SDGs と聞いて「もう知ってる、17個のカラフルなやつでしょ」と思った人。その知識、入試ではスタートラインです。長文で問われるのは、目標の中身より、目標をめぐる議論 のほうだからです。
このページでは、SDGs がどう生まれたのか、2030年の期限を前にどこまで進んでいるのか、そして「SDGs ウォッシュ」のような批判まで、先輩が後輩に渡すノートの形でまとめました。自由英作文の「万能ネタ帳」としても使えます。
3行でわかる SDGs
1. 2015年に国連で採択された、2030年までの17の目標と169のターゲット。 2. 合言葉は「誰一人取り残さない(leave no one behind)」で、先進国も対象。 3. 2026年の国連の報告では、順調または一定の進展があるターゲットは36%にとどまる。
なぜ入試に SDGs が出るのか
1つめの理由は、あらゆるテーマの「まとめ役」 だからです。貧困、飢餓、教育、ジェンダー、水、エネルギー、気候変動。SDGs はこれらを1つの枠組みで結ぶので、どの環境・社会の長文にも顔を出します。
2つめは、理想と現実のギャップ を論じやすいこと。「目標は立派だが達成は遅れている」「企業は本気か、見せかけか」といった対比は、筆者の主張を読み取る設問の材料にぴったりです。
3つめは、高校生にもなじみのある言葉なので、自由英作文のお題にしやすいこと。「あなたが最も重要だと思う目標は何か、理由とともに述べよ」という形は、難関国公立・私大で定番の出し方の1つです。
3分でわかる背景知識:「誰一人取り残さない」の15年計画
前身は8つの目標だった
SDGs には前身があります。2000年の国連ミレニアム・サミットをもとにまとめられた ミレニアム開発目標(MDGs) で、2015年を期限に、主に途上国の貧困や教育などの8つの目標を掲げていました。
その後継として、2015年9月25日、国連に加盟するすべての国が「持続可能な開発のための2030アジェンダ」を採択し、その中心が 17の目標と169のターゲット からなる SDGs です。MDGs との大きな違いは、先進国も含めたすべての国が対象 になったことです。
そもそも「持続可能な開発」という考え方は、1987年に国連の委員会がまとめた報告書『Our Common Future(地球の未来を守るために)』で広く知られるようになりました。ざっくり言うと「今の世代の必要を満たしつつ、将来の世代が自分たちの必要を満たす力を奪わない開発」のことです。
期限まであと4年。数字で見る達成状況
| 項目 | 数字 | 出典・年 |
|---|---|---|
| 順調または一定の進展があるターゲット | 36% | 国連 SDGs 報告、2026年 |
| 2015年より後退しているターゲット | 15% | 国連 SDGs 報告、2026年 |
| 極度の貧困の基準(国際貧困ライン) | 1日3.00ドル | 世界銀行、2025年6月改定 |
| 極度の貧困で暮らす人(推計) | 約8億4700万人(世界人口の約10%) | 世界銀行、2024年の推計(2026年3月更新) |
| 飢餓に苦しむ人(推計) | 約6億4500万人(世界人口の7.8%) | 国連 食料安全保障報告、2025年の推計 |
| 日本の SDGs 達成度ランキング | 20位(1位はフィンランド) | 持続可能な開発報告書、2026年 |
2026年の国連の報告では、順調または一定の進展があるターゲットは36%でした。進み方が遅すぎるものが49%、2015年の水準より後退したものが15%です。安全な水やトイレ、保健サービスを使える人が増えるなど前進もある一方、極度の貧困や食料不足の解消は期限に間に合いそうにありません。
日本は2026年の国際的な達成度ランキングで20位でした。2017年の11位をピークに順位を下げており、特にジェンダー平等や気候変動対策などの目標で課題が大きいと評価されています。
このテーマの必修時事英語
SDGs・持続可能な開発の必修語30語
- 環境初級 SDGs 持続可能な開発目標
- 環境中級 sustainable development 持続可能な開発
- 環境中級 sustainability 持続可能性、サステナビリティ
- 社会中級 leave no one behind 誰一人取り残さない
- 社会中級 extreme poverty 極度の貧困、絶対的貧困
- 社会初級 poverty 貧困
- 社会中級 child poverty 子どもの貧困
- 医療上級 malnutrition 栄養失調、栄養不良
- 食中級 food security 食料安全保障
- 食中級 food loss 食品ロス、フードロス
- 環境初級 food waste 食品ロス、食品廃棄物
- 社会中級 gender equality 男女平等、ジェンダー平等
- 社会中級 income inequality 所得格差、所得の不平等
- 教育中級 education gap 教育格差
- 教育上級 inclusive education インクルーシブ教育
- 社会中級 digital divide 情報格差、デジタル・デバイド
- 外交中級 Global South グローバルサウス
- 環境初級 climate change 気候変動
- 環境初級 renewable energy 再生可能エネルギー
- 環境上級 decarbonization 脱炭素化
- 環境中級 net zero ネットゼロ、実質ゼロ
- 環境上級 circular economy 循環型経済、サーキュラーエコノミー
- 環境初級 plastic pollution プラスチック汚染
- 環境上級 biodiversity loss 生物多様性の損失
- 環境中級 Paris Agreement パリ協定
- 環境上級 climate finance 気候資金
- 外交中級 humanitarian aid 人道支援、人道援助
- 環境中級 green jobs グリーン雇用、環境関連の仕事
- 環境上級 greenwashing グリーンウォッシュ、見せかけの環境配慮
- 金融中級 ESG investing ESG投資
development は「開発」だけじゃない
sustainable development の development は、ビルや道路を造る「開発」だけでなく、人々の暮らしや社会の 「発展」 を広く指します。developing countries は「発展途上国」。「開発」とだけ訳すと、教育やジェンダーの話が出てきたときに文脈とずれるので注意しましょう。
長文でよく出る論点:SDGs は本当に役に立っている?
SDGs の評価
評価する声
- 政府・企業・学校・市民が、同じ目標を「共通言語」として話し合えるようになった。
- 先進国も対象にしたことで、「途上国だけの問題」という見方を変えた。
- 貧困・環境・ジェンダーなど、別々に扱われがちな課題のつながりを示した。
- 企業が環境や人権への取り組みを情報公開するきっかけになった。
- 学校教育で取り上げられ、若い世代の関心を高めた。
批判・課題
- 目標とターゲットが多すぎて、優先順位があいまいになっている。
- 法的な拘束力がなく、達成できなくても罰則がない。
- ロゴを使うだけで中身の伴わない「SDGs ウォッシュ」が起きている。
- 経済成長と環境保護のように、目標どうしがぶつかる場合がある。
- 感染症・紛争・異常気象で、2030年の達成は難しくなっている。
自由英作文で使える表現
SDGs のテーマで使える英文
The Sustainable Development Goals were adopted by all UN member states in 2015.
持続可能な開発目標は、2015年にすべての国連加盟国によって採択された。
導入の一文。最初は略さず正式名称を書くのが英文のマナー
The goals aim to leave no one behind, including people in wealthy countries.
目標は、豊かな国の人々も含めて、誰一人取り残さないことをめざしている。
aim to do で「〜することをめざす」
Progress toward many of the goals has been too slow to meet the 2030 deadline.
多くの目標への進展は、2030年の期限に間に合うには遅すぎる。
too A to do で「〜するには A すぎる」
Of all the goals, I believe quality education is the most important because it affects all the others.
すべての目標の中で、質の高い教育が最も重要だと私は考える。なぜなら、それは他のすべての目標に影響するからだ。
「最も重要な目標を選べ」型の答案の書き出しに
Poverty, hunger and climate change are closely linked to one another.
貧困、飢餓、気候変動は互いに密接に結びついている。
be closely linked to は複数の課題をつなぐときの定番
Some companies use the SDG logo without making real changes to their business.
事業に実質的な変化を加えないまま、SDGs のロゴを使う企業もある。
without doing で批判を表す。SDGs ウォッシュの説明に
Governments cannot achieve these goals alone; businesses and citizens also have a role to play.
政府だけではこれらの目標を達成できない。企業や市民にも果たすべき役割がある。
have a role to play で「果たすべき役割がある」
Small actions, such as reducing food waste, can contribute to the goals.
食品ロスを減らすといった小さな行動も、目標の達成に貢献しうる。
contribute to で「〜に貢献する」
Economic growth should not come at the expense of the environment.
経済成長は、環境を犠牲にして得られるものであってはならない。
at the expense of で「〜を犠牲にして」
Even if not all the goals are met by 2030, they provide a useful direction for the future.
たとえ2030年までにすべての目標が達成されなくても、それらは将来への有益な方向性を示している。
Even if で譲歩しつつ、前向きに締める一文
オリジナル長文で力試し
A Map Worth Keeping?共通テスト〜国公立二次レベル(約230語)
In 2015, every member of the United Nations agreed on a list of seventeen goals to be achieved by 2030. They promised to end extreme poverty and hunger, give every child a good education, and protect the planet, all under a simple slogan: leave no one behind. The goals were unusual because they applied not only to poor nations but to rich ones as well.
2015年、国連のすべての加盟国が、2030年までに達成すべき17の目標のリストに合意した。極度の貧困と飢餓をなくし、すべての子どもに良い教育を与え、地球を守ることを、「誰一人取り残さない」という簡潔な合言葉のもとで約束したのである。これらの目標は、貧しい国だけでなく豊かな国にも当てはめられた点で異例だった。
Now that more than two thirds of the time has passed, progress is mixed. Many more people have electricity and internet access than a decade ago. Yet in other areas, such as hunger and inequality, improvement has slowed or even reversed, partly because of a pandemic, wars and extreme weather.
期間の3分の2以上が過ぎた今、進み具合はまちまちだ。10年前に比べて、電気やインターネットを使える人ははるかに多くなった。しかし、飢餓や格差といった他の分野では、改善が鈍ったり逆戻りしたりしており、その一因は感染症の大流行、戦争、異常気象である。
Some critics say the goals were too many and too broad from the start. With seventeen goals and well over a hundred targets, governments can pick the easy ones and quietly ignore the rest. Companies, too, are sometimes accused of printing the colorful logo on their products while changing very little about how they actually operate.
目標は最初から多すぎて範囲が広すぎた、と言う批判的な人々もいる。17の目標と100をゆうに超えるターゲットがあると、政府は簡単なものを選び、残りをこっそり無視することができてしまう。企業もまた、実際の事業のやり方をほとんど変えないまま、製品にカラフルなロゴを印刷していると非難されることがある。
Supporters, however, point out that the goals have given the world a common language. A farmer in Kenya, a city official in Brazil and a high school student in Japan can now discuss the same targets and compare results. Even if not every goal is reached by 2030, a shared map may still be far better than having no map at all.
しかし支持する人々は、目標が世界に共通の言葉を与えたと指摘する。ケニアの農家も、ブラジルの市の職員も、日本の高校生も、今では同じターゲットについて話し合い、結果を比べることができる。たとえ2030年までにすべての目標が達成されなくても、共有された地図があるほうが、地図がまったくないよりもずっと良いのかもしれない。
語句
- to be achieved by 20302030年までに達成されるべき。不定詞の形容詞的用法(受け身)
- all under a simple sloganそれらすべてを1つの簡潔な合言葉のもとで。コロンの後に合言葉が来る
- not only A but B as wellAだけでなくBも。not only A but also B の変形
- Now that ...今や〜なので、〜した今。理由と時を同時に表す接続詞
- progress is mixed進み具合はまちまちだ。良い面と悪い面の両方があることを示す
- reverse逆戻りする、反転する
- well over a hundred100をゆうに超える。well は「かなり」の強調
- be accused of doing〜していると非難される。SDGs ウォッシュの話
- point out that ...〜だと指摘する。However とともに反対側の意見を示す
- far better than having no map at all地図がまったくないよりずっと良い。far は比較級の強調
A Map Worth Keeping? の確認問題
Q1【内容一致】第1段落によると、SDGs が異例だった点はどれですか。
The goals were unusual because they applied not only to poor nations but to rich ones as well. が根拠です。1は every member ... agreed と逆です。
Q2【語彙の言い換え】第2段落の progress is mixed に最も近い意味はどれですか。
mixed は「良いものと悪いものが混ざった」。直後に「電気やネットは増えた」「飢餓や格差は後退」と、両面の具体例が続いています。
Q3【内容一致】第3段落で述べられている批判として正しいものはどれですか。
governments can pick the easy ones and quietly ignore the rest が根拠です。1は too many と逆、3は企業がロゴを印刷していると非難されている、という内容と逆です。
Q4【主旨】筆者の考えに最も近いものはどれですか。
第3段落で批判を紹介したあと、最終段落で However ... common language と a shared map may still be far better than having no map at all と締めくくっています。
ここで差がつく:SDGs の長文の読み方
よく出る言い換えと誤読ポイント
1. goal(目標)、target(具体的なターゲット)、indicator(進み具合を測る指標)は階層が違います。 2. 英語の記事では SDGs とだけ書かず、the UN Sustainable Development Goals や the Global Goals と書くことも多いです。 3. sustainable は「持続可能な」ですが、日常英語では「無理なく続けられる」の意味でも使います(a sustainable pace)。 4. leave no one behind は否定語 no を含む形なので、「誰も置いていかない=全員を対象にする」と肯定的に読み替えましょう。
- greenwashing は環境に良いふりをすること。SDGs に関して見せかけの取り組みをすることを「SDGs ウォッシュ」と呼ぶことがあります。
- the Global South は「グローバルサウス」。主に途上国・新興国をまとめて指す言い方で、地理上の南半球と完全に一致するわけではありません。
- on track は「順調に進んで」、off track は「予定から外れて」。達成状況の文章で頻出です。
- trade-off は「一方を取ると他方を犠牲にする関係」。目標どうしがぶつかる話で出てきます。
ツッコミどころ・意外な雑学
- SDGs の s は小文字。 Sustainable Development Goals の Goals が複数形だから s が小文字なのです。「エスディージーエス」と読むと、英語の先生に静かにツッコまれます。
- SDGs をウェディングケーキで説明するモデルがある。 スウェーデンのストックホルム・レジリエンス・センターが2016年に示した図で、いちばん下の段が水や気候などの「環境」、その上が「社会」、てっぺんが「経済」。土台の環境が崩れたらケーキ全体が倒れる、という発想です。
- 日本の順位は、じつは下がり気味。 国際的な達成度ランキングで、日本は2017年の11位をピークに、2026年は20位。学校や企業でこれだけ SDGs のバッジを見かけるのに……というギャップは、それ自体が英作文のネタになりそうです。
- 「極度の貧困」の基準は物価に合わせて変わる。 世界銀行は2025年6月に国際貧困ラインを1日2.15ドルから3.00ドルに引き上げました。基準が変わると、貧困で暮らす人の数の推計も変わります。統計を読むときは「何を基準にした数字か」を確かめるクセをつけましょう。
よくある質問
「最も重要だと思う SDGs の目標」を英作文で聞かれたら、どれを選ぶと書きやすいですか?
おすすめは「質の高い教育(目標4)」です。教育は貧困・ジェンダー・健康など他の目標にも影響する、という理由が書きやすく、because it affects all the others のように論理を広げられます。具体例として、教育を受けた人は収入が上がりやすく、家族の健康にも気を配れる、といった流れにすると説得力が出ます。
17の目標を全部英語で覚える必要はありますか?
全部を暗記する必要はありません。poverty(貧困)、hunger(飢餓)、education(教育)、gender equality(ジェンダー平等)、clean water and sanitation(安全な水とトイレ)、climate action(気候変動対策)など、長文や英作文でよく使うものを押さえておけば十分です。
SDGs は2030年で終わりですか?
SDGs の期限は2030年です。その後の国際的な目標をどうするかは、これから議論されるテーマです。入試の長文では「期限後を見すえて何を学ぶべきか」という形で論じられることもあるので、現状の課題を押さえておくと役立ちます。