100万語多読への道:かかる時間と、語数の数え方・目安
「100万語」は、日本の英語多読でいちばんよく知られた目標です。でも、100万語とはどのくらいの量で、何時間かかるのでしょうか。この記事では、読む速さ別の計算表と、語数の数え方、途中の区切りの目安を紹介します。
「100万語多読」とは
「100万語多読」は、酒井邦秀さんが『快読100万語!ペーパーバックへの道』(2002年)などで広めた多読の進め方です。書名のとおり、やさしい本から読み始めて合計100万語を読み、ペーパーバック(英語の一般向けの本)を楽しめるところをめざす、という考え方です。2003年には古川昭夫さん・河手真理子さんによる『今日から読みます英語100万語!』も出版され、学校や図書館での多読にも広がりました。
100万語は「これを超えたら急に英語ができる」という魔法の数字ではありません。大量に読むことを目に見える目標にした、一つの区切りです。ただ、目標が数字になっていると、毎日の読書がはげみになり、続けやすくなります。
なぜ「大量」に読む必要があるのか
研究からも、多読の効果は量がものを言うことがわかっています。
- Waring & Takaki(2003)は、1冊のグレーデッド・リーダーを読んだあとの単語の定着を調べ、新しい単語は1冊ではほとんど残らないこと、大量のグレーデッド・リーディングが必要であることを示しました。
- Beglar, Hunt & Kite(2012)では、読む量が多いグループほど、読む速さが大きく伸びました。
- 日本の高専で行われた多読プログラムの報告(Nishizawa, Yoshioka & Itoh, 2010)では、学生の TOEIC の得点と読んだ量のあいだに強い相関がみられたと報告されています。
また、英語の小説を辞書なしで読むには、8,000〜9,000語の「語の家族」(word family:play, plays, played, player などをまとめて1つと数える単位)を知っている必要があると計算されています(Nation, 2006)。これだけの語に何度も出会うには、たくさん読むしかありません。
100万語は何時間?速さ別の計算
100万語を読むのにかかる時間は、読む速さ(WPM:1分間に読む語数)で決まります。
- 1分60語:約16,700分=約278時間
- 1分80語:約12,500分=約208時間
- 1分100語:10,000分=約167時間
- 1分120語:約8,300分=約139時間
- 1分150語:約6,700分=約111時間
多読を始めたばかりのころは1分60〜100語くらいを目安に考えておきましょう。読み続けるうちに速くなっていくのがふつうです。速さの測り方は読む速さ(WPM)の測り方と伸ばし方で説明しています。
毎日何分で、何か月かかる?
1分100語で読むとした場合です。
- 1日15分(1日1,500語):約667日=約1年10か月
- 1日30分(1日3,000語):約333日=約11か月
- 1日45分(1日4,500語):約222日=約7か月
- 1日60分(1日6,000語):約167日=約5か月半
実際には、続けるうちに読む速さが上がるので、後半ほどペースが速くなります。「1日30分なら1年以内」と覚えておくとよいでしょう。
語数の数え方
基本:読んだ本の総語数を足していく
多読の語数は、読み終えた本(話)の総語数を足していきます。多読ベストの読み物は1話ごとに語数が表示され、読書記録・100万語メーターに自動で加算されます。
本の総語数がわからないとき
出版社のサイトや多読用のブックガイドに語数がのっていることが多いです。のっていないときは、次の方法で見積もれます。
- ① ふつうの1行の語数を数える(例:10語)
- ② 1ページの行数を数える(例:25行)
- ③ 本文のページ数をかける(例:120ページ)
- ④ 10 × 25 × 120 = 約30,000語。絵や空白が多い本は2〜3割引いて考えます
途中でやめた本は?
読んだところまでの語数を数えてかまいません。半分読んだら総語数の半分です。
読み返した本は?
多読ベストでは、読み返した本も語数に数えてよいと考えています。お気に入りの話をくり返し読むと、前より速く楽に読めるようになり、それ自体が多読の練習になるからです。ただし、同じ本ばかりにならないよう、新しい本もバランスよく読みましょう。
数え方は「だいたい」でよい
語数は自分のはげみのための数字です。何語か多い・少ないにこだわる必要はありません。正確さより、続けて記録することを大切にしましょう。記録のつけ方は読書記録のつけ方でくわしく説明しています。
本1冊はどのくらい?
- 多読ベストの L0〜L1 の1話:40〜380語
- 多読ベストの L3〜L4 の1話:450〜1,700語
- 初級のグレーデッド・リーダー1冊:数千語程度
- 中級のグレーデッド・リーダー1冊:1万語前後(例:Oxford Bookworms レベル3の『The Picture of Dorian Gray』は10,578語。Nation, 2006)
- 一般向けの小説1冊:数万〜十数万語
1冊1万語の本なら、100冊で100万語です。
区切りごとの目標の例
- 1万語:多読の習慣をつくる。辞書なしで読む感覚をつかむ(最初の1か月の目安。→最初の1か月のステップ)
- 10万語:自分に合うレベルとジャンルがわかってくる。L0〜L2 を中心に、たくさん読む
- 30万語:少し長い話にも挑戦。読む速さを測って、始めたころと比べてみる
- 50万語:中級レベル(多読ベストなら L3〜L4)の話を中心に読む
- 100万語:一つの大きな区切り。原書や一般向けの本の中から、やさしいものを試してみる(→原書(原文)を読む)
これは目標の例であり、到達したときの力は人によってちがいます。早く上のレベルへ行くことより、楽しく読み続けて語数を積み上げることが大切です。
100万語のその先
『英語多読完全ブックガイド』の副題が「めざせ!1000万語」であるように、100万語はゴールではなく、通過点と考える人も多くいます。100万語を読むころには、英語を読むことが生活の一部になっているはずです。そこからは、自分の興味のある分野の本や、自己啓発の名著、原文で読む名作へと、読書の世界を広げていきましょう。
100万語まで続けるコツ
- やさしい本を中心に:むずかしい本は1語あたりの時間がかかり、語数がたまりにくい
- メーターを見える場所に:100万語メーターの数字が増えていくのは大きなはげみになります
- すき間時間を使う:1話数分で読める短い話を、通学・通勤や休み時間に
- 飽きたらジャンルを変える:すべての読み物から気分で選ぶ
- 仲間をつくる:家族や友だちと語数を報告し合う
続けるためのくわしいコツは多読を続けるコツを、つまずいたときは多読でよくある失敗10と対策をごらんください。
よくある質問
100万語読めば英語がペラペラになりますか?
100万語は大量に読むための目標の一つで、到達したときの力は人によってちがいます。読む力や英語への慣れは大きく伸びますが、話す力をつけるには話す練習も必要です。
子ども向けの絵本の語数も数えていいですか?
はい、数えてかまいません。やさしい本をたくさん読むことは多読の基本です。絵本は1冊の語数が少ないので、冊数も一緒に記録するとはげみになります。
聞き読み(音声を聞きながら読む)の語数も数えますか?
文字を目で追いながら聞いたのであれば、読んだ語数として数えてよいでしょう。音声だけを聞いた場合は、聞いた語数として別に記録すると、読む量と聞く量の両方がわかります。
速く100万語に到達するにはどうすればいいですか?
1日の読書時間を増やすことと、やさしい本を選んで読む速さを保つことです。むずかしい本を読むと速さが落ちて、かえって語数がたまりにくくなります。
参考文献
- 酒井邦秀 (2002).『快読100万語!ペーパーバックへの道』筑摩書房. ci.nii.ac.jp/ncid/BA57253600
- 古川昭夫・河手真理子 (2003).『今日から読みます英語100万語!』(酒井邦秀 監修)日本実業出版社. ci.nii.ac.jp/ncid/BA62003103
- 古川昭夫・神田みなみ 編著 (2013).『英語多読完全ブックガイド:めざせ!1000万語』コスモピア. ci.nii.ac.jp/ncid/BB12045925
- Waring, R., & Takaki, M. (2003). At what rate do learners learn and retain new vocabulary from reading a graded reader? Reading in a Foreign Language, 15(2), 130–163. doi.org/10.64152/10125/66776
- Beglar, D., Hunt, A., & Kite, Y. (2012). The effect of pleasure reading on Japanese university EFL learners’ reading rates. Language Learning, 62(3), 665–703. doi.org/10.1111/j.1467-9922.2011.00651.x
- Nishizawa, H., Yoshioka, T., & Itoh, K. (2010). Extensive reading program which changes reluctant engineering students into autonomous learners of English. Journal of JSEE, 58(3), 12–17. doi.org/10.4307/jsee.58.3_12
- Nation, I. S. P. (2006). How large a vocabulary is needed for reading and listening? The Canadian Modern Language Review, 63(1), 59–82. doi.org/10.3138/cmlr.63.1.59
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