多読が続かない・つまらないときの処方箋
多読を始めた人の多くが、どこかで「なんだか続かない」「つまらなくなってきた」という時期を経験します。でも、それは才能や根性の問題ではありません。原因がわかれば、対策もはっきりします。この記事では、多読が止まる原因別に、すぐに試せる処方箋を紹介します。
やる気は「上がったり下がったり」するもの
まず知っておいてほしいのは、多読のやる気は、誰でも上下するということです。外国語として日本語を学ぶ学習者9人を5〜7か月追った de Burgh-Hirabe と Feryok(2013)は、多読への動機づけが、いろいろな要因の組み合わせによって時間とともに変化することを示しました。日本の中学生2人を2年半追跡した Nishino(2007)も、読む力がついていくにつれて動機づけが変化し、個人差が大きいことを報告しています。
「最近やる気が出ない」と感じても、それは多読が向いていないのではなく、よくある波のひとつです。原因を見つけて、手を打ちましょう。
原因1:本が難しすぎる(いちばん多い原因)
こんなサイン:1ページに知らない語がいくつもある、読むのに時間がかかる、内容を覚えていない、読み終わるとぐったりする。
処方箋:
- レベルを1〜2段下げる。「こんなに簡単でいいの?」と感じるくらいが、多読のちょうどよいレベルです。迷ったらレベル診断をもう一度。
- 知っている話を読む。昔話やイソップ物語のように筋を知っている話は、同じレベルでも楽に読めます。
レベルを下げることは後退ではありません。高校生を対象にした Takase(2007)のインタビューでは、日本語では読書好きな生徒でも、日本語と英語で読める力の差が大きいために、英語では読む気になれない例があったと報告されています。「読める」と感じられるレベルで読むことが、やる気を守ります。
原因2:本やジャンルが合わない
こんなサイン:読めるけれど楽しくない、続きが気にならない。
処方箋:
- 途中でやめる。つまらない本を我慢して読む必要はありません。多読の大切なルールです(多読三原則)。
- ジャンルを変える。物語に飽きたらノンフィクション、子どもっぽいと感じたら自己啓発の名著や神話と伝説など、ライブラリーでいろいろ試してみましょう。
de Burgh-Hirabe と Feryok(2013)も、多読を続けるうえでいろいろな種類の読み物があることの大切さを指摘しています。
原因3:時間がない
こんなサイン:読みたい気持ちはあるのに、気づくと1週間読んでいない。
処方箋:
- 「1日1話」だけ決める。多読ベストの短い話なら数分で読めます。
- すでにある習慣にくっつける。「朝のコーヒーと一緒に」「電車に乗ったら」のように、毎日必ずすることとセットにします。
- 聞くだけの日をつくる。疲れて読めない日は、音声を聞くだけでもOK。
社会人の時間の作り方は大人の学び直し英語多読でも詳しく紹介しています。
原因4:伸びている実感がない
こんなサイン:読んでいるのに、英語ができるようになった気がしない。
処方箋:
- 記録をつける。読んだ語数を記録すると、成長が目に見えます。読書記録・100万語メーターで、積み上げた語数を確かめましょう(読書記録のつけ方)。
- 読む速さを測る。1か月前と同じレベルの本を読んで、1分あたりの語数を比べてみましょう(読む速さ(WPM)の測り方)。
- 昔読んだ本を読み返す。最初は苦労した本が、すらすら読めることに気づくはずです。
研究でも、多読の効果は少しずつ現れることがわかっています。日本の大学生を対象にした Beglar ら(2012)の研究では、2週間に1冊以上読むことが、多くの学習者にとって読む速さを伸ばす最も効果的な方法でした。日本の大学生の英語の読書への気持ちを調べた Yamashita(2013)では、多読を経験したあと、読むことの「心地よさ」と「知的な価値」の感じ方が高まり、「不安」が下がっていました。数字に表れにくい変化も、確かに起きているのです。
原因5:ひとりで続けるのがさびしい
こんなサイン:最初は楽しかったのに、だんだん「やらなくてもいいか」と思うようになった。
処方箋:
- 仲間をつくる。家族や友だちと一緒に始める、SNSで読んだ本を記録する、地域の多読会に参加するなど。
- 人に紹介する。おもしろかった本を誰かに話すと、次の本を読む意欲がわきます。
学校の多読では、ある程度の「しくみ」や「義務」があるほうが続きやすいこともあります。de Burgh-Hirabe と Feryok(2013)は、多読を必須にすることの意味にも触れていますし、Robb と Ewert(2024)のレビューは、教師の支えや段階的な仕かけがないと、生徒が自分から読む読み手に育つのは難しいと指摘しています。ひとりで続ける大人も、自分なりの小さなルール(毎週の目標語数など)をつくると続けやすくなります。
原因6:完璧に理解しようとしている
こんなサイン:わからない語があると気になって先に進めない、つい辞書を引いてしまう。
処方箋:
再スタートの3ステップ
しばらく多読を休んでしまったときは、次の3ステップで再開しましょう。
- いちばんやさしいレベルで1話だけ読む。成功体験から再スタートします。
- 前に好きだった話を読み返す。楽しかった記憶がやる気を呼び戻します。
- 小さな目標を決める。「今週は5話」「今月は1万語」など、確実に達成できる目標にします。
ほかにも、つまずきやすいポイントは多読のよくある失敗にまとめています。
まとめ
多読が続かないときは、レベルを下げる・本を替える・時間を小さくする・成果を見える化するのどれかで、たいてい解決します。やる気の波は誰にでもあるものです。止まってしまったら、いちばんやさしい話を1本読むところから、また始めましょう。
よくある質問
多読がつまらなくなったら、やめたほうがよいですか?
やめる必要はありません。多くの場合、本のレベルが高すぎるか、ジャンルが合っていないのが原因です。レベルを下げる、ジャンルを替える、つまらない本は途中でやめる、の3つを試してみてください。
多読で伸びている実感がありません。
読んだ語数の記録や、同じレベルの本での読む速さの比較をすると、変化が見えやすくなります。昔読んだ本を読み返して、楽に読めるようになっているか確かめるのもおすすめです。
レベルを下げるのは後退ではありませんか?
後退ではありません。多読は「楽に読める本をたくさん読む」ことで力がつく方法です。難しい本を少し読むより、やさしい本をたくさん読むほうが、読む速さも読書を楽しむ気持ちも伸ばしやすくなります。
しばらく多読を休んでしまいました。どう再開すればよいですか?
いちばんやさしいレベルの話を1話だけ読むところから始めましょう。前に好きだった話を読み返したり、「今週は5話」のように小さな目標を立てたりすると、再開しやすくなります。
参考文献
- de Burgh-Hirabe, R., & Feryok, A. (2013). A model of motivation for extensive reading in Japanese as a foreign language. Reading in a Foreign Language, 25(1), 72–93. doi.org/10.64152/10125/66678
- Nishino, T. (2007). Beginning to read extensively: A case study with Mako and Fumi. Reading in a Foreign Language, 19(2). doi.org/10.64152/10125/66807
- Takase, A. (2007). Japanese high school students’ motivation for extensive L2 reading. Reading in a Foreign Language, 19(1), 1–18. doi.org/10.64152/10125/66622
- Beglar, D., Hunt, A., & Kite, Y. (2012). The effect of pleasure reading on Japanese university EFL learners’ reading rates. Language Learning, 62(3), 665–703. doi.org/10.1111/j.1467-9922.2011.00651.x
- Yamashita, J. (2013). Effects of extensive reading on reading attitudes in a foreign language. Reading in a Foreign Language, 25(2), 248–263. doi.org/10.64152/10125/66872
- Robb, T. N., & Ewert, D. (2024). Classroom-based extensive reading: A review of recent research. Language Teaching, 57(3), 295–324. doi.org/10.1017/s0261444823000319
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