多読は英検・TOEIC・大学入試に効く?
「多読は楽しそうだけど、試験の点数につながるの?」という質問は、生徒からも保護者からもよく受けます。結論から言うと、多読は試験の土台となる力、特に「長い英文を速く読む力」を伸ばします。ただし、試験対策のすべてを多読で代わりにすることはできません。この記事では、研究と試験の特徴から、多読と試験の関係を整理します。
結論:多読は試験の「土台」を作る
多読で伸びることが研究で確かめられているのは、主に次の力です。
- 読解力:多くの研究をまとめたメタ分析で、多読の効果が確かめられています(Nakanishi, 2015;Jeon & Day, 2016)
- 読む速さ:日本の学習者を対象にした研究で、精読だけのグループより大きく伸びています(Beglar, Hunt & Kite, 2012;Huffman, 2014)
- 英語への前向きな気持ち:英語を読むことへの不安が下がることが報告されています(Yamashita, 2013)
試験に直結するのは、とくに読む速さです。最近の英語の試験は、読む量がとても多くなっています。
共通テストは「速く読む力」の勝負
大学入学共通テストの英語リーディングは、80分の試験です。英語塾 J PREP による分析を紹介した記事(リセマム, 2026)によると、2026年度のリーディングの総語数は5,546語で、1分あたりにすると約69語になります。共通一次試験の最終年である1989年度(総語数2,728語、試験時間100分)と比べて、1分あたりの語数は約2.5倍に増えています。総語数は2025年度がピークだったとも分析されています。
1分69語というのは、本文と設問を一度読むだけで、考える時間がほとんど残らないペースです。設問を考えたり、見直したりする時間を残すには、それよりずっと速く、しかも正確に読める必要があります。多読で「やさしい英文を100 WPM 以上ですらすら読める力」をつけておくことが、大きな助けになります(→読む速さ(WPM)の測り方と伸ばし方)。
TOEIC・英検と多読
TOEIC
TOEIC Listening & Reading テストのリーディングは、75分で100問を解きます。メールや広告、記事などの英文を、限られた時間で大量に処理する試験です。日本の高専で行われた多読プログラムの報告(Nishizawa, Yoshioka & Itoh, 2010)では、多読を導入したあとの学生が導入前の学生より高い TOEIC の得点をとり、TOEIC の得点と読んだ量のあいだに強い相関がみられたと報告されています。
英検
英検は級が上がるほど、長文読解の英文も長く、語彙もむずかしくなります。多読は、長文を読み切る体力と速さ、そしてよく使われる語彙や表現への慣れをつけるのに役立ちます。級別の多読のレベルの目安は、レベルの選び方の表を参考にしてください。
多読が効きやすい力・効きにくい力
効きやすい力
- 長文を速く読む力:大量に読むことで、英語を英語の語順のまま処理できるようになる
- 英文に対する慣れ・集中力:長い英文でも最後まで読み切れる
- よく使われる語彙・表現の定着:知っている単語に何度も出会うことで、意味や使い方が身につく
- リスニングの土台:聞き読みを組み合わせると、聞く力も育つ(→聞き読みの効果とやり方)
効きにくい(別の対策が必要な)力
- むずかしい語彙:試験の語彙問題に出る語は、多読で読むやさしい本にはあまり出てきません。単語帳での学習が必要です。研究でも、1冊読んだだけでは新しい単語はほとんど残らないことがわかっています(Waring & Takaki, 2003)
- 文法問題の正確さ:細かい文法の規則は、文法書や問題集で確認しましょう(→精読と多読の違いと組み合わせ方)
- 設問の形式への慣れ:時間配分や設問の読み方は、過去問で練習するのが近道です
- 書く・話す力:英検のライティングや面接には、書く・話す練習が必要です
つまり、多読(土台づくり)+試験対策(形式・語彙・文法)の組み合わせが最強です。
時期別:試験に向けた多読の使い方
試験まで1年以上ある
- 多読を中心に:1日20〜30分。やさしいレベルを大量に読み、読む速さを上げる
- 単語・文法の学習は並行して少しずつ
- 目標の例:試験までに数十万語〜100万語(→100万語多読への道)
試験まで3〜6か月
- 多読と試験対策を半々に:多読15分+問題演習
- 多読のレベルは上げすぎない。試験より1〜2段やさしいレベルを速く読む方が、速さが身につく
- 月に1回、WPM を測って伸びを確かめる
試験まで1か月
- 試験対策を中心に:過去問・模試で時間配分を練習
- 多読は1日10分程度、やさしいレベルを気分転換と速さの維持のために続ける
- 試験直前に新しい本に挑戦する必要はありません。お気に入りの話を読み返すのも効果的です
「試験に合格したレベル」=「多読のレベル」ではない
注意したいのは、試験の級と、多読で楽に読めるレベルは別だということです。たとえば英検2級に合格した人でも、辞書なしで98%の語がわかる英文を楽しく読めるのは、もう少しやさしいレベルかもしれません。多読ベストのレベル表では、L3 が英検準2級、L4 が英検2級くらいの目安ですが、試験に合格した級より1〜2段下のレベルから多読を始めると、すらすら読む感覚がつかみやすくなります。レベル診断で確かめてみましょう。
研究の読み方の注意
試験の点数と多読の関係を調べた研究には、いくつか注意点があります。
- 多読をしたグループと、しなかったグループを比べた研究でも、多読以外の条件(授業内容、学習時間など)が完全にそろっているとは限りません
- 「読んだ量と点数の相関」は、「たくさん読んだから点数が上がった」とも「もともと英語が得意な人がたくさん読んだ」とも解釈できます
- 多読の効果は、多読のやり方(本のやさしさ、量、期間)によって大きく変わります
それでも、多くの研究をまとめたメタ分析(Nakanishi, 2015;Jeon & Day, 2016)で読解力への効果が確かめられていることは、多読を試験対策の土台に組み込む十分な理由になります。研究の一覧は多読研究ライブラリーにまとめています。
まとめ
- 多読は、長文を速く読む力という試験の土台を作る。共通テストのように読む量の多い試験では特に重要
- 語彙・文法・設問形式・書く話す力は、それぞれの対策と組み合わせる
- 試験直前でも、やさしいレベルの多読を少し続けると、速さを保てる
多読の全体像は英語多読とは?完全ガイド、高校生や受験生の学習計画は精読と多読の違いと組み合わせ方で紹介しています。
よくある質問
受験生ですが、多読をする時間がありません。
1日10分でもかまいません。やさしい英文を速く読む時間を毎日少しでもとると、長文読解の速さを保つのに役立ちます。通学中など、すき間時間を使いましょう。
多読だけで英検に合格できますか?
多読は長文読解やリスニングの土台を作りますが、語彙問題・ライティング・面接にはそれぞれの対策が必要です。多読と試験対策を組み合わせるのがおすすめです。
試験の長文問題を多読の教材にしてもいいですか?
試験の英文は辞書なしで楽に読めるとは限らないので、多読より精読の教材に向いています。一度精読して理解した英文を、あとで速く読み返す練習には使えます。
TOEIC の点数を上げるには、どのレベルを読めばいいですか?
今のTOEICのスコアより少しやさしいと感じるレベルを、速く大量に読むのがおすすめです。レベル診断で楽に読めるレベルを確かめ、そこから読み始めてください。
参考文献
- Nakanishi, T. (2015). A meta-analysis of extensive reading research. TESOL Quarterly, 49(1), 6–37. doi.org/10.1002/tesq.157
- Jeon, E.-Y., & Day, R. R. (2016). The effectiveness of ER on reading proficiency: A meta-analysis. Reading in a Foreign Language, 28(2), 246–265. doi.org/10.64152/10125/66901
- Beglar, D., Hunt, A., & Kite, Y. (2012). The effect of pleasure reading on Japanese university EFL learners’ reading rates. Language Learning, 62(3), 665–703. doi.org/10.1111/j.1467-9922.2011.00651.x
- Huffman, J. (2014). Reading rate gains during a one-semester extensive reading course. Reading in a Foreign Language, 26(2), 17–33. doi.org/10.64152/10125/66879
- Yamashita, J. (2013). Effects of extensive reading on reading attitudes in a foreign language. Reading in a Foreign Language, 25(2), 248–263. doi.org/10.64152/10125/66872
- Nishizawa, H., Yoshioka, T., & Itoh, K. (2010). Extensive reading program which changes reluctant engineering students into autonomous learners of English. Journal of JSEE, 58(3), 12–17. doi.org/10.4307/jsee.58.3_12
- Waring, R., & Takaki, M. (2003). At what rate do learners learn and retain new vocabulary from reading a graded reader? Reading in a Foreign Language, 15(2), 130–163. doi.org/10.64152/10125/66776
- リセマム (2026年2月20日).「【大学受験2026】共通テスト英語は新課程2年目で出題の質に変化あり! J PREPが難易度を分析」 resemom.jp/article/2026/02/20/85145.html
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