2026年11月2日(月)
「トイレだけ、スリッパが別なの?」
床の汚れではなく「場所の区切り」の話
日本の家や旅館でトイレのドアを開けると、床にスリッパがもう一足そろえて置いてあります。海外から来た人に、よく驚かれる光景です。答えを先に言うと、あれは「ここから先は別の場所です」という区切りのしるしです。
答えは「場所を分ける」ため
日本の家では、玄関で靴を脱ぎ、外と家の中を分けます。トイレのスリッパは、家の中でもう一度、同じような区切りをつけるものです。トイレは家の中でも特に汚れやすい場所と考えられてきたので、そこで使った履き物を、居間や寝室に持ち込まないようにしています。
大事なのは、実際の汚れ具合よりも「分ける」という考え方のほうです。いまのトイレはきれいに掃除されていることが多いのですが、それでも別のスリッパを置く家はたくさんあります。用を足す場所と、くつろぐ部屋とを分けて考える感覚が、暮らしの中に残っているからです。
昔のトイレは、母屋の外
水洗トイレが広まる前は、くみ取り式のトイレが一般的で、家によっては母屋から離れた場所や、縁側の端に作られていました。日本語には、トイレを遠回しに言う「はばかり」「ご不浄」という古い言い方があります。「不浄」は「清らかでない」という意味で、トイレをほかの部屋とは違う場所と見てきたことが、言葉からも分かります。
スリッパそのものは、明治時代の初め、靴を脱ぐ習慣のない外国人が、靴の上から履いて家に上がれるように作られたのが始まりといわれます。もともと外国人のための履き物が、いまでは日本の家の中の区切りを守る道具になっているわけです。
定番の失敗と、変わりつつある家
外国から来た人がよくするのが、トイレのスリッパを履いたまま廊下や居間に戻ってくることです。日本人でも、小さいころに家族から注意された覚えのある人は多いでしょう。旅館や病院、学校、お寺の一部にも同じ仕組みがあるので、旅行の前に伝えておくと親切です。
ただし、トイレ用のスリッパを置かない家もあります。掃除のしやすさなどを考えて、置かないと決めている家庭もあるからです。どうするかは家庭によって違うので、「日本人は全員そうする」とは言わないのが正確です。
英語で言うと
Toilet slippers aren't just about dirt; they're about keeping places separate. In Japan, you take off your shoes at the door to keep the outside out, and the toilet slippers do the same thing inside the house, so what you wear in the toilet doesn't go into the living room. Not every home does this anymore, but if you see a pair by the toilet, just remember to leave them there when you come out.
トイレのスリッパは、汚れだけの問題ではなく、場所を分けるためのものです。日本では、外のものを持ち込まないように玄関で靴を脱ぎますが、トイレのスリッパは家の中で同じことをしていて、トイレで履いたものを居間に持ち込まないようにしています。いまはすべての家がそうしているわけではありませんが、トイレの前にスリッパがあったら、そこに置いて出ることだけ覚えておいてください。
このコラムから、使えるフレーズ
- Those slippers are only for the toilet.そのスリッパはトイレ専用です。
- Please switch back to your other slippers when you come out.出るときは、もとのスリッパに履き替えてください。
- Oops, you're still wearing the toilet slippers.あ、トイレのスリッパのままですよ。
- It's about keeping the toilet separate from the rest of the house.トイレとほかの部屋を分けるためなんです。
- Some homes don't bother with them anymore.最近は置いていない家もあります。