やり方・コツ

多読と音読・シャドーイングの組み合わせ方

多読で「読む力」がついてきたら、声に出す練習も取り入れたくなります。音読やシャドーイングは、多読と組み合わせることで効果を発揮しやすくなります。この記事では、それぞれの方法の違い、研究でわかっていること、具体的な組み合わせ方を紹介します。

用語の整理:音読・オーバーラッピング・シャドーイング

まず、よく似た練習方法を整理しておきましょう。

  • 聞き読み:音声を聞きながら、文字を目で追う。声は出さない(聞き読みのやり方)。
  • 音読:文字を見ながら、自分のペースで声に出して読む。
  • オーバーラッピング(パラレル・リーディング):文字を見ながら、音声と同時に声に出して読む。
  • シャドーイング:文字を見ずに、聞こえてきた音声を少し遅れて影(shadow)のように追いかけて声に出す。
  • 繰り返し読み(リピーテッド・リーディング):同じ文章を何度も読んで、なめらかに読めるようにする。

多読が「たくさんの英文を、意味を楽しみながら速く読む」練習だとすると、音読やシャドーイングは「少ない英文を、何度も深く練習する」方法です。性格が正反対だからこそ、組み合わせると互いの弱点を補えます。

研究でわかっていること

シャドーイング:Hamada(2016)は、日本の大学生43人にシャドーイングの授業を行い、音(音素)を聞き取る力は英語力の低いグループと中くらいのグループの両方で向上した一方、高校レベルのリスニング問題の得点が伸びたのは英語力の低いグループだけだったと報告しています。シャドーイングは特に、音を正確に聞き取る「ボトムアップ」の力を伸ばすのに役立つと考えられます。シャドーイングの理論と実践については、門田修平(Kadota, 2019)の研究書にまとめられています。

音声つきの繰り返し読み:Taguchi ら(2004)は、日本の大学生を対象に、音声のお手本を聞きながら同じ文章を繰り返し読む方法(assisted repeated reading)を調べ、黙読の速さを伸ばす点で、多読と同じくらい効果的であり、学習者の読む活動へのとらえ方にもよい影響があったことを示しました。Taguchi ら(2012)は、上級の日本人学習者の日記をもとに、繰り返し読みの最中に頭の中で何が起きているかを長期間追跡しています。

流ちょうさの指導全体について:母語の読みの研究をまとめた Kuhn と Stahl(2003)は、流ちょうさ(fluency)の指導は全体として効果があるものの、それが特定の指導法のおかげなのか、読む量が増えたおかげなのかははっきりしないと述べています。また、お手本などの支援がある方法のほうが支援のない方法より効果的に見えること、同じ文章を繰り返す方法が、繰り返さない方法よりはっきり優れているとはいえないこと、そして抑揚やリズムまで含めた読み方が大切であることも指摘しています。

音声つきの多読:Chang と Millett(2015)は、初級の学習者を対象に、音声を聞きながら読む多読で読む速さと理解の向上を調べています。

これらをまとめると、音読やシャドーイングは「量の多読」を置き換えるものではなく、量の多読に「音の練習」を足すものと考えるのがよさそうです。

素材の選び方:多読より「ひとつ下」のレベル

音読・シャドーイングの素材選びには、多読とは別のコツがあります。

  • 多読のレベルよりひとつ下を選ぶ。声に出す練習は、意味を考える余裕がないと、ただの「音まね」になってしまいます。内容が完全にわかる英文を使いましょう。
  • 短い文章を選ぶ。1回の練習は100〜200語くらいが目安です。多読ベストの L1〜L2 の話や、イソップ物語の短い話がちょうどよい長さです。
  • 音声があること。シャドーイングとオーバーラッピングには、お手本の音声が欠かせません。
  • 好きな話を選ぶ。何度も繰り返すので、飽きない話、声に出して気持ちのよい話を選びましょう。

5つのステップ(1つの話で15分)

  1. 多読する(すでに読んだ話を選ぶ):まず意味を楽しんで読み、内容を理解しておきます。
  2. 聞き読み(2回):文字を目で追いながら音声を聞きます。区切りや強弱を意識しましょう。
  3. オーバーラッピング(2〜3回):文字を見ながら、音声と同時に声に出します。速さについていけない部分に印をつけます。
  4. シャドーイング(2〜3回):文字を見ずに、音声を少し遅れて追いかけます。最初は小さな声でもかまいません。
  5. 音読(1〜2回):最後に、自分のペースで、意味を思い浮かべながら音読します。場面を思い描いて、気持ちをこめて読みましょう。

最後に、同じレベルの別の話を1〜2話、多読として気持ちよく読むと、練習した音のリズムが新しい英文でも生きてきます。

1日の時間配分の例

  • 15分の日:多読10分+音読・シャドーイング5分
  • 30分の日:多読20分+音読・シャドーイング10分
  • 休日(60分):多読40分+音読・シャドーイング15分+好きな話を通しで音読5分

ポイントは、多読の時間を削らないことです。音読やシャドーイングは疲れやすく、長時間続けるのは大変です。量を読む時間を主役に、声の練習は「仕上げ」として短く行いましょう。

やりがちな失敗

  • 難しすぎる素材でシャドーイングする:意味がわからないまま音だけ追っても、効果は薄くなります。ひとつ下のレベルに戻しましょう。
  • 意味を考えずに音読する:口だけ動かす音読は、ただの作業になります。最後の音読は、場面を思い浮かべながら行いましょう。
  • 毎回、新しい素材を使う:同じ話を数日続けて練習すると、上達を実感しやすくなります。
  • 多読をやめてシャドーイングだけにする:読む量が減ると、語彙や読む速さの伸びが止まりがちです。

子どもや初心者の場合

子どもや英語を始めたばかりの人は、シャドーイングよりも聞き読みと、短い文の音読から始めるのがおすすめです。シャドーイングは、文字を見ずに音を追う、負担の大きい練習だからです。親子で交代しながら音読するのも楽しい方法です(子どもの英語多読)。

まとめ

多読と音読・シャドーイングは、量(多読)と質(声の練習)の組み合わせです。ひとつ下のレベルの短い話を選び、聞き読み→オーバーラッピング→シャドーイング→音読の順に練習し、多読の時間は削らない。これが、両方の効果を引き出すコツです。

よくある質問

多読と音読、どちらを優先すべきですか?

基本は多読を優先し、音読やシャドーイングは短い「仕上げ」として加えるのがおすすめです。流ちょうさの研究をまとめた Kuhn と Stahl(2003)も、指導の効果が読む量の増加によるものかどうかははっきりしないと述べており、読む量を確保することが大切です。

シャドーイングにはどんな効果がありますか?

Hamada(2016)では、シャドーイングの授業で音を聞き取る力が向上し、英語力の低いグループではリスニング問題の得点も伸びました。音を正確に聞き取る力を伸ばす練習として役立つと考えられます。

シャドーイングの素材はどのレベルがよいですか?

多読で読んでいるレベルよりひとつ下の、内容が完全にわかる短い英文がおすすめです。100〜200語くらいで、音声のある話を選びましょう。

音読は毎日何分くらいすればよいですか?

5〜15分程度で十分です。多読の時間を削らないように、多読20分+音読・シャドーイング10分のように、多読を主役にした時間配分にしましょう。

参考文献

  1. Hamada, Y. (2016). Shadowing: Who benefits and how? Uncovering a booming EFL teaching technique for listening comprehension. Language Teaching Research, 20(1), 35–52. doi.org/10.1177/1362168815597504
  2. Kadota, S. (2019). Shadowing as a Practice in Second Language Acquisition. Routledge. doi.org/10.4324/9781351049108
  3. Taguchi, E., Takayasu-Maass, M., & Gorsuch, G. J. (2004). Developing reading fluency in EFL: How assisted repeated reading and extensive reading affect fluency development. Reading in a Foreign Language, 16(2), 70–96. doi.org/10.64152/10125/66783
  4. Taguchi, E., Gorsuch, G. J., Takayasu-Maass, M., & Snipp, K. (2012). Assisted repeated reading with an advanced-level Japanese EFL reader: A longitudinal diary study. Reading in a Foreign Language, 24(1), 30–55. doi.org/10.64152/10125/66670
  5. Kuhn, M. R., & Stahl, S. A. (2003). Fluency: A review of developmental and remedial practices. Journal of Educational Psychology, 95(1), 3–21. doi.org/10.1037/0022-0663.95.1.3
  6. Chang, A. C.-S., & Millett, S. (2015). Improving reading rates and comprehension through audio-assisted extensive reading for beginner learners. System, 52, 91–102. doi.org/10.1016/j.system.2015.05.003

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