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入試に出る時事トピック

公衆衛生・感染症の英語 — 入試に超出る「見えない勝利」のテーマ

パンデミック、ワクチン忌避、薬が効かない細菌。公衆衛生は、コロナ禍を経験した今の受験生にとって一番リアルな長文テーマです。背景知識、必修の時事英語30語、賛否の論点、英作文の表現、オリジナル長文と問題まで、このページでまとめて攻略しましょう。

更新 2026/09/15

マスク、手洗い、ワクチン接種、オンライン授業。数年前、世界中の学校生活を一変させたのが感染症でした。英語でいえば public health(公衆衛生) の問題です。一人ひとりの病気を治す「医療」とちがい、公衆衛生は社会全体の健康を守るための仕組みを考えます。

このテーマは、ニュースでも入試長文でも「一度出たら何度も出る」タイプです。理由はシンプルで、科学・政治・経済・倫理が全部からんでくるから。部活でいえば、どのポジションもこなせるオールラウンダーのような話題なのです。

3行でわかる公衆衛生

1. 病気を「治す」より「防ぐ」ことに重心を置く考え方。 2. 感染症だけでなく、肥満や生活習慣病、きれいな水や下水道も守備範囲。 3. 成功すると「何も起きない」ので、ありがたみが見えにくいのが最大の弱点。

なぜ入試に出るのか:「個人の自由」と「みんなの安全」がぶつかるから

難関国公立・私大の長文では、健康や医療をめぐる評論が定番テーマの一つです。特に公衆衛生は、「自分の体のことは自分で決めたい」という個人の自由と、「社会全体を感染から守りたい」という公共の利益がぶつかる場面が多く、筆者の主張や論点の対立を問う設問が作りやすいのです。

3分でわかる背景知識:人類と感染症の「戦いの年表」

まずは大きな流れをつかみましょう。長文を読むとき、年号を全部覚えている必要はありません。でも「いつごろ、何が大きな転換点だったか」を知っていると、初見の文章でも筆者の話がすっと頭に入ります。

できごとここがポイント
1854ロンドンの大流行で、医師ジョン・スノウがコレラ死者の住所を地図に書き込み、ブロード・ストリートの井戸ポンプに集中していることを突き止めるデータで感染源を探る「疫学(epidemiology)」の出発点とされる
1948世界保健機関(World Health Organization、WHO)が発足4月7日は世界保健デー
1961日本で国民皆保険が実現(すべての市区町村で国民健康保険を実施)英語では universal health coverage の話題とつながる
1980WHO の世界保健総会が天然痘の根絶を宣言人類が根絶できた唯一のヒトの感染症として有名
20201月30日、WHO が新型コロナを「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」に指定public health emergency の語が世界中の見出しに
20235月5日、WHO がこの緊急事態の終了を発表終わったのは「緊急事態」であって、病気そのものではない点に注意
20255月20日、世界保健総会で WHO パンデミック協定が採択見出しでは pandemic treaty と呼ばれることも

今いちばん怖いのは「薬が効かない細菌」かもしれない

抗生物質が効かなくなる antimicrobial resistance(薬剤耐性、AMR) は、「静かなパンデミック」とも呼ばれます。医学誌 The Lancet に2022年に載った研究は、2019年に薬剤耐性菌の感染が直接の原因で亡くなった人を約127万人と推計しました。さらに2024年に同誌に載った研究は、2025年から2050年までの累計で3,900万人以上が亡くなる可能性があると予測しています。

pandemic・epidemic・outbreak のちがい

outbreak は限られた地域・集団での「発生」、epidemic は地域や国で広がる「流行」、pandemic は複数の大陸にまたがる「世界的大流行」。規模のイメージは、教室→学校→全国大会、くらいの差です。長文で筆者がどの語を選んでいるかにも注目しましょう。

このテーマの必修時事英語:これだけ知っていれば長文が怖くない

感染症・医療の長文やニュースで繰り返し出てくる語を集めました。カードをタップすると意味と音声が確認できます。まずは太字で紹介した語から優先して覚え、残りは長文で出会ったときに「あ、見たことある」と思えればOKです。

公衆衛生・感染症の必修時事英語30語

長文でよく出る論点:公衆衛生のための「強い対策」はどこまで許される?

公衆衛生の評論でいちばんよく出るのが、「社会を守るために、政府は個人の行動にどこまで口を出してよいか」という論点です。移動制限、ワクチン接種の推奨、砂糖税、たばこ規制など、具体例は変わっても骨組みは同じ。両側の言い分をセットで押さえておきましょう。

政府による強い公衆衛生対策(行動制限・義務化・健康税など)

賛成・メリット

  • 感染症は一人の選択が周りの人の命に影響するので、個人の自由だけに任せられない。
  • 病院がパンクする(overwhelmed hospitals)のを防げば、感染症以外の患者も守れる。
  • 予防にお金をかけるほうが、病気になってから治療するより社会全体の費用が安く済むことが多い。
  • sugar tax やたばこ税のような仕組みは、健康的な選択を自然に促し、税収を医療に回せる。
  • 高齢者や持病のある人など、弱い立場の人を守ることは社会の責任である。

反対・課題

  • 行動制限は、休業する店や学校に通えない子どもなど、感染以外の大きな被害を生む。
  • 強制が強すぎると政府への不信が高まり、かえって vaccine hesitancy が広がるおそれがある。
  • 健康税は所得の低い人ほど負担が重くなりやすく、格差を広げるという批判がある。
  • 緊急時の特別な権限が、危機が去った後も続いてしまう危険がある。
  • 科学的な情報が途中で変わることもあり、はじめから厳しいルールを決めるのは難しい。

答案は「どちらか」より「条件つき」で書くと強い

自由英作文でこのテーマが出たら、「強い対策に賛成/反対」と白黒をつけるより、「科学的な根拠があり、期間を限り、弱い立場の人を支援するなら賛成」のように条件をつけると、説得力がぐっと上がります。

自由英作文で使える表現:そのまま答案に使える12文

公衆衛生のテーマで使いやすい英文を集めました。単語を入れ替えれば、ワクチン、たばこ、肥満、熱中症など、いろいろな問題に応用できます。音声ボタンで発音も確認しておきましょう。

公衆衛生の自由英作文で使える表現

  • Public health is not only about treating illness but also about preventing it.

    公衆衛生とは、病気を治すことだけでなく、病気を防ぐことでもある。

    not only A but also B で主題を定義する書き出しの定番

  • An individual's choice can affect the health of the whole community.

    一人の選択が、地域社会全体の健康に影響することがある。

    個人と社会の関係を示す。the whole community は society に言い換え可

  • Prevention is often far cheaper than cure.

    予防は、治療よりもはるかに安く済むことが多い。

    far は比較級の強調。often を入れて言い切りを避けるのがコツ

  • Governments should base their decisions on reliable scientific evidence.

    政府は信頼できる科学的根拠に基づいて決定を下すべきだ。

    base A on B(A の根拠を B に置く)は英作文で万能

  • Strict measures may be justified if they are temporary and clearly explained.

    厳しい対策も、一時的で、はっきり説明されるなら正当化されうる。

    条件つきの賛成を表す。justified は「正当と認められる」

  • Restrictions on movement can cause serious harm to small businesses and students.

    移動の制限は、小さな店や学生に深刻な害を与えることがある。

    反対側の論拠。cause harm to 〜 はセットで覚える

  • Trust between the public and health authorities is essential in a crisis.

    危機のときには、市民と保健当局の間の信頼が欠かせない。

    health authorities は「保健当局」。ニュースでも頻出

  • Vaccines protect not only those who receive them but also people who cannot be vaccinated.

    ワクチンは接種した人だけでなく、接種できない人も守る。

    集団免疫の考え方を1文で説明できる

  • Wealthy countries have a responsibility to share medical resources with poorer nations.

    豊かな国には、医療資源を貧しい国と分かち合う責任がある。

    国際協力の論点。have a responsibility to do

  • Misinformation on social media can spread faster than the virus itself.

    SNS 上の誤情報は、ウイルスそのものより速く広がることがある。

    misinformation は不可算名詞。s を付けない

  • Investing in public health today can save lives and money in the future.

    今日公衆衛生に投資することは、将来の命とお金を救いうる。

    結論の締めに使いやすい。save lives and money の並列がリズムよし

  • The challenge is to protect public health without ignoring individual rights.

    課題は、個人の権利を無視せずに公衆衛生を守ることだ。

    The challenge is to do で論点をまとめる。without doing も便利

減点されやすい語法3つ

1. evidence と information と misinformation は不可算名詞(an evidence や informations は×)。 2. 「感染する」は be infected with 〜(with を忘れない)。 3. 「ワクチンを打つ」は get vaccinated / get a vaccine が自然。「打つ」を直訳した hit a vaccine は英語として通じません。

オリジナル長文:公衆衛生の成功は、なぜ目に見えないのか

このページのために書き下ろした評論文です。国公立二次〜難関私大レベルを想定しています。まず訳を見ずに読み、「筆者がいちばん言いたいこと」を1文でまとめてから問題に進みましょう。

The Quiet Victories of Public Health国公立二次・難関私大レベル(約270語)

When a doctor saves a patient's life in an emergency room, everyone can see what has happened. When a public health program prevents thousands of people from falling ill, there is usually nothing to see at all. This is the strange problem at the heart of public health: its greatest successes are invisible, because they take the form of diseases that never happened.

History offers a famous example. In 1854, during a cholera outbreak in London, the physician John Snow marked on a map where victims had lived and noticed that many deaths were clustered around a single water pump. He persuaded local officials to remove the pump's handle. Today, clean water and proper sewage systems protect millions of city dwellers every day, yet few people ever think of them as medicine.

This invisibility creates a real risk. If a vaccination campaign works well, a disease may become so rare that parents begin to doubt whether the vaccine is still necessary. As such doubts spread, the protection that the whole community once enjoyed can weaken, and the old disease may return. In other words, success can quietly plant the seeds of its own failure.

A similar logic applies to antibiotics. Because they have made many infections easy to treat, they are sometimes used carelessly, which helps bacteria develop resistance. Public health, then, is not only a matter of science but also of trust and memory. Societies need to remember the dangers they no longer see and to keep investing in protection even when nothing seems to be wrong. Prevention rarely makes headlines, but it is one of the best bargains a society can buy.

語句

  • at the heart of〜の核心に、〜の中心に
  • take the form of〜という形をとる
  • be clustered around〜の周りに集中している。cluster of cases(集団感染)の cluster と同じ語
  • persuade A to doA を説得して〜させる。本文は persuade A to remove 〜
  • city dwellers都市住民。dweller は「住む人」
  • doubt whether〜かどうかを疑う
  • plant the seeds of〜の種をまく、〜の原因をつくる
  • develop resistance耐性を身につける。antibiotic resistance の resistance
  • make headlines大きなニュースになる、見出しを飾る
  • bargainお買い得品、安い買い物。ここでは「費用に対して効果が大きいもの」の比喩

「見えない勝利」の長文で力試し

Q1【内容一致】本文の内容に合うものはどれですか。

Q2【語彙の言い換え】第2段落の were clustered around a single water pump に最も近い意味はどれですか。

Q3【下線部の意味】success can quietly plant the seeds of its own failure とはどういうことですか。

Q4【主旨】筆者の主張として最も適切なものはどれですか。

ここで差がつく:公衆衛生の長文で狙われる言い換えとワナ

内容一致問題では、本文の語がそのまま選択肢に出ることはあまりありません。よく出る言い換えのペアを知っておくと、正解の選択肢が「光って見える」ようになります。

本文の表現選択肢での言い換え意味
prevent the spread of the diseasestop the disease from spreading / contain the outbreak感染拡大を防ぐ
fall ill / become sickdevelop a disease / contract an illness病気になる
infectiouscontagious / communicable感染性の、うつる
life-threateningpotentially fatal / deadly命にかかわる
reluctant to get vaccinatedhesitant about vaccinesワクチン接種をためらう
the elderly and people with chronic diseasesvulnerable groups弱い立場の人々
mortalitydeath rate死亡率
curetreatment治療(cure は完治のニュアンスが強い)

「感染者数が増えた」と「感染率が上がった」は別物

the number of cases(感染者の数)と the infection rate(感染の割合)は、グラフ問題の超定番のワナです。検査の数が増えれば、感染の割合が同じでも感染者の数は増えます。数(number)なのか、割合(rate / proportion)なのかを必ず確認しましょう。

positive は「よい知らせ」とは限らない

検査で positive(陽性)は「病気が見つかった」という意味です。tested positive for 〜 は「〜の検査で陽性だった」。ふだんの「前向きな」の意味で読むと、文の意味が真逆になります。

ツッコミどころ満載:公衆衛生の意外な雑学

quarantine(隔離・検疫)の語源は「40日」。 14世紀、ペストが流行したアドリア海の港町ラグーザ(今のクロアチアのドブロブニク)では、感染地域から来た人を一定期間隔離する決まりが作られました。その後、各地でこの期間が40日に延ばされ、イタリア語(ヴェネツィアの方言)で「40日間」を表す語が quarantine の語源になったとされています。今の検疫はもちろん40日ではありません。修学旅行の前日にこれを話すと、ちょっと賢そうに見えます。

「取っ手を外しただけ」で歴史に残った医者。 先ほどの長文にも登場したジョン・スノウは、1854年にポンプの取っ手を外すよう役人を説得したことで知られています。病原体の正体がまだよくわかっていなかった時代に、地図とデータで原因の場所をしぼりこんだのです。公衆衛生の世界では、問題の根本を断つことを「ポンプの取っ手を外す」とたとえることがあります。

よくある質問

コロナの話は、もう入試に出ないのでは?

特定の病気の話題そのものより、「感染症と社会」「個人の自由と公共の利益」「科学と信頼」といった普遍的な論点として出る可能性が高いテーマです。コロナ禍の経験は、その具体例として英作文で使えます。

医療系の学部志望でなくても、この分野の単語は必要ですか?

必要です。公衆衛生は文系・理系を問わず長文の定番テーマで、pandemicvaccine hesitancy のような語は一般の評論にも出てきます。このページの必修語は、学部に関係なく押さえておきましょう。

英作文でワクチンについて書くとき、注意することは?

事実と意見を分けることが大切です。「ワクチンは100%安全だ」「全く効かない」のような言い切りは避け、may, can, often などで程度を調整しましょう。自分の意見は、根拠とセットで書くのが基本です。

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