディエゴ校)は、中国語の「ma」を例に挙げています。

  • 高く平らに言う(第1声):「母」
  • 上がり調子(第2声):「麻」
  • 下がってから上がる(第3声):「馬」
  • 高いところから下がる(第4声):「ののしる」

つまり中国語の話し手は、赤ちゃんのころから音の高さと意味をセットで覚えていることになります。ドイチュは、これが「音の高さに名前をつける」絶対音感と同じ仕組みではないか、と考えました。

一方、英語は声調言語ではありません。英語の音の高さは、主に文の調子(イントネーション)に使われます。

02実験1:しゃべる声にも「絶対音感」があった?

最初の手がかりは、2004年に学術誌『ミュージック・パーセプション』に載った実験です。ほとんどが音楽の訓練をあまり受けていない人たちに、単語のリストを別々の日に読み上げてもらい、声の高さを比べました。

半音は、ピアノのとなり合う鍵盤(黒鍵もふくむ)の音の差です。その4分の1というと、ほんのわずかなずれです。研究チームは、声調言語の話し手は頭の中に、単語ごとの決まった声の高さを持っていると考えました。

03実験2:同じ音大、同じルーツで比べたら

では、音楽の絶対音感はどうでしょう。ドイチュらは2006年、北京の中央音楽学院とアメリカの音大の学生に同じテストを行い、中国の学生のほうが絶対音感を持つ人がずっと多いと報告しました。ただ、この比べ方では国も教育も遺伝的な背景もちがいます。

そこで2009年、ロサンゼルスの南カリフォルニア大学の音楽学部で、同じ学校の学生どうしを比べました。

白人の学生の点数の分布は、あてずっぽうで答えた場合(正解率12分の1)の分布とよく似ていて、90〜100%の人がほんの少し多いだけでした。

研究チームが注目したのは、東アジア系の27人は両親とも声調言語を話すので、全員が赤ちゃんのころから声調言語を耳にしていたはずだということです。それでも、自分ではすらすら話せない人には有利さが見られませんでした。チームは、声調言語を話し続けていることが大事なのだろう、と考えています。

さらに、「とても流ちょう」な15人のうち、アメリカ生まれか9歳より前に渡米した人と、それより後に来た人の成績にも、はっきりした差はありませんでした。音楽教育を受けた国のちがいでは説明できない、というのが研究チームの見方です。

2009年の研究では、声をかけた学生全員が36音の音名テストを受けた
2009年の研究では、声をかけた学生全員が36音の音名テストを受けた

04日本語はどうなの?

日本語は、中国語のような声調言語にはふつう数えられません。ただ、ドイチュらの論文は、日本語を高低アクセントの言語として挙げています。一部の単語で、音の高さの型が意味の区別に使われる言語です。

2004年の論文は、こうした言語で「声の高さそのもの」が単語の区別に効いているかは分からない、と書いています。日本語の話し手の声が、中国語の話し手のように日をまたいでも同じ高さにそろうのかは、この研究では調べられていません。

05どんでん返し:「耳のよさ」まで言葉で決まるわけではない

まず、2009年の研究は東アジア系の学生が27人と少なく、「話す力」も本人の答えによるものです。家庭の音楽環境など、ほかの条件までそろえたわけではありません。分かったのは「よく話す人ほど成績が高い」という関係までで、声調言語を話すことが絶対音感を生む原因だと実験で確かめたわけではありません。

さらに、別のチームの研究もあります。カナダの心理学者シェレンバーグとトレハブは2008年、カナダに住む9〜12歳の子どもで、中国系とヨーロッパ系を比べました。よく知っている曲の5秒の一部を、元の高さと、高さをずらしたものの2通りで聞かせ、元の高さを選ばせるテストです。音の名前は答えなくてよいテストでした。

結果、2つのグループの成績は同じくらいで、声調言語を知っているかどうかも成績に影響しませんでした。

つまり、声調言語の話し手が「音の高さを覚える力」そのものですぐれている、とまでは言えません。ちがいが出るのは、音の高さに名前をつけるところなのかもしれません。ドイチュらの2006年の論文も、ほかの研究を引いて、絶対音感を持たない人の多くが、名前を答えなくてよければ音の高さをかなり正確に覚えていると紹介しています。

06まとめ

音の高さで意味が変わる言葉を、毎日話していること。それが、音楽の音に名前をつける力と関係しているかもしれない――アメリカの同じ音大で比べた研究は、そんな可能性を示しました。

ただし、調べた人数は少なく、「音の高さを覚える力」そのものには差が出なかった研究もあります。言葉と音楽は、思ったより近いところでつながっているのかもしれない。そのくらいの距離感で受け止めておくのがよさそうです。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerAbsolute pitch is the ability to name a musical note without hearing another note first. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

Absolute pitch is the ability to name a musical note without hearing another note first. In the U.S. and Europe, fewer than one person in 10,000 is thought to have it. The psychologist Diana Deutsch wondered if language played a part. In tone languages such as Mandarin, the pitch of a word changes its meaning.

In one study, Mandarin speakers read a word list on two different days, and their voices stayed at almost the same pitch. Her team then tested 203 students at a music school in Los Angeles. Students of Chinese or Vietnamese heritage who spoke the language very fluently did best. Those who could understand it but not speak it well did no better than students who spoke only non-tone languages like English.

126 words ・ CEFR B1

和訳を見る

絶対音感とは、ほかの音を先に聞かなくても、楽器の音の名前を言える能力だ。アメリカやヨーロッパでは、持っている人は1万人に1人もいないと考えられている。心理学者のダイアナ・ドイチュは、言葉が関係しているのではないかと考えた。中国語のような声調言語では、単語の音の高さで意味が変わる。

ある研究では、中国語の話し手が単語のリストを別々の2日に読み上げたところ、声はほとんど同じ高さのままだった。次に彼女のチームはロサンゼルスの音楽大学で学生203人をテストした。中国系やベトナム系の学生のうち、その言語をとても流ちょうに話す人がいちばん良い成績だった。聞いて分かるが上手には話せない人は、英語のような声調のない言語だけを話す学生より良いわけではなかった。

4択リーディングクイズ

Q1. What did Diana Deutsch want to find out?

Q2. What happened when Mandarin speakers read the same words on two days?

Q3. What does the result for students who could not speak the language well suggest?

重要単語

  • absolute pitchC1
    名詞絶対音感She has absolute pitch, so she can name any note she hears. absolute(絶対の)+pitch(音の高さ)。研究論文ではこちらの言い方がふつう。相対音感は relative pitch。
  • perfect pitchB2
    名詞絶対音感(日常的な言い方)Do you have perfect pitch, or do you need to hear a C first? absolute pitch と同じ意味で、会話ではこちらがよく使われる。
  • pitchB2
    名詞音の高さHer voice rose in pitch when she got excited. 野球の「投球」、サッカーの「競技場」、売りこみの「ピッチ」など意味が多い多義語。
  • tone languageC1
    名詞声調言語(音の高さで単語の意味が変わる言語)Vietnamese is a tone language. tonal language とも言う。中国語・ベトナム語・タイ語などが代表例。
  • fluentB2
    形容詞(言葉が)流ちょうな、すらすら話せるHe is fluent in both English and Mandarin. be fluent in+言語 の形でよく使う。名詞は fluency、副詞は fluently。
  • semitoneC1
    名詞半音C and C-sharp are a semitone apart. semi-(半分)+tone(音)。アメリカ英語では half step とも言う。
  • heritageB2
    名詞(受け継いだ)文化的背景、ルーツMany students at the school have Chinese heritage. world heritage site「世界遺産」の heritage と同じ語。「受け継がれたもの」が元の意味。

動画でもっと知る

絶対音感と「話す言葉」の関係。アメリカの同じ音大で調べると、中国語やベトナム語をすらすら話す学生15人の多くは36音の音名テストで9割以上正解。同じ東アジア系でも、あまり話せない学生は英語などだけを話す学生とはっきりした差がなかった。

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出典・参考文献(4件)タップで表示
  1. Deutsch, D., Dooley, K., Henthorn, T., & Head, B. (2009) Absolute pitch among students in an American music conservatory: Association with tone language fluency, The Journal of the Acoustical Society of America 125(4)doi.org
  2. Deutsch, D., Henthorn, T., & Dolson, M. (2004) Absolute pitch, speech, and tone language: Some experiments and a proposed framework, Music Perception 21(3)doi.org
  3. Deutsch, D., Henthorn, T., Marvin, E., & Xu, H.-S. (2006) Absolute pitch among American and Chinese conservatory students: Prevalence differences, and evidence for a speech-related critical period, The Journal of the Acoustical Society of America 119(2)doi.org
  4. Schellenberg, E. G., & Trehub, S. E. (2008) Is there an Asian advantage for pitch memory? Music Perception 25(3)doi.org

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