Ten Nights of Dreams: The First Night(夢十夜(第一夜))の挿絵
Level 3 Pre-Intermediate日本の昔話と名作

📕 夢十夜 6夜のうち 1番目 目次 ↓

Ten Nights of Dreams: The First Night

夢十夜(第一夜)

  • 📖 617 words
  • ⏱ 約6分
  • 🔊 3:24
  • YL 1.5–2.4
  • 英検準2級目安
  • 📝 全訳つき

あらすじ「こんな夢を見た」――静かに横たわる女が、「もうすぐ死にます」と言います。そして「百年、待っていてください。きっと会いに来ますから」と頼むのでした。

夏目漱石『夢十夜』第一夜(1908年)をもとに再話

キーワード(10語)本文の点線の語はタップで意味が出ます
  • bury埋める・埋葬する
  • grave墓
  • pearl shell真珠貝
  • dampしめった
  • mossこけ
  • trickedだました
  • stem茎
  • budつぼみ
  • lily百合
  • dew露
音声に合わせて文が光ります0:00 / 3:24

Google Cloud TTS(Chirp 3 HD・アメリカ英語・Charon)

This is the dream I had.

こんな夢を見た。

I was sitting next to a woman who was lying on her back. She said quietly, "I am going to die soon." Her long hair was spread out on the pillow, and her face was soft and white. Her cheeks had a warm color, and her lips were red. She did not look like a person who was about to die. But she said again, clearly, "I am going to die."

私は、あおむけに横たわっているひとりの女のそばに座っていた。女は静かに「もうすぐ死にます」と言った。長い髪が枕の上に広がり、顔はやわらかく、白く見えた。ほおにはあたたかい血の色がさし、くちびるは赤くて、とても今にも死にそうな人には見えない。けれども女は、もう一度はっきりと「死にます」と言った。

I looked down at her and asked, "Are you really going to die?" "Yes, I am," she said, and she opened her eyes. They were large and dark and full of light. Deep inside them, I could see my own face.

私は女を見下ろして、「本当に死ぬのかい」とたずねた。「ええ、死にます」と女は言って、目を開けた。大きな黒い目で、光にあふれていた。その奥深くに、私自身の顔が映っていた。

"Then when I die," she said, "please bury me. Dig a grave with a large pearl shell. Then find a piece of a star that has fallen from the sky, and put it on my grave to mark it. And please wait beside the grave. I will come back to see you."

「死んだら、埋めてください」と、女は言った。「大きな真珠貝で穴を掘ってください。それから、空から落ちてきた星のかけらを見つけて、お墓の目じるしに置いてください。そして、お墓のそばで待っていてください。また会いに来ますから」

"When will you come?" I asked.

「いつ来るのかい」と、私はたずねた。

"The sun will rise, and then the sun will set. It will rise again, and set again. The red sun will go from east to west, and from east to west again. Will you wait for me?" I nodded silently.

「日が出るでしょう。それから日が沈むでしょう。また出て、また沈むでしょう。赤い日が東から西へ、また東から西へと動いていくでしょう。それでも待っていてくださいますか」私はだまってうなずいた。

Her voice became stronger. "Wait for a hundred years," she said. "Please sit by my grave and wait for a hundred years. I promise that I will come to see you."

女の声が強くなった。「百年待っていてください」と、女は言った。「お墓のそばに座って、百年待っていてください。きっと会いに来ますから」

"I will wait," I said. Then her eyes slowly closed. A tear ran down her cheek. She had died.

「待っているよ」と、私は言った。すると、女の目がゆっくりと閉じた。涙がひとすじ、ほおを流れた。女は死んでいた。

I went out into the garden and dug a hole with a large pearl shell. The edge of the shell was smooth and sharp, and every time I lifted the earth, the inside of the shell shone in the moonlight. The earth smelled cool and damp. I gently laid her in the hole and covered her with soft earth. Then I picked up a piece of a fallen star and put it on top of the grave. The star was round and smooth. As I held it, it became a little warm in my hands.

私は庭に出て、大きな真珠貝で穴を掘った。貝のふちはなめらかでするどく、土をすくうたびに、貝の内側が月の光にきらきら光った。土は冷たく、しめったにおいがした。私は女をそっと穴に寝かせ、やわらかい土をかけた。それから、落ちてきた星のかけらを拾って、お墓の上に置いた。星のかけらは丸くて、なめらかだった。手に持っているうちに、それは少しあたたかくなった。

I sat down on the moss beside the grave and began to wait. "I will wait for a hundred years," I thought. As I sat there, a great red sun rose in the east, just as she had said. It went slowly across the sky and set in the west. "That is one," I counted.

私はお墓のそばのこけの上に座って、待ちはじめた。「百年待つのだ」と、私は思った。そうして座っていると、女の言ったとおり、大きな赤い日が東からのぼった。日はゆっくりと空をわたり、西に沈んだ。「ひとつ」と、私は数えた。

After a while, the red sun rose again and set again without a sound. "That is two," I counted. I counted the days like this, one by one. I do not know how many red suns I saw. I counted and counted, but there were too many. The suns kept passing over my head, and still a hundred years did not come. In the end, only the round stone, now covered with green moss, was there before me. I started to think, "Maybe she has tricked me."

しばらくすると、赤い日はまた音もなくのぼり、また沈んだ。「ふたつ」と、私は数えた。こうして私は、一日一日を数えていった。いくつ赤い日を見たか、わからない。数えても数えても、数えきれなかった。日はいくつも頭の上を通りすぎていったが、それでも百年はやって来ない。しまいには、緑のこけにおおわれた丸い石だけが、私の前にあった。私は、「女にだまされたのではないだろうか」と思いはじめた。

Just then, a green stem grew out from under the stone and came toward me. It grew longer and longer until it reached my chest. At the top, a long, thin flower bud bent its head softly. Then it opened. It was a pure white lily. The sweet smell of the flower went deep into me.

ちょうどそのとき、石の下から緑の茎がのびてきて、私のほうへ近づいてきた。茎はぐんぐんのびて、私の胸のあたりまで届いた。そのいちばん上で、細長いつぼみが、やわらかく首をかたむけた。そして、花が開いた。まっ白な百合の花だった。花の甘い香りが、私の奥深くまでしみこんだ。

A drop of dew fell from high above, and the flower moved gently with its weight. I leaned forward and touched my lips to the white petal. It was cold with dew. When I lifted my face, I saw a single star shining in the dawn sky.

はるか上から露がひとしずく落ちてきて、花はその重みでゆらりとゆれた。私は身を乗り出して、白い花びらにくちびるをふれた。花びらは露で冷たくなっていた。顔を上げると、夜明けの空に、星がひとつだけかがやいていた。

Only then did I understand. "A hundred years have already come."

そのとき初めて、私は気がついた。「百年はもう来ていたのだな」

📖 全訳をまとめて読む 読み終わってからの答え合わせに

こんな夢を見た。

私は、あおむけに横たわっているひとりの女のそばに座っていた。女は静かに「もうすぐ死にます」と言った。長い髪が枕の上に広がり、顔はやわらかく、白く見えた。ほおにはあたたかい血の色がさし、くちびるは赤くて、とても今にも死にそうな人には見えない。けれども女は、もう一度はっきりと「死にます」と言った。

私は女を見下ろして、「本当に死ぬのかい」とたずねた。「ええ、死にます」と女は言って、目を開けた。大きな黒い目で、光にあふれていた。その奥深くに、私自身の顔が映っていた。

「死んだら、埋めてください」と、女は言った。「大きな真珠貝で穴を掘ってください。それから、空から落ちてきた星のかけらを見つけて、お墓の目じるしに置いてください。そして、お墓のそばで待っていてください。また会いに来ますから」

「いつ来るのかい」と、私はたずねた。

「日が出るでしょう。それから日が沈むでしょう。また出て、また沈むでしょう。赤い日が東から西へ、また東から西へと動いていくでしょう。それでも待っていてくださいますか」私はだまってうなずいた。

女の声が強くなった。「百年待っていてください」と、女は言った。「お墓のそばに座って、百年待っていてください。きっと会いに来ますから」

「待っているよ」と、私は言った。すると、女の目がゆっくりと閉じた。涙がひとすじ、ほおを流れた。女は死んでいた。

私は庭に出て、大きな真珠貝で穴を掘った。貝のふちはなめらかでするどく、土をすくうたびに、貝の内側が月の光にきらきら光った。土は冷たく、しめったにおいがした。私は女をそっと穴に寝かせ、やわらかい土をかけた。それから、落ちてきた星のかけらを拾って、お墓の上に置いた。星のかけらは丸くて、なめらかだった。手に持っているうちに、それは少しあたたかくなった。

私はお墓のそばのこけの上に座って、待ちはじめた。「百年待つのだ」と、私は思った。そうして座っていると、女の言ったとおり、大きな赤い日が東からのぼった。日はゆっくりと空をわたり、西に沈んだ。「ひとつ」と、私は数えた。

しばらくすると、赤い日はまた音もなくのぼり、また沈んだ。「ふたつ」と、私は数えた。こうして私は、一日一日を数えていった。いくつ赤い日を見たか、わからない。数えても数えても、数えきれなかった。日はいくつも頭の上を通りすぎていったが、それでも百年はやって来ない。しまいには、緑のこけにおおわれた丸い石だけが、私の前にあった。私は、「女にだまされたのではないだろうか」と思いはじめた。

ちょうどそのとき、石の下から緑の茎がのびてきて、私のほうへ近づいてきた。茎はぐんぐんのびて、私の胸のあたりまで届いた。そのいちばん上で、細長いつぼみが、やわらかく首をかたむけた。そして、花が開いた。まっ白な百合の花だった。花の甘い香りが、私の奥深くまでしみこんだ。

はるか上から露がひとしずく落ちてきて、花はその重みでゆらりとゆれた。私は身を乗り出して、白い花びらにくちびるをふれた。花びらは露で冷たくなっていた。顔を上げると、夜明けの空に、星がひとつだけかがやいていた。

そのとき初めて、私は気がついた。「百年はもう来ていたのだな」

日本語訳:多読ベスト

押すと、この端末の読書記録(100万語メーター)に語数が加わります。

理解度チェック Quick Quiz

読み終わったら、3問だけ。間違えても大丈夫。多読は「だいたいわかる」で十分です。

Q1. What did the man use to dig the grave?

Q2. How long did the woman ask the man to wait?

Q3. What grew from under the stone at the end?

この読み物の使い方 3ステップ

  1. 聞きながら読む 音声に合わせて光る文を目で追う(聞き読み)。わからない語は飛ばしてOK。
  2. 音声なしで読む ⏱計測ボタンで読む速さ(WPM)を測ってみる。
  3. 耳だけで聞く 🎧聞くだけモードで、文字を見ずに内容がわかるか試す。🔁1文リピートで音読・シャドーイングも。

聞き読みの効果とやり方/多読三原則

📕 夢十夜 Ten Nights of Dreams

6夜を収録・4,576語。1夜ずつ、音声と全訳つきで読めます。

目次(6夜)
  1. 夢十夜(第一夜) 617語
  2. 夢十夜(第三夜) 838語
  3. 夢十夜(第五夜) 778語
  4. 夢十夜(第六夜) 556語
  5. 夢十夜(第九夜) 875語
  6. 夢十夜(第十夜) 912語

次に読む

Level 3 の読み物をもっと見る →