コンビニのおにぎりの棚、夜になると値引きシールが貼られていますよね。あのシール1枚の向こう側には、世界の飢餓、温室効果ガス、農家の高齢化まで、壮大な話がつながっています。
食べ物の話は、誰にとっても身近で、しかも環境・経済・技術・倫理にまたがる。入試の出題者から見ると、これほど「使いやすい」テーマはなかなかありません。
なぜ食料問題は入試に出るのか
まず、数字と矛盾がはっきりしていること。「飢えている人が大勢いるのに、食べ物は大量に捨てられている」という対比は、長文の導入にぴったりで、However や yet で論が展開しやすいのです。
次に、原因と解決策の説明文になりやすいこと。なぜ捨てられるのか、どうすれば減らせるのかを順に説明する文章は、段落ごとの要旨をつかむ練習に最適で、要約問題や段落整序問題の素材になります。
さらに、代替肉や昆虫食のような新しい技術と、それへの抵抗感もセットで論じられます。「技術で解決できるのか、それとも消費者の意識が変わるべきか」という問いは、自由英作文の定番です。
先輩からのひと言
食料問題の長文で最も狙われるのは「問題は量が足りないことではなく、届け方や分け方にある」という論点です。この一文を知っているだけで、主旨を選ぶ問題の正答率がぐっと上がります。
3分でわかる背景知識
飢餓と大量廃棄、数字で見る「矛盾」
- 国連機関の報告書(SOFI 2026)によると、2025年に飢餓に直面した人は約6億4,500万人、世界人口の約7.8%。前年より約1,400万人減り、3年続けて下がりました。
- 国連環境計画(UNEP)の報告書(2024年発表)によると、2022年に家庭・小売・外食で捨てられた食品は約10億5,000万トン。消費者が手にできる食品の約19%にあたります。
- これとは別に、収穫後から小売に届くまでの段階で世界の食料の約13%が失われていると、国連食糧農業機関(FAO)は推計しています。
- UNEPの報告書では、捨てられた食品の約60%が家庭から出ていました。つまり「捨てているのはお店」だけではないのです。
英語では、生産や流通の途中で失われる分を food loss、小売や家庭で捨てられる分を food waste と分けて呼ぶことが多いです。日本語の「食品ロス」は両方をまとめて指すことがあるので、英文ではどちらの意味かに注意しましょう。
日本の数字:自給率と食品ロス
日本のfood self-sufficiency rate(食料自給率)は、カロリーベースで2025年度に37%。一方、生産額ベースでは66%です。同じ国の同じ年でも、何を基準にするかで数字がこれほど変わります。
日本の食品ロスは2024年度に約461万トンで、推計を始めた2012年度以降で最少になりました。内訳は家庭系が約224万トン、事業系が約237万トンです。2023年度には事業系が初めて家庭系を下回りましたが、2024年度は再び事業系のほうが多くなりました。お店と家庭、どちらか一方だけの問題ではないのです。
未来のタンパク質:代替肉と昆虫食
2020年12月、シンガポールは動物の細胞を培養して作る肉(cultured meat)の販売を世界で初めて承認しました。国土が狭く食料の多くを輸入に頼る国ならではの、食料安全保障の戦略でもあります。
昆虫食も真剣な研究テーマです。FAOが2013年に出した報告書では、食用にされてきた昆虫は1,900種以上、昆虫を伝統的に食べている人は少なくとも20億人と推計されています。
このテーマの必修時事英語
食料の語は「生産」「流通」「消費」「新技術」の4グループに分けて覚えると、長文の中でどの段階の話をしているかがすぐ分かります。
食料問題・フードロス・代替肉の必修語30語
- 食中級 food security 食料安全保障
- 食中級 food self-sufficiency rate 食料自給率
- 食中級 food loss 食品ロス、フードロス
- 環境初級 food waste 食品ロス、食品廃棄物
- 食中級 best-before date 賞味期限
- 食中級 use-by date 消費期限
- 食中級 food bank フードバンク
- 医療上級 malnutrition 栄養失調、栄養不良
- 紛争上級 famine warning 飢饉警告
- 食中級 crop failure 凶作、作物の不作
- 食中級 poor harvest 不作、凶作
- 環境中級 crop yields 作物の収量、収穫量
- 災害中級 drought 干ばつ、日照り、(長期の)不足
- 食中級 food inflation 食品価格の高騰、食料品インフレ
- 食中級 fertilizer prices 肥料価格
- ビジネス中級 supply chain 供給網、サプライチェーン
- 食上級 grain export deal 穀物輸出合意
- 食中級 rice shortage 米不足、コメ不足、米騒動
- 食中級 aging farmers 農業従事者の高齢化、高齢農家
- 食中級 abandoned farmland 耕作放棄地、荒廃農地
- 食中級 smart agriculture スマート農業
- 食上級 genome-edited food ゲノム編集食品
- 食中級 genetically modified crops 遺伝子組み換え作物
- 食中級 plant-based meat 代替肉、植物肉、大豆ミート
- 食上級 cultured meat 培養肉
- 環境上級 livestock emissions 家畜由来の温室効果ガス排出
- 食中級 overfishing 乱獲、獲り過ぎ
- 食上級 ultra-processed food 超加工食品
- 食中級 food labeling 食品表示
- 食中級 edible insects 食用昆虫、昆虫食
長文でよく出る論点:代替肉は救世主か
代替肉や培養肉は、賛否がきれいに分かれる論点です。英作文では「環境」と「食の安全・文化」のどちらを重視するかで立場を決めると、理由がぶれません。
代替肉・新しい食料技術のメリットと課題
メリット
- 家畜を育てるより、土地や水などの資源を節約できる可能性がある
- 畜産に伴う温室効果ガスの排出を減らせる可能性がある
- 動物を殺さずに肉を食べられるため、動物福祉の面で支持される
- 輸入に頼る国でも、国内で安定してタンパク質を生産しやすくなる
- 天候や感染症の流行に左右されにくい生産方法になりうる
課題
- 製造コストが高く、まだ一般の食肉より高価なことが多い
- 新しい技術に対する安全性への不安や、心理的な抵抗感が根強い
- 工場での生産に大量のエネルギーを使えば、環境面の利点が小さくなる
- 畜産業や漁業で働く人々の仕事や地域の文化に影響が出る
- 技術だけでは、貧困や紛争による飢餓は解決できない
フードロス対策の論点もセットで
フードロスについては「値引き販売やfood bankの活用」「賞味期限表示の見直し」「必要な分だけ買う消費者の意識」が三大解決策です。反論としては「食品の安全のために一定の廃棄はやむを得ない」「寄付の仕組みには責任の問題がある」が出てきます。
自由英作文で使える表現
食料の英作文は、身近な具体例(コンビニ、給食、家の冷蔵庫)を1つ入れると、一気に説得力が出ます。
食料問題の英作文フレーズ
Although enough food is produced worldwide, millions of people still go hungry.
世界全体では十分な食料が生産されているにもかかわらず、今も何百万人もの人々が飢えている。
Although で矛盾を示す導入文。go hungry(飢える)は自然な言い方。
A large amount of edible food is thrown away every day.
毎日、大量の食べられる食品が捨てられている。
food は数えられない名詞なので a large amount of を使う。
Many consumers confuse best-before dates with safety deadlines.
多くの消費者は、賞味期限を安全の期限と混同している。
confuse A with B(AとBを混同する)は語法問題でも頻出。
Supermarkets could reduce waste by selling products near their expiration dates at lower prices.
スーパーは、期限が近い商品を安く売ることで廃棄を減らせるだろう。
could で控えめな提案に。by -ing で手段を示す。
Food banks play an important role in passing surplus food on to people in need.
フードバンクは、余った食品を困っている人々に届けるうえで重要な役割を果たしている。
play an important role in -ing は万能の型。pass A on to B も便利。
Buying only what we need is the simplest way to cut food waste at home.
必要なものだけを買うことが、家庭の食品ロスを減らす最も簡単な方法だ。
個人ができる対策を書くときの結論文に。
Plant-based meat could help reduce the environmental impact of livestock farming.
植物由来の代替肉は、畜産の環境への影響を減らす助けになりうる。
help ~(原形)の形。impact of A on B も覚えておく。
However, many people are still reluctant to eat meat grown in a laboratory.
しかし、実験室で育てられた肉を食べることに、多くの人はまだ抵抗がある。
be reluctant to ~(~したがらない)は反論を書くときに便利。
Relying heavily on imported food makes a country vulnerable to sudden price rises.
輸入食品に大きく頼ることで、国は急な価格上昇の影響を受けやすくなる。
vulnerable to(~に弱い)は食料安全保障の必須語。
Food security depends not only on how much we produce but also on how fairly we distribute it.
食料安全保障は、どれだけ生産するかだけでなく、それをどれだけ公平に分配するかにもかかっている。
not only A but also B で「量より分配」の論点をまとめる決めの一文。
オリジナル長文にチャレンジ
共通テスト〜国公立二次レベルの書き下ろし長文です。各段落が「問題提起→原因→具体例と対策→新技術と結論」の順になっていることを意識して読んでみてください。
Why Good Food Ends Up in the Trash共通テスト〜国公立二次
It sounds like a contradiction. According to a UN report, about 645 million people faced hunger in 2025, yet more than one billion tonnes of food were wasted in 2022 by households, shops, and restaurants. The world does not simply lack food. In many places, the real problem is that food fails to reach the people who need it most.
それは矛盾しているように聞こえる。国連の報告書によると、2025年には約6億4,500万人が飢餓に直面したが、その一方で2022年には、家庭や店、飲食店によって10億トンを超える食品が捨てられた。世界は単に食料が足りないわけではない。多くの場所で本当の問題となっているのは、食料がそれを最も必要とする人々に届いていないことなのである。
Where the food disappears depends on the country. In lower-income regions, crops are often lost soon after the harvest because of poor roads, a lack of cold storage, or pests. In wealthier countries, much more is thrown away at the end of the chain. Supermarkets remove products that look imperfect, and households buy more than they can actually eat.
食料がどこで消えていくのかは、国によって異なる。低所得の地域では、道路の悪さや冷蔵保管の設備の不足、害虫のせいで、作物が収穫後まもなく失われることが多い。より豊かな国々では、流通の最後の段階ではるかに多くが捨てられている。スーパーは見た目が不完全な商品を棚から下げ、家庭は実際に食べきれる以上の量を買ってしまう。
Confusing labels make the situation worse. Many consumers treat a best-before date as if it were a safety deadline, although it only indicates how long the food will stay at its best quality. As a result, perfectly edible products are discarded every day. Some shops now sell items near their dates at a discount, and food banks collect surplus food and pass it on to families in need.
わかりにくい表示が、状況をさらに悪くしている。多くの消費者は、賞味期限をまるで安全の期限であるかのように扱うが、それは食品がどのくらいの期間おいしさを保つかを示しているにすぎない。その結果、まったく問題なく食べられる商品が毎日捨てられている。現在では、期限が近い商品を値引きして売る店もあり、フードバンクは余った食品を集めて、困っている家庭に届けている。
At the same time, scientists are searching for new ways to produce protein with fewer resources. Plant-based meat is already common in many supermarkets, and in 2020 Singapore became the first country to approve the sale of meat grown from animal cells. These technologies may help, but they will not end hunger by themselves. Food security depends not only on how much we produce, but also on how fairly and carefully we share it.
同時に、科学者たちは、より少ない資源でタンパク質を生産する新しい方法を探している。植物由来の代替肉はすでに多くのスーパーでよく見かけるようになり、2020年にはシンガポールが、動物の細胞から育てた肉の販売を承認した最初の国となった。こうした技術は助けになるかもしれないが、それだけで飢餓がなくなるわけではない。食料安全保障は、私たちがどれだけ生産するかだけでなく、それをどれだけ公平に、そして大切に分け合うかにもかかっているのである。
語句
- contradiction矛盾
- yet(接続詞)それなのに、しかし
- fail to reach~に届かない(fail to ~ は「~しない・できない」)
- cold storage冷蔵保管、冷蔵設備
- treat A as if it were BAをまるでBであるかのように扱う(仮定法)
- edible食べられる、食用の
- discard捨てる(throw away の硬い言い方)
- surplus余った、余剰の
- in need困っている、援助を必要としている
- by themselvesそれだけで、単独で
長文の理解度チェック
Q1第1段落で筆者が「本当の問題」としているものはどれですか。
The world does not simply lack food. の後で、the real problem is that food fails to reach the people who need it most と述べています。not simply A(単にAではない)の後ろに本当の主張が来る型です。
Q2第3段落の perfectly edible に最も意味が近いものはどれですか。
edible は「食べられる」。賞味期限を過ぎても安全に食べられるのに捨てられる、という文脈です。delicious(おいしい)と混同しないように。
Q3第2段落の内容と一致するものはどれですか。
In lower-income regions, crops are often lost soon after the harvest because of poor roads, a lack of cold storage, or pests. と一致します。豊かな国では流通の最後で捨てられるので、1は逆です。
Q4この文章の主旨として最も適切なものはどれですか。
最終文の not only how much we produce, but also how fairly and carefully we share it が主旨です。代替肉は they will not end hunger by themselves とされているので、1は本文と逆です。
ここで差がつく:言い換えと誤読ポイント
| 本文の表現 | 設問・選択肢での言い換え | 注意点 |
|---|---|---|
| hunger | not having enough food / undernourishment | hungry(空腹の)より深刻な「慢性的な飢え」 |
| food security | reliable access to enough safe food | security は「警備」ではなく「安定して確保できること」 |
| throw away | discard / dispose of / waste | waste は名詞でも動詞でも使う |
| best-before date | the date until which food is at its best quality | use-by date は「安全に食べられる期限」 |
| plant-based meat | meat alternatives made from plants | cultured meat(細胞から培養)とは別物 |
| surplus food | leftover food / excess food | surplus は貿易黒字(trade surplus)でも出る |
food security は「食品の安全」ではない
food security は「すべての人が十分で安全な食料を安定して手に入れられる状態」、つまり食料安全保障です。食品そのものの安全(食中毒や異物混入の防止)は food safety。長文で両方が出たら、security=量と入手、safety=安全性、と区別しましょう。
数字の比較問題は「何の何%か」を確認
「19%が捨てられている」とあっても、それが「世界の生産量の19%」なのか「消費者が手にできる食品の19%」なのかで意味が変わります。入試ではこのズレを突いた選択肢がよく作られるので、of の後ろまで必ず読みましょう。
ツッコミどころ・意外な雑学
- 日本の食料自給率は、カロリーベースだと37%、生産額ベースだと66%(どちらも2025年度)。「日本の自給率は低い?高い?」と聞かれたら、まず「どっちのベースで?」とツッコむのが正解です。
- 日本の食品業界には、製造日から賞味期限までの期間を3つに分け、最初の3分の1までに小売店へ納品するという「3分の1ルール」と呼ばれる商慣習があります。まだ十分食べられる期間があるのに、店に並ぶ前に行き場を失う食品が出る一因として議論されてきました。
- 世界初の培養肉の販売承認は2020年12月のシンガポール。最初の販売先は、スーパーではなく同国のレストランでした。未来の食べ物は、まずシェフの手を通ってデビューしたわけです。
- FAOの2013年の報告書によると、世界で最もよく食べられている昆虫のグループは甲虫類。「昆虫食」と聞くとコオロギを思い浮かべがちですが、実はカブトムシの仲間が主役でした。
よくある質問
food loss と food waste は、英作文ではどちらを使えばいいですか?
家庭やお店で捨てられる話なら food waste、生産や流通の途中で失われる話なら food loss が基本です。迷ったら both food loss and food waste とまとめて書いても自然です。
代替肉のお題では、賛成と反対どちらが書きやすいですか?
賛成なら「環境負荷の削減」「動物福祉」、反対なら「価格の高さ」「安全性への不安や食文化への影響」が書きやすい理由です。どちらでも、根拠となる具体例を1つ添えると得点が安定します。
日本の食料問題についても書けたほうがいいですか?
書けると強いです。食料自給率が低いこと、農家の高齢化、食品ロスの削減の取り組みなど、日本の具体例を1つ入れると、自由英作文の内容点がぐっと上がります。
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今夜、冷蔵庫を開けたら、賞味期限のラベルを1つだけ見てみてください。best-before なのか use-by なのか。英語でそう考えた瞬間から、食料問題はもう教科書の中の話ではなくなります。