2026年9月17日(木)
「なんで電車で寝てるの?」
治安の話で終わらせると、半分しか説明できない
外国人と電車に乗ると、かなりの確率でこれを聞かれます。車両を見渡すと、座っている人の半分が目を閉じている。世界的に見ると、この光景はけっこう異常です。
まず、他の国ではやらない
ニューヨークでもロンドンでもパリでも、電車で熟睡している人はほとんどいません。理由は単純で、寝ている間に荷物がなくなるからです。スリに遭わなくても、乗り過ごしたら治安のよくない駅で降りることになるかもしれない。だから寝ない、というより「寝られない」。
そこへ日本の電車に乗ると、平日の夕方、ロングシートに並んだ人の半分くらいが首を傾けて寝ています。カバンは膝の上に置いたまま、口が開いている人もいる。初めて見た人が写真を撮りたくなる気持ちは、まあ分かります。
理由の半分は「安全だから」
これは事実なので、堂々と言っていい部分です。日本では電車の中で寝ていても、まず荷物は取られません。落としたスマホが駅に届いている、という話もよくあります。安心して意識を手放せる公共空間がある、というのは、実はかなり贅沢なことです。
ただ、ここで話を終わらせると、日本人はちょっと気持ちよくなって、外国人は「へえ、すごいね」で終わります。もう半分を言わないと、この光景の説明にはなりません。
残りの半分は「疲れているから」
日本の睡眠時間が主要国のなかで最も短い部類に入ることは、複数の国際調査で繰り返し報告されています。通勤時間も長い。首都圏で片道1時間前後は珍しくなく、往復で2時間が毎日消えていきます。
つまり、多くの人にとって電車は「移動する寝室」です。安全だから寝ているというより、安全なので、ようやく寝られる。その順番で説明したほうが、実感に近いと思います。
外国人にこれを言うと、たいてい反応が変わります。「うらやましい」から「それ、大丈夫なの?」に。正しい反応だと思います。
なぜか、降りる駅で目が覚める
もうひとつ必ず聞かれるのが「寝てて乗り過ごさないの?」です。答えは、乗り過ごします。普通に。終点で駅員さんに起こされている人を、日本人なら一度は見たことがあるはずです。
それでも多くの人が降りる駅で自然に目が覚めるのは、停車と発車のリズム、カーブの揺れ方、アナウンスの声を、体が覚えているからだと言われます。毎日同じ路線に乗っていると、そうなる。便利な能力ですが、それが身についてしまうほど同じ電車に乗り続けている、という話でもあります。
英語で言うと
People really do sleep on the train here, bags on their laps. Half of that is safety — it's genuinely unusual for anything to be taken while you're asleep. The other half is that Japan has some of the shortest sleeping hours and longest commutes in the developed world, so for a lot of people the train is where they finally get to rest.
日本では、本当にみんな電車で寝ています。カバンを膝にのせたままで。理由の半分は安全だからで、寝ているあいだに物を取られることは、まずありません。もう半分は、日本の睡眠時間が先進国のなかで最も短い部類で、通勤時間は最も長い部類だからです。多くの人にとって電車は、ようやく休める場所なのです。
このコラムから、使えるフレーズ
- It's completely normal to see half the carriage asleep.車両の半分が寝ているのは、ごく普通の光景です。
- It's safe enough that people can fall asleep with their bags on their lap.カバンを膝に置いたまま眠れるくらい、安全なんです。
- Honestly, most of them are just exhausted from long commutes.正直に言うと、長い通勤で疲れきっているだけです。
- Somehow your body wakes you up at the right station.なぜか、降りる駅で体が勝手に起こしてくれるんです。
- And yes, people do miss their stop all the time.もちろん、乗り過ごす人もしょっちゅういます。