学級委員は男子、書記は女子。理系は男子が多くて、文系は女子が多い。なぜそうなっているのか、誰も決めていないのに何となくそうなっている。この「何となく」の正体を言葉にするのが、ジェンダーというテーマです。
日本は、世界の中でこの分野の課題が大きい国と見られています。だからこそ英字ニュースにも頻繁に登場し、入試の長文や英作文の素材として使われ続けています。ここで一気に固めておきましょう。
なぜジェンダー平等のテーマは入試に出まくるのか
1つ目の理由は、受験生自身が当事者であること。学校生活、進路選択、将来の働き方。すべてにジェンダーの話が関わっているので、「自分の意見」を持って英作文が書けます。出題者もそれを狙っています。
2つ目は、日本と世界の比較がしやすいこと。国際的なランキングや他国の制度と比べる長文は、「筆者は日本をどう評価しているか」「何が原因だと述べているか」を問う設問を作りやすいのです。
3つ目は、「平等」の意味そのものが論点になること。機会の平等か、結果の平等か。数値目標(クオータ制)は公平か不公平か。抽象的な概念を具体例で説明する文章は、要約問題や下線部説明の素材として重宝されます。
先輩からのひと言
ジェンダーの長文は「制度は変わったが、意識や慣習が追いついていない」という指摘が定番です。law(法律)と norm(規範・慣習)、あるいは on paper(建前では)と in practice(実際には)のような対比が出てきたら、そこが筆者の言いたいことです。
3分でわかる背景知識
「118位」の正体
世界経済フォーラム(WEF)が毎年発表するgender gap index(ジェンダー・ギャップ指数)は、経済・教育・健康・政治の4分野で男女の差を測るものです。2025年の報告書で日本は148か国中118位、G7では最下位でした。教育と健康の差はほぼないのに、政治と経済の分野での差が大きいのが日本の特徴です。
1位はアイスランドで、16年連続の首位。スコアは92.6%で、男女の差を9割以上埋めた唯一の国とされています。長文で「北欧の国と日本」が比べられるとき、この差が背景にあります。
変わり始めた数字、変わりにくい数字
- 厚生労働省の調査によると、2025年度に男性がchildcare leave(育児休業)を取った割合は50.9%で、初めて5割を超えました(前年度は40.5%)。ただし期間は「1か月〜3か月未満」(30.3%)や「2週間〜1か月未満」(28.0%)が多く、女性に比べるとまだ短めです。「取る人は増えたが、期間は短い」というのが実態です。
- 2024年10月の衆議院選挙では、女性が過去最多の73人当選し、議席の15.7%を占めました。ところが2026年2月の衆院選では68人(14.6%)に減りました。政治分野の差が大きいのは、こうした数字のためです。
- 2025年10月21日、日本で初めて女性の首相が誕生しました。first female prime ministerという語が英字ニュースの見出しに並んだ日です。ただし、一人のトップが生まれることと、社会全体の格差が縮まることは別の話。長文ではその両方を分けて論じる文章が出ます。
議論が続くテーマ
日本では、結婚した夫婦が別々の姓を名乗れるようにするseparate surnames for married couples(選択的夫婦別姓)や、same-sex marriage(同性婚)をめぐる議論が続いています。またLGBTQの人々への理解や、性別にとらわれないgender-neutral uniforms(ジェンダーレス制服)を取り入れる学校も増えています。
多様性を英語で語るときのキーワードがdiversity(多様性)とinclusion(包摂)。「いろいろな人がいる」だけでなく、「いろいろな人が力を発揮できる」状態まで含めて論じるのが、最近の長文の傾向です。
このテーマの必修時事英語
語カードをタップすると、意味・例文・音声が見られます。「格差を表す語」「制度・働き方の語」「多様性の語」の3グループに分けて覚えると、長文の流れに沿って思い出せます。
ジェンダー平等・多様性の必修語30語
- 社会中級 gender equality 男女平等、ジェンダー平等
- 社会上級 gender gap index ジェンダーギャップ指数、男女格差指数
- ビジネス中級 gender pay gap 男女間の賃金格差
- 社会中級 gender parity 男女同数、男女の均衡、ジェンダー・パリティ
- 社会初級 gender roles 性別役割、性役割
- ビジネス中級 glass ceiling ガラスの天井、昇進の見えない壁
- 社会中級 unconscious bias 無意識の偏見、アンコンシャス・バイアス
- 社会中級 women in leadership positions 指導的地位の女性、女性管理職
- 社会上級 gender quota クオータ制、男女別割当制
- 政治中級 first female prime minister 初の女性首相
- ビジネス中級 equal pay for equal work 同一労働同一賃金
- ビジネス初級 work-life balance ワークライフバランス、仕事と生活の調和
- 教育中級 maternity leave 産休、産前産後休業
- 教育中級 paternity leave 男性の育児休業、男性育休
- 教育中級 childcare leave 育児休業、育休
- 教育上級 parental leave benefits 育児休業給付、育休給付
- 社会上級 maternity harassment マタニティハラスメント、マタハラ
- 社会中級 harassment 嫌がらせ、ハラスメント
- ビジネス中級 power harassment パワーハラスメント、パワハラ
- 社会上級 dual-income household 共働き世帯
- 教育中級 childcare costs 保育料、子育て費用
- 社会上級 separate surnames for married couples 夫婦別姓、選択的夫婦別姓
- 社会中級 same-sex marriage 同性婚
- 社会中級 LGBTQ 性的少数者、LGBTQ
- 社会中級 gender identity 性自認、ジェンダー・アイデンティティ
- 教育上級 gender-neutral uniforms ジェンダーレス制服、男女共用の制服
- 社会初級 diversity 多様性
- 社会中級 inclusion 包摂、受け入れ、含めること
- 社会中級 DEI 多様性・公平性・包摂性、DEI
- 社会中級 empowerment 力を与えること、地位向上、エンパワーメント
長文でよく出る論点:クオータ制は公平か
ジェンダーの英作文は「平等は大切か」では全員が賛成してしまうので、実際のお題は「女性役員や女性議員の数値目標(クオータ制)を導入すべきか」「育休を義務化すべきか」のような制度の是非になります。下の論点を持ち札にしておきましょう。
数値目標(クオータ制)などの積極的な対策をめぐる論点
導入すべき
- 自然に任せていては何十年たっても差が縮まらず、目標を決めて初めて変化が起きる
- 意思決定の場に多様な視点が入ることで、組織の判断の質が上がる
- ロールモデルとなる女性が増えれば、次の世代の選択肢が広がる
- 採用や昇進には無意識の偏りがあり、それを補正するには制度が必要だ
- 北欧など先に導入した国では、格差の縮小と経済の成長が両立している
慎重であるべき
- 数だけを合わせると、能力ではなく性別で選ばれたという見方をされ、本人にも不利になりうる
- 本当の原因は育児や家事の偏りにあり、そこを直さなければ数値目標は形だけになる
- 機会の平等こそが大切で、結果を制度で決めるのは別の不平等を生む
- 小さな企業や地方では候補となる人が少なく、一律の目標は現実に合わない
- 制度を強制するより、働き方や意識を変える教育のほうが長い目で見て効果がある
自由英作文で使える表現
ジェンダーのお題では、「women should ~」と一方だけを主語にするより、「both men and women」「regardless of gender」と両方を視野に入れた表現を使うと、公平で成熟した答案に見えます。音声で3回まねして読みましょう。
ジェンダー平等・多様性の英作文フレーズ
Everyone should have the same opportunities regardless of their gender.
誰もが性別に関係なく同じ機会を持つべきだ。
regardless of(~に関係なく)は平等の話の万能パーツ。
Although women make up nearly half of the workforce, they hold only a small share of leadership positions.
女性は働く人のほぼ半数を占めているのに、指導的な地位のごく一部しか占めていない。
Although で「数は多いのに地位は少ない」という対比が作れる。
Housework and childcare still fall mainly on women, which limits their career choices.
家事と育児はいまだに主に女性に偏っており、それが女性の職業の選択を狭めている。
, which で前の文全体を受けて「結果」を続ける。
When fathers take parental leave, it benefits not only mothers but also children and the fathers themselves.
父親が育児休業を取ると、母親だけでなく子どもと父親自身にも利益がある。
not only A but also B。benefit は動詞(~に利益を与える)。
Gender stereotypes are learned early, often before children enter elementary school.
性別の固定観念は早いうちに、多くの場合、子どもが小学校に入る前に身につく。
受け身+often before ~ で「教育の重要性」につなげられる。
Setting numerical targets is one way to speed up change that would otherwise take decades.
数値目標を設けることは、放っておけば何十年もかかる変化を加速させる一つの方法だ。
otherwise(さもなければ)で「対策なしの未来」を1語で示す。
Some people argue that quotas are unfair because they judge people by gender rather than by ability.
クオータ制は能力ではなく性別で人を判断するので不公平だ、と主張する人もいる。
反対意見を紹介する型。rather than で対比。
A diverse workplace brings different perspectives, which leads to better decisions.
多様な職場はさまざまな視点をもたらし、それがより良い判断につながる。
perspective(視点)は多様性の話の必須語。
Changing the law is only the first step; changing people's attitudes takes much longer.
法律を変えることは最初の一歩にすぎず、人々の意識を変えるにははるかに長い時間がかかる。
セミコロンで対比を作る。attitude(意識・態度)も頻出。
In my view, gender equality is not a women's issue but a question of what kind of society we all want to live in.
私の考えでは、ジェンダー平等は女性だけの問題ではなく、私たち全員がどんな社会に生きたいかという問いだ。
not A but B の締め。読み手を巻き込む we all が効く。
オリジナル長文にチャレンジ
共通テスト〜国公立二次レベルの書き下ろし長文です。まず訳を隠して1回読み、「筆者が一番問題だと考えている分野はどこか」を一言でメモしてからクイズに進んでください。
The Gap Between Paper and Practice共通テスト〜国公立二次
On paper, Japanese women have never had more opportunities. More women attend university than ever before, and the law forbids paying women less simply because of their gender. Yet when the World Economic Forum ranked 148 countries by the size of their gender gap in 2025, Japan came in at 118th, the lowest in the Group of Seven (G7).
建前のうえでは、日本の女性がこれほど多くの機会を持ったことはかつてなかった。大学に進む女性はこれまでになく多く、法律は女性であることだけを理由に賃金を低くすることを禁じている。それなのに、2025年に世界経済フォーラムが148か国を男女格差の大きさで順位づけしたとき、日本は118位で、主要7か国(G7)の中で最も低かった。
How can both of these things be true? The answer lies in what happens after graduation. In education and health, the gap between Japanese men and women is almost zero. In the economy and in politics, however, it remains wide. Women are far less likely to reach senior positions in companies, and they hold only a small minority of seats in parliament. The problem is not a lack of ability or education, but what happens in the years when careers are built and children are born.
この二つのことが同時に本当でありうるのはなぜか。答えは、卒業のあとに起きることにある。教育と健康の分野では、日本の男女の差はほぼゼロだ。しかし経済と政治の分野では、差は依然として大きい。女性が企業で上級の地位に就く可能性ははるかに低く、議会の議席でもごく少数しか占めていない。問題は能力や教育の不足ではなく、キャリアが築かれ、子どもが生まれる年月に起きることなのである。
During those years, responsibility for housework and childcare still falls mostly on women. A woman who takes several years off to raise children often finds it difficult to return to the same career path. Recent changes suggest that this is beginning to shift: in fiscal 2025, more than half of eligible fathers took childcare leave for the first time. Still, many of them stayed home for less than a month.
その年月の間、家事と育児の責任はいまだに主に女性にのしかかる。子育てのために数年間仕事を離れた女性は、同じキャリアの道に戻るのが難しいと感じることが多い。最近の変化は、これが動き始めていることを示唆している。2025年度には、対象となる父親の半数以上が初めて育児休業を取った。それでも、家にいた期間が1か月未満だった人も多かった。
This is why many researchers argue that gender equality cannot be achieved by laws alone. Rules can open doors, but habits decide who walks through them. When it becomes normal for fathers to leave the office early, for employers to expect it, and for children to see both parents cooking dinner, the numbers will follow. The gap that remains is less about paper than about practice.
だからこそ多くの研究者は、ジェンダー平等は法律だけでは達成できないと主張する。ルールは扉を開けられるが、誰がそこを通るかを決めるのは習慣だ。父親が早く退社することが普通になり、雇う側もそれを当然と見なし、子どもが両親ともに夕食を作る姿を見るようになれば、数字はあとからついてくる。残っている差は、建前の問題というより実践の問題なのだ。
語句
- on paper建前では、書類のうえでは(in practice との対比)
- forbid ~ing~することを禁じる
- come in at 118th118位に入る
- lie in(答え・原因が)~にある
- senior positions上級の地位、幹部のポスト
- a small minority ofごく少数の~
- take ~ off(期間)仕事を休む
- eligible資格のある、対象となる
- open doors機会を開く、道をひらく
- the numbers will follow数字はあとからついてくる
長文の理解度チェック
Q1第1段落で on paper という表現はどういう意味で使われていますか。
第1段落は制度や法律のうえでの機会を並べ、Yet で現実の順位を対比しています。最終段落の less about paper than about practice とも呼応しています。
Q2第2段落によると、日本の男女格差が大きい分野はどれですか。
In the economy and in politics, however, it remains wide とあります。however の前後で「差がほぼゼロの分野」と「差が大きい分野」が対比されています。
Q3第3段落の内容と一致するものはどれですか。
A woman who takes several years off to raise children often finds it difficult to return to the same career path と一致します。Still, many of them stayed home for less than a month とあるので、選択肢2は本文と合いません。
Q4最終段落の Rules can open doors, but habits decide who walks through them. が言いたいことは何ですか。
直前の gender equality cannot be achieved by laws alone を比喩で言い換えた文です。比喩の意味を問う設問では、前後の直接的な表現に戻って考えましょう。
ここで差がつく:言い換えと誤読ポイント
| 本文の表現 | 設問・選択肢での言い換え | 注意点 |
|---|---|---|
| gender | whether someone is male or female (as a social role) | sex は生物学的な性、gender は社会的な性として区別されることが多い |
| glass ceiling | an invisible barrier that stops women from being promoted | ガラスなので「見えないが確かにある」壁 |
| stereotype | a fixed and oversimplified idea about a group | 「固定観念」。type だが「型」ではない |
| bias | an unfair preference / prejudice | unconscious bias は本人も気づかない偏り |
| parity | equality in number or status | gender parity は「男女の数の均等」 |
| quota | a fixed number or share that must be reached | 「割り当て」。輸入の quota も同じ語 |
「女性の問題」と決めつけない
長文では「男性も固定観念に縛られている」という指摘がよく出ます。長時間労働を求められる、育休を取りにくい、弱音を吐きにくい。ジェンダーのテーマは both men and women の話として読み、書くと、視野の広い答案になります。
数字は「分野別」で読む
「118位」という総合順位だけを覚えると、「教育でも遅れている」と誤読しがちです。日本は教育と健康の差はほぼなく、政治と経済で差が大きい。長文でも「分野ごとに違う」という指摘が設問になるので、順位の内訳まで意識して読みましょう。
ツッコミどころ・意外な雑学
- ジェンダー・ギャップ指数で16年連続1位のアイスランドは、人口が約39万人(2026年1月時点)の小さな国です。「大きな国だから変えにくい」という言い訳が通じるのかどうかは、英作文の面白い論点になります。
- 2024年度の調査では、男性の育休取得率は事業所の規模で大きく違いました。従業員500人以上の事業所では53.8%、5〜29人では25.1%です。同じ「日本の父親」でも、勤め先で環境がまったく違うのです。
- 2024年10月の衆院選で女性は73人当選し「過去最多」と報じられましたが、それでも議席の15.7%。しかも2026年2月の衆院選では68人に減りました。「過去最多」は「十分」とも「この先も増え続ける」とも違う、というのは見出しを読むときの基本姿勢です。
- 英語の chairman は chairperson や chair に、fireman は firefighter に、と職業名から性別を外す動きが進んでいます。英作文でも、policeman より police officer と書くほうが現代的です。ちなみに日本語の「看護婦」が「看護師」になったのも同じ流れです。
ちなみにこのページの数字は、すべて確認できたものだけを載せています。平等の話で数字をごまかしたら、それこそ最大の不公平ですからね。
よくある質問
自由英作文で「女性の管理職を増やすために数値目標を設けるべきか」と聞かれたら、どちらが書きやすいですか?
賛成なら「自然に任せても変わらない」「多様な視点が判断を良くする」、反対なら「能力で選ぶべき」「原因は育児の偏りにある」が書きやすい理由です。どちらの立場でも、最後に「育児と仕事の両立を支える制度が土台」と添えると、深い答案になります。
gender と sex はどう使い分けますか?
sex は生物学的な性別、gender は社会や文化の中で作られる性の役割やアイデンティティを指す、と区別されることが多いです。時事英語や英作文では gender equality、gender gap のように gender を使うのが基本です。
このテーマとセットで出やすい分野はありますか?
少子高齢化(育児と仕事の両立)、働き方の未来(長時間労働、育休)、教育(進路の男女差)、そしてSDGsの目標5「ジェンダー平等を実現しよう」です。関連トピックのページもあわせて読んでおくと、1本の長文の中で話題が移っても慌てません。
あわせて読みたい
今日このページを読んだあと、「男子だから」「女子だから」という言葉を耳にしたら、一度だけ英語で考えてみてください。Is that a fact, or a stereotype? と頭に浮かんだら、もう立派な時事英語の使い手です。