2026年9月26日(土)
「106万円の壁」がなくなる
パートの働き方を決めてきた、社会保険の線引きの話
2026年10月、パートやアルバイトの人が勤め先の健康保険と厚生年金に入るかどうかを分けてきた「月額8.8万円以上」という賃金の条件が、撤廃される予定です。年収にするとおよそ106万円にあたるため、「106万円の壁」と呼ばれてきました。撤廃のあとは、週に20時間以上働くかどうかが主な線引きになります。
何が変わるのか
いまの制度では、パートなどの短時間労働者が勤め先の社会保険に入るのは、週の所定労働時間が20時間以上、月額賃金が8.8万円以上、学生ではない、勤め先の従業員数が51人以上、という条件をすべて満たしたときです。厚生労働省は、このうち賃金の条件を2026年10月に撤廃する予定だとしています。
理由は最低賃金です。時給1,016円で週20時間働くと、月の賃金はおよそ8.8万円になります。厚生労働省によると、2025年度の最低賃金は、すべての都道府県で1,016円を超えました。週20時間以上働けば、ほぼ自動的に賃金の条件も満たすようになったため、条件そのものを外すことになりました。
「壁」とは何だったのか
会社員や公務員の配偶者で収入が一定より少ない人は、「第3号被保険者」として、自分で年金や健康保険の保険料を払わずにすみます。ところが年収が106万円や130万円といった線を超えると、自分で保険料を払うことになり、その分だけ手取りが減ることがあります。
そのため、線を超えないように働く時間を調整する人がいました。厚生労働省も、手取りが減るのを避けるために「就業調整」をする人がいると説明しています。働く側は収入を抑え、人手の足りない職場は働ける時間を確保できない、という形で、この線は双方の悩みになってきました。
会社の大きさの条件も消えていく
もう一つの条件である会社の規模も、段階的に外れていきます。いまは従業員51人以上の会社が対象ですが、2027年10月に36人以上、2029年10月に21人以上、2032年10月に11人以上へと広がり、2035年10月には10人以下の会社も対象になります。
新しく保険料を払う人の負担が急に重くならないよう、会社が保険料の一部を多めに負担した場合に、その分を制度全体で支える仕組みも3年間設けられます。
残る「壁」と、増える保障
ただし、「壁」がすべて消えるわけではありません。勤め先の社会保険に入らない人の場合、年収が130万円を超えると配偶者の扶養から外れ、自分で国民年金と国民健康保険に入ることになります。賃金の条件がなくなると、これからは週20時間という時間の線を意識する人が増えそうです。
一方で、勤め先の社会保険に入ると、将来受け取る年金に厚生年金の分が上乗せされ、病気やけがで仕事を休んだときには健康保険から傷病手当金が出るようになります。手取りが減るという面だけでなく、保障が厚くなるという面もあります。外国人に説明するときは、日本の年金と健康保険が、働き方や家族の形と結びついた仕組みだという点から話すと伝わりやすいです。
英語で言うと
In October 2026, Japan plans to drop the rule that part-time workers join their employer's pension and health insurance plans only if they earn about 88,000 yen a month or more. Minimum wages have gone up so much that almost anyone working 20 hours a week already earns that much. Some people used to cut their hours to stay under that line, but from now on the line that matters is mainly 20 hours a week.
2026年10月、日本では、パートの人が勤め先の年金と健康保険に入るのは月に約8万8千円以上稼ぐ場合だけ、という決まりがなくなる予定です。最低賃金が上がり、週20時間働けばほとんどの人がその額を稼ぐようになったからです。以前はその線を超えないよう働く時間を減らす人もいましたが、これからは主に週20時間が分かれ目になります。
このコラムから、使えるフレーズ
- People call it the "1.06 million yen wall."「106万円の壁」と呼ばれています。
- Some part-timers cut their hours to stay under the limit.上限を超えないように、働く時間を減らすパートの人もいます。
- If you work 20 hours a week or more, you may have to join the company's insurance plan.週20時間以上働くと、会社の保険に入ることになる場合があります。
- Your take-home pay may go down a little, but your future pension goes up.手取りは少し減るかもしれませんが、将来の年金は増えます。
- In Japan, pensions and health insurance are closely tied to how you work.日本では、年金や健康保険が働き方と深く結びついています。
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