次期学習指導要領とのつながり

複数時間価値の対立をめぐる葛藤深める教材
審議まとめは、1時間に1つの読み物教材を扱う授業では心情理解や登場人物の整理で時間がかかり、考えを深めるところまで届きにくいと指摘し、1つの教材を複数時間で扱う授業を一層進めるとしています。複数時間は連続した2コマではなく翌週の扱いを想定し、2コマ目に読み物ではない「深める教材」を使うことも想定されています。問題解決的な学習で扱う問題の例として「価値の対立をめぐる葛藤」が示され、具体例に「友情、信頼」と「公正、公平、社会正義」の対立が挙がっています。価値の対立を扱う際は、主題と関連して複数の内容項目を設定できることを解説で明確にする方向です。この授業はその方向性をふまえ、答えを1つにまとめずに考えを深める構成にしています。 P303P308P309P310P311P312P313
ねらい
友達を大切にしたい気持ちと、公平でありたい気持ちがぶつかる場面について、さまざまな立場から考え、自分ならどう判断し行動するかを理由とともに深める。
準備するもの
- 教師が自作した短い場面文(A4半分程度。例:同じ班の友達が、締め切りを過ぎた提出物をこっそり先生の机の山に紛れ込ませようとしているのを見てしまう)
- 2コマ目用の「条件カード」4〜5枚(2〜3行の簡素なもの。例:友達には家族の看病という事情があった/ほかの班員は締め切りに間に合わせるために遅くまで作業した)
- 1コマ目のワークシート(紙でもデジタルでも可。2コマ目に読み返せるよう保存する)
- 立場の分布を示す数直線(黒板またはデジタル)
手順
- 【1コマ目】導入。「友達のためにしたことが、ほかの人にとって不公平になることはあるだろうか」と問い、数人に短く聞きます。自分の体験を話したくない人は話さなくてよいと最初に伝えます。5分
- 場面文を読み、「ここで何が問題になっているのか」を個人で書きます。登場人物の気持ちの読み取りに時間をかけず、問題を見いだすことに絞ります。10分
- 「見なかったことにする」「友達に直接言う」「先生に伝える」など取り得る行動を出し合い、それぞれの行動で大切にされるもの・損なわれるものを表に整理します。15分
- 数直線(友達を大切にしたい⇔公平でありたい)に自分の位置を置き、3〜4人で理由を交流します。少数の位置にいる人の理由を全体で取り上げます。15分
- 「今の時点の自分の考え」をワークシートに書いて保存し、「来週は条件が変わったらどうなるかを考えます」と予告します。5分
- 【2コマ目(翌週)】1コマ目の自分の考えを読み返し、学級全体の数直線の分布を再び示します。5分
- 条件カードをグループに1枚ずつ配り、「この条件なら判断は変わるか。変わらないなら、何が変わらないのか」を話し合います(深める教材としての活用)。15分
- 役割演技。友達に直接声をかける場面を2〜3通り即興で演じ、見ている人は「言われた側はどう受け取ったか」「公平さは守られたか」を観察して伝えます。10分
- 全体で「どの条件でも大切にしたいもの」を出し合います。教師は1つの結論にまとめず、出てきた考えを板書で並べて示します。10分
- 「1週目の自分の考えと比べて、変わったこと・変わらなかったこと」と「自分の生活で似た場面に出会ったら」を書きます。10分
評価(見取り)のポイント
道徳科の評価は、数値ではなく記述で、他の生徒と比べない個人内評価とする現行の考え方を維持する方向です。1コマ目と2コマ目の記述を比べ、一面的な見方から多面的・多角的な見方へ広がっているか(多面化・多角化)、自分自身との関わりで考えているか(自我関与)に注目し、1回の授業だけでなく大くくりのまとまりの中で見取ります。どちらの結論を選んだかでは評価しません。
うまくいくコツ・アレンジ
- 2コマ目までの1週間で考えが変わってもよいと伝え、1コマ目のワークシートは必ず保存しておきます。
- 条件カードは長い読み物にせず2〜3行にすると、話し合いや役割演技の時間を確保できます。
- 身近な友達の名前やいじめの体験が出そうなときは、教材の中の出来事として考えるよう促し、自分の体験を話すことは求めません。
アレンジ
- 小学校高学年では、題材を休み時間の遊びのルールなど身近な場面にし、2コマ目は役割演技を中心にします。
- 2コマ目で出た「どの条件でも大切にしたいもの」を、学級活動での学級のルールづくりにつなげることも考えられます(特別活動との連携)。
ほかのアイデア
※ 次期学習指導要領は告示前です。審議まとめ(2026年10月5日)の方向性をふまえた原田英語.comのオリジナルのアイデアです。