英語多読とは?効果・やり方・始め方の完全ガイド
「英語多読」は、やさしい英語の本を、辞書を使わずに、たくさん楽しく読む学習法です。この記事は多読ベストの「総合案内」です。多読とは何か、なぜ効くのか、どう始めればよいかを一つずつ説明し、くわしい解説記事への道案内もします。
英語多読とは:ひとことで言うと
英語多読(extensive reading、略して ER)は、自分にとってやさしい英語を、大量に、楽しみながら読む学習法です。教科書の英文を一文ずつ日本語に訳していく読み方(精読)とはちがい、多読では「わかる英語をどんどん読んで、英語を英語のまま理解する回路」を育てます。
多読の考え方を体系的にまとめた研究者として有名なのが、リチャード・デイとジュリアン・バンフォードです。2人は1998年の著書『Extensive Reading in the Second Language Classroom』で多読を教室で行う方法を整理し、2002年には「多読指導の10原則」を発表しました。日本では、酒井邦秀さんたちが「100万語多読」と「多読三原則」を広め、学校や図書館で多読が行われるようになりました。
- やさしい:知らない単語がほとんどない英文を読む
- たくさん:1冊ではなく、何十冊・何百冊と読む
- 楽しく:自分で選んだ、おもしろいと思える本を読む
- 速く:訳さず、止まらず、意味をつかみながら読み進める
精読と多読はどうちがう?
学校の授業で中心になるのは「精読」です。むずかしめの英文を、文法を確かめ、辞書を引き、正確に訳します。精読は文の仕組みを理解するのに役立ちますが、1時間に読める量はせいぜい数百語です。
一方、多読では1時間に数千語を読むこともめずらしくありません。たとえば1分に100語のペースで読めば、30分で3,000語です。読む量がけた違いに増えることが、多読のいちばんの特徴です。精読と多読は対立するものではなく、組み合わせると効果が上がります。くわしくは精読と多読の違いと組み合わせ方をごらんください。
多読の効果:研究でわかっていること
多読については、世界中でたくさんの研究が行われています。代表的なものを紹介します。
- 読解力が伸びる:中西貴行さん(Nakanishi, 2015)は、34本の研究(参加者3,942人)をまとめて分析するメタ分析を行い、多読をしたグループとしなかったグループの比較で中程度の効果(d = 0.46)、多読の前後比較ではそれより大きな効果(d = 0.71)を報告しています。d は「効果量」と呼ばれる、効果の大きさを表す数字です。
- 大人ほど効果が出やすい傾向:Jeon & Day(2016)は49本の研究(71サンプル、5,919人)を分析し、読解力への効果は「小〜中程度」で、子どもや中高生より大人のほうが効果が大きく、英語を外国語として学ぶ環境(日本のような EFL 環境)で効果が大きかったと報告しています。
- 読む速さが上がる:日本の大学1年生97人を1年間調べた Beglar, Hunt & Kite(2012)では、多読をしたグループはすべて、精読中心のグループより読む速さが伸びました。2週間に1冊以上読むことが多くの学習者にとって効果的で、読む速さが上がっても理解度は下がっていませんでした。
- 英語への苦手意識が減る:日本の大学生61人を調べた Yamashita(2013)では、多読のあと「英語を読むのは気楽だ」という気持ちが高まり、不安が下がりました。
- 子どもにも効く:フィジーの小学生を対象にした有名な研究(Elley & Mangubhai, 1983)では、各クラスに興味をひく絵本を250冊ずつ配ったところ、8か月後に読解とリスニングの伸びが通常の約2倍になりました。
ただし、単語は「1冊読んだらすぐ覚える」ものではありません。Waring & Takaki(2003)は、1冊のグレーデッド・リーダー(学習者向けにやさしく書かれた本)を読んだだけでは、新しい単語の意味は3か月後にほとんど残らないことを示しました。多読の効果は「大量に読み続けること」で出てきます。研究の一覧は多読研究ライブラリーにまとめています。
多読のルール:10原則と三原則
多読には、うまくいくための「ルール」があります。
- デイとバンフォードの10原則:やさしい本を読む、たくさん読む、自分で選ぶ、速く読む、読むこと自体が楽しみ……など10項目。くわしくは多読の10原則を一つずつ解説。
- 多読三原則:日本で広まった「辞書は引かない」「わからないところは飛ばす」「つまらなければやめる」の3つ。くわしくは多読三原則とその意味・注意点。
どちらにも共通しているのは「やさしい本を、楽しく、たくさん」という考え方です。
多読のやり方:5つのステップ
- ① 自分のレベルを知る:レベル診断で、どのくらいの英語が楽に読めるかを確かめます。
- ② 思っているより1〜2段やさしい本から始める:多読ベストなら L0 Starter や L1 から。「簡単すぎる」くらいがちょうどよいスタートです。
- ③ 辞書を引かずに最後まで読む:わからない語は前後から推測するか、飛ばします。全体の話がわかれば合格です。
- ④ 読んだ語数を記録する:読書記録・100万語メーターで語数を積み上げると、続ける力になります。
- ⑤ 楽に読めるようになったら少しずつ上のレベルへ:同じレベルをたくさん読んでから上がるのがコツです。
最初の1か月の具体的な進め方は今日から始める英語多読:最初の1か月のステップでくわしく説明しています。
何を読めばいい?
多読の素材の中心は、グレーデッド・リーダー(使う単語や文法をレベルごとにしぼった本)と、英語圏の子ども向けの絵本・読み物です。多読ベストでは、イソップ物語・日本の昔話・世界の童話・神話・名作文学・ノンフィクションなどを、レベル0〜6に書き分けた読み物を無料で公開しています。
本の選び方はグレーデッド・リーダーの選び方、無料で読める素材は無料の多読素材ガイドも参考にしてください。
どのくらい読めばいいの?
日本の多読では「まず100万語」が一つの目標としてよく使われます。1分100語で読むと、100万語は約167時間。1日30分なら1年弱です。くわしい計算と語数の数え方は100万語多読への道へ。
デイとバンフォードは「週に1冊」を目安に挙げています。初級者向けの本はとても短いので、どのレベルの人でも現実的な目標です。
多読の効果を高める工夫
- 音声といっしょに読む(聞き読み):リスニング力も同時に伸ばせます。→聞き読みの効果とやり方
- 読む速さを測る:伸びが数字で見えるとやる気が続きます。→WPM の測り方と伸ばし方
- 記録をつける:→読書記録のつけ方
- 単語の扱い方を知る:→わからない単語はどうする?・多読で語彙を増やす
- 音読・シャドーイングと組み合わせる:→シャドーイングと音読
つまずいたときは
「なかなか進まない」「レベルを上げたら読めなくなった」「飽きてしまった」――多読にはよくあるつまずきがあります。多くは「本がむずかしすぎる」ことが原因です。多読でよくある失敗10と対策と多読を続けるコツを読んでみてください。
目的別ガイド
- 試験対策にも効く?→多読は英検・TOEIC・大学入試に効く?
- 学校・塾で取り入れたい→授業で多読を取り入れる方法
- 子どもに読ませたい→子どもの英語多読
- 大人の学び直し→大人の英語多読
- 図書館を活用したい→図書館で多読
- アプリや電子書籍で→多読アプリ・電子書籍
- なぜイソップから?→イソップ物語が多読に向いている理由
- いつか原書を→原書(原文)を読む
- 自己啓発の名著を英語で→自己啓発の古典を英語で読む
- レベルの目安を知りたい→レベルの選び方:YL・語数・98%の目安
まとめ
英語多読は、やさしい英語を、たくさん、楽しく読むことで、英語を英語のまま理解する力を育てる方法です。読解力・読む速さ・英語への自信が伸びることは、多くの研究で確かめられています。むずかしい準備はいりません。まずはレベル診断をして、いちばんやさしいレベルの1話から読んでみましょう。
よくある質問
英語多読は本当に効果がありますか?
多くの研究をまとめたメタ分析(Nakanishi, 2015;Jeon & Day, 2016)で、読解力への効果が確かめられています。日本の大学生を対象にした研究では読む速さの伸びも報告されています。ただし効果が出るには、やさしい本を大量に読み続けることが必要です。
英語が苦手でも多読はできますか?
できます。むしろ苦手な人ほど、思い切りやさしい本から始めるのが大切です。多読ベストのレベル0は1話40〜160語で、中学1年生の最初の単語で読めるように書いています。
1日どれくらい読めばいいですか?
最初は1日10〜15分でかまいません。大切なのは毎日続けることです。慣れてきたら30分を目安にすると、1年ほどで100万語に届くペースになります。
多読だけで英語力は十分ですか?
多読は読む力と英語への慣れを大きく伸ばしますが、文法の確認(精読)、音読、書く・話す練習と組み合わせるとさらに効果的です。多読を学習の「土台」にするイメージです。
お金をかけずに多読できますか?
できます。多読ベストの読み物はすべて無料です。ほかにも図書館や無料サイトで多読用の素材が手に入ります。無料多読サイト・素材の大特集も参考にしてください。
参考文献
- Day, R. R., & Bamford, J. (1998). Extensive Reading in the Second Language Classroom. Cambridge University Press.(邦訳: デイ & バンフォード『多読で学ぶ英語:楽しいリーディングへの招待』松柏社, 2006) ci.nii.ac.jp/ncid/BA35924418
- Day, R., & Bamford, J. (2002). Top ten principles for teaching extensive reading. Reading in a Foreign Language, 14(2), 136–141. doi.org/10.64152/10125/66761
- Bamford, J., & Day, R. R. (Eds.). (2004). Extensive Reading Activities for Teaching Language. Cambridge University Press. ci.nii.ac.jp/ncid/BA68484365
- Nakanishi, T. (2015). A meta-analysis of extensive reading research. TESOL Quarterly, 49(1), 6–37. doi.org/10.1002/tesq.157
- Jeon, E.-Y., & Day, R. R. (2016). The effectiveness of ER on reading proficiency: A meta-analysis. Reading in a Foreign Language, 28(2), 246–265. doi.org/10.64152/10125/66901
- Beglar, D., Hunt, A., & Kite, Y. (2012). The effect of pleasure reading on Japanese university EFL learners’ reading rates. Language Learning, 62(3), 665–703. doi.org/10.1111/j.1467-9922.2011.00651.x
- Yamashita, J. (2013). Effects of extensive reading on reading attitudes in a foreign language. Reading in a Foreign Language, 25(2), 248–263. doi.org/10.64152/10125/66872
- Elley, W. B., & Mangubhai, F. (1983). The impact of reading on second language learning. Reading Research Quarterly, 19(1), 53–67. doi.org/10.2307/747337
- Waring, R., & Takaki, M. (2003). At what rate do learners learn and retain new vocabulary from reading a graded reader? Reading in a Foreign Language, 15(2), 130–163. doi.org/10.64152/10125/66776
- 酒井邦秀 (2002).『快読100万語!ペーパーバックへの道』筑摩書房. ci.nii.ac.jp/ncid/BA57253600
- Nation, I. S. P., & Waring, R. (2019). Teaching Extensive Reading in Another Language. Routledge. doi.org/10.4324/9780367809256
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