原田英語の日本文化ナビ EN
いま日本で起きていること仕事・会社

2026年10月3日(土)

カスハラ対策、すべての職場の義務に

「お客様は神様」の国で、働く人を守る仕組みの話

2026年10月1日から、客や取引先からの度を越した言動、いわゆるカスタマーハラスメント(カスハラ)への対策が、事業主の義務になりました。厚生労働省の調査では、こうした相談を受けた企業・団体は3割近くにのぼります。

カスハラ対策、すべての職場の義務に — 「お客様は神様」の国で、働く人を守る仕組みの話

何が義務になったのか

もとになっているのは、2025年6月に改正された労働施策総合推進法です。2026年10月1日からは、会社や店などの事業主が、カスハラから働く人を守るための措置をとらなければなりません。接客やサービスの仕事に限らず、業種を問わず対象になります。

厚生労働省が示している措置は、主に5つです。カスハラには毅然と対応して働く人を守るという方針をはっきりさせ、社内に伝えること。相談の窓口を置くこと。相談があれば事実を確かめ、被害を受けた人に配慮して再発を防ぐこと。特に悪質な場合の対処をあらかじめ決めておくこと。そして、相談した人のプライバシーを守り、相談したことを理由に不利益な扱いをしないことです。

どこからがカスハラか

法律では、①客や取引先、施設の利用者などの言動で、②業務の性質などに照らして社会通念上許される範囲を超え、③働く人の就業環境が害されるもの、の3つをすべて満たすものをカスハラとしています。対面だけでなく、電話やSNSでの言動も含まれます。

範囲を超える例として挙げられているのは、商品と全く関係のない要求、対応がとても難しい要求、不当な損害賠償の要求、暴言や脅し、しつこく繰り返す言動、長時間の居座りなどです。商品の不具合を伝えたり、説明を求めたりすること自体を封じる仕組みではありません。

厚生労働省の2023年度の調査では、全国の約8,000の企業・団体のうち27.9%が、過去3年間に従業員から「顧客等からの著しい迷惑行為」について相談を受けたと答えました。前回の2020年度の調査より8.4ポイント増えています。内容で多かったのは「継続的な、執拗な言動」(72.1%)と「威圧的な言動」(52.2%)でした。

「お客様は神様です」のもとの意味

日本でカスハラが話題になると、よく持ち出されるのが「お客様は神様です」という言葉です。もとは歌手の三波春夫さんが舞台で語ったもので、三波春夫さんの公式サイトによると、始まりは1961年でした。ここでいう「お客様」は客席の聴衆のことで、神前で祈るときのように雑念を払って歌う、という芸の心構えを表した言葉でした。

それが、店で客が無理を通すときの決まり文句のように使われるようになりました。公式サイトは、本来の意味とは違う使われ方が広がったことを説明しています。

都の条例から、国の法律へ

国より先に動いたのは東京都でした。東京都カスタマー・ハラスメント防止条例は全国で初めてのカスハラ防止条例とされ、2025年4月1日に施行されています。今回の法改正で、カスハラ対策は全国の職場の決まりになりました。

ただし、新しい決まりは客を罰するものではなく、事業主に「働く人を守る体制」をつくらせるものです。日本の接客は丁寧さで知られますが、その丁寧さは、働く人が我慢することで支えられてきた面もあります。客と働く人が対等に向き合うことを、職場の仕組みとして確かめる段階に入ったと言えます。

英語で言うと

Since October 2026, every employer in Japan has had to protect its staff from customer harassment, such as shouting, threats, or demands that go far beyond what the customer paid for. Reports had been rising: in a 2023 government survey, about 28 percent of companies and other employers said staff had come to them about it. Normal complaints are still fine. The rule is about abuse, not about customers speaking up.

2026年10月から、日本のすべての事業主は、従業員をカスタマーハラスメントから守らなければならなくなりました。どなる、脅す、払った金額をはるかに超える要求をする、といったものです。こうした相談は増えていて、2023年の国の調査では、企業・団体の約28%が、従業員から相談を受けたと答えました。普通の苦情はこれまでどおり言えます。この決まりが対象にしているのは嫌がらせで、客が意見を言うことではありません。

このコラムから、使えるフレーズ

  • Employers in Japan now have to protect their staff from abusive customers.
    日本では、事業主は悪質な客から従業員を守らなければならなくなりました。
  • Complaining is fine, but shouting at staff is not.
    苦情を言うのはかまいませんが、店員をどなるのはだめです。
  • "The customer is a god" was originally a singer's line about his audience.
    「お客様は神様です」は、もとは歌手が観客について語った言葉です。
  • Tokyo's own rule against customer harassment took effect in 2025.
    東京都のカスハラ防止条例は、2025年に施行されました。
  • Being polite to staff is part of good manners here too.
    店員さんに丁寧に接するのも、ここではマナーのうちです。

この記事のもとにした資料

数字と事実は、次の資料で確かめています。ご自分でも確かめられます。

この話に出てきた日本文化

ほかのニュース

すべて見る