多読でよくある失敗10と対策
英語多読は、やり方さえ合っていれば、だれでも続けられて力がつく方法です。それでも「続かなかった」「効果がなかった」という声を聞くことがあります。原因の多くは、いくつかの典型的な失敗にあります。この記事では、よくある10の失敗と、その対策を紹介します。
失敗1:むずかしすぎる本から始める
いちばん多く、いちばん大きな失敗です。「せっかくなら勉強になる本を」「中学生向けは簡単すぎる」と考えて、むずかしい本を選んでしまいます。結果、1ページ読むのに時間がかかり、楽しくなく、数日でやめてしまいます。
対策
- 多読研究の第一人者デイとバンフォードも、多読の原則で最も大切なのは「読む素材はやさしい」ことだとしています(→多読の10原則)
- 目安は「100語に知らない語が2個まで」(→レベルの選び方)
- レベル診断の結果より1つ下のレベルから始める
- 日本の高専で長く多読を続けた報告でも、やさしい物語から読み始めるよう導くことが、成功する多読プログラムの大切な条件とされています(Nishizawa ほか, 2011)
失敗2:レベルを急いで上げる
やさしいレベルに慣れると、早く上に行きたくなります。でも、上げたとたんに読めなくなり、自信をなくしてしまうことがよくあります。
対策
- 同じレベルをたくさん読んでから上げる。「少し物足りない」と感じてからで十分
- 上げるときは1段ずつ。新しいレベルを1話読んだら、元のレベルを2〜3話読むように混ぜながら移る
- 読みにくければ遠慮なく戻る。戻るのは失敗ではなく、調整です
失敗3:辞書を引きながら読む
知らない単語が出るたびに辞書を引くと、読書がたびたび止まり、話の流れがわからなくなります。読む量も大きく減ってしまいます。
対策
- 多読の時間は辞書を手の届かないところに置く
- わからない語は推測するか飛ばす(→わからない単語はどうする?)
- 気になる語は読み終わってから2〜3個だけ調べる
- そもそも辞書を引きたくなる本は、むずかしすぎるサイン
失敗4:頭の中で全部日本語に訳す
学校で訳読に慣れていると、無意識に一文ずつ日本語に訳してしまいます。これでは速く読めず、「英語を英語のまま理解する力」も育ちません。
対策
- 思い切りやさしい本を読む。訳さなくてもわかる英語なら、訳すくせは自然に減っていきます
- 音声を聞きながら読む(聞き読み)。音声が先に進むので、訳している時間がなくなります(→聞き読みの効果とやり方)
- 絵のある話を読み、英語と場面を直接結びつける
失敗5:わからないところで止まる・何度も読み返す
1文がわからないと、わかるまで何度も読み返してしまう。これも精読のくせです。
対策
- 「8割わかればOK」と決める
- わからない文は印をつけずに先へ進む。たいていは、先を読むうちにわかってきます
- 読み返しが多い本は、レベルを下げる合図です
失敗6:つまらない本を我慢して最後まで読む
「途中でやめるのはもったいない」「最後まで読まないと意味がない」と感じて、つまらない本を我慢して読み続けてしまう。読むことが苦痛になり、多読そのものをやめる原因になります。
対策
- 日本の多読三原則には「つまらなければやめる」があります(→多読三原則)
- やめたら、すぐに別の本を読む。量が減らなければ問題ありません
- ジャンルを変えてみる:イソップ物語、神話と伝説、ノンフィクションなど
失敗7:たまにしか読まない
週末にまとめて読もうとして、結局読まない週が続く。多読の効果は量から生まれるので、間があきすぎると力がつきにくくなります。
対策
- 1日10分でいいので毎日読む。読む時間を「通学の電車」「寝る前」などに固定する
- 日本の大学生の研究(Beglar, Hunt & Kite, 2012)では、2週間に1冊以上読むことが、多くの学習者の読む速さを伸ばすのに効果的でした
- 1話が短い L0〜L2 の読み物を、すき間時間用にストックしておく
失敗8:記録をつけない
何をどれだけ読んだかがわからないと、成長が見えず、やる気が続きません。自分に合うレベルやジャンルもわからなくなります。
対策
- 読書記録・100万語メーターを使う。読んだ語数が自動でたまっていきます
- 1行でいいので感想をつける(→読書記録のつけ方)
- 月に1回、記録を見返して、語数・レベル・読む速さをふり返る
失敗9:すぐに結果を求める・人と比べる
1〜2か月で「試験の点が上がらない」とやめてしまう。SNS で「○か月で100万語」という人と比べて落ちこむ。
対策
- 多読の効果は、数か月〜1年単位で出てくるものです。1冊のグレーデッド・リーダーを読んでも、新しい単語はほとんど残らず、大量に読むことが必要だと示した研究もあります(Waring & Takaki, 2003)
- 試験の点数より先に、「読むのが楽になった」「英語への抵抗が減った」という変化が出てきます。日本の大学生を対象にした研究(Yamashita, 2013)でも、多読のあとに英語を読む気楽さが高まり、不安が下がっていました
- 比べるのは、他人ではなく過去の自分。語数のグラフや WPM の記録を見返しましょう(→読む速さ(WPM)の測り方)
失敗10:読んだあとの作業が重すぎる
毎回、和訳を書く、問題を全部解く、長い感想文を書く……。読んだあとの作業が重いと、読むこと自体がいやになってしまいます。家庭で子どもに、または先生が生徒に、つい課してしまいがちな失敗です。
対策
- デイとバンフォードの原則には「読書そのものがごほうび」があり、読んだあとの活動は、読書体験をこわさず、次の読書を後押しするものであるべきだとされています
- 記録はタイトル・語数・一言感想くらいで十分
- 多読ベストのクイズは楽しみのためのもの。できなくても気にせず次へ
- 子どもや生徒には「どの話がおもしろかった?」と聞くくらいがちょうどよい(→子どもの英語多読、授業で多読を取り入れる方法)
失敗チェックリスト
次のうち、当てはまるものはありませんか。
- 1ページに知らない語が5個以上ある本を読んでいる
- 最近レベルを上げてから、読む量が減った
- 辞書や翻訳アプリを手元に置いて読んでいる
- 頭の中で日本語に訳している
- 同じ文を何度も読み返している
- つまらない本を義務感で読んでいる
- 1週間に読まない日のほうが多い
- 読んだ語数がわからない
- 「効果がない」と感じて、やめようか迷っている
- 読んだあとの作業がおっくうで、読むのがいやになっている
当てはまるものがあったら、その項目の対策を一つだけ試してみてください。多くの場合、本をやさしくするだけで、ほかの問題も一緒に解決します。
まとめ
多読の失敗のほとんどは、「むずかしすぎる」「楽しくない」「量が少ない」の3つに行きつきます。やさしい本を、楽しく、毎日少しずつ。この基本に戻れば、多読はまた動き出します。続けるためのコツは多読を続けるコツで、多読の全体像は英語多読とは?完全ガイドで紹介しています。
よくある質問
多読を3か月続けましたが、効果を感じません。
まず、本がむずかしすぎないか、読む量が足りているかを確かめてください。1日10分未満、または週に数日しか読んでいない場合は、量を増やすのが先です。読む速さを測って、始めたころと比べるのもおすすめです。
やさしい本は内容が子どもっぽくて続きません。
大人でも楽しめるやさしい読み物を選びましょう。多読ベストでは、イソップ物語や神話、名作文学のリライト、自己啓発の名著など、大人向けの内容をやさしい英語で読める話も用意しています。
途中でやめた本が増えてしまいます。
やめたあとに別の本を読んでいるなら問題ありません。やめた本の傾向(ジャンルやレベル)を記録しておくと、自分に合う本を選ぶヒントになります。
子どもが多読をいやがります。
読んだあとの作業が重すぎないか、本がむずかしすぎないかを見直してみてください。親が一緒に読む、子どもに本を選ばせる、といった工夫も効果的です。
参考文献
- Bamford, J., & Day, R. R. (Eds.). (2004). Extensive Reading Activities for Teaching Language. Cambridge University Press. ci.nii.ac.jp/ncid/BA68484365
- Nishizawa, H., Yoshioka, T., Ito, K., Nagaoka, M., Hiroyama, S., & Asai, H. (2011). Critical factors in a successful extensive reading program of English. Journal of JSEE, 59(4), 66–71. doi.org/10.4307/jsee.59.4_66
- Beglar, D., Hunt, A., & Kite, Y. (2012). The effect of pleasure reading on Japanese university EFL learners’ reading rates. Language Learning, 62(3), 665–703. doi.org/10.1111/j.1467-9922.2011.00651.x
- Waring, R., & Takaki, M. (2003). At what rate do learners learn and retain new vocabulary from reading a graded reader? Reading in a Foreign Language, 15(2), 130–163. doi.org/10.64152/10125/66776
- Yamashita, J. (2013). Effects of extensive reading on reading attitudes in a foreign language. Reading in a Foreign Language, 25(2), 248–263. doi.org/10.64152/10125/66872
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