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コカ・コーラの中国語名、最初は“オタマジャクシ・かじる・ろう”の字。今の名は公募で決まった

コカ・コーラの中国語名、最初は“オタマジャクシ・かじる・ろう”の字。今の名は公募で決まった

読む前に予想してみよう!

コカ・コーラの中国語名「可口可乐」は、中国に入った1927年からずっと同じだ

研究カード(どんな研究?)
対象
中国語圏(中国大陸・香港・台湾)のブランド名
規模
会社の公式ページ・辞書・論文2本
研究の種類
公式の説明+ブランド名の訳し方の研究(実験・分類)
確かさ
★★★☆☆
3秒でわかる

コカ・コーラが1927年に中国に入ったときの中国語名は「蝌蝌啃蜡」。1字ずつの意味はオタマジャクシ・かじる・ろう。今の「可口可乐」は1930年代の公募で選ばれた。

ひとことで言うとコカ・コーラの中国語名、昔は「オタマジャクシがろうをかじる」みたいな字だった!

もくじ
  1. 1927年の名前は「言いにくい訳名」だった
  2. ブランド名の訳し方は3通り。「音」「意味」「音+意味」
  3. スタバは「星巴克」、ファミマは「全家」、カップヌードルは「合味道」
  4. 香港の「合味道」は、日本のカップヌードルと同じブランド
  5. 英語の名前のまま、という選択もある
  6. どんでん返し:名前の「意味」は、会社の説明とはかぎらない
  7. まとめ

「蝌蝌啃蜡」

いきなり漢字4文字。読めなくても大丈夫です。じつはこれ、コカ・コーラが中国に入ったばかりのころの中国語名です。

1字ずつ辞書で引いてみます。「蝌」はオタマジャクシ(蝌蚪)の「蝌」。「啃」は「かじる」。「蜡」は「ろう(ろうそくの蝋)」。並べると、オタマジャクシがろうをかじる、のような字の並びになります。

この名前のころの売れ行きはどうだったのか。コカ・コーラの中国の公式サイトは「推して知るべし」(言わなくても想像がつく)と書いています。音は似ていても、字の意味がちぐはぐな名前だったのです。

011927年の名前は「言いにくい訳名」だった

可口可乐(コカ・コーラ)中国の公式サイトには、中国語名の歴史を紹介するページがありました(2015年の記事)。今は直接開けないため、古いウェブページを保存しているサイト「インターネット・アーカイブ」で確かめました。

中国語の発音記号(ピンイン)で並べると、ちがいがよく分かります。

  • 蝌蝌啃蜡:kē kē kěn là
  • 可口可乐:kě kǒu kě lè

どちらも「コカ・コーラ」の音をまねた名前です。でも、前の名前は音を写しただけで、字の意味はばらばら。今の名前は、音を残したうえで、「可口」(口に合う、おいしい)という意味の言葉が入っています。日本語でいえば、音に合わせて縁起のいい字を選ぶ「当て字」に近い工夫です。

公式ページはこうも書いています。世界各地のコカ・コーラの名前の中で、「可口可乐」は音を写した名前なのに、意味まで通じる唯一の名前だ、と。2008年の北京オリンピックでは、この「可口可乐」の文字を、100以上の国のコカ・コーラ製品に印刷しました。その企画の名前は「美味与快乐(Delicious Happiness)」でした。

1930年代、イギリスの新聞で中国語名が募集され、イギリスにいた学者の案「可口可乐」が選ばれた(可口可乐中国の公式ページによる)
1930年代、イギリスの新聞で中国語名が募集され、イギリスにいた学者の案「可口可乐」が選ばれた(可口可乐中国の公式ページによる)

02ブランド名の訳し方は3通り。「音」「意味」「音+意味」

日本語なら、外国の名前はカタカナで音を写せば済みます。スターバックスは「スターバックス」です。ところが中国語は、ふだんの文章を漢字で書きます。漢字には1字ずつ意味があるので、音だけを写したつもりでも、字の意味がついてきてしまうのです。

2001年、アメリカの研究者向けの雑誌『Journal of Marketing Research』に、Zhang(チャン)と Schmitt(シュミット)の研究が載りました。英語のブランド名を中国語にする方法を、3つに分けています。

  • 音で訳す(phonetic):発音をまねた字を当てる
  • 意味で訳す(semantic):名前の意味を中国語に置きかえる
  • 音と意味の両方で訳す(phonosemantic):音が似ていて、意味もよい字を選ぶ

この研究は、英語と中国語の名前を並べて書いたブランド名で調べました。どの訳し方がよいかは、2つのことで変わるそうです。ひとつは、英語の名前と中国語の名前のどちらを目立たせるか。もうひとつは、同じ分野のほかの商品がどう訳してきたかです。

この3つの物差しで、身近な店や商品の中国語名を見てみましょう。

03スタバは「星巴克」、ファミマは「全家」、カップヌードルは「合味道」

それぞれ、会社の公式サイトで確かめました。

  • 星巴克:スターバックス中国の公式サイトで、会社紹介ページの題は「星巴克在中国(中国のスターバックス)」。中国大陸の1号店は、1999年1月に北京の中国国際貿易センターに開いたそうです。中国はスターバックスにとっていちばん大きな海外市場(商品を売る外国の中で、いちばん大きな国)になった、とも書かれています
  • 全家:台湾ファミリーマートの公式サイトの題は「FamilyMart 全家便利商店」。「全家店到店」「全家行動購」など、サービス名にも「全家」が使われています
  • 合味道:日清食品(香港)の公式サイトでは、製品ページ(英語のアドレスは cup-noodles)の題が「合味道」。杯麵(カップ麺)、大杯麵、迷你杯麵(ミニカップ麺)などが並んでいます

ちなみに、ユニクロの中国の公式通販サイトの題は「优衣库网络旗舰店」でした。

04香港の「合味道」は、日本のカップヌードルと同じブランド

「合味道」が本当にカップヌードルなのか、日清食品(香港)の公式サイトの年表で確かめてみます。

  • 1971年9月:世界初のカップ麺「Cup Noodles」が発売
  • 1984年:香港の日清食品が設立
  • 2016年3月:「合味道」の発売45周年。この年、世界での累計販売が400億食を超えた。今は80以上の国と地域で売られている
  • 2016年11月:香港国際空港に「我的合味道工作坊」(カップヌードルづくりを体験できる施設)を開く。日本の外に常設したのは初めて

1971年の発売から45周年が2016年。つまり香港の「合味道」は、日本の「カップヌードル」と同じブランドの、香港での名前です。

05英語の名前のまま、という選択もある

訳せば必ずよい、というわけでもありません。2002年に研究者向けの雑誌『Journal of International Marketing』に、Hong(ホン)らの研究が載りました。アルファベットの名前を、中国語のように漢字を使う言語に移す。そのときの訳し方は、大きく「意味で訳す」「音で訳す」の2つだとしています。そのうえで、実験でこんな結果を出しました。

  • 知られていないブランドなら、音で訳すことが必要になる場合がある
  • すでに強いブランドなら、もとの名前をそのまま残すのがいちばんよい場合がある

台湾のセブン‐イレブンは、名前は英字の 7-ELEVEN のまま。そのうえでキャンペーンでは「小七」という呼び名も使っています。

英語で言うなら、こんな感じです。

  • In Hong Kong, Cup Noodles is sold under the name 合味道.(香港では、カップヌードルは「合味道」という名前で売られている)
  • Some brands translate their names by sound, and others by meaning.(音で名前を訳すブランドもあれば、意味で訳すブランドもある)

06どんでん返し:名前の「意味」は、会社の説明とはかぎらない

ここで注意が2つあります。

1つ目。「星=star、巴克=bucks の音」「全家=家族全員」「合味道=味が合う」は、辞書で字の意味を引いて読んだものです。スターバックス、ファミリーマート、日清が、名前の由来をそう説明しているページは見つけられませんでした。会社がその意図で付けた、とまでは言えません。

2つ目。コカ・コーラの話は、会社自身の説明です。1930年代の新聞広告など、もとの資料は今回は確かめていません。インターネット上では「蝌蚪啃蜡」と書かれることも多いのですが、公式ページの字は「蝌蝌啃蜡」でした。また公式ページは「言いにくい訳名」と書いているだけで、誰がこの名前を付けたのかは書いていません。名付け親や年についても、ほかの説明を見かけることがあります。

07まとめ

コカ・コーラの中国語名は、音だけを写した「蝌蝌啃蜡」から、音と意味の両方をそなえた「可口可乐」へ。中国語では、外国の名前も漢字で書くので、名前の付け方そのものが工夫のしどころになります。

スタバの「星巴克」、ファミマの「全家」、カップヌードルの「合味道」。中国語圏を旅行したら、看板の漢字が「音」なのか「意味」なのか、考えながら歩いてみてください。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerChinese is written in characters, and each character has a meaning. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

Chinese is written in characters, and each character has a meaning. So when a foreign brand picks a Chinese name, it has to think about meaning as well as sound. Coca-Cola learned this the hard way.

When it arrived in China in 1927, its name sounded like the English but looked like "tadpole bites wax." According to the company, sales were poor. In the 1930s, the company offered a prize of 350 pounds in a British newspaper for a better name.

A scholar living in Britain sent in "kekou kele," and the judges liked it right away. The name keeps the sound and also suggests "delicious happiness." Other brand names work in a different way. FamilyMart in Taiwan goes by a name that simply means "the whole family."

128 words ・ CEFR B1

和訳を見る

中国語は漢字で書かれ、一つ一つの字に意味がある。だから外国のブランドが中国語の名前を選ぶときは、音だけでなく意味も考えなければならない。コカ・コーラは苦い経験からこれを学んだ。

1927年に中国に来たとき、その名前は英語のような音だったが、字面は「オタマジャクシがろうをかじる」のようだった。会社によると、売れ行きはよくなかった。1930年代、会社はイギリスの新聞で、よりよい名前に350ポンドの賞金を出した。

イギリスに住んでいた学者が「可口可乐」を応募し、審査員はすぐに気に入った。この名前は音を残し、さらに「おいしさと楽しさ」も感じさせる。ほかのブランド名には、別の仕組みのものもある。台湾のファミリーマートは、ただ「家族全員」を意味する名前を名乗っている。

4択リーディングクイズ

Q1. Why must a foreign brand think about meaning when it picks a Chinese name?

Q2. How much was the prize for a better name?

Q3. What does the example of FamilyMart show?

重要単語

  • translateB1
    動詞訳す、翻訳するHow do you translate "Coca-Cola" into Chinese? translate A into B「AをBに訳す」。名詞は translation(翻訳、訳)。
  • brandB1
    名詞銘柄、商標、ブランドStarbucks is a famous coffee brand. brand name「商標名」。日本語の「ブランド=高級品」より広く、ふつうの商品名にも使う。
  • contestB1
    名詞コンテスト、競技会The company held a contest to choose a new name. hold a contest「コンテストを開く」、win a contest「コンテストで勝つ」。
  • characterB1
    名詞文字(漢字など);登場人物;性格Each Chinese character has its own meaning. Chinese characters で「漢字」。多義語なので文脈で意味を決める。
  • pronunciationB1
    名詞発音The new name sounds close to the English pronunciation. 動詞は pronounce だが、名詞は pro-NUN-ciation とつづりが変わる。入試の誤りさがしで頻出。
  • prizeA2
    名詞賞、賞金The prize was 350 pounds. win a prize「賞を取る」。price(値段)とつづりが似ているので注意。
  • tadpoleC1
    名詞オタマジャクシThe tadpoles in the pond will soon turn into frogs. カエルの子。中国語では「蝌蚪」。

4コマでわかる

コカ・コーラの中国語名、最初は“オタマジャクシ・かじる・ろう”の字。今の名は公募で決まったの4コマ漫画
コカ・コーラが1927年に中国に入ったときの中国語名は「蝌蝌啃蜡」。1字ずつの意味はオタマジャクシ・かじる・ろう。売れ行きは「推して知るべし(言わなくても想像がつく)」と公式サイト。今の「可口可乐」は1930年代に賞金350ポンドで公募した名前だった。

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出典・参考文献(5件)タップで表示
  1. 可口可乐中国 (2015)「“可口可乐”——中文翻译的经典之作」(公式サイト、2015年。Internet Archive 保存版)web.archive.org
  2. Zhang, S. & Schmitt, B. H. (2001) Creating Local Brands in Multilingual International Markets, Journal of Marketing Research 38(3), 313–325doi.org
  3. Hong, F. C., Pecotich, A. & Shultz, C. J. (2002) Brand Name Translation: Language Constraints, Product Attributes, and Consumer Perceptions in East and Southeast Asia, Journal of International Marketing 10(2), 29–45doi.org
  4. 日清食品(香港)「日清歷史」(公式サイト)nissinfoods.com.hk
  5. 白水社 中国語辞典「蝌蚪」(Weblio 日中中日辞典)cjjc.weblio.jp

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