もくじ(11項目)
校種をえらぶと、このページをその校種の内容だけにしぼれます。
ひとことで言うと
1つの教材を複数時間で扱い、じっくり考え議論する道徳へ
- 目標・評価・内容項目の枠組みは今のまま。次は「考え、議論する道徳」をすべての学校で実際に行う段階(「実装」)と位置付けられた。
- 1つの教材を翌週などにまたがって2コマ以上でじっくり扱う「複数時間」と、教科書に新しく入る「深める教材」が改善の柱。中学校は13コマ分程度が目安。
- 特別活動・社会科などとの連携、教師が交代で学級を回る「チームで行う道徳授業」、AIや情報モラルの扱い、デジタル活用の注意点も示された。
校種ごとに、やさしく解説
小学校 道徳はどう変わる?
やさしく言うと道徳科の目標は今の書き方を保ち、「考え、議論する道徳」を授業で実際に行えるようにする方向です。今は1時間に1つの読み物教材を扱い、登場人物の気持ちを読み取るだけで終わる授業が課題とされました。そこで1つの教材を複数時間で扱い、じっくり考える授業を進めます。小学校では発達の段階に合わせ、低学年ではとくに慎重に考える方向です。
1つの教材を「複数時間」で扱う
1つの教材を2コマ以上に分けて扱う授業を進める方向です。連続した2コマではなく、翌週に続けて扱うことが想定されています。2コマ目には、読み物ではない「深める教材」を使うことも考えられています。低学年では、複数時間の運用に慎重であるべきとの意見も出ています。 P309P312
教室では、たとえば:たとえば高学年で、1週目に教材を読んで問いを立て、翌週にその問いを話し合いや役割演技で深めることが考えられます。
「深める教材」の目安は高学年8・中学年4
教科書の読み物教材を精選し、「深める教材」を充実させる方向です。深める教材の数の目安は、小学校高学年で8、中学年で4、低学年で0とされています。読み物教材と合わせて35コマ分です。これは国が示す教科書のイメージとしての目安です。 P312P313
教室では、たとえば:たとえば中学年では、2時間扱いにする教材を学年で年に数回だけ選び、子供の様子を見ながら広げていくことが考えられます。
「深い学び」の2つの視点
道徳科の「深い学び」の手がかりとして、2つの視点を示す方向です。1つは「多面化・多角化」で、ものの見方が一つから多方面に広がることです。もう1つは「自我関与」で、自分との関わりで価値の理解が深まることです。 P308
教室では、たとえば:たとえば「主人公はどうすればよかったか」に加えて、「自分ならどうするか、なぜか」を問う発問を1つ入れることが考えられます。
端末で意見を共有するときの配慮
端末で意見を見える形にしたり共有したりする活用が示される一方、配慮も求められています。共有が「言いたくないことまで言わされる」圧力にならないようにすることです。家族愛では多様な家族の形、生命の尊さでは病気などへの配慮が必要とされています。 P316
教室では、たとえば:たとえば家族を扱う授業では、全体での共有はせず、自分のノートに書くだけでもよい選択肢を用意することが考えられます。
中学校 道徳はどう変わる?
やさしく言うと中学校でも、道徳科の目標は今の書き方を保ちつつ、1つの教材を複数時間で扱う授業を進める方向です。深める教材の目安は13とされ、読み物教材は精選されます。また、先生が交代で学級を回って授業する「チームで行う道徳授業」を、学校の実態に応じて導入できると明確にする方向です。情報モラルやAIをめぐる問いを扱うことも示されています。
複数時間と「深める教材」(目安13)
1つの教材を翌週にまたいで複数時間で扱う授業を進める方向です。教科書の読み物教材を精選し、2コマ目などで使う「深める教材」を充実させます。中学校の深める教材の目安は13で、読み物教材と合わせて35コマ分とされています。 P309P312
教室では、たとえば:たとえば1時間目で教材から問いを出し合います。翌週は別の資料も使い、その問いについて立場を変えながら議論することが考えられます。
先生が交代で回る「チームで行う道徳授業」
今の中学校の学習指導要領は、道徳科を学級担任が行うことを原則としています。次期は、先生が交代で学級を回る方法を導入できると明確にする方向です。同じ教材で授業を重ね、指導力を高められることなどが理由です。生徒の成長を見取りにくいといった留意点も示されています。 P315
教室では、たとえば:たとえば学年の先生で教材を分担して各クラスを回り、生徒の発言や様子をメモで担任に伝える仕組みを作ることが考えられます。
葛藤を2つの型で考える
問題解決的な学習で扱う「問題」の例を、2つに整理して解説で示す方向です。「価値の実現をめぐる葛藤」は、よいと分かっていても行動が難しい場面です。「価値の対立をめぐる葛藤」は、一方を取ると他方が損なわれる場面です。 P311
教室では、たとえば:たとえば「友達との関係を大切にするか、公平さを守るか」のように、2つの価値がぶつかる場面で話し合うことが考えられます。
情報モラルとAIをめぐる問い
誤った情報の拡散や闇バイトへの関与など、ネットのリスクが増えています。情報モラルは、してはいけないと分かっていても、なぜしてしまうのかを考え議論する扱いに見直す方向です。「何のために、どこまでAIを使うか」といった問いを扱えることも示されています。 P314
教室では、たとえば:たとえば「宿題や作品づくりを、AIにどこまで手伝わせてよいか」を考え、その理由を出し合う授業が考えられます。
小・中・高で10秒
| 小学校 | 1つの教材を翌週などにまたいで複数時間で扱う。「深める教材」は高学年8・中学年4が目安 |
|---|---|
| 中学校 | 複数時間での扱いと「深める教材」(13程度が目安)。教師が交代で学級を回る授業も可 |
| 高校 | 道徳科はなし。在り方生き方の中核的な指導の場面に、公共・倫理・特活に加え総合を追加 |
| 高校の科目 | — |
道徳の授業アイデア(次期を先取り)
主な変更点(審議まとめより)
今の道徳科は1時間に1つの読み物教材を扱うことが多く、登場人物の気持ちの読み取りで時間が終わり、考えを深めるところまで届かないという課題が指摘されています。そこで、発達の段階をふまえながら、1つの教材を複数のコマで扱い「じっくりと深く学ぶ」授業を進めるとされました。複数コマは連続2コマではなく、翌週に続けて扱うことを想定しています。同じ内容項目を深める形(パターン1)と、関連する別の内容項目も扱う形(パターン2)の両方があり得るとされています。 P301P309
今の教科書は各学年35コマ分の読み物教材が基本で、それが「1時間に1つの読み物教材」という授業につながっていると指摘されました。今後は読み物教材を精選し、2コマ目などで使う「深める教材」(読み物より簡素で、話し合いや体験的な学習につなげやすい教材)を教科書発行者が開発する方向です(教科書での示し方は今後検討)。深める教材の目安は中学校13、小学校高学年8、中学年4、低学年0で、読み物教材と合わせて35コマ分とされました。なお資料編(m4 P88)では、これは教科書のイメージであり、現場の実践を制限するものではないと注記されています。 P312P313
「問題解決的な学習」と「道徳的行為に関する体験的な学習」(役割演技、動作化、当事者に会う活動など)について、趣旨と具体例が示され、活動そのものが目的にならないよう注意することや、これら以外の方法も含めて多様な実践をすすめることを明確にするとされました。学習で扱う「問題」の例は、これまでの4項目から、「価値の実現をめぐる葛藤」(分かっているのに行動が難しい)と「価値の対立をめぐる葛藤」(一方を取ると他方が損なわれる)の2つに整理して解説で示すとされました。価値の対立を扱うときは、主題に関連して複数の内容項目を設定できることも解説で明確化するとされました。感情の認識や調整に関わる学びも、体験的な学習の一例として解説で示すとされました。 P310P311
現行の解説をもとに、「多面化・多角化」(ものの見方が一面的から多面的・多角的に広がること)と「自我関与」(自分との関わりで道徳的価値の理解が深まること)を、道徳科の「深い学び」の2つの視点として、現場で使えるイメージを示すとされました。登場人物の心情理解や、分かりきった善悪を確認して終わる授業からの転換をねらいとしています。 P301P308
現行の中学校学習指導要領では道徳科の指導は「学級担任が行うことを原則」としつつ、解説で交代で回る取組も効果的としています。次期では、同じ教材で繰り返し授業をすることで経験の浅い教師も含めて指導力が上がることなどから、学校の実態に応じて教師が交代で学年・学級を回って授業する方策を導入できることを明確化するとされました。一方で、子供の成長を見取りにくい、低学年では同じ先生の方が安心して発言できる、といった留意点も示されています。負担軽減だけが目的にならないことも注意されています。 P315
道徳科は「道徳教育の要」として、各教科等で行う道徳教育を補い、深め、まとめる役割を持ちます。各教科の「内容の取扱い」にある道徳教育の記載は維持したうえで、その趣旨を解説でより具体的に示すとされました。特に特別活動とは、道徳科で考え議論したことを学級のルールづくり(合意形成)や自分の行動選択(意思決定)に生かす関係を、参考資料で分かりやすく示すとしています。主権者教育を進める社会科・特別活動の方向性とも連携し、道徳的価値やその葛藤を扱うことを解説で示すとされました。 P302P303P304
総則の道徳教育の記載は現行を維持するのが基本です。そのうえで、高校の全体計画も小中と同じく「重点目標」を書くなど、小・中・高で書き方をそろえるとされました。「道徳教育推進教師」は役割の共通理解が十分でないため、国が役割や、過度な負担なく取り組める実践例の資料を提供するとされています。高校では「人間としての在り方生き方に関する中核的な指導の場面」に、公民科(公共、倫理)と特別活動に加えて総合的な探究の時間を新たに位置付けることが提案されています。ただし、総合で道徳教育のための時間を別にとる必要はないと注意されています。 P304P305P100
AIによる大量の情報や誤情報、低年齢からの情報発信・拡散、デジタル・タトゥーや闇バイトへの関与などのリスクが増えたことを受け、情報モラルの扱いを解説で見直すとされました。「してはいけない」と分かっていることも、なぜしてしまうのかという心の弱さと関わらせて考え議論することや、炎上投稿のリポストのように単純な正誤では判断しにくい問いと向き合う機会を設けることが示されています。また「何のために、どこまでAIを使うか」などAIが生む道徳的な課題を、教材で扱えることを解説で示すとされました。 P314
今からできる準備
道徳とAI
AIなどの発展は、偽・誤情報やフィルターバブルによる価値観への影響だけでなく、AIへの過度の依存やELSI(倫理的・法的・社会的課題)など新しい道徳的課題も生んでいます。「AI時代の自らの人生の舵取り」の点からも、道徳教育の重要性が増しているとされています。 P301
AIをめぐる問いの例として、「何のために、どこまでAIを使うべきか、そもそも何のために学ぶのか」「AIの出力や、AIで個人向けに選ばれた情報をどう受け止め判断するか」が挙がっています。発達段階をふまえ、AIの道徳的課題を教材で扱えることを解説で示し、技術の変化に合わせて見直すとされています。 P314
AIに異なる立場の意見を出させる実践があり、考えを多面的・多角的にするうえで一定の効果が期待できるとされています。ただし、AIの回答を正解として扱わず道徳的価値との関わりで批判的に吟味すること、自分で考えた後に補助的にAIを使うなど、迷いや葛藤を含めて子供自身が考える機会を確保することが留意点です。 P316P317資料P90
10年前と比べ、AIによる大量の情報生成を含めて、正しい情報と誤情報の見分けが難しくなっていることなどが指摘されています。 P314
- 自分の考えを持った後に、教師がAIに異なる立場の意見を示させ、批判的に吟味させる(根拠P316、P317)
- 「何のために、どこまでAIを使うべきか」を道徳的な問いとして話し合う(根拠P314)
現行⇔次期 新旧比較
授業の進め方
1授業で1つの読み物教材を扱うことが多い。学習指導要領には「一つの内容項目を複数の時間で扱う指導」も例として書かれている。
1つの教材を翌週にまたがるなど複数コマで扱い、2コマ目に「深める教材」や問題解決的・体験的な学習を組み合わせて「じっくりと深く学ぶ」。
教科書の教材構成
各学年の教科書に35コマ分のいわゆる「読み物教材」が載っているのが基本。
読み物教材を精選し、「深める教材」と合わせて35コマ分に。深める教材の目安は中学校13、小学校高学年8、中学年4、低学年0。
問題解決的な学習で扱う「問題」の例
平成28年の報告で4項目(価値が実現されていない問題、理解不足や誤解の問題、分かっているのにできない葛藤、複数の価値の対立)を例示。
「価値の実現をめぐる葛藤」「価値の対立をめぐる葛藤」の2項目に整理して解説で例示。価値の対立を扱う際は複数の内容項目を設定できると明確化。
道徳科の授業者
中学校は「学級担任が行うことを原則」。解説で、教師が交代で学年の全学級を回る取組も効果的と記載。
学校の実態に応じ、教師が交代で学年・学級を回って授業する方策の導入が可能と明確化(導入時の留意点も示す)。
全体計画の書き方(高校)
小中は「重点目標」を設定、高校は「指導の方針や重点」を明らかにする。
高校も全体計画に「重点目標」を書くなど、小・中・高で規定に連続性を持たせる。
高校の「人間としての在り方生き方に関する中核的な指導の場面」
公民科(公共、倫理)と特別活動。
公民科(公共、倫理)と特別活動に加え、総合的な探究の時間を新たに位置付ける。
目標・見方考え方・評価
目標は発達段階に応じて書き分け。見方・考え方は目標と別に示さない。評価は数値でなく記述式、大くくりのまとまりで、他者と比べない個人内評価。調査書に書かず入試に使わない。
いずれも現行の考え方を維持。資質・能力を観点別に分けて扱わない整理も継続。
内容項目の文言(中学校の例)
[家族愛,家庭生活の充実]「父母,祖父母を敬愛し」、[友情,信頼]「心から信頼できる友達をもち」。
例えば「父母、祖父母等の家族」、「友達と互いに信頼し合い」とするなど記載を見直す。
現行の学習指導要領・解説の原文(公式PDF)は資料室にまとめています。
授業時数・単位
道徳科の授業時数を変えるという記述はない。本文では道徳科は「35単位時間の授業が行われることが前提」とされる(P304注、P309)。ただし現行の標準授業時数は小学校1年のみ34単位時間で、小学校2年以上と中学校が35単位時間。時数全体の見直しでは、現在35コマ以下の教科等からは時数を減らさない方針(P79)で、調整授業時数制度でも35コマ以下の教科等は減らせない(P32)。ソーシャルスキル育成などは道徳や特別活動(学級活動)への調整授業時数の上乗せで対応することも考えられるとされる(P33)。
校種ごとのページ・図解アニメ
ほかの教科も見る
出典:中央教育審議会 初等中等教育分科会 教育課程部会「次期学習指導要領等に向けた審議まとめ」(2026年10月5日)。P○ は本体PDFのページ、資料P○ は資料編のページ(クリックで該当ページが開きます)。


