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入試に出る時事トピック

オーバーツーリズムの英語 — 「観光客が多すぎる」をどう解くか

訪日客が年間4,000万人を超え、富士山には通行料、京都では宿泊税の引き上げ、ヴェネツィアでは日帰り客の入場料。観光とオーバーツーリズムは、今の日本で最もホットな長文テーマの一つです。最新データ、必修の時事英語、論点、英作文の表現、オリジナル長文まで、まとめて攻略しましょう。

更新 2026/09/15

修学旅行で京都に行ったら、バスが満員で乗れなかった。有名なお寺の前は写真を撮る人でぎゅうぎゅう。こんな経験をした人もいるかもしれません。観光客が特定の場所に集中しすぎて、住民の暮らしや環境に悪い影響が出ることを、英語で overtourism(オーバーツーリズム、観光公害) と呼びます。

観光は、地域にお金と仕事をもたらす「ありがたいお客さん」でもあります。だからこそ話は単純ではありません。「来てほしい、でも来すぎないでほしい」。部活の練習試合の申し込みが殺到して、グラウンドが使えなくなった状態を想像すると、住民の複雑な気持ちが少しわかるかもしれません。

3行でわかるオーバーツーリズム

1. 世界でも日本でも、観光客の数は過去最高を更新している。 2. 問題は「人数の多さ」そのものより、同じ場所・同じ時間に集中すること。 3. 入場料や宿泊税、人数の制限、観光客の分散など、各地が「量より質」への切り替えを試している。

なぜ入試に出るのか:経済と暮らしがまっすぐぶつかるから

難関国公立・私大の長文では、グローバル化や地域社会の変化を扱う評論が定番です。観光はその両方にまたがり、「経済的な利益」と「住民の生活の質」という、どちらも大切な価値がぶつかります。筆者がどちらを重く見ているかを問う設問が作りやすく、自由英作文のお題にもなりやすいテーマです。

3分でわかる背景知識:数字で見る「観光ブーム」と各地の対策

観光の長文では、観光客の数や消費額のデータがよく根拠として使われます。また、世界の有名観光地がどんな対策をとっているかを知っておくと、初見の長文でも「あ、あの話か」と余裕をもって読めます。

できごと・データここがポイント
1841イギリスのトーマス・クックが、485人を列車で運ぶ団体旅行を企画(7月5日)近代的な旅行業の出発点としてよく紹介される
2018日本で住宅宿泊事業法(民泊新法)が施行(6月15日)届出をした民泊は、営業日数が年180日までに制限される
2018overtourism が、Oxford の辞書部門が選ぶ「今年の言葉(Word of the Year)」の候補に選ばれる2017年ごろから使用が急増した比較的新しい語
2024イタリアのヴェネツィアが、日帰り観光客から入場料を取る試みを始める2025・2026年も春〜夏の特定日に実施。4日前までの予約は5ユーロ、それより後は10ユーロ
2024スペインのバルセロナ市長が、観光客向けアパート約1万戸の営業許可を2028年11月までになくす方針を発表住宅不足と家賃の高騰への対策
2025富士山で、山梨・静岡両県の登山道で1人4,000円の通行料が導入される午後2時〜翌午前3時は、山小屋に泊まる人以外の入山を規制(いわゆる弾丸登山の対策)
2025訪日外国人旅行者が4,268万人となり、初めて4,000万人を突破(過去最高)訪日外国人の旅行消費額も約9.5兆円で過去最高
2025世界の国際観光客(宿泊を伴う旅行者)が約15億2,000万人に(国連世界観光機関の推計)前年比で約4%増え、過去最高を更新
2026京都市が3月から宿泊税を引き上げ、最高額は1人1泊1万円に。7月からは、日本を出国するときの国際観光旅客税が1,000円から3,000円に観光客にも、観光地を守る費用を負担してもらう流れ

政府の目標は「2030年に6,000万人」

日本政府は、2030年に訪日外国人旅行者6,000万人、旅行消費額15兆円という目標を掲げています。2026年3月に閣議決定された新しい観光立国推進基本計画でも、この目標は据え置かれました。人数を増やしながら、どうやってオーバーツーリズムを防ぐのか。まさに今、日本が答えを探している問いです。

「観光客の数」より「集中」がキーワード

オーバーツーリズムの長文で筆者がよく強調するのは、too many people in the same place at the same time(同じ場所に同じ時間に人が多すぎること)です。だから対策も、人数を減らすだけでなく、時間(季節・曜日)や場所を分散させる方向になります。この発想をつかむと、長文の結論が予想しやすくなります。

このテーマの必修時事英語:観光ニュースがスラスラ読める語

観光客の増加、観光の経済効果、対策、住民の暮らしに関する語を集めました。旅行で使う英語とは少し違う「ニュースの観光英語」です。カードで意味と音声を確認しましょう。

観光・オーバーツーリズムの必修時事英語28語

長文でよく出る論点:観光客からもっとお金を取るべきか

オーバーツーリズム対策で最もよく議論されるのが、入場料や宿泊税、外国人観光客向けの料金など、「観光客にお金を払ってもらう」方法です。観光地を守るための正しい負担なのか、それとも旅行を一部の人のぜいたく品にしてしまうのか。両側の言い分を押さえましょう。

入場料・宿泊税などで観光客の負担を増やすべきか

賛成の論点

  • 観光客が増えるほど、ごみ処理や交通、文化財の修理などの費用が増えるので、使う人が負担するのは公平だ。
  • 料金があると「なんとなく来る人」が減り、混雑をやわらげられる。
  • 集めたお金を、住民のためのバスの増便やトイレの整備などに回せる。
  • 事前予約や料金とセットにすることで、入場者数を把握し、安全を管理しやすくなる。
  • 安さで大量の人を集めるより、長く滞在してお金を使ってくれる観光客を増やす「質重視」への転換につながる。

反対・慎重な論点

  • 料金が高くなると、お金に余裕のない人や学生が、有名な文化や自然にふれる機会を失う。
  • 料金を払えば何をしてもいい、という意識を生み、マナーの改善につながらないおそれがある。
  • 観光客が近くの無料の場所に流れ、問題がほかの地域に移るだけかもしれない。
  • 集めたお金が、本当に住民や観光地の保護に使われているか、見えにくいことがある。
  • 観光に頼る店や宿にとっては、客が減ることが経営の打撃になる。

「お金」+「分散」+「住民」の3点セット

英作文では、料金の是非だけでなく、「集めたお金を住民の暮らしに還元し、観光客を地方や閑散期に分散させる」という組み合わせで書くと、バランスのよい答案になります。英語では spread visitors across regions and seasons(観光客を地域と季節に分散させる)が使えます。

自由英作文で使える表現:観光を論じる12文

観光とオーバーツーリズムのテーマで使いやすい英文を集めました。「日本の観光の未来」「文化遺産の保護」「地方の活性化」など、関連するお題にも応用できます。

観光・オーバーツーリズムの自由英作文で使える表現

  • Tourism brings money and jobs to local communities.

    観光は、地域社会にお金と仕事をもたらす。

    bring A to B(B に A をもたらす)。メリットの書き出しに

  • Too many visitors can damage the very places they come to see.

    訪問者が多すぎると、彼らが見に来たまさにその場所を傷つけることがある。

    the very 〜(まさにその〜)で皮肉を効かせる

  • Local residents should not have to suffer because of tourism.

    地元の住民が、観光のせいで苦しまなければならないことがあってはならない。

    should not have to do(〜しなくて済むべきだ)

  • Popular sites could introduce a reservation system to control crowds.

    人気の場所は、混雑を抑えるために予約制を導入することもできるだろう。

    could で提案をやわらかく示す。control crowds(混雑を管理する)

  • Tourist taxes can help pay for the protection of cultural heritage.

    観光税は、文化遺産の保護の費用をまかなう助けになりうる。

    help pay for 〜(〜の支払いに役立つ)

  • Visitors should be encouraged to travel outside peak seasons.

    観光客には、混雑する時期を外して旅行するよう促すべきだ。

    peak season(繁忙期)⇔ off-season(閑散期)

  • Promoting lesser-known regions can spread the benefits of tourism more widely.

    あまり知られていない地域を宣伝すれば、観光の恩恵をより広く行き渡らせられる。

    lesser-known(あまり知られていない)は便利な形容詞

  • Tourists also have a responsibility to respect local customs and rules.

    観光客にも、地元の習慣やルールを尊重する責任がある。

    also を入れて「観光客側の責任」という視点を加える

  • The rise of short-term rentals has pushed up housing costs in some cities.

    短期貸しの増加は、一部の都市で住宅費を押し上げてきた。

    push up(押し上げる)。The rise of 〜 で原因を主語に

  • A successful tourism policy should benefit both visitors and residents.

    成功する観光政策は、観光客と住民の両方に利益をもたらすべきだ。

    both A and B で双方の視点を示す

  • Quality, rather than quantity, should be the goal of tourism.

    量ではなく質こそが、観光の目標であるべきだ。

    A, rather than B を挿入すると引き締まった主張に

  • Sustainable tourism means protecting a place so that future generations can enjoy it too.

    持続可能な観光とは、将来の世代もその場所を楽しめるように守ることだ。

    so that 〜 can で目的を表す。締めくくりに最適

tourist と tourism と travel の使い分け

tourist は「観光客(人)」、tourism は「観光(産業・現象)」、travel は「旅行すること(主に動詞・不可算名詞)」。「日本は多くの観光客を惹きつけている」は Japan attracts many tourists. で、many tourisms は×です。trip(1回の旅行)は数えられます。

オリジナル長文:愛されすぎた町

このページのために書き下ろした評論文です。共通テスト〜国公立二次レベルを想定しています。筆者は観光に賛成なのか反対なのか。最後の段落で示される「成功の物差し」に注目してください。

Loved Too Much共通テスト〜国公立二次レベル(約280語)

Tourism is often described as a gift to local economies, and in many ways it is. Visitors fill hotels and restaurants, create jobs, and give young people a reason to stay in regions that might otherwise be shrinking. For a country with an aging population, money spent by travelers from abroad can be a welcome source of growth.

Yet a gift can become a burden when it arrives in too large a quantity. In popular destinations, buses may be so crowded that elderly residents cannot get on them to go to the hospital. Narrow streets fill with people taking photos, and some homes are turned into short-term rentals, pushing up rents for the people who actually live there. This situation, now widely called overtourism, is less about the total number of tourists than about too many visitors arriving in the same place at the same time.

Governments and cities have tried several responses. Some have introduced entry fees or accommodation taxes, using the money to maintain infrastructure and protect heritage sites. Others limit the number of visitors per day, or encourage travelers to explore lesser-known areas and to come outside peak seasons. Each measure has its critics: fees may make travel harder for people on low incomes, and spreading tourists around may simply move the problem somewhere new.

Perhaps the most important shift is in how success is measured. For years, the main goal was to attract ever larger numbers of visitors. A more sustainable approach asks a different question: does tourism improve life for the people who live in a place? After all, a town that its own residents no longer enjoy is unlikely to charm visitors for long.

語句

  • in many ways多くの点で
  • otherwiseそうでなければ。ここでは「観光客が来なければ」
  • in too large a quantityあまりに大量に。too+形容詞+a+名詞 の語順に注意
  • so crowded that ...とても混雑しているので〜。so 〜 that 構文
  • push up(値段などを)押し上げる
  • less about A than about BA の問題というより、むしろ B の問題
  • peak seasons繁忙期、観光のピークの時期
  • Each measure has its criticsどの対策にも批判する人がいる。critic は「批判する人」
  • ever larger numbers ofこれまで以上に多くの〜。ever は比較級を強める
  • be unlikely to do〜しそうにない

「愛されすぎた町」の長文で力試し

Q1【内容一致】本文の内容に合うものはどれですか。

Q2【語彙の言い換え】第1段落の a welcome source of growth に最も近い意味はどれですか。

Q3【筆者の考え】第2段落で、筆者はオーバーツーリズムの本質をどのように説明していますか。

Q4【主旨】筆者の主張として最も適切なものはどれですか。

ここで差がつく:観光の長文で狙われる言い換えとワナ

観光の長文は、身近な話題なので「なんとなく」読めてしまいがちです。でも、選択肢では本文の語がきっちり言い換えられています。よく出るペアを押さえておきましょう。

本文の表現選択肢での言い換え意味
visitorstourists / travelers訪問者、観光客
residentslocals / people who live there住民
destinationtourist spot / place people visit旅行先、観光地
crowdedpacked / congested混雑した
accommodationplaces to stay / lodging宿泊施設
peak seasonbusiest time of year / high season繁忙期
heritage sitehistoric place / cultural treasure遺産、史跡
spread touristsdistribute visitors more evenly観光客を分散させる

welcome は形容詞にもなる

a welcome change は「歓迎すべき変化、ありがたい変化」。welcome を動詞「歓迎する」だけで覚えていると、長文の和訳や言い換え問題でつまずきます。You're welcome. の welcome も、実は形容詞です。

「過去最多」でも「増加率が下がった」はありうる

観光のグラフ問題でよくあるのが、number(人数)growth rate(伸び率)の取り違えです。人数が過去最多を更新していても、前年に比べた伸びが小さくなっていることは普通にあります。「増えた」のか「増え方が大きくなった」のか、選択肢を丁寧に読みましょう。

ツッコミどころ満載:観光の意外な雑学

近代観光の出発点は「禁酒の集会」への団体旅行。 1841年7月5日、イギリスのトーマス・クックは、禁酒運動の集会に参加する485人を、レスターからラフバラまで列車で運ぶ旅を企画しました。料金は1人1シリング。「みんなで列車に乗って出かける」という発想が、やがて世界的な旅行会社につながりました。お酒を飲まない人たちの遠足が、観光ビジネスの始まりだったのです。

overtourism はまだ若い単語。 この語は2017年ごろから急に使われるようになり、2018年には Oxford の辞書部門が選ぶ「今年の言葉」の候補リストに入りました。広く使われるようになってから、まだ10年ほどの新しい言葉です。新しい社会問題には新しい単語が生まれる、というのは時事英語を学ぶ醍醐味ですね。

よくある質問

「観光公害」と書くのと overtourism と書くのでは、ニュアンスが違いますか?

日本語の「観光公害」は、観光を「公害」にたとえる強い言い方です。英語の overtourism は「観光が多すぎる状態」を指す語で、観光そのものを否定するニュアンスは比較的弱めです。英作文では、観光の利益も認めたうえで overtourism を使うとバランスがとれます。

英作文で日本の観光について書くとき、どんな具体例が使えますか?

富士山の通行料や入山規制、京都の混雑と宿泊税、地方の観光による regional revitalization(地方創生)などが使いやすい例です。数字を使う場合は、確かな数字だけを、年とセットで書きましょう。

tourist tax と accommodation tax の違いは?

tourist tax は観光客にかかる税や料金の総称として使われることが多い語です。accommodation tax(宿泊税)はその一種で、ホテルなどに泊まるときにかかる税を指します。日本の出国時にかかる国際観光旅客税は、英語では international tourist tax や departure tax と説明されます。

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