ペットボトルの水、コンビニのおにぎりの包装、スマホのケース。今日一日で手にしたプラスチックを数えたら、たぶん両手では足りません。便利で、軽くて、安い。そのプラスチックがいま、海の一番深いところにまで届いています。
プラスチックごみの話は、受験生にとって「自分の手の中の話」。だからこそ、英語で読めて英語で意見を言えると、長文でも英作文でも一気に強くなります。
なぜプラスチックごみのテーマは入試に出まくるのか
1つ目の理由は、身近なのに世界規模であること。レジ袋やストローという日常の小さな話から始めて、海に流れ出るごみの総量、国際条約の交渉まで、話をどこまでも大きくできます。長文の「導入は具体例、本論は世界の話」という構成にぴったりの素材です。
2つ目は、解決策に賛否があること。禁止か、課金か、リサイクルか、代わりの素材か。「レジ袋の有料化は効果があるか」「使い捨てプラスチックを禁止すべきか」は、どちらの立場でも根拠が書けるので、自由英作文のお題として使いやすいのです。
3つ目は、理科と社会の両方の言葉が出ること。分解、微粒子、食物連鎖といった科学の語と、条例、条約、経済といった社会の語が1本の文章に混ざるので、語彙力を試すのにも向いています。
先輩からのひと言
プラスチックの長文は「便利さの代償」という構図で書かれることが多いです。前半でプラスチックの利点(軽い、安い、衛生的)を認めた後、However で問題に切り替わります。「筆者はプラスチックそのものを敵にしているのか、使い捨ての習慣を問題にしているのか」を見分けると、内容一致で迷いません。
3分でわかる背景知識
作った量と、海に流れ出る量
国連環境計画(UNEP)によると、世界では年間およそ4億トンのプラスチックが生産され、年間およそ1,100万トンが海に流れ出ているとされます(UNEP、2025年)。そして、これまでに作られたプラスチックのうちリサイクルされたのは約9%にすぎないとされています。残りは燃やされるか、埋められるか、環境の中に残っています。
太平洋には、海流によってごみが集まる「太平洋ごみベルト」(Great Pacific Garbage Patch)があります。2018年に科学誌 Scientific Reports に発表された調査では、その面積は約160万平方キロメートル(フランスの約3倍)と推定されました。浮いているプラスチックは約1.8兆個。しかも重さで見ると、少なくとも46%、つまり半分近くが捨てられた漁網だったとされています。
マイクロプラスチックの正体
- microplastics(マイクロプラスチック):大きさが5ミリ以下のプラスチックの粒。大きなごみが太陽の光や波で砕けてできるほか、洗顔料の粒や合成繊維の服から出る細かい繊維も含まれます。
- 海の生き物が餌と間違えて食べ、食物連鎖を通じて人の食卓にも届くのではないか、と心配されています。ただし人の健康への影響は研究の途中で、長文でも「まだ分かっていない」と慎重に書かれることが多いです。
- biodegradable(生分解性の):微生物によって分解される性質。ただし「自然の海の中でどれくらいの期間で分解されるか」は条件によって大きく違うため、万能の解決策ではありません。
レジ袋の有料化から、国際条約の交渉へ
日本では2020年7月1日から、全国の小売店でプラスチック製のレジ袋の有料化が義務づけられました。「袋いりますか」が当たり前になったのは、この日からです。1枚あたり数円という小さな負担でも、行動を大きく変えられる、という例として英作文でも使えます。
世界では、プラスチック汚染を止めるための法的拘束力のある国際条約(plastics treaty)の交渉が続いています。2024年11〜12月に韓国の釜山で、2025年8月にはスイスのジュネーブで会議が開かれました。しかし、生産量そのものを制限するかどうかなどをめぐって意見がまとまらず、2026年9月時点でまだ合意には至っていません。「作る量を減らす」のか「捨て方を変える」のか。この対立軸は、長文でも英作文でも中心になります。
このテーマの必修時事英語
語カードをタップすると、意味・例文・音声が見られます。「ごみの種類」「汚染の場所」「対策」の3グループに分けて覚えると、長文の流れに沿って思い出せます。
プラスチックごみ・海洋汚染の必修語24語
- 環境初級 plastic pollution プラスチック汚染
- 環境中級 microplastics マイクロプラスチック
- 環境中級 single-use plastic 使い捨てプラスチック
- 環境中級 landfill 埋め立て処分場、ごみの埋め立て
- 環境中級 illegal dumping 不法投棄
- 環境初級 food waste 食品ロス、食品廃棄物
- 環境中級 e-waste 電子ごみ、電子廃棄物
- 環境初級 recycling リサイクル、再生利用
- 環境上級 circular economy 循環型経済、サーキュラーエコノミー
- 環境初級 zero waste ゼロ・ウェイスト、ごみゼロ
- 環境上級 biodegradable 生分解性の、自然に分解される
- 環境上級 plastics treaty プラスチック条約
- 環境上級 extended producer responsibility 拡大生産者責任
- 環境上級 marine protected area 海洋保護区
- 環境上級 ocean acidification 海洋酸性化
- 環境中級 coral reef サンゴ礁
- 環境初級 ecosystem 生態系
- 環境初級 food chain 食物連鎖
- 食中級 overfishing 乱獲、獲り過ぎ
- 環境上級 marine heat wave 海洋熱波
- 環境上級 environmental degradation 環境悪化、環境破壊
- 環境上級 greenwashing グリーンウォッシュ、見せかけの環境配慮
- 環境中級 sustainable development 持続可能な開発
- 環境中級 carbon footprint カーボンフットプリント、炭素の足跡
長文でよく出る論点:禁止か、課金か、リサイクルか
プラスチックの英作文は「プラスチックは悪いか」ではなく「どう減らすか」で意見が分かれます。下の論点は「使い捨てプラスチックを規制で減らすべきか」という軸で整理しています。自分の立場の理由を2つ、反対側の論点を1つ認めてから反論する型が定番です。
使い捨てプラスチックの規制をめぐる論点
規制を強めるべき
- 海に流れ出たプラスチックは回収がほぼ不可能なので、出す量そのものを減らすしかない
- レジ袋の有料化のように、小さな負担でも人々の習慣を大きく変えられる
- リサイクル率は低く、「リサイクルすればよい」という考えだけでは減らない
- 使い捨てをやめることで、資源を繰り返し使う循環経済への転換が進む
- 海の生き物や観光、漁業への被害を防ぐことは、長い目で見れば経済的にも得である
規制には限界がある
- プラスチックは軽くて衛生的で、医療や食品の保存には欠かせない
- 紙や布の代わりの製品も、作るときに水やエネルギーを多く使い、必ずしも環境に良いとは限らない
- 一国だけで禁止しても、海のごみは国境を越えて流れてくるため効果が限られる
- 急な禁止は小さな店や低所得の家庭に負担を押しつけることになる
- 問題の中心は「プラスチック」ではなく「捨て方」であり、回収と処理の仕組みを整えるほうが現実的だ
自由英作文で使える表現
プラスチックのお題では、「reduce(減らす)」「reuse(繰り返し使う)」「recycle(再生利用する)」の3R を並べて書くと構成がきれいになります。音声で3回まねして、手が勝手に動く状態にしておきましょう。
プラスチックごみ・海洋汚染の英作文フレーズ
Plastic is cheap, light and convenient, which is exactly why it is so hard to give up.
プラスチックは安くて軽くて便利で、それこそがまさに手放すのが難しい理由だ。
which is exactly why ~ で「利点が問題の原因」という皮肉な構図が作れる。
Millions of tons of plastic waste end up in the ocean every year.
毎年、何百万トンものプラスチックごみが最終的に海に流れ着く。
end up in(最終的に~に行き着く)は環境系の定番動詞。
Once plastic enters the sea, it breaks down into tiny pieces that are almost impossible to remove.
いったん海に入ったプラスチックは、取り除くことがほぼ不可能な小さな破片に砕ける。
Once S V(いったん~すると)。break down into で「分解して~になる」。
Charging for plastic bags has encouraged many shoppers to bring their own.
レジ袋を有料にしたことで、多くの買い物客がマイバッグを持参するようになった。
動名詞主語+現在完了で「対策とその結果」を1文で。
Recycling alone cannot solve the problem because only a small share of plastic is actually recycled.
実際にリサイクルされるプラスチックはごく一部なので、リサイクルだけでは問題を解決できない。
alone を名詞の後ろに置くと「~だけでは」。a small share of(~のごく一部)も便利。
The most effective solution is to produce less plastic in the first place.
最も効果的な解決策は、そもそもプラスチックを作る量を減らすことだ。
in the first place(そもそも)で「根本対策」を示せる。
Alternatives such as paper bags are not always better for the environment.
紙袋などの代替品が、必ずしも環境により良いとは限らない。
not always(必ずしも~ない)で慎重派の根拠を出せる。
Companies should be held responsible for the packaging they put on the market.
企業は、自らが市場に出す包装に対して責任を負わされるべきだ。
be held responsible for(~の責任を問われる)。拡大生産者責任の考え方。
Small changes in our shopping habits can make a big difference when millions of people make them.
買い物の習慣の小さな変化も、何百万人もの人が実行すれば大きな違いを生む。
個人の行動を擁護する定番。when 節で「条件」を添える。
In my opinion, the real problem is not plastic itself but our throwaway culture.
私の意見では、本当の問題はプラスチックそのものではなく、私たちの使い捨ての文化だ。
not A but B の締め。itself で「そのもの」を強調。
オリジナル長文にチャレンジ
共通テスト〜国公立二次レベルの書き下ろし長文です。まず訳を隠して1回読み、「筆者が一番問題だと考えているのは何か」を一言でメモしてからクイズに進んでください。
The Bag That Cost a Few Yen共通テスト〜国公立二次
In July 2020, something small changed at every convenience store in Japan. Shoppers who wanted a plastic bag had to pay for it, usually just a few yen. Many people complained at first. Within months, however, carrying a reusable bag had become an ordinary habit, and the number of plastic bags handed out fell sharply. A tiny price, it turned out, could change the behavior of an entire country.
2020年7月、日本のすべてのコンビニで小さな変化が起きた。レジ袋がほしい買い物客は、たいてい数円ではあるが、代金を払わなければならなくなったのだ。最初は多くの人が文句を言った。しかし数か月のうちに、繰り返し使える袋を持ち歩くことはごく普通の習慣になり、配られるレジ袋の数は大きく減った。ほんのわずかな値段が、国全体の行動を変えられることが分かったのである。
The bag charge is popular with policymakers for a simple reason: it is easy to see. Plastic pollution as a whole is much harder to picture. According to the United Nations Environment Programme, roughly 400 million tons of plastic are produced every year, and about 11 million tons of it enter the ocean. Only about nine percent of all the plastic ever made has been recycled. The rest has been burned, buried, or left somewhere in the environment.
レジ袋の有料化が政策を決める人々に人気なのは、単純な理由による。効果が目に見えやすいのだ。それに比べて、プラスチック汚染の全体像はずっと思い描きにくい。国連環境計画によると、毎年およそ4億トンのプラスチックが生産され、そのうち約1,100万トンが海に流れ込んでいる。これまでに作られたすべてのプラスチックのうち、リサイクルされたのは約9%にすぎない。残りは燃やされ、埋められ、あるいは環境のどこかに置き去りにされてきた。
Once in the sea, plastic does not disappear. Sunlight and waves break it into pieces smaller than a grain of rice, known as microplastics, which are eaten by fish and other animals and may travel up the food chain. Cleaning them up is nearly impossible, which is why many scientists argue that the only real solution is to produce and use less plastic in the first place.
いったん海に入ると、プラスチックは消えてなくならない。太陽の光と波がそれを米粒より小さな破片に砕く。マイクロプラスチックとして知られるそれらは、魚などの動物に食べられ、食物連鎖を上っていく可能性がある。それらを取り除くのはほぼ不可能であり、だからこそ多くの科学者は、唯一の本当の解決策は、そもそもプラスチックを作る量と使う量を減らすことだと主張する。
This is exactly where governments disagree. Some countries want an international treaty that limits how much plastic is made; others prefer to focus on better recycling and waste collection. Negotiations in 2024 and 2025 ended without an agreement. Meanwhile, that small charge for a plastic bag reminds us of something important: people are more willing to change than we often assume, as long as the change is simple and everyone does it together.
まさにここで、各国政府の意見が分かれる。プラスチックの生産量を制限する国際条約を望む国もあれば、リサイクルやごみの回収の改善に力を入れたい国もある。2024年と2025年の交渉は、合意のないまま終わった。その一方で、レジ袋にかかるあの小さな代金は、大切なことを思い出させてくれる。変化が単純で、みんなが一緒に取り組むものである限り、人は私たちが思っているよりも変わる気があるのだ、ということを。
語句
- hand out配る、手渡す
- it turned out結局~だと分かった(挿入)
- policymaker政策を決める人、政策立案者
- picture(動詞)思い描く、想像する
- a grain of rice米粒(grain は「一粒」)
- travel up the food chain食物連鎖を上っていく
- in the first placeそもそも、最初の段階で
- treaty条約
- be willing to ~~する気がある、進んで~する
- as long as~する限り(条件)
長文の理解度チェック
Q1第1段落によると、レジ袋の有料化の後に起きたことは何ですか。
Within months, however, carrying a reusable bag had become an ordinary habit, and the number of plastic bags handed out fell sharply と一致します。however の後ろに変化が書かれています。
Q2第2段落で、筆者がレジ袋の有料化が政策として人気だと述べる理由は何ですか。
for a simple reason: it is easy to see とあります。コロンの後ろが理由の具体的な中身です。
Q3第3段落の内容と一致するものはどれですか。
the only real solution is to produce and use less plastic in the first place と一致します。nearly impossible(ほぼ不可能)を「可能」と読み違えないように。
Q4最終段落で、筆者がレジ袋の小さな代金から引き出している教訓は何ですか。
people are more willing to change than we often assume, as long as the change is simple and everyone does it together が答えです。as long as の条件までが教訓に含まれています。
ここで差がつく:言い換えと誤読ポイント
| 本文の表現 | 設問・選択肢での言い換え | 注意点 |
|---|---|---|
| single-use | disposable / used only once and thrown away | 「1回使ったら捨てる」。single は「独身」ではない |
| break down | decompose / be broken into smaller pieces | 「故障する」「泣き崩れる」の意味もあるので文脈で判断 |
| dispose of | throw away / get rid of | of を忘れない。disposal は名詞 |
| debris / litter | waste scattered in the environment | debris は「がれき」、litter は「ポイ捨てごみ」 |
| circular economy | a system in which materials are reused instead of thrown away | 「循環」は「丸い」から。図で出ることも |
| contaminate | pollute / make impure | pollute とほぼ同じ。contamination は名詞 |
plastic は形容詞にもなる
a plastic bag の plastic は「プラスチック製の」という形容詞。plastic surgery(形成手術)や the brain is plastic(脳は柔軟に変化する)のように、「形を変えられる」という元の意味で出ることもあります。「プラスチック」で意味が通らなかったら、この元の意味を思い出しましょう。
「人体への影響」は断定しない
マイクロプラスチックが人の健康に害を与えるかどうかは、研究の途中です。長文でも may / could / is thought to のような慎重な表現で書かれます。選択肢に「健康に深刻な害を与えることが証明された」のような断定があれば、本文と照らして疑ってください。
ツッコミどころ・意外な雑学
- 太平洋ごみベルトの2018年の調査では、重さで見ると全体の半分近く(少なくとも46%)が捨てられた漁網でした。ストローやレジ袋のイメージが強い海のごみですが、重さで一番効いているのは「漁業のごみ」なのです。
- 同じ調査では、浮いているプラスチックの個数の9割以上がマイクロプラスチックなのに、重さでは全体の1割未満でした。「数」で見るか「重さ」で見るかで景色が変わる、というのは資料問題で狙われるポイントです。
- レジ袋の有料化は日本では2020年からですが、義務づけられたのは「1枚1円以上」で、値段は店が決めます。つまり国のルールが決めたのは、ほぼ「無料をやめる」ことだけ。それだけで習慣が変わったのだから、値段の大きさより「タダではない」という一線が効いたのかもしれません。
- 「作られたプラスチックのうちリサイクルされたのは約9%」という数字は、逆に言えば9割以上が燃やされたか、埋められたか、どこかに残っているということ。分別してごみ箱に入れた後の行き先まで想像するのが、時事英語の読み手の姿勢です。
ちなみにこのページの数字は、すべて確認できたものだけを載せています。ごみの話でいい加減な数字を出したら、それこそ「情報のポイ捨て」ですからね。
よくある質問
自由英作文で「使い捨てプラスチックを禁止すべきか」と聞かれたら、どちらが書きやすいですか?
「段階的に減らすべき」という条件つき賛成が一番書きやすいです。理由は「海に出たら回収できない」「小さな負担でも習慣は変わる」の2つ。反対側の「医療や食品には必要」を一度認めてから、「だからこそ不要な使い捨てに絞って減らす」と返すと、バランスのよい答案になります。
garbage、trash、waste、litter はどう使い分けますか?
garbage と trash は主にアメリカ英語の日常語で「ごみ」。waste はやや硬い語で「廃棄物」全般、plastic waste のように使います。litter は「ポイ捨てされた散らかったごみ」。英作文では plastic waste が最も無難です。
このテーマとセットで出やすい分野はありますか?
気候変動、生物多様性(海の生き物への影響)、食料問題(漁業)、そしてSDGsの目標12「つくる責任 つかう責任」と目標14「海の豊かさを守ろう」です。関連トピックのページもあわせて読むと、1本の長文で話題が移っても慌てません。
あわせて読みたい
今日このページを読んだあと、コンビニで「袋いりますか」と聞かれたら、一度だけ英語で考えてみてください。No, thank you. I have my own bag. と自然に口から出たら、もう立派な時事英語の使い手です。