やり方・コツ

わからない単語はどうする?推測・飛ばし読み・辞書の使いどころ

多読では「辞書は引かない」がルールですが、知らない単語に出会ったとき、具体的にどうすればよいのでしょうか。この記事では、意味を推測する手順、飛ばしてよい語の見分け方、そして辞書を使ってよい場面を、研究結果もまじえて説明します。

まず大前提:知らない単語が少ない本を選ぶ

知らない単語の扱い方を考える前に、いちばん大切なことがあります。それは知らない単語がほとんど出てこない本を選ぶことです。

研究では、物語を辞書なしで十分に理解するには、本文の語の約98%、つまり50語に1語しか知らない語がない状態が必要だと計算されています(Hu & Nation, 2000。Nation, 2006 による紹介)。知らない語が多すぎる本では、どんなに上手に推測しても理解は追いつきません。「推測できない」「飛ばすと話がわからない」と感じたら、それは技術の問題ではなく、本がむずかしすぎるというサインです(→レベルの選び方)。

知らない単語に出会ったときの3つの選択肢

  • ① 推測する:前後の文や絵から、だいたいの意味を考える
  • ② 飛ばす:意味がわからなくても話がわかるなら、そのまま先へ進む
  • ③ あとで調べる:何度も出てきて気になる語や、話の筋に欠かせない語は、読み終わってから調べる

多読中は、基本的に1か2を使います。3は読み終わってからです。

意味を推測する4つの手順

たとえば次の文で、gnawed という語を知らなかったとします。

The hungry dog lay under the table and gnawed on an old bone for an hour.

  • ① 品詞を考える:dog のあと、on an old bone の前にあるので「動作」を表す語(動詞)らしい
  • ② まわりの語を見る:hungry(おなかがすいた)、old bone(古い骨)、for an hour(1時間)
  • ③ だいたいの意味を当ててみる:「おなかをすかせた犬が、古い骨を1時間……した」→「かじった」くらいの意味だろう
  • ④ 先を読んで確かめる:次の文で bone や teeth が出てくれば、推測が合っていたとわかる

完全に正しい訳語でなくても、「骨をどうにかしていた」くらいわかれば、話は十分に追えます。8割わかればOKという気持ちで読みましょう。

推測のヒントになるもの

  • くり返し:同じ語が何度も出てくると、出てくるたびに意味がはっきりしてくる
  • 言いかえ:直後に「つまり〜」と別の言葉で言いかえていることがある
  • 反対の言葉:but や not のあとに反対の意味の語が来ることがある
  • 絵・挿絵:やさしい本ほど、絵が大きなヒントになる
  • 語の形:un-(〜でない)、-less(〜のない)、-ful(〜に満ちた)などの部品

飛ばしてよい語・気にした方がよい語

飛ばしてよい語

  • 固有名詞:人・町・国の名前。「だれかの名前だ」とわかれば十分
  • 形容詞や副詞のくわしい意味:「何かの色」「何かの感じ」程度でOK
  • 一度しか出てこない語:話の筋にあまり関係しないことが多い
  • 音や鳴き声を表す語:雰囲気がわかれば十分

気にした方がよい語

  • 何度も出てくる語:その話のキーワードの可能性が高い。先を読めばわかることが多いが、どうしても気になるなら読み終わったあとで調べる
  • 話の筋を左右する語:タイトルに入っている語や、結末にかかわる語

多読ベストの読み物には、レベルを超える語を集めた語注(glossary)がついています。読む前にさっと目を通しておくと、キーワードでつまずかずに済みます。

多読で単語はどのくらい覚えられる?研究からわかること

「辞書を引かないと単語が覚えられないのでは?」という疑問はもっともです。研究からわかっていることを紹介します。

  • 1回読んだだけではほとんど残らない:Waring & Takaki(2003)は、日本人学習者15人がグレーデッド・リーダー1冊を読んだあとの単語の定着を調べました。3か月後に意味を覚えていたのは、平均すると25語中1語程度で、8回未満しか出会わなかった語は3か月後に1つも意味が残っていませんでした。
  • ただし「部分的な知識」は育つ:フランス語学習者を1か月追った事例研究(Pigada & Schmitt, 2006)では、調べた133語のうち65%について、つづり・意味・使い方のどこかの知識が伸びていました。特につづりの知識は、少ない出会いでも大きく伸びていました。
  • たくさん読むと伸びは大きくなる:台湾の学習者がグレーデッド・リーダー10冊を音声つきで読んだ研究(Webb & Chang, 2015a)では、対象語の相対的な伸びは読んだ直後で約44%、3か月後でも約37%でした。
  • もともとの語彙力で差がつく:同じく Webb & Chang(2015b)では、語彙力の高いグループほど、多読から多くの単語を学んでいました。これも「やさしい本を読む」ことの大切さを示しています。

まとめると、多読は「知らない単語を次々に覚える方法」というより、「知っている単語を使える単語に育てる方法」です。Waring & Takaki(2003)も、グレーデッド・リーダーの効果は、新しい単語の習得だけでなく、すでに知っている語の知識を深め豊かにする点からも評価すべきだと述べています。新しい単語を効率よく増やしたいなら、単語学習と組み合わせるのがおすすめです(→多読で語彙を増やす)。

辞書を使ってよい場面

多読の「辞書は引かない」は、読んでいる最中のルールです。次のような場面では、辞書を上手に使いましょう。

  • 読み終わったあと:気になった語を2〜3個だけ調べる。調べた語が次の本に出てくると、記憶に残りやすい
  • 何度も出てきて、どうしても気になるとき:話を楽しめなくなるほど気になるなら、1回だけ引いて先へ進む
  • 精読の時間:授業や問題集で英文を正確に理解する練習をするときは、辞書を積極的に使う(→精読と多読の違い)
  • 単語学習の時間:単語帳や単語アプリで覚えた語に、多読でまた出会うのが理想的な組み合わせです

逆に、1ページに何回も辞書を引きたくなる本は、多読には向いていません。その本は少し先の楽しみにとっておき、やさしい本に戻りましょう。

よくある悩み

「推測がまちがっていたら?」

多少まちがっていても、くり返し出会ううちに修正されていきます。どうしても気になる語は、読み終わってから辞書で確かめましょう。

「わからない語があると気持ちが悪い」

最初はだれでもそう感じます。母語で本を読むときも、私たちは知らない言葉をすべて調べたりはしません。やさしい本で「わからない語があっても話は楽しめる」という経験を重ねると、気にならなくなっていきます。日本で広まった多読三原則の「わからないところは飛ばす」は、この経験を積むためのルールです。

まとめ

  • 知らない語が50語に1語以下の本を選ぶのが大前提
  • 読んでいる最中は、推測するか飛ばす。辞書は読み終わってから
  • 多読は、知っている単語を「使える単語」に育てる。新しい単語を増やすなら単語学習と組み合わせる

自分に合ったレベルの読み物はすべての読み物から探せます。多読全体の進め方は英語多読とは?完全ガイドをごらんください。

よくある質問

辞書を引かずに読んで、本当に単語が身につきますか?

1回読んだだけでは、新しい単語はあまり残りません(Waring & Takaki, 2003)。ただし、何度も出会うことで、知っている単語の知識が深まり、つづりや使い方が身についていきます。新しい単語を増やすには、単語学習と組み合わせるのが効果的です。

推測してもまったく意味がわからない単語があります。

一つや二つなら飛ばして先へ進みましょう。そういう語がたくさんあるなら、本がむずかしすぎます。1つ下のレベルの読み物にしてみてください。

電子書籍の辞書機能は使ってもいいですか?

使うと読書が止まりやすいので、多読の時間はなるべく使わないのがおすすめです。どうしても気になる語だけ、1話に1〜2回までなど自分でルールを決めるとよいでしょう。

多読ベストの語注(glossary)は読む前に見てもいいですか?

はい、ぜひ見てください。語注はレベルを超える語を集めたものなので、読む前に目を通すと、話の筋にかかわる語でつまずかずに済みます。

参考文献

  1. Hu, M. H.-c., & Nation, P. (2000). Unknown vocabulary density and reading comprehension. Reading in a Foreign Language, 13(1), 403–430. doi.org/10.64152/10125/66973
  2. Nation, I. S. P. (2006). How large a vocabulary is needed for reading and listening? The Canadian Modern Language Review, 63(1), 59–82. doi.org/10.3138/cmlr.63.1.59
  3. Waring, R., & Takaki, M. (2003). At what rate do learners learn and retain new vocabulary from reading a graded reader? Reading in a Foreign Language, 15(2), 130–163. doi.org/10.64152/10125/66776
  4. Pigada, M., & Schmitt, N. (2006). Vocabulary acquisition from extensive reading: A case study. Reading in a Foreign Language, 18(1), 1–28. doi.org/10.64152/10125/66611
  5. Webb, S., & Chang, A. C.-S. (2015). Second language vocabulary learning through extensive reading with audio support: How do frequency and distribution of occurrence affect learning? Language Teaching Research, 19(6), 667–686. doi.org/10.1177/1362168814559800
  6. Webb, S., & Chang, A. C.-S. (2015). How does prior word knowledge affect vocabulary learning progress in an extensive reading program? Studies in Second Language Acquisition, 37(4), 651–675. doi.org/10.1017/S0272263114000606
  7. Bamford, J., & Day, R. R. (Eds.). (2004). Extensive Reading Activities for Teaching Language. Cambridge University Press. ci.nii.ac.jp/ncid/BA68484365

読んだら、さっそく1冊。無料・登録なし・音声つき。

1分レベル診断Level 0 から読む

あわせて読みたい