英語の先生に「長文対策に英字新聞を読め」と言われて、どれを開けばいいか迷ったことはありませんか。このページのおすすめは、イギリスの The Guardian(ガーディアン) です。公式サイトは多くの記事を無料で読めて、しかも扱うテーマが入試長文とびっくりするほど重なります。
ただし、いきなり開くと「colour? organise? 綴り間違ってない?」「GP って何?」とイギリス英語の壁にぶつかります。このページでは、その壁の越え方から1日1本の読み方プランまで、先輩が後輩にこっそり教えるノリで全部まとめました。
3行でわかるガーディアン
1. 1821年にマンチェスターで生まれた、イギリスを代表する全国紙。 2. 株主のための会社ではなく、独立を守るための「スコット・トラスト」が所有。 3. 環境・格差・教育・テクノロジーと社会など、入試長文の定番テーマに強い。
ガーディアンの正体:綿の街マンチェスター生まれの200年新聞
ガーディアンは1821年、イギリス北部の工業都市マンチェスターで、綿の商人 John Edward Taylor が The Manchester Guardian という週刊紙として創刊しました。はじめは土曜日だけ出る新聞だったのです。
1855年、新聞にかかっていた印紙税(Stamp Tax)が廃止されたことをきっかけに日刊紙になります。税金がなくなって新聞が安く作れるようになり、毎日出せるようになった、というわけです。「税制が変わるとメディアが変わる」は、そのまま入試長文のネタになりそうな話ですね。
伝説の編集長と「Comment is free, but facts are sacred」
ガーディアンを語るうえで外せないのが C. P. Scott。1872年から57年間も編集長を務め、1907年には新聞のオーナーにもなりました。部活でいえば、顧問を半世紀以上続けた先生のような存在です。
Scott は創刊100周年の1921年に「A Hundred Years」というエッセイを書き、その中の Comment is free, but facts are sacred(論評は自由だが、事実は神聖である)という一節は、今もジャーナリズムの原則としてよく引用されます。意見は人それぞれでいい、でも事実をねじ曲げてはいけない。自由英作文を書くときにもそのまま使える心がけです。
| 年 | できごと |
|---|---|
| 1821 | マンチェスターで週刊紙 The Manchester Guardian として創刊 |
| 1855 | 印紙税の廃止をきっかけに日刊紙になる |
| 1872 | C. P. Scott が編集長に(57年間務める) |
| 1907 | Scott が新聞を買い取りオーナーになる |
| 1921 | 創刊100周年。Scott のエッセイ「A Hundred Years」 |
| 1936 | 所有権がスコット・トラスト(Scott Trust)に移る |
| 1959 | 紙名から Manchester を外し The Guardian に |
| 1961 | ロンドンでも印刷を開始 |
| 1964 | 編集長と編集部がロンドンへ移る |
| 1993 | 日曜紙 The Observer を傘下に入れる |
| 2005 | 紙面を少し小さいベルリナー判に変更 |
| 2006 | オピニオンのウェブ欄 Comment is free を開始(現在は Opinion 欄に統合) |
| 2008 | スコット・トラストが有限会社(Scott Trust Limited)の形に |
| 2011 | アメリカ版(Guardian US)を開始 |
| 2013 | オーストラリア版を開始 |
| 2014 | 長編記事の The long read を開始。Guardian US がピュリツァー賞(公益部門)を受賞 |
| 2015 | Katharine Viner が編集長(editor-in-chief)に |
| 2018 | 紙面をタブロイド判に変更 |
| 2019 | 気候について climate change より climate crisis などの表現を優先する方針を表明 |
| 2020 | 化石燃料を採掘する企業の広告を受け付けないと発表 |
| 2025 | The Observer が Tortoise Media に移る(4月から) |
オーナーがいない? スコット・トラストという仕組み
ふつうの新聞社は、株主やお金持ちのオーナーが持っています。ガーディアンは1936年から スコット・トラスト が所有しています。目的は、ガーディアンの財政的・編集上の独立を、商業的・政治的な圧力から守り続けること。2008年に有限会社の形になりましたが、この考え方は引き継がれています。
利益はオーナーや株主に配当されず、ジャーナリズムに再投資されます。「スポンサーの顔色をうかがわなくていい部活」をイメージするとわかりやすいかもしれません。入試の長文でも media ownership(メディアの所有) や editorial independence(編集の独立) は、メディア論のテーマとして出てきます。
有料の壁(ペイウォール)がない、が受験生にうれしい
ガーディアンはサイト全体を有料会員限定にする「ペイウォール」を設けず、記事を無料で公開しています。代わりに読者からの任意の寄付や購読で支えられています。記事の下に寄付のお願いが出ますが、寄付は任意なので、受験生はありがたく読ませてもらい、合格してから考えればOKです。
立ち位置は「センターレフト」。だから読み比べが効く
ガーディアンは一般に centre-left(中道左派) の新聞とされ、リベラルな価値観を大事にしています。環境保護、格差の是正、移民や少数者の権利といった論点に力を入れる一方、立場がはっきりしている分、オピニオン記事は筆者の主張がくっきり出ます。
これは入試的には好都合です。「筆者の主張は何か」「筆者が批判しているのは誰の考えか」を問う設問の練習にぴったりだからです。余裕が出てきたら、立場の違う新聞で同じニュースを読み比べると、同じ事実でも切り取り方で印象が変わることが体でわかります。
雑学:あだ名は「グラウニアド(Grauniad)」
ガーディアンには Grauniad というあだ名があります。イギリスの風刺雑誌 Private Eye が広めたとされ、「誤植が多い新聞」をからかったもの。実際には、昔マンチェスターで刷られた早い版がロンドンに届くため、誤植が直る前の紙面が目立っただけで、特別に誤植が多かったわけではない、という説明もあります。
今のガーディアンは Corrections and clarifications(訂正と説明) という欄で自社の誤りをきちんと公開しています。間違いを隠さず直す。英作文の見直しでも見習いたい姿勢です。
なぜ入試長文に「ガーディアン型」の英文がよく出るのか
難関国公立・私大の長文では、英米の新聞・雑誌・書籍の文章が、長さや語彙を調整したうえで素材になることがよくあります。どの大学のどの年度に何が出たかはここでは挙げませんが、「社会問題を論じた評論・記事」が長文の定番であることは、過去問を数年分ながめるだけで実感できるはずです。
- テーマが社会的:環境、教育、テクノロジー、格差、健康など、大学で学ぶ内容の入口になる話題が多い。
- 論理がはっきり:主張、根拠、反論への目配り、結論という流れが見えやすく、設問が作りやすい。
- 語彙がちょうど難しい:income inequality や biodiversity loss のような、受験の上位語彙が自然に出てくる。
- 立場がある:オピニオン記事は筆者の主張が明確で、「筆者の考えに合うもの」を選ばせる問題にしやすい。
問題文の最後の小さな文字を見てみよう
長文の最後に出典が小さく書かれていることがあります。新聞名や雑誌名が載っていたら要チェック。その媒体を普段から読んでおくと、文体に慣れているだけで読むスピードが一段上がります。
記事の種類で読み方を変える:全部同じに読むのはもったいない
新聞記事にはいくつかの「型」があり、型ごとに読み方のコツが違います。コンビニで弁当とスイーツを同じ基準で選ばないのと同じです。記事ページの見出しの上などにある小さなラベルや、URL・欄の名前で見分けられることが多いので、まず型を確認してから読み始めましょう。
| 種類 | 中身 | 読むときのコツ | 入試で似ている設問 |
|---|---|---|---|
| News | 起きた事実を速く伝える記事 | 最初の1〜2段落に「誰が・何を・いつ・どこで」が詰まっている。後ろほど細かい情報 | 内容一致、指示語 |
| Analysis | ニュースの背景や意味を解説 | 「なぜ起きた?」「この先どうなる?」を探す。hedging(断定を避ける表現)が多い | 理由説明、下線部の意味 |
| Opinion | 筆者が主張を述べるコラム | 主張は最初か最後に来やすい。But や Yet の後が本音 | 筆者の主張、要旨、タイトル選択 |
| The Guardian view | 新聞社としての社説(editorial) | 見出しが The Guardian view on ... の形。新聞社全体の立場がわかる | 要約、主張の把握 |
| Explainer | 複雑な話題を質問形式などでかみくだく | 小見出しの疑問文を先に全部読むと地図ができる | 段落の要点、空所補充 |
| The long read | 数千語規模の長編ルポ・評論 | 1回で読み切らず、段落の最初の文だけで全体をつかむ | 長文総合、段落整序 |
| Letters | 読者からの投書 | 短くて主張が明確。賛否の論点集めに最適 | 自由英作文の材料集め |
Opinion を読むときの合言葉は「But の後ろに本音あり」
オピニオン記事は、いったん反対意見を認めてから「しかし」とひっくり返す構成がとても多いです。Admittedly や It is true that で始まる文を見たら、次に But / Yet / However が来る予告だと思ってください。入試の「筆者の主張」問題でも、この譲歩→逆接の後ろが正解の根拠になりやすいです。
Analysis と Explainer は「背景知識の貯金箱」
解説記事は、ニュースの裏にある制度や歴史を説明してくれます。ここで得た知識は、初見の長文を読むときの背景知識になります。たとえば carbon tax の仕組みを一度読んでおけば、環境経済の長文で出てきても慌てません。
standfirst(リード文)を読み飛ばさない
見出しの下にある1〜2文の要約を、イギリスの新聞業界では standfirst と呼びます。ここに記事の結論が凝縮されていることが多く、入試でいえば「本文の要旨」がタダで配られている状態です。見出し、standfirst、本文の順に読むのが基本です。
ガーディアンが好むテーマは、入試の頻出テーマとほぼ同じ
ガーディアンは2019年に、気候について climate change よりも climate crisis や climate emergency といった切迫感のある表現を優先する方針を示し、2020年には化石燃料を採掘する企業の広告を受け付けないと発表しました。環境報道に特に力を入れている新聞だと言えます。
| テーマ | ガーディアンでよく見る切り口 | 入試での出方 | 押さえたい語 |
|---|---|---|---|
| 環境 | 気候危機、生物多様性、化石燃料からの転換 | 温暖化の原因と対策、個人と社会の責任 | net zero, biodiversity loss, just transition |
| 格差・社会 | 生活費の高騰、住宅問題、子どもの貧困 | 格差の広がり、福祉国家のあり方 | cost-of-living crisis, child poverty, food bank |
| 教育 | 教員不足、学校の予算、学費と奨学金 | 教育の機会均等、学力と家庭環境 | teacher shortage, school funding, tuition |
| テクノロジーと社会 | 巨大IT企業の力、AIの安全性、子どものネット利用 | SNSと心の健康、AIと仕事、プライバシー | big tech, AI safety, online safety law |
| 働き方 | ギグワーク、最低限の生活ができる賃金、週4日勤務 | 労働の未来、働きがい | gig economy, living wage, four-day workweek |
| 健康・医療 | NHS の待ち時間、医師のストライキ、心の健康 | 公的医療のあり方、予防医療 | hospital waiting lists, doctors' strike, mental health crisis |
| 移民・多様性 | 難民・移民政策、排外主義の広がり | 多文化共生、アイデンティティ | asylum seeker, populist right, culture war |
テーマ別に「語の引き出し」を作る
記事を1本読んだら、表の右の列のような語を3つだけメモしましょう。テーマごとにノートのページを分けておくと、自由英作文の直前に見返す最強の資料になります。
イギリス英語の壁その1:綴りが「間違ってる」ように見える
学校の教科書や多くの単語帳はアメリカ式の綴りが中心なので、ガーディアンを読むと最初は違和感があります。でも誤植ではありません(グラウニアドの話を思い出しても、これは違います)。パターンさえ覚えれば一瞬で慣れます。
| イギリス式 | アメリカ式 | パターン |
|---|---|---|
| colour / favour / behaviour | color / favor / behavior | -our と -or |
| organise / realise / recognise | organize / realize / recognize | -ise と -ize |
| analyse / paralyse | analyze / paralyze | -yse と -yze |
| centre / theatre / metre | center / theater / meter | -re と -er |
| programme | program | テレビ番組・計画の意味。コンピュータのプログラムは英でも program |
| defence / offence / licence(名詞) | defense / offense / license | -ence と -ense |
| travelled / cancelled / modelling | traveled / canceled / modeling | l を重ねるかどうか |
| ageing | aging | e を残すかどうか |
| catalogue / dialogue | catalog / dialog | -ogue と -og |
| paediatric / encyclopaedia | pediatric / encyclopedia | ae と e |
| grey / tyre / cheque | gray / tire / check | 単語ごとに違う |
| fulfil / enrol | fulfill / enroll | l が1つか2つか |
答案ではどっちで書く?
入試の英作文では、イギリス式でもアメリカ式でも、1枚の答案の中で統一されていれば問題ないと考えておけば大丈夫です。怖いのは colour と color が混ざること。ちなみにこの辞書の見出しは aging population のようにアメリカ式が中心です。
イギリス英語の壁その2:知らないと詰む生活・制度の単語
綴りより手ごわいのが語彙です。イギリスの学校・医療・政治の仕組みを表す語は、単語帳に載っていないことも多いので、ここでまとめて押さえましょう。
| イギリスでよく見る語 | 意味 | アメリカでの近い言い方・補足 |
|---|---|---|
| pupil | (小中高の)児童・生徒 | student。英では大学生を student、学校の子を pupil と分けることが多い |
| GP(general practitioner) | かかりつけの一般医 | family doctor, primary care doctor |
| the NHS(National Health Service) | 国民保健サービス。税金を財源とする公的医療 | 1948年7月5日に始まった。日本の国民皆保険とは仕組みが違う |
| council | 地方自治体(の議会・役所) | local government, city hall |
| council house | 自治体が提供する公営住宅 | public housing |
| council tax | 住宅にかかる地方税 | property tax に近い |
| MP(Member of Parliament) | 下院議員 | US なら member of Congress, Representative |
| A-levels | 大学進学前の主に18歳ごろに受ける科目別の資格試験 | 日本の大学入試の成績に近い役割 |
| GCSEs | 主に16歳ごろに受ける科目別の資格試験 | 義務教育の修了段階の試験 |
| sixth form | A-levels に向けて学ぶ16〜18歳の課程 | high school の最後の2年に近い |
| tuition fees / fees | 大学の授業料 | tuition |
| flat | アパート・マンションの一室 | apartment |
| the Chancellor(of the Exchequer) | 財務大臣 | Treasury Secretary に近い |
| the Home Office | 内務省(移民・警察などを担当) | アメリカにはぴったり同じ役割の省はない |
| benefits | 社会保障の給付金 | welfare |
| petrol / lorry / mobile | ガソリン / トラック / 携帯電話 | gas / truck / cellphone |
| queue | (人の)列、並ぶ | line |
| holiday | 休暇、旅行 | vacation |
「cheap flat」は平らで安い何か、ではありません
flat を「平らな」と訳して文の意味が崩壊するのは、ガーディアン初心者のあるある。housing(住宅)の話題で flat、rent、landlord(大家)が並んでいたら、ほぼ間違いなく部屋の話です。
イギリス英語の壁その3:日付・数字・記号のクセ
| 項目 | イギリス式でよく見る形 | アメリカ式でよく見る形 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 日付 | 15 September 2026 | September 15, 2026 | 日→月→年の順 |
| 数字だけの日付 | 15/09/2026 | 09/15/2026 | 03/04 は英では4月3日、米では3月4日。入試の図表問題で要注意 |
| 時刻 | 3pm, 9.30am | 3 p.m., 9:30 a.m. | 英では時と分の間にピリオドを使うことがある |
| 敬称 | Mr, Mrs, Dr | Mr., Mrs., Dr. | 英では省略のピリオドを付けないことが多い |
| 引用符 | ‘ ’(シングル) | “ ”(ダブル) | 英の見出しでは発言を ‘ ’ でくくることが多い |
| お金 | £1.5bn | $1.5 billion | bn は billion(10億)、m は million(100万) |
| 集合名詞 | The team are ... | The team is ... | 英では集団を「メンバーの集まり」とみて複数扱いにすることがある |
| 学年・年度 | the 2026-27 academic year | the 2026-2027 school year | 英国の学校や会計は年をまたぐ年度で書かれる |
ガーディアン風の言い回し:hedging(ぼかし表現)を味方にする
質の高い記事は、確かでないことを断定しません。この「ぼかし」を hedging と呼びます。hedging が読めると、内容一致問題で「本文は『〜と考えられている』なのに、選択肢は『〜である』と言い切っている」というワナに気づけるようになります。
記事でよく見る hedging とつなぎの表現
The new policy is arguably the most ambitious in a decade.
新しい政策は、おそらくこの10年で最も野心的なものだろう。
arguably は「議論の余地はあるが、そう言ってよい」。筆者の評価がにじむ語
It is thought that rising rents are pushing young families out of the city.
家賃の上昇が若い家族を都市から押し出していると考えられている。
It is thought that ... は「断定はできない」サイン
There is growing evidence that poor sleep affects how teenagers learn.
睡眠不足が10代の学び方に影響するという証拠が増えつつある。
growing evidence は「まだ結論ではないが強まっている」
Critics argue that the plan does little to help those on low incomes.
批判する人々は、その計画は低所得の人々にほとんど役立たないと主張している。
Critics argue / Campaigners say は他人の意見。筆者の意見と区別する
It remains to be seen whether the scheme will reduce waste.
その制度がごみを減らすかどうかは、まだわからない。
scheme は英では「制度・計画」の意味で中立的。悪だくみではない
This is not to say that technology has no place in schools.
だからといって、学校にテクノロジーの居場所がないと言っているわけではない。
誤解を先回りして打ち消す。直後に筆者の本当の主張が来る
To some extent, the government is right to worry about costs.
ある程度までは、政府が費用を心配するのはもっともだ。
譲歩の合図。この後に But が来たら要注目
What is clear is that the current system is not working.
はっきりしているのは、今の仕組みがうまくいっていないということだ。
hedging の後に「ここだけは断言」。主張の核になりやすい
The question is not whether the town should change, but how.
問題は町が変わるべきかどうかではなく、どう変わるかだ。
not A but B。B が筆者の論点
The figures suggest that fewer people are borrowing books.
数字は、本を借りる人が減っていることを示唆している。
suggest は「示唆する」。prove(証明する)より弱い
選択肢の always / never / only に反応しよう
本文が may, could, suggest, arguably でぼかしているのに、選択肢が always, never, only, prove で言い切っていたら、かなりの確率でワナです。ぼかしの強さを本文と選択肢で比べるクセをつけましょう。
実戦:オリジナルの「ガーディアン風 opinion 記事」を読んでみる
ここからは、このページのために書き下ろした架空の opinion 記事です。舞台はイギリスの架空の町 Ashbridge。実在の記事ではありませんが、テーマ・構成・言い回しはガーディアンのオピニオン欄の雰囲気に寄せています。まずは訳を見ずに、筆者の主張を1文でまとめるつもりで読んでください。
Our town doesn’t need a faster library. It needs a slower one.難関大レベル(約270語)
When Ashbridge council announced last month that its central library would become a ‘digital hub’, the plan was presented as progress. Out go the reading rooms and most of the shelves; in come charging points, self-service kiosks and a cafe. This, we are told, is what young people want.
先月アッシュブリッジの自治体が、中央図書館を「デジタル・ハブ」に変えると発表したとき、その計画は進歩として示された。閲覧室と本棚の大半はなくなり、代わりに充電スポット、セルフサービスの端末、カフェがやってくる。これこそ若者が望むものだ、と私たちは聞かされている。
Arguably, the council has a point. Borrowing figures have fallen for years, and budgets are tight. Nobody seriously suggests that a building should be preserved simply because it is old. But the argument rests on a narrow idea of what a library is for.
おそらく、自治体の言い分にも一理はある。貸出数は何年も減り続けており、予算は厳しい。建物が古いというだけで保存すべきだと本気で言う人はいない。しかしその主張は、図書館が何のためにあるのかについての狭い考えの上に成り立っている。
A library is one of the few indoor places where you can stay for hours without being expected to spend money. For a pupil sharing a cramped flat with three siblings, it is somewhere quiet to revise. For an elderly man living alone, it may be the only place where someone says good morning. None of this shows up in borrowing statistics.
図書館は、お金を使うことを期待されずに何時間もいられる、数少ない屋内の場所の一つだ。狭いアパートの一室にきょうだい3人と暮らす生徒にとっては、静かに試験勉強ができる場所だ。一人暮らしの年配の男性にとっては、誰かが「おはよう」と声をかけてくれる唯一の場所かもしれない。こうしたことは、どれも貸出の統計には表れない。
It is thought that the new hub will attract more visitors, and perhaps it will. Yet a space designed for quick visits is not the same as a space designed for staying. Replacing armchairs with charging points quietly tells people how long they are welcome.
新しいハブはより多くの来館者を集めると考えられているし、実際そうなるのかもしれない。だが、短時間の利用のために設計された空間は、長く過ごすために設計された空間と同じではない。ひじ掛け椅子を充電スポットに置き換えることは、人々にどのくらいの時間いてよいのかを、それとなく告げることになる。
This is not to say that libraries should ignore technology. Free wifi and help with computers are vital for people on the wrong side of the digital divide. The question is not whether the library should change, but who it should change for. Before the council decides, it should ask the people who use the building most, and, just as importantly, those who have nowhere else to go.
だからといって、図書館がテクノロジーを無視すべきだと言っているのではない。無料のWi-Fiやコンピュータの使い方の手助けは、デジタル格差の不利な側にいる人々にとって欠かせない。問題は図書館が変わるべきかどうかではなく、誰のために変わるべきかだ。自治体は決定を下す前に、この建物を最もよく使う人々に、そして同じくらい大切なことに、ほかに行く場所のない人々に、意見を聞くべきである。
語句
- council地方自治体。ここでは町の役所・議会のこと
- Out go A; in come B「A がなくなり、B が入ってくる」。副詞を前に出した倒置で、変化を印象的に見せる新聞らしい書き方
- we are told「〜と聞かされている」。筆者が距離を置き、少し皮肉を込めている
- Arguably, the council has a point.譲歩。「一理ある」と認めた後、第2段落最後の But で反論に転じる
- borrowing figures貸出数。figures は「数字・統計」
- rest on〜に基づいている、〜の上に成り立っている
- reviseイギリス英語で「試験勉強をする」。アメリカ英語の review に近い
- show up in〜に表れる。ここでは統計に数字として出てこないということ
- on the wrong side of the digital divideデジタル格差の不利な側に。[[digital divide]] は入試頻出
- The question is not whether A, but B問題は A かどうかではなく B だ。筆者の主張の核
Ashbridge の記事で力試し
Q1【内容一致】本文の内容に合うものはどれですか。
第3段落の最後 None of this shows up in borrowing statistics. が根拠です。1は第2段落 have fallen と逆、2は Nobody seriously suggests ... と逆、4は charging points や kiosks も入るので誤りです。
Q2【語彙】第3段落の revise に最も近い意味はどれですか。
イギリス英語の revise は「試験勉強をする」の意味でよく使われます。静かな場所で pupil がすることなので、文脈からも判断できます。
Q3【hedging】It is thought that the new hub will attract more visitors について、筆者の態度として最も適切なものはどれですか。
It is thought that で断定を避け、and perhaps it will で一部認めたうえで、Yet 以下で「短時間の利用と長く過ごすことは違う」と論点をずらしています。
Q4【筆者の主張】筆者の主張を最もよく表しているものはどれですか。
最終段落の The question is not whether ... but who it should change for と、その後の it should ask the people ... が主張の核です。2は This is not to say ... で否定されています。
Q5【構成】第2段落の役割として最も適切なものはどれですか。
Arguably, the council has a point.(譲歩)から But the argument rests on a narrow idea ...(反論)へ。opinion 記事の典型的な「譲歩→逆接」の型です。
公式サイトで無料で読むコツ:挫折しない読み方の順番
ガーディアンの公式サイト(theguardian.com)は、スマホのブラウザでも読めます。英文を1語目から最後まで辞書を引きながら読むと、ほぼ確実に3日で飽きます。次の順番で「全体→細部」と読むのがコツです。
- 1見出しを日本語で予想する
見出しだけ読んで「たぶんこういう話」と10秒で予想します。見出しは冠詞や be 動詞が省かれがちなので、見出しの英語ルールも一度読んでおくと速くなります。
- 2standfirst で答え合わせ
見出しの下の要約文を読み、予想が合っていたか確認します。ここで記事の結論をつかめたら、もう半分勝ちです。
- 3各段落の最初の文だけを読む
新聞記事は1段落が短く、最初の文に要点が来やすいので、先に全段落の1文目だけを読んで流れの地図を作ります。
- 4本文を通して読む
地図ができたら頭から読みます。知らない語は、文脈で推測できないものだけ辞書で調べます。
- 51文で要約して、語を3つメモ
最後に記事の主張を英語か日本語で1文にまとめ、使えそうな時事語を3つメモします。この1文要約が、そのまま要約問題の練習になります。
1日1本・15分プラン(曜日ごとに記事の種類を変える)
| 曜日 | 読む記事 | ねらい | 時間の目安 |
|---|---|---|---|
| 月 | News(短めのもの) | 5W1H を最初の2段落で拾う練習 | 10分 |
| 火 | Explainer | 背景知識を貯金する | 15分 |
| 水 | Opinion | 譲歩→逆接を見つけて主張を1文に | 15分 |
| 木 | Analysis | hedging に線を引き、断定との違いを見る | 15分 |
| 金 | Environment 欄の記事 | 環境テーマの語彙を増やす | 15分 |
| 土 | The long read の最初の5段落 | 長い英文に体を慣らす | 20分 |
| 日 | 今週のメモを見返す | 語を単語帳に保存して復習 | 10分 |
辞書を引くのは1本につき5語まで
全部調べると読むこと自体が苦行になります。見出しと standfirst に出た語、そして2回以上出てきた語だけを調べる、とルールを決めましょう。本番の試験では辞書は使えないので、推測する力もこうして育ちます。
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- 記事の途中に出る寄付のお願いは任意です。閉じて読み進めてかまいません。
- Most viewed(よく読まれている記事)から選ぶと、今イギリスで話題のテーマがわかります。
- スマホで読むときは、1記事読み終えるまで他のアプリの通知をオフにすると集中できます。
毎朝の更新から:ガーディアンの見出しに出た時事英語
このサイトでは毎朝、主要な英字ニュースの見出しから時事英語を拾っています。そのうちガーディアンの見出しに出た語を自動で並べました。見出しで見かけた語を覚えておくと、実際の記事を開いたときの「わかる感」がぐっと上がります。
最近ガーディアンの見出しに出た時事英語
- UK politics: Farage hints that Reform’s £72m donations may not be legal under new elections bill - as it happened
The Guardianelection=選挙 ›
- Russian strike on passenger train will not deter Ukraine’s backers, Nato chief says
The Guardianstrike=ストライキ、スト ›
- China dismisses AI ‘fearmongering’ as spy chief warns of threat to Communist party rule
The Guardianruling=判決、裁定、支配している ›
- Gonorrhoea and syphilis rise by more than 50% in Australia with ‘concerning’ rise in cases in women
The Guardianconcern=懸念、心配、関心事 ›
- Disaster insurance, datacenters, right to repair: meet the midterm candidates running on green policies
The Guardiancandidate=候補者、志願者 ›
- Sweden’s political parties launch coalition talks as both blocs try to secure power
The Guardianlaunch=打ち上げる、開始する、発売する ›
- China dismisses AI ‘fearmongering’ as spy chief warns of threat to Communist party rule
The Guardianwarn of=〜の恐れを警告する、〜を警告する ›
- US borrowing costs hit 5% for first time since 2023 amid bond sell-off
The Guardianborrowing costs=借り入れコスト、資金調達コスト ›
- OpenAI urges UK lawmakers to rein in technology amid growing safety fears
The Guardianlawmaker=議員、立法者 ›
- At least six dead and 130 missing after Indonesian ferry capsizes, officials say
The Guardianofficials=当局者、政府関係者、役員 ›
- Government moves to nationalise Speciality Steel UK to protect 1,300 jobs
The Guardiannationalise=国有化する ›
- Leaders at Celtic summit to affirm right to seek independence from UK
The Guardiansummit=首脳会談、サミット、頂上 ›
- Swedish election: centre-left bloc looks set to take power, exit polls show
The Guardianpolls show=世論調査によると、世論調査で〜と分かる ›
- Swedish election: centre-left bloc looks set to take power, exit polls show
The Guardianset to=〜する見通し、〜する予定 ›
- Swedish election: centre-left bloc looks set to take power, exit polls show
The Guardianexit poll=出口調査 ›
- Xi Jinping gets red carpet at Brics summit amid thaw in India-China relations
The GuardianBRICS summit=BRICS首脳会議 ›
ガーディアンでよく見る時事語をまとめて覚える
イギリスの社会問題や環境の記事で繰り返し出てくる語を集めました。どれも入試長文や自由英作文にそのまま使えるものばかりです。カードの音声で発音も確認しておきましょう。
ガーディアンでよく見る時事語32語
- ネット中級 cost-of-living crisis 生活費危機、物価高による生活苦
- 経済初級 energy bills 光熱費、電気・ガス代
- エネルギー上級 energy price cap エネルギー価格の上限規制
- 社会中級 housing crisis 住宅危機、住宅難
- 社会中級 council house 公営住宅(英国)
- 経済上級 austerity 緊縮財政、緊縮策
- エネルギー上級 windfall tax 超過利潤税、棚ぼた税
- ビジネス中級 nationalise 国有化する
- 外交上級 hung parliament 宙づり議会、過半数割れ議会
- 外交中級 Brexit deal ブレグジット合意、EU離脱協定
- 外交上級 asylum seeker 亡命希望者、難民申請者
- 政治上級 populist right 右派ポピュリズム勢力
- 政治上級 culture war 文化戦争、価値観をめぐる対立
- 環境中級 climate emergency 気候非常事態、気候危機
- 環境中級 net zero ネットゼロ、実質ゼロ
- 環境上級 just transition 公正な移行
- 環境上級 biodiversity loss 生物多様性の損失
- 環境上級 rewilding 再野生化、リワイルディング
- 環境上級 forever chemicals 永遠の化学物質、有機フッ素化合物(PFAS)
- 環境上級 greenwashing グリーンウォッシュ、見せかけの環境配慮
- 社会中級 income inequality 所得格差、所得の不平等
- 社会中級 child poverty 子どもの貧困
- 食中級 food bank フードバンク
- ビジネス中級 living wage 生活賃金
- ビジネス上級 gig economy ギグエコノミー、単発請負型経済
- 教育中級 teacher shortage 教員不足、教師不足
- 教育中級 school funding 学校予算、教育財源
- 医療中級 hospital waiting lists 病院の待機リスト、治療待ち
- 医療中級 doctors' strike 医師のストライキ
- テクノロジー中級 big tech 巨大IT企業群、ビッグテック
- テクノロジー上級 online safety law オンライン安全法
- 法律中級 whistleblower 内部告発者
よくある質問
ガーディアンは受験生には難しすぎませんか?
全部を読もうとすると難しいですが、見出し→standfirst→各段落の1文目の順に読めば、高校2〜3年生でも要点はつかめます。最初は短い News や Explainer から始め、慣れたら Opinion に進みましょう。
ガーディアンの記事は本当に無料で読めるのですか?
ガーディアンはサイト全体を有料会員限定にするペイウォールを設けておらず、多くの記事を無料で公開しています。記事の下などに寄付のお願いが表示されますが、寄付は任意です。
イギリス英語で答案を書いても減点されませんか?
一般的には、イギリス式でもアメリカ式でも、答案の中で綴りが統一されていれば問題ないと考えてよいでしょう。colour と color が混在するなど、ばらつきがあるほうが印象はよくありません。
ガーディアンは政治的に偏っていませんか?
一般に中道左派(centre-left)の新聞とされ、オピニオン記事には筆者の立場がはっきり出ます。だからこそ「筆者の主張」を読み取る練習に向いています。事実を扱う News と意見を述べる Opinion を区別して読み、できれば立場の違う媒体と読み比べるのがおすすめです。
BBC など他のイギリスのメディアとどう使い分ければいいですか?
速報や短いニュースで聞き取りや基本語彙を固めるなら放送局のサイト、社会問題を掘り下げた論説で長文読解を鍛えるならガーディアン、という使い分けがしやすいです。どちらも1日1本のペースで十分です。
The long read は受験生が読むべきですか?
数千語規模の長編なので、毎回全部読む必要はありません。土曜日などに最初の5段落だけ読むと、長い英文への体力づくりになります。興味のあるテーマなら、最後まで読めたときの達成感は格別です。