2026年9月29日(火)
「『いらっしゃいませ』に返事しないの?」
無視しているのではなく、返事のいらない言葉の話
日本の店に入ると、店員が「いらっしゃいませ!」と声をかけます。ところが、返事をする客はほとんどいません。外国人から見ると、挨拶を無視しているように見えるこの場面、実は返事をしないのが普通です。
答えは「返事はいらない」
「いらっしゃいませ」は、「こんにちは」のように返事を求める挨拶ではありません。店が客を迎え入れる合図のようなもので、客は黙って入っても失礼にはなりません。気になるなら、軽くうなずくか、小さく会釈すれば十分です。
英語圏では、店員に「Hi, how are you?」と声をかけられたら、何か返すのが礼儀とされる場面が多いので、この沈黙は冷たく見えます。けれども日本では、店員と客が挨拶を交わさないのは、ごく普通の光景です。
実は「どうぞお入りください」
返事がいらない理由は、言葉の形にあります。「いらっしゃいませ」は、「来る」の尊敬語「いらっしゃる」に、丁寧な「ます」の命令形「ませ」が付いたものです。つまり文法の上では、「どうぞおいでください」という、相手に向けたお願いの言葉です。
英語で言えば「Welcome」や「Come on in」に近く、「How are you?」のような問いかけではありません。「ようこそ」と言われて「ようこそ」と返す人がいないのと同じで、答える形になっていないのです。
客が口を開く場面
客が何も言わないわけではありません。会計で品物を出すときに「お願いします」、飲食店を出るときに「ごちそうさまでした」と言う人は多く、店員も「ありがとうございました」と返します。客が話すのは、入るときではなく、用事があるときと帰るときです。
反対に、人の家では返事が必要です。家の人が「いらっしゃい」と迎えてくれたら、客は「お邪魔します」と言って上がります。店と家とでは、挨拶の決まりがまったく違うのです。
うるさいと感じる人も
店によっては、一人が「いらっしゃいませ」と言うと、ほかの店員も次々に同じ言葉を繰り返します。活気があって良いと感じる人もいれば、落ち着かない、機械的だと感じる人もいます。小さな個人商店では、常連客と店主が「こんにちは」と普通に挨拶を交わすことも多く、どの店でも同じというわけではありません。
英語で言うと
You don't need to answer when shop staff say irasshaimase. The word is a polite way of saying "please come in," so it works like "welcome," not like "how are you?" Most Japanese customers just walk in without a word, and that isn't rude. If it feels strange, a small nod is enough. You can say thank you at the register or on your way out instead.
店員に「いらっしゃいませ」と言われても、返事はいりません。この言葉は「どうぞお入りください」の丁寧な言い方なので、「お元気ですか」ではなく「ようこそ」のように働きます。日本人の客の多くは何も言わずに入りますが、それは失礼ではありません。落ち着かなければ、軽くうなずけば十分です。お礼は、会計のときや帰りぎわに言えばよいのです。
このコラムから、使えるフレーズ
- Irasshaimase means something like "welcome" or "please come in."いらっしゃいませは「ようこそ」「どうぞお入りください」くらいの意味です。
- You don't have to say anything back.何も返さなくて大丈夫です。
- A small nod is enough if you want to respond.反応したければ、軽くうなずけば十分です。
- People usually say gochisosama deshita when they leave a restaurant.飲食店を出るときは、ふつう「ごちそうさまでした」と言います。
- At someone's home, it's different. You say ojama shimasu when you go in.人の家では違います。上がるときに「お邪魔します」と言います。