子どもの英語多読:家庭での読み聞かせと絵本から始めよう
子どもの英語多読は、「勉強」ではなく「親子で楽しむ時間」から始まります。この記事では、英語の読み聞かせのコツ、絵本の選び方、無料で使える英語絵本、年齢に合わせた進め方を、親が英語に自信がない場合も含めて具体的に紹介します。
子どもの多読は「読み聞かせ」から
大人の多読は「自分で読む」ことから始まりますが、小さな子どもの場合は大人が読んであげる「読み聞かせ」が出発点です。
英語以前に、母語(日本語)での読み聞かせについては多くの研究があります。Bus ら(1995)のメタ分析は、親が幼児に本を読む頻度と、ことばの発達・読み書きの基礎・その後の読む力との関係を調べ、全体の効果量 d = .59 を報告しました。ただし、子どもが自分で読めるようになると、この効果は小さくなるようだとも述べています。Mol ら(2009)は31の研究(子ども2,049人)をまとめ、読み聞かせの前・最中・後に子どもを積極的に参加させる「対話的な読み聞かせ」が、話しことばの力に中程度の効果を持つことを示しました。
これらは主に母語での研究なので、英語の読み聞かせにそのまま当てはまるとはかぎりません。それでも、「本を一緒に読む時間そのものが、ことばを育てる」という考え方は、英語にも生かせます。
外国語でも「たくさんの本」は力になる
外国語として英語を学ぶ子どもについては、有名な「ブック・フラッド(本の洪水)」の研究があります。Elley と Mangubhai(1983)は、本がほとんどなかったフィジーの農村部の小学校8校で、4・5年生380人のクラスに、それぞれ250冊の楽しい英語の絵本を届けました。8か月後、たくさんの物語にふれた子どもたちは、通常の授業を受けた比較グループと比べて、読解と聞き取りが通常の2倍のペースで伸び、20か月後には伸びがさらに大きくなって、ほかの言語技能にも広がったと報告されています。
日本の家庭でいきなり250冊は難しくても、「楽しい本がいつも手の届くところにある」状態をつくることはできます。
年齢別の進め方
0〜3歳:音とリズムを楽しむ
- 繰り返しの多い絵本、歌や韻(ライム)のある本を選びます。
- 意味を教える必要はありません。絵を指さしながら、同じ本を何度でも読みます。
4〜6歳:絵と英語をつなげる
- 1ページに1文程度の絵本が中心。子どもが「次はこう言う!」と言えるようになったら大成功です。
- 文字に興味が出てきたら、フォニックス(つづりと音の関係)の絵本も少しずつ。Oxford Reading Tree の Floppy's Phonics のようなシリーズがあります。
小学校低学年:一緒に読む→ひとりで読む
- 親が読む文と子どもが読む文を交代する「交代読み」がおすすめです。
- 音声つきの本で、音を聞きながら文字を目で追う「聞き読み」を取り入れます(聞き読みのやり方)。
小学校高学年:自分で選んで読む
- 多読ベストの L0 Starter や L1 の読み物が、ひとり読みの入口にちょうどよいレベルです。日本の昔話(japan)やイソップ物語のように、筋を知っている話は特に読みやすくなります。
- 読書記録・100万語メーターで、読んだ量が目に見えるようにすると励みになります。
絵本・本の選び方
- 子どもが自分で選ぶ。親が「ためになる」本を選ぶより、子どもが「これ読みたい」と言った本のほうが何倍も読まれます。
- 英語圏の子ども向け=やさしい、とはかぎらない。Webb と Macalister(2013)は、ネイティブの子ども向けの文章は、語彙の負担が大人向けの文章とあまり変わらないことを示しました。絵本でも、文が長い・語彙が多い本は、日本の子どもには難しすぎることがあります。1ページの文字が少ない本から始めましょう。
- レベル付きのシリーズを使う。Oxford Reading Tree(英国の子ども向けのレベル別教材)や、米国の I Can Read! のように、段階的にレベルが上がるシリーズは、次に読む本を選びやすくなります。各シリーズのレベルは多読におすすめのシリーズとレベル対応表にまとめました。
無料で使える英語絵本
- Oxford Owl(オックスフォード大学出版局):無料の登録で、3〜11歳向けの電子書籍を読めます。Oxford Reading Tree の Biff, Chip and Kipper のシリーズも含まれています。
- Global Storybooks:多言語の絵本を、文字と音声で楽しめる無料サイトです。物語は語数によって5段階(Level 1は1話75語まで、Level 5は800語以上)に分けられ、オープンライセンス(自由に使ってよい利用条件)で公開されています。
- StoryWeaver:インドの非営利出版社 Pratham Books が運営する、多言語の子ども向け絵本サイトです。多くの絵本が CC BY 4.0 という自由に使えるライセンスで公開されています。
ほかの無料サイトは無料で多読と無料多読サイト大特集で紹介しています。
親が英語に自信がなくても大丈夫
「発音が悪いから、私が読むと変な英語を覚えてしまうのでは」と心配する方は多いです。そんなときは次の方法があります。
- 音声に読んでもらう。音声つきの絵本や読み物を、親子で一緒に聞きながらページをめくります。親の役目は「一緒に楽しむ人」です。
- 絵について日本語で話す。「このネコ、何してるのかな?」と絵について話すだけでも、物語への参加になります。Mol ら(2009)が示した「対話的な読み聞かせ」の考え方です。
- 親も一緒に多読する。親自身が多読ベストの L0 から読み始め、子どもと「何冊読んだか」を競うのも楽しい方法です。大人の多読は大人の学び直し英語多読をどうぞ。
やってはいけないこと
- 意味をいちいち確認する・訳させる。「これ何て意味?」と聞かれ続けると、子どもは英語の本が嫌いになります。
- 難しい本を読ませる。わからない本を我慢して読む経験は、多読の正反対です。
- やめたがっているのに続ける。途中でやめてもよい、というのが多読の大切なルールです(多読三原則)。
まとめ
子どもの多読で大切なのは、楽しい本が身近にあり、大人が一緒に楽しむことです。読み聞かせから始め、聞き読み、交代読み、ひとり読みへと、子どものペースで進めていきましょう。
よくある質問
何歳から英語の読み聞かせを始めればよいですか?
何歳からでも始められます。0〜3歳では意味よりも音やリズムを楽しむ絵本、4〜6歳では1ページ1文程度の絵本がおすすめです。大切なのは年齢よりも、子どもが楽しんでいるかどうかです。
英語の絵本を読み聞かせるとき、日本語に訳したほうがよいですか?
毎回訳す必要はありません。絵を指さしたり、絵について日本語で話したりすれば、子どもは絵と英語を結びつけて理解していきます。どうしても内容がわからない様子なら、一度だけ日本語で簡単に説明して、また英語で読むとよいでしょう。
親の発音が悪くても読み聞かせしてよいですか?
よいです。心配なら、音声つきの絵本や読み物を親子で一緒に聞く方法もあります。親の役目は正しい発音のお手本になることより、一緒に本を楽しむことです。
子どもが同じ本ばかり読みたがります。
問題ありません。同じ本を繰り返し読むと、表現が自然に身につき、「自分で読めた」という自信にもつながります。新しい本は、そばに置いておくだけにして、子どもが手に取るのを待ちましょう。
参考文献
- Bus, A. G., van IJzendoorn, M. H., & Pellegrini, A. D. (1995). Joint book reading makes for success in learning to read: A meta-analysis on intergenerational transmission of literacy. Review of Educational Research, 65(1), 1–21. doi.org/10.3102/00346543065001001
- Mol, S. E., Bus, A. G., & de Jong, M. T. (2009). Interactive book reading in early education: A tool to stimulate print knowledge as well as oral language. Review of Educational Research, 79(2), 979–1007. doi.org/10.3102/0034654309332561
- Elley, W. B., & Mangubhai, F. (1983). The impact of reading on second language learning. Reading Research Quarterly, 19(1), 53. doi.org/10.2307/747337
- Webb, S., & Macalister, J. (2013). Is text written for children useful for L2 extensive reading? TESOL Quarterly, 47(2), 300–322. doi.org/10.1002/tesq.70
- Oxford Owl. Free eBooks(無料電子書籍ライブラリー). 2026年10月確認. home.oxfordowl.co.uk/books/free-ebooks/
- Global Storybooks. FAQ(レベル・ライセンス・音声). 2026年10月確認. globalstorybooks.net/faq/
- Pratham Education Foundation (2020). StoryWeaver と Pratham の無料絵本(CC BY 4.0). 2026年10月確認. pratham.org/2020/11/16/9859/
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