部活の練習が暑さで中止になった、熱中症警戒アラートが毎日鳴っている。そんな夏を過ごした受験生にとって、気候変動は「遠い北極の氷の話」ではなく、もう自分の生活の話です。
だからこそ、このテーマは英語で読めて英語で意見が言えると強い。難関大の長文の定番であるうえ、数字やグラフを使った資料問題の素材にもなりやすいテーマです。ここで一気に固めておきましょう。
なぜ気候変動のテーマは入試に出まくるのか
1つ目の理由は、科学と社会の両方にまたがること。温室効果の仕組みという理科の話から、経済、政治、国どうしの交渉、個人の生活まで、1本の長文にいくらでも盛り込めます。出題者にとって、これほど便利なテーマはありません。
2つ目は、数字とグラフが豊富なこと。気温の上昇幅、二酸化炭素の排出量、再生可能エネルギーの割合など、図表を読み取らせる問題が作りやすいので、共通テストの資料問題でも定番です。
3つ目は、「誰が責任を負うべきか」という論争があること。先進国と途上国、企業と個人、今の世代と未来の世代。立場によって答えが変わる問いは、自由英作文のお題にぴったりです。
先輩からのひと言
気候変動の長文は「問題は深刻だ、しかし解決策はある、ただし急がなければならない」という三段構えが王道です。危機をあおるだけの文章はまず出ません。筆者が挙げる解決策と、その解決策の弱点まで読み取れると、内容一致問題で迷わなくなります。
3分でわかる背景知識
1.5度の正体は「いつと比べて」1.5度か
2015年に採択されたParis Agreement(パリ協定)は、世界の平均気温の上昇を産業革命前と比べて2度より十分低く抑え、1.5度に抑える努力をすると定めました。この「産業革命前と比べて」が抜けると意味が変わるので、英文でも above pre-industrial levels という表現を必ず確認しましょう。
EUの気候情報機関「コペルニクス気候変動サービス」によると、2024年は観測史上最も暑い年でした。年平均気温は産業革命前より約1.6度高く、暦年(1月〜12月の1年間)で初めて1.5度を超えた年になりました。また、2015年から2024年までの10年間は、どの年も観測史上の暑い年トップ10に入っています。ただしパリ協定の1.5度は長期の平均で考えるため、1年超えただけで目標が破られたことにはなりません。
ネットゼロとは「ゼロにする」ではなく「差し引きゼロ」
- net zero(ネットゼロ):出す温室効果ガスの量と、森林や技術で吸収・除去する量を差し引きしてゼロにすること。日本語では「実質ゼロ」「カーボンニュートラル」とも言います。
- carbon neutral(カーボンニュートラル):net zero とほぼ同じ意味で使われます。英語では二酸化炭素に限って使うこともありますが、日本政府の「カーボンニュートラル」は温室効果ガス全体が対象です。
- decarbonization(脱炭素):化石燃料への依存を減らし、社会全体で二酸化炭素の排出を減らしていく流れのこと。長文では「脱炭素の移行」を energy transition と呼ぶこともあります。
日本の約束:2050年ネットゼロと途中の数値目標
日本は2050年までにネットゼロを達成するという目標を掲げ、2013年度と比べて温室効果ガスを2030年度に46%削減すると約束しています。さらに2025年2月に国連へ提出した新しい目標では、2035年度に60%、2040年度に73%削減するとしました。長文で日本の話が出るときは、この「2013年度比」という基準年もセットで押さえておきましょう。
こうした国ごとの約束を英語ではclimate pledgeや NDC(国が決定する貢献)と呼びます。毎年開かれるclimate summit(気候サミット、COP)では、各国の取り組みの進み具合も議論されます。「約束はしたが、行動が追いついていない」というのが、多くの長文に共通する筆者の指摘です。
このテーマの必修時事英語
語カードをタップすると、意味・例文・音声が見られます。carbon がつく語が多いので、carbon + 何、で意味がどう変わるかをセットで整理すると覚えやすいです。
気候変動・脱炭素の必修語40語
- 環境初級 climate change 気候変動
- 環境初級 global warming 地球温暖化
- 環境中級 greenhouse gas 温室効果ガス
- 環境中級 greenhouse effect 温室効果
- 環境中級 carbon emissions 炭素排出、二酸化炭素排出量
- 環境中級 carbon footprint カーボンフットプリント、炭素の足跡
- 環境中級 carbon neutral カーボンニュートラルな、炭素中立の
- 環境中級 net zero ネットゼロ、実質ゼロ
- 環境上級 decarbonization 脱炭素化
- 環境中級 Paris Agreement パリ協定
- 環境上級 1.5-degree target 1.5度目標
- 環境中級 emissions reduction target 温室効果ガス削減目標、排出削減目標
- 環境中級 climate pledge 気候変動対策の公約、気候目標の誓約
- 環境中級 climate summit 気候サミット、気候変動首脳会議
- 環境中級 climate talks 気候変動交渉、気候協議
- 環境初級 fossil fuels 化石燃料
- エネルギー上級 fossil fuel phase-out 化石燃料の段階的廃止、脱化石燃料
- 環境初級 renewable energy 再生可能エネルギー
- 環境初級 solar power 太陽光発電、太陽エネルギー
- 環境初級 wind power 風力発電、風力
- エネルギー中級 energy transition エネルギー転換、エネルギー移行
- 環境初級 electric vehicle 電気自動車、EV
- 環境中級 carbon tax 炭素税
- 環境上級 carbon pricing カーボンプライシング、炭素の価格付け
- 環境上級 emissions trading 排出量取引
- 環境上級 carbon capture 炭素回収、CO2回収
- 環境上級 carbon sink 炭素吸収源、CO2の吸収源
- 環境上級 climate adaptation 気候変動への適応
- 環境中級 extreme weather events 異常気象、極端な気象現象
- 災害初級 heatwave 熱波、猛暑
- 環境中級 sea level rise 海面上昇
- 環境中級 tipping point 転換点、臨界点、ティッピング・ポイント
- 環境上級 climate refugees 気候難民
- 環境上級 climate justice 気候正義
- 環境上級 loss and damage fund 「損失と損害」基金、ロス・アンド・ダメージ基金
- 環境上級 just transition 公正な移行
- 環境上級 climate lawsuit 気候訴訟
- 環境上級 greenwashing グリーンウォッシュ、見せかけの環境配慮
- 環境上級 climate finance 気候資金
- 環境上級 carbon credit カーボンクレジット、炭素クレジット
長文でよく出る論点:誰が、どこまで、何を犠牲にして減らすのか
気候変動の英作文は「温暖化は良いか悪いか」ではなく、「対策のやり方」で意見が分かれます。下の論点は、政府の規制を強めるべきか、それとも技術と市場に任せるべきか、という軸で整理しています。
気候変動対策をめぐる対立軸
強い対策を急ぐべき
- 気温上昇が進むほど、熱波・豪雨・干ばつなどの被害と対策の費用が大きくなる
- 一度越えると元に戻らない転換点(tipping point)があり、先延ばしは危険である
- 先に大量に排出してきた先進国には、途上国を支援する歴史的な責任がある
- 再生可能エネルギーの価格は下がっており、脱炭素は経済成長のチャンスにもなる
- 未来の世代は今の決定に参加できないため、今の世代が責任を持つべきである
慎重に進めるべき
- 急激な規制は電気代や物価を押し上げ、低所得の家庭ほど負担が重くなる
- 石炭や石油に頼る地域では、産業の縮小で仕事を失う人が出る(公正な移行が必要)
- 太陽光や風力は天候に左右され、安定した電力供給には蓄電や別の電源が要る
- 一国だけが厳しくしても、排出の多い国が動かなければ効果は限られる
- 技術の進歩(炭素回収など)を待ったほうが、結果的に安く減らせるという考えもある
自由英作文で使える表現
気候変動のお題は「個人にできること」と「政府や企業がすべきこと」の両方を書けると強いです。1段落目で問題の深刻さ、2段落目で具体策、3段落目で「今すぐ」と締める、という型を音声でまねしてみましょう。
気候変動・脱炭素の英作文フレーズ
Climate change is no longer a distant threat but a reality that affects our daily lives.
気候変動はもはや遠い脅威ではなく、私たちの日常に影響する現実だ。
no longer A but B の対比。導入の1文として万能。
Burning fossil fuels releases greenhouse gases that trap heat in the atmosphere.
化石燃料を燃やすと、大気中に熱を閉じ込める温室効果ガスが放出される。
温室効果の仕組みを1文で。trap heat(熱を閉じ込める)は理科系の長文でも頻出。
Governments should invest more in renewable energy such as solar and wind power.
政府は太陽光や風力といった再生可能エネルギーにもっと投資すべきだ。
such as で具体例を2つ添えると説得力が上がる。
Putting a price on carbon encourages companies to reduce their emissions.
炭素に価格をつけることは、企業に排出削減を促す。
動名詞主語+encourage 人 to ~。carbon pricing の説明にそのまま使える。
Developed countries, which have emitted the most carbon dioxide historically, have a responsibility to support developing nations.
歴史的に最も多くの二酸化炭素を排出してきた先進国には、途上国を支援する責任がある。
非制限用法の関係詞で「理由」を挟み込む上級の型。
Even small changes in our daily habits, such as using public transportation, can add up to a big difference.
公共交通機関を使うといった日常の小さな変化でも、積み重なれば大きな違いになりうる。
add up to(合計で~になる)で「個人の行動」を擁護できる。
Unless we act now, the cost of dealing with climate change will only increase.
今すぐ行動しなければ、気候変動に対処する費用は増える一方だ。
Unless ~ で締めの緊張感を出す。will only ~(~する一方だ)も便利。
A rapid shift away from coal could leave many workers without jobs unless they are supported.
石炭からの急激な転換は、支援がなければ多くの労働者から仕事を奪いかねない。
慎重派の根拠。shift away from(~からの転換)は脱炭素の定番。
Renewable energy has become cheaper, which makes the transition both possible and profitable.
再生可能エネルギーは安くなっており、そのおかげで転換は可能であると同時に利益にもなる。
, which で前の文全体を受ける。both A and B で語数も稼げる。
We are the last generation that can prevent the worst effects of climate change.
私たちは気候変動の最悪の影響を防ぐことができる最後の世代だ。
強い締めの1文。ただし煽りすぎないよう、根拠の後に置く。
オリジナル長文にチャレンジ
共通テスト〜国公立二次レベルの書き下ろし長文です。まず訳を隠して1回読み、「筆者が一番言いたい解決策は何か」を一言でメモしてからクイズに進んでください。
One and a Half Degrees共通テスト〜国公立二次
In 2015, nearly every country in the world agreed in Paris to keep global warming well below two degrees Celsius above pre-industrial levels, and to try to limit it to 1.5 degrees. At the time, 1.5 degrees sounded like a small number. Since then, scientists have shown that every fraction of a degree matters: the difference between 1.5 and 2 degrees could mean far more frequent heatwaves, higher sea levels, and the loss of most of the world's coral reefs.
2015年、世界のほぼすべての国がパリで、地球温暖化を産業革命前の水準から2度より十分低く抑え、1.5度に抑える努力をすることに合意した。当時、1.5度は小さな数字に聞こえた。それ以来、科学者たちは、わずかな温度の差にも意味があることを示してきた。1.5度と2度の違いは、熱波がはるかに頻繁になり、海面がさらに上昇し、世界のサンゴ礁の大部分が失われることを意味しうるのだ。
The world is now uncomfortably close to that line. According to the European climate service Copernicus, 2024 was the warmest year on record and the first calendar year in which the average global temperature was more than 1.5 degrees above pre-industrial levels. A single hot year does not mean the Paris goal has been missed, because the target refers to a long-term average. But it is a clear warning that the window for action is closing.
世界はいま、その線に不安なほど近づいている。欧州の気候情報機関コペルニクスによると、2024年は観測史上最も暑い年であり、世界の平均気温が産業革命前より1.5度以上高くなった初めての暦年だった。暑い年が1年あっただけでパリの目標が失われたことにはならない。目標は長期の平均を指しているからだ。しかしそれは、行動のための窓が閉じつつあるという明確な警告である。
The good news is that the tools already exist. Solar and wind power have become far cheaper over the past decade, and in many places they are now the least expensive way to generate electricity. Electric vehicles, better insulation, and more efficient factories can cut emissions without lowering people's standard of living. The main obstacle is not technology but politics: governments must decide who pays for the transition and how to protect workers in industries that will shrink.
良い知らせは、道具はすでにそろっているということだ。太陽光と風力の発電はこの10年で大幅に安くなり、多くの場所で今や最も安い発電方法になっている。電気自動車、より良い断熱、より効率的な工場は、人々の生活水準を下げることなく排出を減らせる。主な障害は技術ではなく政治である。政府は、転換の費用を誰が払うのか、縮小していく産業の労働者をどう守るのかを決めなければならない。
This is why the debate has shifted from whether to act to how fast and how fairly. Countries that grew rich by burning coal and oil are being asked to help poorer nations adapt. The question for your generation is not simply how to reduce emissions, but how to do so in a way that leaves nobody behind.
だからこそ議論は、行動するかどうかから、どれほど速く、どれほど公平に行動するかへと移ってきた。石炭や石油を燃やして豊かになった国々は、より貧しい国々の適応を支援するよう求められている。あなたたちの世代への問いは、単に排出をどう減らすかではなく、誰も取り残さない形でそれをどう実現するかなのだ。
語句
- well below~より十分に低く(well は強調)
- pre-industrial levels産業革命前の水準
- every fraction of a degree matters1度に満たない差にも意味がある
- uncomfortably close to不安なほど~に近い
- on record記録上の、観測史上の
- refer to~を指す、~のことを言う
- the window for action is closing行動できる時間が残り少なくなっている
- standard of living生活水準
- obstacle障害、妨げ
- shift from A to BAからBへ移る(ここでは議論の焦点)
長文の理解度チェック
Q1第1段落によると、1.5度と2度の違いについて筆者はどう述べていますか。
every fraction of a degree matters に続けて、具体的な違いが3つ列挙されています。コロン(:)の後ろは前の主張の具体例、という読み方を使いましょう。
Q2第2段落で、2024年のデータについて筆者はどう評価していますか。
A single hot year does not mean ... But it is a clear warning という流れ。But の後ろに筆者の評価が来ています。
Q3第3段落で、筆者が「主な障害」だと考えているものは何ですか。
The main obstacle is not technology but politics と明言されています。not A but B の B が答えになる典型パターンです。
Q4この文章の主旨として最も適切なものはどれですか。
第3段落の「道具はある、障害は政治」と、最終段落の「速さと公平さ」が主旨です。選択肢4は支援の方向が逆になっています。
ここで差がつく:言い換えと誤読ポイント
| 本文の表現 | 設問・選択肢での言い換え | 注意点 |
|---|---|---|
| emit / emissions | release / give off / the amount of gas released | 「排出」。omit(省く)と混同しない |
| mitigation | reducing the causes of climate change | adaptation(影響への適応)との対比で出る |
| adaptation | adjusting to the effects that are already happening | 「適応」。生物の適応と同じ語 |
| phase out | gradually stop using | 段階的にやめる。phase in は段階的に導入 |
| sustainable | able to continue without harming the future | 「持続可能な」。sustain(支える)から |
| carbon | carbon dioxide / CO2 emissions | 長文では carbon 一語で「二酸化炭素排出」を指すことが多い |
climate と weather を混ぜない
weather は「今日の天気」、climate は「長い期間の気候の傾向」。長文では「今日が寒いからといって温暖化がウソだとは言えない」という筆者の指摘がよく出ます。1日の天気(weather)と数十年の傾向(climate)を分けて読む、というのは科学的な読み方の基本です。
数字は「何と比べて」「いつまでに」をセットで読む
46% と書かれていても、「2013年度と比べて」「2030年度までに」がなければ意味が決まりません。グラフ問題では、基準年と目標年、そして単位(%か、トンか)を必ず確認しましょう。選択肢の数字が合っていても基準が違えば誤りです。
ツッコミどころ・意外な雑学
- 「産業革命前」の基準は、正確には1850年から1900年の平均気温を使うのが一般的です。産業革命そのものは18世紀に始まっていますが、世界的な観測記録がその頃からしかないためです。
- 日本の削減目標の基準である2013年度は、原発が止まって火力発電が増え、温室効果ガスの排出量が統計を取り始めた1990年度以来で最も多かった年です。排出が多い年を基準にすると削減率は大きく見えます。基準年をどこに置くかで数字の見え方が変わる、というのは資料問題で役立つ視点です。
- 2024年はコペルニクスの記録で暦年として初めて1.5度を超えましたが、パリ協定の目標は、一般に20年程度の長期の平均気温で考えます。つまり「1年の記録」と「目標の達成・失敗」は別の話。ニュースの見出しだけで判断しないのは、時事英語の読み方そのものです。
- net zero の net は「正味の、差し引きの」。テニスのネットでも、インターネットでもありません。給料の話で出る net income(手取り)と同じ net です。
ちなみにこのページの数字は、すべて確認できたものだけを載せています。気候変動の話で怪しい数字を使ったら、greenwashing ならぬ fact-washing と言われてしまいますからね。
よくある質問
自由英作文で「気候変動対策で最も重要なことは何か」と聞かれたら、何を書けばいいですか?
「再生可能エネルギーへの転換」か「炭素に価格をつけること」のどちらかを軸にすると、理由が2つ書きやすいです。個人の努力(節電、公共交通)だけで書くと薄くなりがちなので、政府や企業の役割を必ず1つ入れましょう。
global warming と climate change はどう違いますか?
global warming は「気温が上がること」そのもの、climate change は気温上昇に加えて豪雨・干ばつ・海面上昇などの変化全体を指す広い言葉です。最近のニュースや長文では climate change のほうが多く使われます。英作文ではどちらを使っても減点はされませんが、統一して使いましょう。
このテーマとセットで出やすい分野はありますか?
再生可能エネルギー、災害(豪雨・熱波)、食料と水の問題、そしてSDGsです。とくに「気候変動が原因で起きること」として災害や食料の話が続く長文は多いので、関連トピックもあわせて読んでおくと因果関係がすぐ追えます。
あわせて読みたい
今日このページを読んだあと、天気予報を見たら一度だけ英語で考えてみてください。Is this weather, or is this climate? と頭に浮かんだら、もう立派な時事英語の使い手です。