Manœuvering(第7章 軍争篇)の挿絵

📕 孫子の兵法 全13章の 7番目 目次 ↓

Manœuvering

第7章 軍争篇

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あらすじ敵より先に有利な場所を取る争いほど難しいものはありません。遠回りに見えて実は近道となる「迂直の計」、そして武田信玄の旗印で知られる「風林火山」のもとになった一節がこの章にあります。

孫子『孫子の兵法(The Art of War)』第7章(軍争篇)、ライオネル・ジャイルズ英訳(1910年)の本文(注釈なし)。底本: Project Gutenberg eBook #17405

キーワード(12語)本文の点線の語はタップで意味が出ます
  • devious遠回りの
  • circuitous回り道の
  • enticing誘い出す
  • multitude群衆
  • dissimulation偽装
  • forced marches強行軍
  • precipices断崖
  • gongs銅鑼(どら)
  • banners旗
  • plundering略奪
  • immovability動かないこと
  • desperate必死の、追いつめられた
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1. Sun Tzŭ said: In war, the general receives his commands from the sovereign.

1. 孫子は言う。戦では、将軍は君主から命令を受ける。

2. Having collected an army and concentrated his forces, he must blend and harmonise the different elements thereof before pitching his camp.

2. 兵を集めて軍を一つにまとめたら、陣を張る前に、軍のさまざまな部分をよく調和させなければならない。

3. After that, comes tactical manœuvering, than which there is nothing more difficult. The difficulty of tactical manœuvering consists in turning the devious into the direct, and misfortune into gain.

3. それから、敵と有利な位置を争う駆け引きに入る。これほど難しいものはない。その難しさは、回り道をまっすぐな近道に変え、不利を有利に変えるところにある。

4. Thus, to take a long and circuitous route, after enticing the enemy out of the way, and though starting after him, to contrive to reach the goal before him, shows knowledge of the artifice of deviation.

4. わざと遠い回り道をし、えさで敵をおびき寄せてその道からそらす。そうして、敵より後に出発しながら、敵より先に目的地に着く。これができる者は、回り道を近道に変える計略を知っているのである。

5. Manœuvering with an army is advantageous; with an undisciplined multitude, most dangerous.

5. よく訓練された軍で駆け引きをすれば有利になる。だが、規律のない群れで駆け引きをするのは、とても危険である。

6. If you set a fully equipped army in march in order to snatch an advantage, the chances are that you will be too late. On the other hand, to detach a flying column for the purpose involves the sacrifice of its baggage and stores.

6. 有利な地を奪おうとして、装備をすべて持ったまま全軍を進めれば、たいてい間に合わない。かといって、身軽な部隊だけを先に行かせれば、荷物や物資を捨てることになる。

7. Thus, if you order your men to roll up their buff-coats, and make forced marches without halting day or night, covering double the usual distance at a stretch, doing a hundred li in order to wrest an advantage, the leaders of all your three divisions will fall into the hands of the enemy.

7. 兵士によろいを脱いで巻かせ、昼も夜も休まずに急がせ、ふだんの倍の道のりを一気に進ませる。そうして百里も進んで有利な地を奪おうとすれば、三つの軍の大将は皆、敵に捕らえられてしまう。

8. The stronger men will be in front, the jaded ones will fall behind, and on this plan only one-tenth of your army will reach its destination.

8. 強い者は先に進み、疲れた者は遅れる。このやり方では、目的地に着けるのは全軍の十分の一だけである。

9. If you march fifty li in order to outmanœuver the enemy, you will lose the leader of your first division, and only half your force will reach the goal.

9. 敵を出し抜こうとして五十里も急げば、先鋒の大将を失い、目的地に着けるのは兵の半分だけである。

10. If you march thirty li with the same object, two-thirds of your army will arrive.

10. 同じ目的で三十里急げば、着けるのは全軍の三分の二である。

11. We may take it then that an army without its baggage-train is lost; without provisions it is lost; without bases of supply it is lost.

11. だから、荷物を運ぶ部隊のない軍は滅びる。食糧のない軍は滅びる。補給のよりどころのない軍は滅びる。

12. We cannot enter into alliances until we are acquainted with the designs of our neighbours.

12. 近隣の国々のもくろみを知らないうちは、同盟を結ぶことはできない。

13. We are not fit to lead an army on the march unless we are familiar with the face of the country—its mountains and forests, its pitfalls and precipices, its marshes and swamps.

13. 山や林、落とし穴や崖、沼や湿地など、土地のありさまをよく知らなければ、軍を率いて進むことはできない。

14. We shall be unable to turn natural advantages to account unless we make use of local guides.

14. 土地の道案内を使わなければ、地の利を生かすことはできない。

15. In war, practise dissimulation, and you will succeed. Move only if there is a real advantage to be gained.

15. 戦では、敵をあざむけば成功する。本当に得があるときにだけ動け。

16. Whether to concentrate or to divide your troops, must be decided by circumstances.

16. 兵を集めるか分けるかは、状況に応じて決めなければならない。

17. Let your rapidity be that of the wind, your compactness that of the forest.

17. 其の疾(はや)きこと風の如く、其の徐(しず)かなること林の如く。動くときは風のようにすばやく、構えるときは林のように静かに、乱れずに。

18. In raiding and plundering be like fire, in immovability like a mountain.

18. 侵掠すること火の如く、動かざること山の如し。攻め入って奪うときは火のように激しく、守るときは山のようにどっしりと動かずにいよ。

19. Let your plans be dark and impenetrable as night, and when you move, fall like a thunderbolt.

19. はかりごとは、夜の闇のように暗く、見通せないものにせよ。そして動くときは、雷のように一気に襲いかかれ。

20. When you plunder a countryside, let the spoil be divided amongst your men; when you capture new territory, cut it up into allotments for the benefit of the soldiery.

20. 敵の土地で略奪したら、奪ったものは兵士たちに分け与えよ。新しい土地を手に入れたら、それを分けて兵士たちに与えよ。

21. Ponder and deliberate before you make a move.

21. よく考え、はかってから動け。

22. He will conquer who has learnt the artifice of deviation. Such is the art of manœuvering.

22. 回り道を近道に変える計略を知る者が勝つ。これが、有利を争う駆け引きの術である。

23. The Book of Army Management says: On the field of battle, the spoken word does not carry far enough: hence the institution of gongs and drums. Nor can ordinary objects be seen clearly enough: hence the institution of banners and flags.

23. 『軍政』という書物にこうある。戦場では、声で話しても遠くまで届かない。だから鐘と太鼓を使う。普通の物では、はっきりと見えない。だから旗やのぼりを使う。

24. Gongs and drums, banners and flags, are means whereby the ears and eyes of the host may be focussed on one particular point.

24. 鐘や太鼓、旗やのぼりは、全軍の耳と目を一か所に集めるためのものである。

25. The host thus forming a single united body, is it impossible either for the brave to advance alone, or for the cowardly to retreat alone. This is the art of handling large masses of men.

25. こうして全軍が一つにまとまれば、勇敢な者も一人だけで進むことはできず、臆病な者も一人だけで退くことはできない。これが、大勢の兵を動かす術である。

26. In night-fighting, then, make much use of signal-fires and drums, and in fighting by day, of flags and banners, as a means of influencing the ears and eyes of your army.

26. だから夜の戦いでは、のろしや太鼓を多く使い、昼の戦いでは、旗やのぼりを多く使って、自軍の耳と目に働きかけるのである。

27. A whole army may be robbed of its spirit; a commander-in-chief may be robbed of his presence of mind.

27. 全軍の気力を奪うことができる。総大将の落ち着きを奪うこともできる。

28. Now a soldier's spirit is keenest in the morning; by noonday it has begun to flag; and in the evening, his mind is bent only on returning to camp.

28. 兵士の気力は、朝はもっとも鋭く、昼ごろにはゆるみ始め、夕方には陣に帰ることしか考えなくなる。

29. A clever general, therefore, avoids an army when its spirit is keen, but attacks it when it is sluggish and inclined to return. This is the art of studying moods.

29. だから戦の上手な将軍は、敵の気力が鋭いときは避け、気力がゆるんで帰りたがっているときに攻める。これが、気力を見きわめる術である。

30. Disciplined and calm, to await the appearance of disorder and hubbub amongst the enemy:—this is the art of retaining self-possession.

30. 規律を守り、落ち着いて、敵の中に乱れや騒ぎが起こるのを待つ。これが、心を乱さない術である。

31. To be near the goal while the enemy is still far from it, to wait at ease while the enemy is toiling and struggling, to be well-fed while the enemy is famished:—this is the art of husbanding one's strength.

31. 敵がまだ遠くにいるうちに、こちらは目的地の近くにいる。敵が苦労してもがいている間、こちらはゆったりと待つ。敵が飢えている間、こちらは十分に食べている。これが、力を蓄える術である。

32. To refrain from intercepting an enemy whose banners are in perfect order, to refrain from attacking an army drawn up in calm and confident array:—this is the art of studying circumstances.

32. 旗がきちんとそろっている敵を迎え撃ってはならない。落ち着いて自信をもって陣を構えている軍を攻めてはならない。これが、状況を見極める術である。

33. It is a military axiom not to advance uphill against the enemy, nor to oppose him when he comes downhill.

33. 高いところにいる敵に向かって坂を攻め上ってはならない。坂を下って攻めてくる敵を正面から迎えてはならない。これが兵法の原則である。

34. Do not pursue an enemy who simulates flight; do not attack soldiers whose temper is keen.

34. 逃げるふりをする敵を追ってはならない。意気さかんな兵を攻めてはならない。

35. Do not swallow a bait offered by the enemy. Do not interfere with an army that is returning home.

35. 敵が差し出したえさに食いついてはならない。国へ帰ろうとしている軍の邪魔をしてはならない。

36. When you surround an army, leave an outlet free. Do not press a desperate foe too hard.

36. 敵を包囲するときは、逃げ道を一つ空けておけ。追いつめられた敵を、あまり追い込んではならない。

37. Such is the art of warfare.

37. これが戦の術である。

📖 全訳をまとめて読む 読み終わってからの答え合わせに

1. 孫子は言う。戦では、将軍は君主から命令を受ける。

2. 兵を集めて軍を一つにまとめたら、陣を張る前に、軍のさまざまな部分をよく調和させなければならない。

3. それから、敵と有利な位置を争う駆け引きに入る。これほど難しいものはない。その難しさは、回り道をまっすぐな近道に変え、不利を有利に変えるところにある。

4. わざと遠い回り道をし、えさで敵をおびき寄せてその道からそらす。そうして、敵より後に出発しながら、敵より先に目的地に着く。これができる者は、回り道を近道に変える計略を知っているのである。

5. よく訓練された軍で駆け引きをすれば有利になる。だが、規律のない群れで駆け引きをするのは、とても危険である。

6. 有利な地を奪おうとして、装備をすべて持ったまま全軍を進めれば、たいてい間に合わない。かといって、身軽な部隊だけを先に行かせれば、荷物や物資を捨てることになる。

7. 兵士によろいを脱いで巻かせ、昼も夜も休まずに急がせ、ふだんの倍の道のりを一気に進ませる。そうして百里も進んで有利な地を奪おうとすれば、三つの軍の大将は皆、敵に捕らえられてしまう。

8. 強い者は先に進み、疲れた者は遅れる。このやり方では、目的地に着けるのは全軍の十分の一だけである。

9. 敵を出し抜こうとして五十里も急げば、先鋒の大将を失い、目的地に着けるのは兵の半分だけである。

10. 同じ目的で三十里急げば、着けるのは全軍の三分の二である。

11. だから、荷物を運ぶ部隊のない軍は滅びる。食糧のない軍は滅びる。補給のよりどころのない軍は滅びる。

12. 近隣の国々のもくろみを知らないうちは、同盟を結ぶことはできない。

13. 山や林、落とし穴や崖、沼や湿地など、土地のありさまをよく知らなければ、軍を率いて進むことはできない。

14. 土地の道案内を使わなければ、地の利を生かすことはできない。

15. 戦では、敵をあざむけば成功する。本当に得があるときにだけ動け。

16. 兵を集めるか分けるかは、状況に応じて決めなければならない。

17. 其の疾(はや)きこと風の如く、其の徐(しず)かなること林の如く。動くときは風のようにすばやく、構えるときは林のように静かに、乱れずに。

18. 侵掠すること火の如く、動かざること山の如し。攻め入って奪うときは火のように激しく、守るときは山のようにどっしりと動かずにいよ。

19. はかりごとは、夜の闇のように暗く、見通せないものにせよ。そして動くときは、雷のように一気に襲いかかれ。

20. 敵の土地で略奪したら、奪ったものは兵士たちに分け与えよ。新しい土地を手に入れたら、それを分けて兵士たちに与えよ。

21. よく考え、はかってから動け。

22. 回り道を近道に変える計略を知る者が勝つ。これが、有利を争う駆け引きの術である。

23. 『軍政』という書物にこうある。戦場では、声で話しても遠くまで届かない。だから鐘と太鼓を使う。普通の物では、はっきりと見えない。だから旗やのぼりを使う。

24. 鐘や太鼓、旗やのぼりは、全軍の耳と目を一か所に集めるためのものである。

25. こうして全軍が一つにまとまれば、勇敢な者も一人だけで進むことはできず、臆病な者も一人だけで退くことはできない。これが、大勢の兵を動かす術である。

26. だから夜の戦いでは、のろしや太鼓を多く使い、昼の戦いでは、旗やのぼりを多く使って、自軍の耳と目に働きかけるのである。

27. 全軍の気力を奪うことができる。総大将の落ち着きを奪うこともできる。

28. 兵士の気力は、朝はもっとも鋭く、昼ごろにはゆるみ始め、夕方には陣に帰ることしか考えなくなる。

29. だから戦の上手な将軍は、敵の気力が鋭いときは避け、気力がゆるんで帰りたがっているときに攻める。これが、気力を見きわめる術である。

30. 規律を守り、落ち着いて、敵の中に乱れや騒ぎが起こるのを待つ。これが、心を乱さない術である。

31. 敵がまだ遠くにいるうちに、こちらは目的地の近くにいる。敵が苦労してもがいている間、こちらはゆったりと待つ。敵が飢えている間、こちらは十分に食べている。これが、力を蓄える術である。

32. 旗がきちんとそろっている敵を迎え撃ってはならない。落ち着いて自信をもって陣を構えている軍を攻めてはならない。これが、状況を見極める術である。

33. 高いところにいる敵に向かって坂を攻め上ってはならない。坂を下って攻めてくる敵を正面から迎えてはならない。これが兵法の原則である。

34. 逃げるふりをする敵を追ってはならない。意気さかんな兵を攻めてはならない。

35. 敵が差し出したえさに食いついてはならない。国へ帰ろうとしている軍の邪魔をしてはならない。

36. 敵を包囲するときは、逃げ道を一つ空けておけ。追いつめられた敵を、あまり追い込んではならない。

37. これが戦の術である。

日本語訳:多読ベスト

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このお話の教訓 Moral

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Let your rapidity be that of the wind, your compactness that of the forest; in raiding be like fire, in immovability like a mountain.

疾きこと風の如く、徐かなること林の如く、侵掠すること火の如く、動かざること山の如し。

理解度チェック Quick Quiz

読み終わったら、3問だけ。間違えても大丈夫。多読は「だいたいわかる」で十分です。

Q1. In immovability, what should an army be like?

Q2. Why are gongs, drums, banners and flags used?

Q3. What should you do when you surround an army?

この読み物の使い方 3ステップ

  1. 聞きながら読む 音声に合わせて光る文を目で追う(聞き読み)。わからない語は飛ばしてOK。
  2. 音声なしで読む ⏱計測ボタンで読む速さ(WPM)を測ってみる。
  3. 耳だけで聞く 🎧聞くだけモードで、文字を見ずに内容がわかるか試す。🔁1文リピートで音読・シャドーイングも。

聞き読みの効果とやり方/多読三原則

📕 孫子の兵法 The Art of War

全13章・10,880語。1章ずつ、音声と全訳つきで読めます。

目次(全13章)
  1. 第1章 計篇 636語
  2. 第2章 作戦篇 599語
  3. 第3章 謀攻篇 690語
  4. 第4章 形篇 485語
  5. 第5章 勢篇 668語
  6. 第6章 虚実篇 1,050語
  7. 第7章 軍争篇 917語
  8. 第8章 九変篇 426語
  9. 第9章 行軍篇 1,224語
  10. 第10章 地形篇 999語
  11. 第11章 九地篇 1,898語
  12. 第12章 火攻篇 542語
  13. 第13章 用間篇 746語

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