やり方・コツ

レベルの選び方:YL(読みやすさレベル)・語数・「98%の語がわかる」目安

多読がうまくいくかどうかは、ほとんど「レベル選び」で決まります。むずかしすぎる本は続かず、やさしい本はどんどん読めるからです。この記事では、YL や語数といった目安の見方と、研究にもとづく「98%」の基準、自分で簡単にできるチェック方法を紹介します。

なぜレベル選びがいちばん大事なのか

多読研究の第一人者デイとバンフォードは、多読の10原則の中で「読む素材はやさしい」を最も重要な原則としています。むずかしい素材と格闘していては、たくさん読むことができないからです(→多読の10原則)。2人は目安として、初級者なら1ページに知らない語が1〜2個まで、中級者でも4〜5個までを挙げています(Bamford & Day, 2004)。

多読で失敗する人の多くは、「勉強になりそうだから」と少しむずかしい本を選んでしまいます。でも多読では、楽に読める本=いちばん力がつく本です。

研究でわかった「98%」の目安

50語に1語まで

Hu & Nation(2000)は、物語の文章の中の一部の語を「意味のない作り語」に置きかえて、知らない語の割合と理解度の関係を調べました。Nation(2006)の紹介によると、結果は次のとおりです。

  • 知っている語が 80%(5語に1語が未知語):十分に理解できた人はいなかった
  • 90%:十分に理解できたのはごく一部
  • 95%(20語に1語が未知語):理解できた人は少し増えたが、まだ少数
  • 100%:ほとんどの人が十分に理解できた

そして統計的なモデルから、多くの学習者が辞書なしで十分に理解するには、98%(50語に1語)の語を知っている必要があると計算されました。

95%は「最低ライン」

Laufer & Ravenhorst-Kalovski(2010)は、読解に必要な語のカバー率について、98%を「最適な」基準、95%を「最低限の」基準として提案しています。

多読は「辞書なしで、楽しく、速く」読むものなので、98%以上を目安にしましょう。100語の文章なら、知らない語は2個まで。これはデイとバンフォードの「1ページに知らない語が数個まで」という目安ともよく合っています。

自分でできる「100語チェック」

本や読み物を選ぶとき、次の方法でかんたんに確かめられます。

  • ① 最初の100語くらい(多読ベストなら最初の1〜2段落)を読む
  • ② 意味がわからない語を指で数える(固有名詞は数えない)
  • ③ 結果で判断する
  • 0〜2個:多読にぴったり。どんどん読みましょう
  • 3〜5個:少しむずかしめ。好きな話なら読んでもよいが、楽しめなければレベルを下げる
  • 6個以上:今は多読向きではありません。1つ下のレベルへ

数えるのはあくまで目安です。知らない語が少なくても、文が長くて読みにくいこともあります。「止まらずに読めて、楽しい」かどうかを最後の判断基準にしましょう。

YL(読みやすさレベル)とは

YL(Yomiyasusa Level、読みやすさレベル)は、日本の多読の現場で作られた、日本人学習者にとっての本の読みやすさを表す数字です。古川昭夫さん・神田みなみさんたちの『英語多読完全ブックガイド』などで、たくさんの洋書や多読用の本に YL がつけられています。数字が小さいほどやさしく、0台は絵本のようにやさしい本、数字が大きくなるにつれて一般の洋書に近づきます。

YL のよいところは、出版社ごとにばらばらな「レベル表示」を、同じものさしで比べられることです。ただし YL は目安であり、同じ YL でも、好きな話題なら読みやすく、なじみのない話題なら読みにくく感じます。

語数と見出し語数の見方

総語数(1冊・1話の長さ)

総語数は、その本に何語の英語が書かれているかです。多読では読んだ語数を記録するので、総語数はとても大切な情報です。初級者向けの本は数百〜数千語、中級の本は1万語前後、一般の小説は何万語もあります。たとえば、Nation(2006)で紹介されている Oxford Bookworms のレベル3(見出し語1,000語)の『The Picture of Dorian Gray』は、10,578語です。

見出し語数(使う単語の数)

グレーデッド・リーダー(学習者向けにやさしく書いた本)では、「見出し語○○語」のように、使ってよい単語の数が決められています。見出し語数が少ないほどやさしい本です。グレーデッド・リーダーの選び方はグレーデッド・リーダーの選び方でくわしく紹介しています。

多読ベストのレベル表

多読ベストでは、読み物を7つのレベルに分けています。1話の語数と YL の目安は次のとおりです。

  • L0 Starter:1話40〜160語/YL 0.0〜0.4/英検5級より前。最もよく使う約300語、現在形中心、1文3〜8語
  • L1 Beginner:120〜380語/YL 0.5〜0.9/英検5〜4級。約600語、過去形・can など
  • L2 Elementary:280〜650語/YL 1.0〜1.4/英検3級。約1,000語、when・because の文、不定詞など
  • L3 Pre-Intermediate:450〜1,000語/YL 1.5〜2.4/英検準2級。約1,600語、現在完了・受動態・関係代名詞
  • L4 Intermediate:800〜1,700語/YL 2.5〜3.4/英検2級。約2,200語、ほぼすべての基本文法
  • L5 Upper-Intermediate:1,200〜2,600語/YL 3.5〜4.9/英検準1級。約3,000語+文脈でわかる語
  • L6 Original 原文:語数制限なし/YL 5.0以上。パブリックドメインの原文をそのまま

レベルを超える語には各話の語注(glossary)をつけているので、読む前にさっと目を通すと読みやすくなります。どのレベルから始めればよいか迷ったら、レベル診断を使ってください。

英検や学年の目安との関係

上の表の英検の級は、あくまで「多読で楽に読めるレベル」の目安です。注意したいのは、多読で読むレベルは、試験で解けるレベルより低くてよいということです。英検2級に合格した人でも、多読は L2〜L3 くらいから始めると、すらすら読む感覚がつかみやすくなります。試験の英文は辞書なしで98%わかるとは限らず、多読とは目的がちがうからです(→多読は英検・TOEIC・大学入試に効く?)。

レベルを上げる・下げるサイン

上げてもよいサイン

  • 100語チェックで知らない語が0〜1個
  • 止まらず読めて、話の内容を人に説明できる
  • 同じレベルをたくさん読み、少し物足りなくなってきた

下げた方がよいサイン

  • 同じ文を何度も読み返す
  • 日本語に訳さないと意味がわからない
  • 読み終わるとどっと疲れる、読むのが面倒になってきた

上げ方のコツ

  • 少しずつ:いきなり2段上げず、1段ずつ
  • 混ぜて読む:新しいレベルを1話読んだら、元のレベルを2〜3話。慣れてきたら新しいレベルの割合を増やす
  • 戻るのは失敗ではない:上のレベルが読みにくければ、遠慮なく戻りましょう

まとめ

  • 多読のレベルは「98%の語がわかる=100語に知らない語が2個まで」が目安
  • YL や語数、見出し語数は本選びの便利なものさし。ただし最後は「楽に、楽しく読めるか」で決める
  • 試験のレベルより低いレベルで読んでよい。上げるときは1段ずつ、混ぜながら

まずはレベル診断で自分のスタート地点を確かめ、すべての読み物から読みたい話を選んでみましょう。多読全体の流れは英語多読とは?完全ガイドで説明しています。

よくある質問

YL はだれが決めているのですか?

YL(読みやすさレベル)は、日本の多読の実践者たちが日本人学習者の読みやすさを基準に作った目安です。『英語多読完全ブックガイド』などで多くの本に YL がつけられています。多読ベストのレベルにも YL の目安を示しています。

知らない単語が2%以下か、どうやって数えればいいですか?

厳密に数える必要はありません。最初の100語くらいを読んで、意味のわからない語が2個以下ならちょうどよいと考えてください。固有名詞は数えなくてかまいません。

英検準1級に合格していますが、L5 から始めるべきですか?

試験に合格できるレベルと、辞書なしですらすら楽しめるレベルは別です。L3〜L4 から始めて、楽に読めることを確かめてから上げるのがおすすめです。

やさしすぎる本を読んでも力はつきますか?

つきます。やさしい本をたくさん速く読むことで、英語を英語のまま処理する力や読む速さが育ちます。日本の大学生の研究では、やさしく書きかえた本を読んだほうが読む速さが伸びたという結果も出ています(Beglar, Hunt & Kite, 2012)。

参考文献

  1. Hu, M. H.-c., & Nation, P. (2000). Unknown vocabulary density and reading comprehension. Reading in a Foreign Language, 13(1), 403–430. doi.org/10.64152/10125/66973
  2. Nation, I. S. P. (2006). How large a vocabulary is needed for reading and listening? The Canadian Modern Language Review, 63(1), 59–82. doi.org/10.3138/cmlr.63.1.59
  3. Laufer, B., & Ravenhorst-Kalovski, G. C. (2010). Lexical threshold revisited: Lexical text coverage, learners’ vocabulary size and reading comprehension. Reading in a Foreign Language, 22(1), 15–30. doi.org/10.64152/10125/66648
  4. Bamford, J., & Day, R. R. (Eds.). (2004). Extensive Reading Activities for Teaching Language. Cambridge University Press. ci.nii.ac.jp/ncid/BA68484365
  5. Day, R., & Bamford, J. (2002). Top ten principles for teaching extensive reading. Reading in a Foreign Language, 14(2), 136–141. doi.org/10.64152/10125/66761
  6. 古川昭夫・神田みなみ 編著 (2013).『英語多読完全ブックガイド:めざせ!1000万語』コスモピア. ci.nii.ac.jp/ncid/BB12045925
  7. Beglar, D., Hunt, A., & Kite, Y. (2012). The effect of pleasure reading on Japanese university EFL learners’ reading rates. Language Learning, 62(3), 665–703. doi.org/10.1111/j.1467-9922.2011.00651.x

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