イソップ物語で英語多読がはかどる理由と読み方
「ウサギとカメ」「北風と太陽」「アリとキリギリス」。イソップ物語は、日本人なら誰でもいくつか知っているお話です。実はこのイソップ物語、英語多読の教材としてとても優れています。この記事では、その理由と、多読ベストの再話と原文312話の使い方を紹介します。
イソップ物語が多読に向いている5つの理由
1. 短いので「1話読み切った」が毎日味わえる。多読ベストのイソップ原文312話は、19世紀のタウンゼンド訳(1867年)をもとにしています。多読ベストで数えると、313話の語数の中央値は約100語で、半分以上の話が100語未満です。いちばん長い話でも400語ほど。1話を読み切るのに数分しかかかりません。多読を続けるうえで、「読み終えた」という達成感を毎日味わえるのは大きな利点です。
2. 筋を知っている話が多いので、推測しながら読める。「キツネとブドウ」の話を知っていれば、"sour" という語を知らなくても、キツネが何と言ったかは見当がつきます。内容を知っているからこそ、知らない語を飛ばしても迷子にならない。これは多読の基本ルール「わからない語は飛ばす」を練習するのにぴったりです(辞書を引かない多読)。
3. 教訓(moral)があるので、読み終わりがはっきりしている。イソップの多くの話には、最後に教訓がついています。話を読んで、最後の1文で「なるほど」と納得する。この「オチ」があることが、短い話でも満足感を生みます。大人にとっては、皮肉や人生訓としても読みごたえがあります。
4. 同じ登場人物と語が何度も出てくる。キツネ、オオカミ、ライオン、ロバ、ネズミ……。イソップには同じ動物が何度も登場し、同じような場面(だます・助ける・欲張る)が繰り返されます。単語の学習では、同じ語に何度も出会うことが記憶を助けることがわかっています。Uchihara ら(2019)は26の研究(1,918人)をまとめたメタ分析で、語に出会う回数と、読んだり聞いたりする中での偶発的な語彙学習との間に、中程度の関係(r = .34)を報告しました。多読ベストで数えると、原文312話のうち lion は41話、fox は38話、wolf と ass(ロバ)はそれぞれ26話に登場します。イソップを続けて読むと、こうした語や caught(つかまえた)のような語に、自然と何度も出会うのです。
5. パブリックドメインなので、原文まで自由に読める。イソップ物語は作者のいない古い寓話で、タウンゼンド訳も著作権の保護期間が終わったパブリックドメインです。多読ベストでは、やさしい再話から原文まで、同じ話を段階的に読めるようにしています。
再話と原文:同じ話を2つのレベルで
たとえば「ライオンとネズミ」。原文はこう始まります。
- 原文:A LION was awakened from sleep by a Mouse running over his face.
受け身(was awakened)や、running over のような表現が出てきます。さらに先を読むと、entreated(懇願した)、gnawed(かじった)のような、学習者にはなじみの薄い語も出てきます。
一方、多読ベストのいちばんやさしいレベル(L0 Starter)の再話は、こんな文で始まります。
- 再話(L0):A big lion is sleeping. A little mouse runs on his face.
同じ場面でも、文の長さと語彙がまったく違います。まず再話で話の流れをつかみ、そのあと原文に挑戦すると、原文の難しい表現も文脈から推測しやすくなります。
レベル別の読み方
入門(L0〜L1):再話をどんどん読む
- イソップ物語のジャンルページから、自分のレベルの話を選びます。
- 1日3〜5話を目標に。知っている話から読むと、すらすら読める感覚がつかめます。
初級〜中級(L2〜L3):同じ話を2つのレベルで読む
- お気に入りの話は、ひとつ上のレベルの再話も読んでみましょう。同じ話で語彙と文がどう変わるかを感じられます。
中級(L4〜L5):原文に挑戦
- 再話で読んだ話の原文をイソップ原文312話で読みます。100語前後の短い話から始めましょう。
- 原文は古い言い回しもありますが、短いので、わからない部分があっても最後まで読み切れます。
上級(L6):原文を連続で読む
- 312話の原文を合計すると、約3万4,000語になります。全部読めば、それだけで100万語の3%以上です。
イソップ多読をもっと楽しむアイデア
- 教訓を自分のことばで言いかえる。読み終わったら、教訓を日本語か英語で一言にまとめてみましょう。
- 教訓が似ている話を集める。「欲張ると損をする」「小さな者が大きな者を助ける」など、テーマ別に並べると発見があります。
- 日本の昔話と比べる。「欲張りは損をする」という教えは、日本の昔話にもよく出てきます(日本の昔話)。
- 音声を聞きながら読む。短い話は聞き読みや音読・シャドーイングの練習にも最適です。
- 読んだ話を記録する。1話は短くても、記録すれば積み重ねが見えます(読書記録・100万語メーター)。
授業でもイソップは使いやすい
授業で使う先生にとっても、イソップは便利です。1話が短いので、授業の最初の5〜10分で読み切れます。同じ話の再話(やさしいレベル)と原文を並べて読ませれば、レベルの違う生徒が同じ話題で話し合うこともできます。授業での多読の進め方は学校の授業で多読を始める方法をどうぞ。
まとめ
イソップ物語は、短い・知っている・オチがある・繰り返しが多い・原文まで読めるという、多読にうってつけの特徴をそろえています。まずはやさしい再話から読み始め、お気に入りの話を見つけたら、ぜひ原文にも挑戦してみてください。
よくある質問
イソップ物語は子ども向けで、大人には物足りなくないですか?
イソップの教訓には、人間関係や欲望についての鋭い皮肉が多く、大人だからこそ楽しめる面があります。短い話なので、忙しい大人の「1日1話」の習慣にも向いています。
イソップの原文はどれくらい難しいですか?
多読ベストの原文はタウンゼンド訳(1867年)で、受け身や古い言い回しが出てきます。ただし語数の中央値は約100語と短いので、再話で話の流れをつかんでから読めば、中級者でも十分に挑戦できます。
原文312話の出典はどこですか?
Project Gutenberg の電子書籍 #21(George Fyler Townsend 訳、1867年)です。パブリックドメインの本文を、1話ずつ読めるように整えて掲載しています。
知っている話ばかり読んでいて、力はつきますか?
つきます。話を知っていると、知らない語を推測しながら読み進める練習になります。また、同じ語に繰り返し出会うことは語彙の定着を助けます。慣れてきたら、知らない話にも挑戦してみましょう。
参考文献
- Aesop. Three hundred Aesop’s fables (G. F. Townsend, Trans.). Project Gutenberg eBook #21. www.gutenberg.org/ebooks/21
- Uchihara, T., Webb, S., & Yanagisawa, A. (2019). The effects of repetition on incidental vocabulary learning: A meta-analysis of correlational studies. Language Learning, 69(3), 559–599. doi.org/10.1111/lang.12343
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