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色の名前は「赤・黄」が伝わりやすく「青・緑」は伝わりにくい。110の言語で同じ傾向、アマゾンの人もボストンの学生も

色の名前は「赤・黄」が伝わりやすく「青・緑」は伝わりにくい。110の言語で同じ傾向、アマゾンの人もボストンの学生も

読む前に予想してみよう!

色の名前の伝わりやすさを110の言語でくらべると、言語によって「青がいちばん伝わりやすい」ものもあれば「赤がいちばん伝わりやすい」ものもあり、共通の傾向はなかった

研究カード(どんな研究?)
対象
世界色彩調査の110言語+チマネ語・ボリビアのスペイン語・英語の話者
規模
3言語の実験で計204人(2つの課題の合計)
研究の種類
色カードの名づけ実験+既存データの情報理論による分析+写真2万枚の色の集計
確かさ
★★★☆☆
3秒でわかる

色の名前の付け方を「名前だけで色を当てるゲーム」として計算すると、赤や黄色は少ない手間で伝わり、青や緑は伝わりにくい。110の言語でも、アマゾンのチマネの人々でも同じ傾向。理由は「話題にする物に暖色が多いから」説と「目の仕組み」説で割れている。

ひとことで言うと「赤いの」は伝わりやすいけど、「青いの」はどの青か迷いやすいんだって!

もくじ
  1. 80枚の色カードで「色当てゲーム」
  2. チマネの人々は、色の名前があまりそろわない
  3. なぜ暖色が伝わりやすい? 「話題になる物」の色
  4. どんでん返し:「目の仕組み」で説明できるという反論
  5. まとめ

「その赤いの取って」と言われたら、たいてい迷いません。でも「その青いの取って」だと、「水色の方? 紺の方?」と聞き返したくなることがあります。

じつはこれ、日本語だけの話ではないかもしれません。アメリカのマサチューセッツ工科大学(MIT)などの研究チームが2017年に発表した研究によると、赤や黄色の名前は正確に伝わりやすく、青や緑の名前は伝わりにくい。色の名前の数や分け方は言語によって大きく違うのに、この傾向は、調べた110の言語のどれにも共通していました。

アマゾンの森で暮らす人々にも、ボストンの学生にも、同じ傾向が見られたのです。

0180枚の色カードで「色当てゲーム」

研究チームが使ったのは「世界色彩調査」というデータです。工業化されていない社会で話される110の言語について、それぞれの話者に色見本カードの色を言ってもらった記録です。

研究チームは、このうち80枚のカードの名前の付け方を、「色当てゲーム」にたとえて分析しました。

  • 話し手が80枚のうち1枚を思いうかべ、色の名前を1つだけ言う
  • 聞き手はその名前から、どのカードかを当てる
  • 当てるまでに必要な「当て推量の手間」が少ないほど、その色は正確に伝わる

たとえば「赤」と言われたときに候補になるカードが少なく、話し手どうしで呼び方もそろっていれば、手間は少なくてすみます。逆に、同じカードを「青」と呼ぶ人も「緑」と呼ぶ人もいると、手間は増えます。

110の言語には、色の名前が多い言語も少ない言語もあります。それでも、「暖色の方が伝わりやすい」という向きはどの言語でも同じでした。

02チマネの人々は、色の名前があまりそろわない

チマネの人々の結果には、もう1つ特徴がありました。同じカードを見ても、人によって違う名前で呼ぶことが多かったのです。

80枚のカードそれぞれで「いちばん多く使われた名前」を調べると、その種類はチマネ語が8つ、英語が10、ボリビアのスペイン語が11でした。ただし赤だけは別で、チマネの人々も赤のカードの呼び方はよくそろっていました。黒と白のカードは、3つの言語のどれでも全員が同じ名前で呼びました。

身近な物の色を聞いても同じでした。チマネの人々は、色の言葉の選び方が英語やスペイン語の話者より大きくばらつきました。ただし血・髪・歯のように、色が赤・黒・白にあたる物では答えがそろいました。

さらに研究チームは、色だけが違う2つの物(緑のバナナと黄色のバナナなど)を続けて見せ、名前を言ってもらいました。すると英語の話者とくらべて、チマネの人々はあまり色の言葉を使いませんでした。ただ、人工の物では、自然の物より色の言葉を使うことが多くなりました。

研究チームは、チマネの人々の暮らしでは色で物を区別する必要が少ないのだろう、と考えています。植物の名前をとてもたくさん知っているので、色に頼らなくてもすむのかもしれない、とも書いています。

色だけが違う2つの物を見せる実験。チマネの人々は、自然の物より人工の物で色の言葉をよく使った
色だけが違う2つの物を見せる実験。チマネの人々は、自然の物より人工の物で色の言葉をよく使った

03なぜ暖色が伝わりやすい? 「話題になる物」の色

研究チームは、理由を「人が話題にするのは、たいてい暖色の物だから」と考えました。

確かめるため、目立つ物が写るように集められた写真2万枚を使いました。写真の中で、人が「目立つ物」として示した部分と、背景の部分の色をくらべたのです。すると、物の部分は赤・黄・オレンジ寄り、背景は青・緑寄りでした。そして、物によく出てくる色ほど、色当てゲームでの手間が少ない、という関係がありました。

研究チームは、霊長類が食べる果物のように、動物にとって大事な物の色も、伝わりやすい色にあたることを確かめています。話題にする物に暖色が多いから、暖色を正確に言い分ける必要が大きかったのでは、というわけです。

物の名前が色の名前になった例は、英語にも日本語にもあります。論文も、色の名前の多くが歴史的には物の名前から来ていることを手がかりに挙げ、orange を例に出しています。

  • pink:Oxford Learner's Dictionaries によると、もとは pink という植物(ナデシコの仲間)の名前。その花の色を表す形容詞として17世紀半ばに使われはじめた
  • 桃色:『日本国語大辞典』では「桃の花の色」
  • 茶色:『色名がわかる辞典』(講談社)によると、一般に茶の葉を使って染めた色のこと

04どんでん返し:「目の仕組み」で説明できるという反論

この研究には反論も出ています。ザスラフスキーさん、レジエさんら(ヘブライ大学、カリフォルニア大学バークレー校など)が2018年に発表した論文です。

もともとレジエさんたちは2007年に、色の名前の分け方は、人の目にとっての「色の並び」を効率よく区切った形になっている、と報告していました。人の目が感じる色の並びは、きれいにそろった形ではなく、でこぼこしています。

2018年の論文では、まず2017年の研究の結果を、ほぼ同じデータで確かめ直しました。そのうえで、80枚のカードを、それぞれの言語の色の名前と同じ数のグループに、人の目にとっての色の近さだけで機械的に分けてみました。実際の人の呼び方は使いません。すると、そのつくりものの「色の名前の体系」でも、暖色の方が伝わりやすいという似た偏りが出たのです。

さらに、写真の「物によく出る色」は、灰色から遠い、あざやかな色であることとも関係していました。つまり「暖色が伝わりやすい」ことも「物に暖色が多い」ことも、目の感じ方という共通の原因で説明できるかもしれない、というのです。

ただし、この反論論文も「話す必要はまったく関係ない」とは言っていません。別の計算方法で調べると、色の名前には、目の仕組みだけでは説明できない「よく話す色」の跡も残っていました。結論は「目の仕組みと、話す必要の両方が色の名前を形づくる」です。

2021年には別のチームが130の言語を分析し、「どの色をどれくらい話す必要があるか」は色によって30倍も違うことがあり、必要がいちばん大きい色は、熟した果物などの目立つ物の色と関係していると報告しています。その必要の大きさは、言語や暮らす地域によっても違っていました。

05まとめ

赤や黄色は、どの言語でも名前だけで比較的正確に伝わる。青や緑は、言葉だけだと迷いやすい。110の言語とアマゾンの人々のデータが示したのは、そんな共通点でした。

なぜそうなるのかは、「話題にする物の色」説と「目の仕組み」説で、まだ決着していません。ただ、青や緑の物を指すときに the dark blue one のように一言足すと伝わりやすい、というのはどの説でも役に立ちそうです。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerHow well does a color word tell a listener which color you mean? 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

How well does a color word tell a listener which color you mean? Researchers at MIT and elsewhere studied this with 80 color cards. They used data from 110 languages and also ran their own tests with the Tsimane' people of the Amazon, Spanish speakers in Bolivia, and English-speaking students near Boston.

In every language, warm colors such as red and yellow were easier to communicate than cool colors such as blue and green. The team then looked at 20,000 photos. The objects in the photos were usually warm colors, while the backgrounds were often blue or green. The researchers think warm colors are named more precisely because we mostly talk about objects, and objects tend to be warm colors.

120 words ・ CEFR B1

和訳を見る

色の言葉は、どれくらいうまく聞き手に、どの色のことかを伝えられるのだろうか。MIT などの研究者たちは、80枚の色カードを使ってこれを調べた。110の言語のデータを使い、さらにアマゾンのチマネの人々、ボリビアのスペイン語話者、ボストン近くの英語を話す学生を対象に、自分たちでも実験をした。

どの言語でも、赤や黄色などの暖色は、青や緑などの寒色より伝えやすかった。研究チームは次に、2万枚の写真を調べた。写真の中の物はたいてい暖色で、背景は青や緑であることが多かった。研究者たちは、私たちが話題にするのはたいてい物で、物は暖色であることが多いので、暖色の方が正確に名づけられているのだと考えている。

4択リーディングクイズ

Q1. What did the researchers want to know?

Q2. What did the team find in the 20,000 photos?

Q3. According to the researchers, why are warm colors named more precisely?

重要単語

  • warm colorB1
    名詞暖色(赤・オレンジ・黄など)Red and orange are warm colors. 反対は cool color(寒色)。warm colors は「暖かく感じる色」。
  • cool colorB1
    名詞寒色(青・緑など)The bedroom is painted in cool colors. cool は「涼しい」。色について言うときは「寒色の」。
  • shadeB2
    名詞色合い、(同じ色の)濃淡This shade of blue is darker than the sky. a shade of ~「〜系の色の1つ」。「日かげ」の意味もある(sit in the shade)。
  • backgroundB1
    名詞背景The red apple stands out against the green background. stand out against ~「〜を背景に目立つ」はよく使う組み合わせ。
  • objectB1
    名詞物、物体Name an object that is usually yellow. 動詞 object(反対する)は後ろを強く読む。名詞は前を強く読む。
  • describeA2
    動詞説明する、言い表すCan you describe the color of the bag? 名詞は description。describe A as B「A を B だと言い表す」。
  • get acrossB2
    動詞句(考えや意味を)伝える、分からせるIt was hard to get the idea across in English. get ~ across の語順もよく使う。

動画でもっと知る

色の名前だけで相手に色を当ててもらうゲームを考えて計算すると、赤や黄色は伝わりやすく、青や緑は伝わりにくい。世界110の言語でも、アマゾンのチマネの人々でも、ボストンの学生でも同じ傾向だった。MITなどの研究チームの説明は「人が話題にする物は暖色が多いから」。

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出典・参考文献(5件)タップで表示
  1. Gibson, E., Futrell, R., Jara-Ettinger, J., Mahowald, K., Bergen, L., Ratnasingam, S., Gibson, M., Piantadosi, S. T., & Conway, B. R. (2017) Color naming across languages reflects color use, PNAS 114(40)doi.org
  2. Zaslavsky, N., Kemp, C., Tishby, N., & Regier, T. (2018) Color Naming Reflects Both Perceptual Structure and Communicative Need, Topics in Cognitive Science 11(1)doi.org
  3. Twomey, C. R., Roberts, G., Brainard, D. H., & Plotkin, J. B. (2021) What we talk about when we talk about colors, PNAS 118(39)doi.org
  4. Regier, T., Kay, P., & Khetarpal, N. (2007) Color naming reflects optimal partitions of color space, PNAS 104(4)doi.org
  5. 精選版 日本国語大辞典「桃色」(小学館、コトバンク掲載)kotobank.jp

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